通達の提出が国の重大な利益にかかわる公務上の秘密にあたるとして拒否されても、これに代わる証人の取調をすることなく証明不十分として無罪の言渡をした原審の措置が違法とされた事例
自衛隊法違反被告事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/昭和50年(う)第676号
【判決日付】 昭和52年1月31日
【判示事項】 通達の提出が国の重大な利益にかかわる公務上の秘密にあたるとして拒否されても、これに代わる証人の取調をすることなく証明不十分として無罪の言渡をした原審の措置が違法とされた事例
【判決要旨】 通達にいう特別警備訓練が治安出動訓練を含むものではないかとの疑いは、その内容と程度からみて、通達そのものを公判廷に顕出してその記載内容を明らかにしないかぎり払拭できないというほど重大なものではなく、検察官の申請した通達起案者らの取調請求を却下し、検察官に十分な立証の機会を与えなかつた原審の訴訟手続は違法である。
【参照条文】 自衛隊法64
自衛隊法119
刑事訴訟法103
刑事訴訟法298
刑事訴訟法379
【掲載誌】 高等裁判所刑事判例集30巻1号1頁
高等裁判所刑事裁判速報集2207号
刑事裁判月報9巻1~2号14頁
東京高等裁判所判決時報刑事28巻1号6頁
判例タイムズ347号161頁
判例時報843号17頁
刑事裁判資料230号653頁
刑事訴訟法
第百三条 公務員又は公務員であつた者が保管し、又は所持する物について、本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものであることを申し立てたときは、当該監督官庁の承諾がなければ、押収をすることはできない。但し、当該監督官庁は、国の重大な利益を害する場合を除いては、承諾を拒むことができない。
第二百九十八条 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。
② 裁判所は、必要と認めるときは、職権で証拠調をすることができる。
第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
自衛隊法
(団体の結成等の禁止)
第六十四条 隊員は、勤務条件等に関し使用者たる国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。
2 隊員は、同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。
3 何人も、前項の行為を企て、又はその遂行を共謀し、教唆し、若しくはせヽんヽ動してはならない。
4 前三項の規定に違反する行為をした隊員は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任用上の権利をもつて対抗することができない。
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は禁錮に処する。
一 削除
二 第六十四条第一項の規定に違反して組合その他の団体を結成した者
三 第六十四条第二項の規定に違反した者
四 第七十条第一項第一号の規定による防衛招集命令を受けた予備自衛官又は第七十五条の四第一項第一号若しくは第三号の規定による防衛招集命令若しくは治安招集命令を受けた即応予備自衛官で、正当な理由がなくて指定された日から三日を過ぎてなお指定された場所に出頭しないもの
五 第七十七条又は第七十九条第一項の規定による出動待機命令を受けた者で、正当な理由がなくて職務の場所を離れ七日を過ぎたもの又は職務の場所につくように命ぜられた日から正当な理由がなくて七日を過ぎてなお職務の場所につかないもの
六 第七十八条第一項又は第八十一条第二項に規定する治安出動命令を受けた者で、上官の職務上の命令に反抗し、又はこれに服従しないもの
七 上官の職務上の命令に対し多数共同して反抗した者
八 正当な権限がなくて又は上官の職務上の命令に違反して自衛隊の部隊を指揮した者
2 前項第二号若しくは第四号から第六号までに規定する行為の遂行を教唆し、若しくはそのほヽうヽ助をした者又は同項第三号、第七号若しくは第八号に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、若しくはせヽんヽ動した者は、それぞれ同項の刑に処する。