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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第8章 土壌汚染・地中埋設物・地盤

 

土壌汚染対策法と宅地建物取引業法

宅地建物取引業法35条1項2号には、土壌汚染対策法(土壌汚染対策法9条、12条1項及び3項)が含まれます。 

 環境問題が深刻となっているので、今後は、この説明義務が重要となるでしょう。

 

神戸地判昭和59年9月20日判タ541号180頁

鉄筋3階建の分譲マンションを建築する目的で買い受けた造成宅地の地中から、木片やビニール片等が大量に出てきて地耐力が弱いことが判明したため、基礎工法をベタ基礎工法から杭打工法に変更して建物を建築したという事案について、宅地といっても古いものから新しい埋立造成のものまで多種多様で、その土質・地盤の硬度も千差万別であり、その地上に建てられる建物の種類・規模・構造も種々様々であって、宅地の通常有すべき品質・性能を土質・地耐力等の観点のみから1律に画定することは困難であるから、建築基準法等によって許容される範囲の建物を通常用いられる工法により建築することが可能な土地である限り、一般の取引においては宅地としての性能に欠けるところはないと解するのが相当であるとして、瑕疵であることを否定した。

  本判決は、「その土地上に建物を建築するについて支障となる質・量の異物が地中に存在するために、その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合には、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の瑕疵になるものと解すべきである」とし、瑕疵の存在を認めた。

 右神戸地判とは結論を異にしているが、神戸地判の場合、10年近く以前に埋立により造成された宅地で、その後原告がこれを取得するまで何ら問題なく転々譲渡されてきており地上に鉄筋コンクリート造の建物も現存していたという事情から、埋立当時における造成工事の瑕疵が問題となるかは別として、少なくとも、取引上の宅地としては、瑕疵はなかったものとみるのが社会通念上公平と判断されたものであって、埋設物の種類等も違い、また杭打工法は予想できないほど異例な工法ではないとされているので、結局、本件とは事案を異にするというべきであろう。

 

横浜地判昭和60年2月27日判タ554号238頁、

建売住宅が地盤沈下により傾斜したことについて、売主および建築業者の損害賠償責任が認められた事例

 1 Xらは、昭和45年3月から8月にかけて、Y2から土地建物を買い受けたものであるが、昭和48年4月頃から右土地の地盤沈下と建物の傾斜がみられ、建物のドアの開閉ができなくなり、タイルや壁のひび割れが生じた。

そこで、Xらは、右宅地造成に不備があり、建物の基礎工事に手落ちがあったとし、これが売買契約時の瑕疵にあたるとして、売主のY2と右土地建物の造成建築業者のY1に対し損害賠償を請求したものである。

  これに対し、Yらは、建物が建築されて3年以上も経過した後に傾斜が始まっていること、右傾斜は埋立てをした隣接地の方向へ向かっていること、隣接地の埋立てを中止すると傾斜の進行も止ったことなどからすれば、建物の傾斜の原因は、隣地の埋立工事による盛土の圧力により土地の地盤の沈下をきたしたことによるものと考えるほかないとし、土地建物の瑕疵責任はないと主張した。

  2 本判決は、Xら所有の建物の傾斜の原因については、土地の地盤の軟弱性とかかる軟弱地盤上における建物建築に際してとるべき建築工法の過誤によるものと認め、右地盤沈下の原因について隣地の盛土の影響を全く否定し去ることはできないとしても、それをもって主たる原因と認めることはできないから、Xら購入の土地建物には売買契約時に隠れた瑕疵があったものと判断した。

そのうえ、本判決は、Y2に対しては売主の瑕疵担保責任として損害賠償責任を認めるとともに、建売住宅の施工・販売業者のY1についても、予め地盤の地質調査をすることなく、極めて短期間のうちに簡単な盛土工事を行い、かつ、有機質土層を破壊するような摩擦杭を打ち込んだ過失があったとして民法709条、716条但書による損害賠償責任を認めた。

  3 理論上の問題としては、建売住宅の施工・販売業者の民法709条、716条但書の不法行為責任を認めたことの当否があるが、建売住宅の瑕疵について施工業者の責任を認めた例としては珍しく、実務の参考となるものと思われる。

 

仙台地判平成4年4月8日判タ792号105頁

1 震度6の地震によって陥没するなどの被害のあった土地に「隠レタル瑕疵」がなかったとされた事例

本件宅地に耐震性の点からの瑕疵の存否は、従来発生した地震の回数、頻度、規模、程度のほか、時代ごとに法令上要求される地上地下構築物の所在場所、地質、地形、強度等の諸要素を考慮し、一般常識的見地から、少なくとも震度5程度の地震に対して安全性の有無を基準として判断するのが相当であると解する。

 しかるところ、前掲第1乃至第5及び第7に認定した事実関係によるとき、とりわけ、

  1 本件地震以前過去50年内に仙台市及びその周辺地域が影響を受けた公表震度5を記録する地震は、昭和8年3月3日の3陸沖地震、昭和11年11月3日の宮城県沖地震、昭和13年11月5日の福島県沖地震、昭和39年6月16日の新潟県沖地震の4回である。

  2 これに対し、本件地震は公表震度5であるものの、後の調査の結果、実際には、全般的に震度6とみなすのが妥当と考えられており、地震による加速度(ガル)は、仙台市の旧市街地で地盤の固い場所と考えられている所でも、地上1階地下1階において烈震の範囲を示すものとなっている。そのため、第1の2に認定したように仙台市の各所に甚大な損害が生じ、地下に施設されている水道・ガス管に破損が生じ、これの復旧に多くの日時を要したのであって、本件地震は過去50年間に起きた震度5といわれる地震と比較して、格段の差のある損害をもたらした。

  3 各原告の所有宅地は第一種住居専用地域で、地上建物は1、2階建の居宅または集合住宅であったが、原告がこれを取得後、その宅地に格別の異状がなかった(一部の原告の宅地の擁壁に崩落した個所があった等の瑕疵は認められるが、これを補修する程度で使用に支障はなかった)。また、本件地震前に発生した昭和39年6月16日の新潟県沖地震(震度5)、昭和53年2月20日の宮城県沖地震(震度4)による被害も報告されていない。

 との諸事実に鑑み、なお、本件各宅地の造成には宅造法の規制はなかったが、〈書証番号略〉に顕れた「1978宮城県沖地震調査委員会」の「緑ケ丘で発生した被害の多くは宅造法の技術基準に準拠していても防止できなかった可能性がある。」との指摘に照らしても、本件宅地に民法570条にいう隠れた瑕疵があったものと判断することはできず、このことから本件造成者が何人であったとしても、本件宅地の造成工事に違法の咎はなかったというべきである。

 

東京地判平4年10月28日判タ831号159頁

他に地中の産業廃棄物、土間コンクリートの存在が瑕疵にあたるとした上で、本判決と同様に、商法526条の適用を肯定した事案として、宅地の売買において、その地中に、大量の材木片等の産業廃棄物、コンクリートの土間や基礎が埋設されていたことが、土地の隠れた瑕疵になるとされた事例

 本件原告は、被告から、宅地4筆とその地上の建物を買い受け(ただし、右建物は税金対策のために本件取引に際して建築されたプレハブ建物にすぎず、それ自体に実質的価値があるものとして売買の対象になったものではないから、実質的には宅地のみの売買と考えてよい)、これを他に転売した。

ところが、転売先で建物を建築しようとして工事に着手したところ、本件宅地の地中に、大量の材木片等の産業廃棄物、広い範囲にわたる厚さ約15センチメートルのコンクリート土間及び最長約2メートルのコンクリート基礎10個が埋設されているのが発見された(本件土地はもと鉄工所の敷地であった)、そこで、原告は被告に対し、瑕疵担保責任に基づき、転売先から請求を受けた埋設物の撤去工事費用について損害賠償を求めた。

  本件において争われた主要な点は、コンクリート土間及び基礎が「隠レタ」ものであったかどうか(売買契約の当時、右土間の一部が露出していたか、既に土に覆われていたか等)という事実認定の問題であったようであるが、それ以前に、宅地の売買において地中に異物が埋設されていることが「瑕疵」になるのかという法解釈上の問題があった。

  売買の目的物に「瑕疵」があるとは、目的物に欠陥があり、その価値を減じたり、その物の通常の用途もしくは契約上特定した用途に適しない場合、または売主が保証した性能を具備しない場合をいうと解されるが(大判昭和8年1月14日民集12巻71頁、なお、『新版注釈民法(14)』343頁以下参照)、本判決もいうように、地中に土以外の異物が存在する場合一般が、直ちに土地の瑕疵を構成するものでないことは明らかであろう。

 

東京高判平成13年12月26日判タ1115号185頁

1 宅地建物取引業者は、信義則上、買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重要な事項につき知りえた事実については、買主に説明・告知する義務を負い、土地が軟弱地盤であることを認識しながら説明・告知しなかった場合は、これにより損害を受けた買主に損害賠償責任が生ずる

2 複数の宅地建物取引業者が土地売買契約に関与し、その土地が軟弱地盤であることを買主に説明・告知せず、地盤沈下が発生し建物に居住に困難をもたらす不具合が生じた場合は、個々の業者の軟弱地盤であることの認識の有無により、損害賠償責任の存否が定まる

1 Xらは、建売業者から土地付建売住宅を不動産業者の仲介により購入したが、いずれも土地が軟弱地盤であったために地盤沈下が発生し、建物に床の高低差の発生、外壁の亀裂の発生、ドアの開閉不能等の著しい不具合が生じた。そこで、Xらは、建売業者当と仲介した不動産業者Y2・Y3に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。不動産業者のうち、Y2はXら全員に仲介しているが、Y3はXのうち1人に当と共同で仲介したものである。

  1審判決(東京地判平成13年6月27日判タ1095号158頁)は、(1)軟弱地盤の土地であるため地盤沈下が発生し建物に居住に困難をもたらす不具合が生じた場合において、軟弱地盤であることは隠れた瑕疵であり、土地付建売住宅の売買契約の目的を達することができないとして、建売業者に瑕疵担保責任を認め、(2)不動産仲介業者が土地が軟弱地盤であることを説明告知しなかったことにつき、説明告知義務違反による不動産責任を認め、請求を認容(一部)した。これに対し、不動産業者の2社が控訴したのが、本件訴訟である(建売業者については、1審判決確定)。

  控訴理由の要旨は、(1)本件建物には、軟弱地盤による不等沈下はない(Y2)、(2)不動産業者の担当者は、軟弱地盤であることを認識しておらず、説明告知義務はない(Y2・Y3)というものであった。

  2 本判決は、要旨次のとおり判示して、Y2の控訴を棄却し、犯の敗訴部分を取り消し(請求棄却)た。

  すなわち、本判決は、(1)軟弱地盤に起因する不等沈下が発生していることは、証拠上認められるとした上、(2)宅地建物取引業者は、信義則上、宅地建物取引業法35条に規定された事項はもちろん、買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重要な事項について知りえた事実については、買主に説明・告知する義務を負うところ、Y2の担当者はXのうち1人を除く重要事項説明書に当該地区または近隣に軟弱地盤地区がある旨の記載をしており、本件各土地につき軟弱地盤であることを十分認識していたものと認められ、本件では、Xらに対する説明・告知義務に違反したものであるとしたが、(3)Y3の担当者については、売買契約締結の日に読み上げられた重要事項説明書や当の担当者の説明の内容からは、当該土地の近隣に軟弱地盤地区があるという程度のことは認識できたとしても、それ以上に当該土地が軟弱地盤であることを明確に認識することができたか否かは疑問であり、当該土地につき軟弱地盤であることを認識することができたものと認めることはできず、説明・告知義務違反はない旨判示したのである。

  3 本判決は、第1に、宅地建物取引業者は、信義則上、買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重要な事項につき知りえた事実については、買主に説明・告知する義務を負い、土地が軟弱地盤であることを認識しながら説明・告知しなかった場合はとりわけ、水分が多く軟弱であり、沈下を起こしやすい地盤という意味での「軟弱地盤」性を認識していれば足り、地質についての専門的知識がないことは義務を免れる要素ではないとしていることは、業者の弁明を封ずるもので、実務上参考になろう。

  また、本判決は、第2に、複数の宅地建物取引業者が土地売買契約に関与し、その土地が軟弱地盤であることを買主に説明・告知せず、地盤沈下が発生し建物に居住に困難をもたらす不具合が生じた場合には、個々の業者の軟弱地盤であることの認識の有無により、損害賠償責任の存否が定まるとしている点でも、規範的意義がある。もっとも、こうした認識が必要であることは、1審判決も当然の前提としている。したがって、本判決のより大きな意義は、2業者のうち片方の業者の担当者の認識の有無を問題として、責任なしとしているという事例的意義にある(本件では、現実の損害填補については、1業者の賠償責任で賄えるから他の買主との間で差異は生じない)。もっとも、宅地建物取引業者の専門性を重視すると、本件のような「地盤の性質」という土地売買に当たって決定的な事項について知識も認識もなく仲介して憚ることがないという業者は、その存在意義が問われかねないであろう。そのようなことを考えると、本件においても、この業者は、「当該土地の近隣に軟弱地盤地区があること」は認識できたというのであるから、「当該土地はどうなのか」を調査して、それを告知・説明すベきではないかという疑問がないわけでもない。したがって、本件は限界事例であり、1審判決と本判決との間で、いずれの結論が規範的評価として相当であるかを考察する恰好の素材を提供するものといえよう。

 

東京地判平成15年5月16日判時1849号59頁

1 地中にコンクリートがら等の埋設物が存在していた土地の売買につき、売主の瑕疵担保責任及び説明義務違反による債務不履行責任が認められた事例

2 右売買契約における「買主の本物件の利用を阻害する地中障害の存在が判明した場合、これを取り除くための費用は買主の負担とする。」との特約が、売主の重過失を理由に効力が生じないとされた事例

 

東京地判平成18年9月5日判タ1248号230頁

1 土壌汚染が生じている土地の売買において、買主の錯誤無効の主張が否定された事例(民法95条)

2 商人間の土地の売買において、検査通知義務違反による免責が認められた事例(商法526条)

3 土壌汚染が生じている土地の売買において、売主の説明義務違反が肯定された事例(民法415条)

 1 本件は、建設会社であるX(脱退原告と、その権利義務を承継した原告引受承継人を総称する)が、機械販売会社であるYに対し、Yから購入した土地には土壌汚染が生じていたとして、売買契約の錯誤無効による代金の返還、予備的に瑕疵担保責任ないし債務不履行責任に基づき土壌調査及び土壌浄化費用の賠償等を求めた事案である。

  2 売主Yは、売買の際に買主Xの転売目的は表示されておらず、鉛及びふっ素の測定値が基準値を大きく超えるものではないことなどから錯誤の主張を争った。また、土壌汚染対策法の施行は売買契約の後で、検出された鉛、ふっ素の数値では健康被害が発生するとはいえないこと等から、同土地に瑕疵が存在するとはいえず、商法526条2項が規定する検査通知義務の期間も経過していると主張した。さらに、Xに対し、それまでの土地利用状況や、機械等の解体業者に賃貸していたことの説明義務は果たしている旨主張した。

  3 本判決は、Xの錯誤の主張に対して、転売目的での購入という動機がYに表示されたとは認められないことを理由とし、汚染除去費用が売買代金の約21パーセントに留まることも指摘して、要素の錯誤を否定した。

  また、Xによる瑕疵担保責任の主張について、本判決は、土壌調査の結果等から、ふっ素及び鉛による土壌汚染は、土地の経済的な価値を低下させるもので、隠れたる瑕疵にあたるとしたが、土地の売買において土壌汚染が問題になる場合にも商法526条の適用を肯定して、同条に基づく免責を認めた。不動産の売買に商法526条の適用があるかについて、Xは、これを争ったが、本判決は、これを肯定した。

 4 Xの債務不履行の主張について、本判決は、土壌汚染の生じていない土地を引き渡すベき売買契約上の本来的債務及び信義則上の土壌汚染検査義務を否定した上で、Yの説明義務違反を肯定し、同義務違反に基づく損害賠償を認容した(過失相殺あり)。本判決は、土壌汚染の有無の調査は、一般的に専門的な技術及び多額の費用を要するものであり、商人である買主が目的物の受領後その調査を行うべきかについて適切に判断をするためには、売主において土壌汚染が生じていることの認識がなくとも、土壌汚染を発生せしめる蓋然性のある方法で土地の利用をしていた場合には、土地の来歴や従前からの利用方法について買主に説明すべき信義則上の付随義務を負うとした上で、Yが認識していた事実関係や、平成11年の引渡当時の土壌汚染に関する社会情勢を検討して、本件のYにおいても説明義務を負うとしている。

  5 近年、土壌汚染の拡大とその被害の深刻さが広く認識されてきており、行政や取引などの各場面で対応策が講じられているところである。本判決中にも示されている土壌汚染対策法の施行以後、民間の売買でも売主に土壌汚染の調査義務を課したり、土壌汚染が発覚した場合の対策費用の負担、瑕疵担保責任の内容の明確化などを売買契約に盛り込む事例が増えているようである。本件は、上記のような特約がない売買契約において、代金決済後、約3年経過した後に土壌汚染が発覚したという事例であるが、本判決は、このような場合の当事者の責任について判断を示すとともに、土壌汚染が生じている土地の売買において、売主が土壌汚染自体について善意であるとしても、土地の来歴や従前の使用状況についての説明義務を負う場合があることを認めたものとして参考となる事例である。

 しかしながら、一方で、脱退原告は、前記第3、3(5)エのとおり、土木建築工事に関する調査、企画、地質調査等をも目的とする株式会社であること及び少なくとも、被告からのカドミウム汚染についての報告書の送付により、同土地には量は不詳ながら機械の解体作業時に流出した油分がしみ込んでいるとの情報提供を受けていたことからすれば、前記被告の説明義務の履行がなくとも自らの判断で土壌汚染調査を行うことが相当程度期待されていたと認めることができる。したがって、このような引渡後直ちに土壌汚染調査を行わなかった点についての脱退原告の落ち度も総合して考慮すると、公平の見地から、被告は、前記原告に生じた損害の4割である7545万4800円を賠償する義務を負うに留まるべきである。

 

東京地判平成18年9月15日LLI/DB 判例秘書登載

土地の売買契約において、擁壁の安全性について説明しなかったことが、売買契約に付随する信義則上の説明義務違反に当たるとして、違約金として売買代金の20パーセント相当額の賠償責任を負うとした事例

 本件重要事項説明書に川崎市建築基準条例5条(がけ付近の建築物)があることが記載されている。もっとも、前記認定事実によれば、被告Y1が、本件土地と隣地は、もともと1筆の土地であったものを分筆し、先に隣地を販売したものであるが、被告Y1は、当該隣地も建築確認を得る際に、擁壁の補強を高津区役所建築課から求められ、補強工事が行われたことを知っていたことが認められる。とすると、本件土地と隣地の擁壁とは連続しているのであるから、建築確認を求める際に、高津区役所建築課から同様の指摘がなされることは予想し得たはずである。しかし、本件において、被告Y1が、かかる情報を被告Y2や原告に説明したと認めうる証拠はない。

 

質屋営業法の利息の特例

 

質屋営業法では、

(定義)

第一条 この法律において「質屋営業」とは、物品(有価証券を含む。第二十二条を除き、以下同じ。)を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業をいう。

2 この法律において「質屋」とは、質屋営業を営む者で第二条第一項の規定による許可を受けたものをいう。

 

(質屋営業の許可)

第二条 質屋になろうとする者は、内閣府令で定める手続により、営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

2 前項の場合において、質屋になろうとする者は、自ら管理しないで営業所を設けるときは、その営業所の管理者を定めなければならない。

 

 

(掲示)

第十六条 質屋は、次の事項を営業所内の見やすい場所に掲示しなければならない。

一 利率

二 利息計算の方法

三 流質期限

四 前三号に掲げるもののほか、質契約の内容となるべき事項

五 営業時間

2 前項第三号の流質期限は、質契約成立の日から三月未満(質置主が物品を取り扱う営業者であり、かつ、その質に入れようとする物品がその取り扱つている物品である場合においては、一月未満)の期間で定めてはならない。

3 質屋は、第一項第一号から第四号までに掲げる事項に係る掲示の内容と異なり、かつ、質置主の不利益となるような質契約をしてはならない。

4 前項の規定に違反する契約は、その違反する部分については、当該掲示の内容によりされたものとみなす。

(質物の返還)

第十七条 質置主は、流質期限前は、いつでも元利金を弁済して、その質物を受け戻すことができる。この場合においては、質置主は、質札を返還し、又は通帳に質物を受け戻した旨の記入を受けるものとする。

2 質屋は、内閣府令で定める方法により相手方が質物の受取について正当な権限を有する者(以下この条において「受取権者」という。)であることを確認した場合でなければ、質物を返還してはならない。

3 質屋が前項の内閣府令で定める方法により相手方が受取権者であることを確認して質物を返還したときは、正当な返還をしたものとみなす。ただし、受取権者であると確認したことについて過失がある場合は、この限りでない。

 

(質物の返還)

第十七条 質置主は、流質期限前は、いつでも元利金を弁済して、その質物を受け戻すことができる。この場合においては、質置主は、質札を返還し、又は通帳に質物を受け戻した旨の記入を受けるものとする。

2 質屋は、内閣府令で定める方法により相手方が質物の受取について正当な権限を有する者(以下この条において「受取権者」という。)であることを確認した場合でなければ、質物を返還してはならない。

3 質屋が前項の内閣府令で定める方法により相手方が受取権者であることを確認して質物を返還したときは、正当な返還をしたものとみなす。ただし、受取権者であると確認したことについて過失がある場合は、この限りでない。

(流質物の取得及び処分)

第十八条 質屋は、流質期限を経過した時において、その質物の所有権を取得する。ただし、質屋は、当該流質物を処分するまでは、質置主が元金及び流質期限までの利子並びに流質期限経過の時に質契約を更新したとすれば支払うことを要する利子に相当する金額を支払つたときは、これを返還するように努めるものとする。

2 質屋は、古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第十四条第三項の規定にかかわらず、同法第二条第二項第二号の古物市場において、流質物の売却をすることができる。

 

 

質屋については、金利の特例があります。

 

第三十六条 質屋に対する出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)第五条第二項の規定の適用については、同項中「二十パーセント」とあるのは、「百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)」と、同法第五条の四第一項中「貸付け又は保証の期間が十五日未満であるときは、これを十五日として利息又は保証料の計算をするものとする。」とあるのは、「月の初日から末日までの期間(当該期間の日数は、その月の暦日の数にかかわらず、三十日とする。)を一期として利息を計算するものとする。この場合において、貸付けの期間が一期に満たないときは一期とし、二以上の月にわたるときは、そのわたる月の数を期の数とする。」とする。

2 質屋については、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条第三項、第八条第二項及び第九条第一項第二号の規定は、適用しない。

 

ジュリスト 2024年6月号(No.1598)有斐閣

 

2024年05月24日 発売

定価 1,760円(本体 1,600円)

 

近年,サステナビリティ経営に対する意識が高まる中,企業には非財務情報に関する開示が要請され,これらの情報が企業価値を大きく左右するようになってきました。特集1では,環境や人的資本といったサステナビリティに関する情報開示について,実務での取組みや法制度上の位置付けを示すとともに,開示をめぐる課題や今後についても検討を加えます。特集2では,昨年の第212回臨時国会で成立した官報電子化法,また,法制事務のデジタル化を取り上げました。本法律制定までの背景や意義を紹介するとともに,法制事務のデジタル化に向けての取組みや課題も取り上げ,DX化の展望を示します。

 

 

【特集1】企業の開示をめぐる問題――サステナビリティ情報開示の現在

◇サステナビリティ開示の現況…松井智予……14

 

◇〔座談会〕サステナビリティ開示の実務・現状と今後の見通し…松井智予(司会)/井口譲二/木下潮音/田井中克之……18

 

◇サステナビリティ情報開示をめぐる問題――金商法開示の視点から…松元暢子……37

 

◇サステナビリティ情報開示の現在――労働法の視点から…小畑史子……43

 

◇企業の開示をめぐる問題――環境法の視点から…勢一智子……49

 

【特集2】官報電子化法・法制事務のデジタル化

◇官報の発行に関する法律の解説…田中裕太郎……56

 

◇官報電子化法の理論的意義…原田大樹……62

 

◇法制事務のデジタル化の到達点と展望…米田憲市……69

 

コメント

参考になりました。

 

インサイダー取引に係る「当該契約の履行に関し知ったとき」

 

最3小決平成15年12月3日裁判集刑事284号517頁 判例タイムズ1141号150頁 判例時報1845号147頁 金融法務事情1708号43頁  『金融商品取引法判例百選』57事件

証券取引法違反被告事件   

【判示事項】 インサイダー取引に係る「当該契約の履行に関し知ったとき」(平9法117号改正前証券取引法166条1項4号)に当たるとされた事例

【判決要旨】 非接触型ICカードの日本における独占的販売権を保有する甲会社が、日本証券業協会に登録している乙会社に対し、これを許諾する旨の契約を締結した後、甲の代表取締役が、同契約で予定されていたというべき乙との交渉を行う過程で、乙の代表取締役が両会社を合併する旨決定したとの事実を知ったなど判示の事情の下においては、甲の代表取締役が上記事実に関する情報を得たことは、平成9年法律第117号による改正前の証券取引法166条1項4号にいう「当該契約の履行に関し知ったとき」に当たる。

【参照条文】 証券取引法(平成九年法一一七号による改正前のもの)166-1

 

金融商品取引法

(会社関係者の禁止行為)

第百六十六条 次の各号に掲げる者(以下この条において「会社関係者」という。)であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実(当該上場会社等の子会社に係る会社関係者(当該上場会社等に係る会社関係者に該当する者を除く。)については、当該子会社の業務等に関する重要事実であつて、次項第五号から第八号までに規定するものに限る。以下同じ。)を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け、合併若しくは分割による承継(合併又は分割により承継させ、又は承継することをいう。)又はデリバティブ取引(以下この条、第百六十七条の二第一項、第百七十五条の二第一項及び第百九十七条の二第十四号において「売買等」という。)をしてはならない。当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知つた会社関係者であつて、当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後一年以内のものについても、同様とする。

一 当該上場会社等(当該上場会社等の親会社及び子会社並びに当該上場会社等が上場投資法人等である場合における当該上場会社等の資産運用会社及びその特定関係法人を含む。以下この項において同じ。)の役員(会計参与が法人であるときは、その社員)、代理人、使用人その他の従業者(以下この条及び次条において「役員等」という。) その者の職務に関し知つたとき。

二 当該上場会社等の会社法第四百三十三条第一項に定める権利を有する株主若しくは優先出資法に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者又は同条第三項に定める権利を有する社員(これらの株主、普通出資者又は社員が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条及び次条において同じ。)であるときはその役員等を、これらの株主、普通出資者又は社員が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 当該権利の行使に関し知つたとき。

二の二 当該上場会社等の投資主(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十六項に規定する投資主をいう。以下この号において同じ。)又は同法第百二十八条の三第二項において準用する会社法第四百三十三条第三項に定める権利を有する投資主(これらの投資主が法人であるときはその役員等を、これらの投資主が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 投資信託及び投資法人に関する法律第百二十八条の三第一項に定める権利又は同条第二項において準用する会社法第四百三十三条第三項に定める権利の行使に関し知つたとき。

三 当該上場会社等に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知つたとき。

四 当該上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)であつて、当該上場会社等の役員等以外のもの 当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知つたとき。

五 第二号、第二号の二又は前号に掲げる者であつて法人であるものの役員等(その者が役員等である当該法人の他の役員等が、それぞれ第二号、第二号の二又は前号に定めるところにより当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知つた場合におけるその者に限る。) その者の職務に関し知つたとき。

2 前項に規定する業務等に関する重要事実とは、次に掲げる事実(第一号、第二号、第五号、第六号、第九号、第十号、第十二号及び第十三号に掲げる事実にあつては、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準に該当するものを除く。)をいう。

一 当該上場会社等(上場投資法人等を除く。以下この号から第八号までにおいて同じ。)の業務執行を決定する機関が次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと。

イ 会社法第百九十九条第一項に規定する株式会社の発行する株式若しくはその処分する自己株式を引き受ける者(協同組織金融機関が発行する優先出資を引き受ける者を含む。)の募集(処分する自己株式を引き受ける者の募集をする場合にあつては、これに相当する外国の法令の規定(当該上場会社等が外国会社である場合に限る。以下この条において同じ。)によるものを含む。)又は同法第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権を引き受ける者の募集

ロ 資本金の額の減少

ハ 資本準備金又は利益準備金の額の減少

ニ 会社法第百五十六条第一項(同法第百六十三条及び第百六十五条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定(当該上場会社等が外国会社である場合に限る。以下この条において同じ。)による自己の株式の取得

ホ 株式無償割当て又は新株予約権無償割当て

ヘ 株式(優先出資法に規定する優先出資を含む。)の分割

ト 剰余金の配当

チ 株式交換

リ 株式移転

ヌ 株式交付

ル 合併

ヲ 会社の分割

ワ 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け

カ 解散(合併による解散を除く。)

ヨ 新製品又は新技術の企業化

タ 業務上の提携その他のイからヨまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項

二 当該上場会社等に次に掲げる事実が発生したこと。

イ 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害

ロ 主要株主の異動

ハ 特定有価証券又は特定有価証券に係るオプションの上場の廃止又は登録の取消しの原因となる事実

ニ イからハまでに掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実

三 当該上場会社等の売上高、経常利益若しくは純利益(以下この条において「売上高等」という。)若しくは第一号トに規定する配当又は当該上場会社等の属する企業集団の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)に比較して当該上場会社等が新たに算出した予想値又は当事業年度の決算において差異(投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当するものに限る。)が生じたこと。

四 前三号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの

五 当該上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関が当該子会社について次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと。

イ 株式交換

ロ 株式移転

ハ 株式交付

ニ 合併

ホ 会社の分割

ヘ 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け

ト 解散(合併による解散を除く。)

チ 新製品又は新技術の企業化

リ 業務上の提携その他のイからチまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項

六 当該上場会社等の子会社に次に掲げる事実が発生したこと。

イ 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害

ロ イに掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実

七 当該上場会社等の子会社(第二条第一項第五号、第七号又は第九号に掲げる有価証券で金融商品取引所に上場されているものの発行者その他の内閣府令で定めるものに限る。)の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)に比較して当該子会社が新たに算出した予想値又は当事業年度の決算において差異(投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当するものに限る。)が生じたこと。

八 前三号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の子会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの

九 当該上場会社等(上場投資法人等に限る。次号から第十四号までにおいて同じ。)の業務執行を決定する機関が次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと。

イ 資産の運用に係る委託契約の締結又はその解約

ロ 投資信託及び投資法人に関する法律第八十二条第一項に規定する投資法人の発行する投資口を引き受ける者の募集

ハ 投資信託及び投資法人に関する法律第八十条の二第一項(同法第八十条の五第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による自己の投資口の取得

ニ 投資信託及び投資法人に関する法律第八十八条の十三に規定する新投資口予約権無償割当て

ホ 投資口の分割

ヘ 金銭の分配

ト 合併

チ 解散(合併による解散を除く。)

リ イからチまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項

十 当該上場会社等に次に掲げる事実が発生したこと。

イ 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害

ロ 特定有価証券又は特定有価証券に係るオプションの上場の廃止又は登録の取消しの原因となる事実

ハ イ又はロに掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実

十一 当該上場会社等の営業収益、経常利益若しくは純利益(第四項第二号において「営業収益等」という。)又は第九号ヘに規定する分配について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前営業期間(投資信託及び投資法人に関する法律第百二十九条第二項に規定する営業期間をいう。以下この号において同じ。)の実績値)に比較して当該上場会社等が新たに算出した予想値又は当営業期間の決算において差異(投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当するものに限る。)が生じたこと。

十二 当該上場会社等の資産運用会社の業務執行を決定する機関が当該資産運用会社について次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと。

イ 当該上場会社等から委託を受けて行う資産の運用であつて、当該上場会社等による特定資産(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第一項に規定する特定資産をいう。第五項第二号において同じ。)の取得若しくは譲渡又は貸借が行われることとなるもの

ロ 当該上場会社等と締結した資産の運用に係る委託契約の解約

ハ 株式交換

ニ 株式移転

ホ 株式交付

ヘ 合併

ト 解散(合併による解散を除く。)

チ イからトまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項

十三 当該上場会社等の資産運用会社に次に掲げる事実が発生したこと。

イ 第五十二条第一項の規定による第二十九条の登録の取消し、同項の規定による当該上場会社等の委託を受けて行う資産の運用に係る業務の停止の処分その他これらに準ずる行政庁による法令に基づく処分

ロ 特定関係法人の異動

ハ 主要株主の異動

ニ イからハまでに掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実

十四 第九号から前号までに掲げる事実を除き、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの

3 会社関係者(第一項後段に規定する者を含む。以下この項において同じ。)から当該会社関係者が第一項各号に定めるところにより知つた同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者(同項各号に掲げる者であつて、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知つたものを除く。)又は職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない。

4 第一項、第二項第一号、第三号、第五号、第七号、第九号、第十一号及び第十二号並びに前項の公表がされたとは、次の各号に掲げる事項について、それぞれ当該各号に定める者により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと又は当該各号に定める者が提出した第二十五条第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)に規定する書類(同項第九号に掲げる書類を除く。)にこれらの事項が記載されている場合において、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されたことをいう。

一 上場会社等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実であつて第二項第一号から第八号までに規定するもの、上場会社等(上場投資法人等を除く。以下この号において同じ。)の業務執行を決定する機関の決定、上場会社等の売上高等若しくは同項第一号トに規定する配当、上場会社等の属する企業集団の売上高等、上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関の決定又は上場会社等の子会社の売上高等 当該上場会社等又は当該上場会社等の子会社(子会社については、当該子会社の第一項に規定する業務等に関する重要事実、当該子会社の業務執行を決定する機関の決定又は当該子会社の売上高等に限る。)

二 上場投資法人等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実であつて第二項第九号若しくは第十一号に規定するもの、上場投資法人等の業務執行を決定する機関の決定又は上場投資法人等の営業収益等若しくは同項第九号ヘに規定する分配 当該上場投資法人等

三 上場投資法人等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実であつて第二項第十二号に規定するもの又は上場投資法人等の資産運用会社の業務執行を決定する機関の決定 当該上場投資法人等の資産運用会社

四 上場投資法人等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実であつて第二項第十号、第十三号又は第十四号に規定するもの 当該上場投資法人等又は当該上場投資法人等の資産運用会社

5 第一項及び次条において「親会社」とは、他の会社(協同組織金融機関を含む。以下この項において同じ。)を支配する会社として政令で定めるものをいい、この条において「子会社」とは、他の会社が提出した第五条第一項の規定による届出書、第二十四条第一項の規定による有価証券報告書若しくは第二十四条の五第一項の規定による半期報告書で第二十五条第一項の規定により公衆の縦覧に供されたもの、第二十七条の三十一第二項の規定により公表した特定証券情報又は第二十七条の三十二第一項若しくは第二項の規定により公表した発行者情報のうち、直近のものにおいて、当該他の会社の属する企業集団に属する会社として記載され、又は記録されたものをいい、第一項及び第二項において「特定関係法人」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

一 上場投資法人等の資産運用会社を支配する会社として政令で定めるもの

二 上場投資法人等の資産運用会社の利害関係人等(投資信託及び投資法人に関する法律第二百一条第一項に規定する利害関係人等をいう。)のうち、当該資産運用会社が当該上場投資法人等の委託を受けて行う運用の対象となる特定資産の価値に重大な影響を及ぼす取引を行い、又は行つた法人として政令で定めるもの

6 第一項及び第三項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 会社法第二百二条第一項第一号に規定する権利(優先出資法に規定する優先出資の割当てを受ける権利を含む。)を有する者が当該権利を行使することにより株券(優先出資法に規定する優先出資証券を含む。)を取得する場合

二 新株予約権等(新株予約権又は投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十七項に規定する新投資口予約権をいう。)を有する者が当該新株予約権等を行使することにより株券又は第二条第一項第十一号に規定する投資証券を取得する場合

二の二 特定有価証券等に係るオプションを取得している者が当該オプションを行使することにより特定有価証券等に係る売買等をする場合

三 会社法第百十六条第一項、第百八十二条の四第一項、第四百六十九条第一項、第七百八十五条第一項、第七百九十七条第一項、第八百六条第一項若しくは第八百十六条の六第一項の規定による株式の買取りの請求若しくは投資信託及び投資法人に関する法律第百四十一条第一項、第百四十九条の三第一項、第百四十九条の八第一項若しくは第百四十九条の十三第一項の規定による投資口の買取りの請求又は法令上の義務に基づき売買等をする場合

四 当該上場会社等の株券等(第二十七条の二第一項に規定する株券等をいう。)に係る同項に規定する公開買付け(同項本文の規定の適用を受ける場合に限る。)又はこれに準ずる行為として政令で定めるものに対抗するため当該上場会社等の取締役会(これに相当するものとして政令で定める機関を含む。次条第五項第五号において同じ。)が決定した要請(監査等委員会設置会社にあつては会社法第三百九十九条の十三第五項の規定による取締役会の決議による委任又は同条第六項の規定による定款の定めに基づく取締役会の決議による委任に基づいて取締役の決定した要請を含み、指名委員会等設置会社にあつては同法第四百十六条第四項の規定による取締役会の決議による委任に基づいて執行役の決定した要請を含む。)に基づいて、当該上場会社等の特定有価証券等又は特定有価証券等の売買に係るオプション(当該オプションの行使により当該行使をした者が当該オプションに係る特定有価証券等の売買において買主としての地位を取得するものに限る。)の買付け(オプションにあつては、取得をいう。次号において同じ。)その他の有償の譲受けをする場合

四の二 会社法第百五十六条第一項(同法第百六十三条及び第百六十五条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定若しくは投資信託及び投資法人に関する法律第八十条の二第一項(同法第八十条の五第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定による自己の株式等(株式又は投資口をいう。以下この号において同じ。)の取得についての当該上場会社等の会社法第百五十六条第一項の規定による株主総会若しくは取締役会の決議(監査等委員会設置会社にあつては同法第三百九十九条の十三第五項の規定による取締役会の決議による委任又は同条第六項の規定による定款の定めに基づく取締役会の決議による委任に基づく取締役の決定を含み、指名委員会等設置会社にあつては同法第四百十六条第四項の規定による取締役会の決議による委任に基づく執行役の決定を含む。)(同法第百五十六条第一項各号に掲げる事項に係るものに限る。)若しくは投資信託及び投資法人に関する法律第八十条の二第三項の規定による役員会の決議(同条第一項各号に掲げる事項に係るものに限る。)又はこれらに相当する外国の法令の規定に基づいて行う決議等(以下この号において「株主総会決議等」という。)について第一項に規定する公表(当該株主総会決議等の内容が当該上場会社等の業務執行を決定する機関の決定と同一の内容であり、かつ、当該株主総会決議等の前に当該決定について同項に規定する公表がされている場合の当該公表を含む。)がされた後、当該株主総会決議等に基づいて当該自己の株式等に係る株券若しくは株券に係る権利を表示する第二条第一項第二十号に掲げる有価証券その他の政令で定める有価証券(以下この号において「株券等」という。)又は株券等の売買に係るオプション(当該オプションの行使により当該行使をした者が当該オプションに係る株券等の売買において買主としての地位を取得するものに限る。以下この号において同じ。)の買付けをする場合(当該自己の株式等の取得についての当該上場会社等の業務執行を決定する機関の決定以外の第一項に規定する業務等に関する重要事実について、同項に規定する公表がされていない場合(当該自己の株式等の取得以外の会社法第百五十六条第一項の規定若しくは投資信託及び投資法人に関する法律第八十条の二第一項の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定による自己の株式等の取得について、この号の規定に基づいて当該自己の株式等に係る株券等又は株券等の売買に係るオプションの買付けをする場合を除く。)を除く。)

五 第百五十九条第三項の政令で定めるところにより売買等をする場合

六 社債券(新株予約権付社債券を除く。)、第二条第一項第十一号に規定する投資法人債券その他の政令で定める有価証券に係る売買等をする場合(内閣府令で定める場合を除く。)

七 第一項に規定する業務等に関する重要事実を知つた者が当該業務等に関する重要事実を知つている者との間において、売買等を取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場によらないでする場合(当該売買等をする者の双方において、当該売買等に係る特定有価証券等について、更に同項又は第三項の規定に違反して売買等が行われることとなることを知つている場合を除く。)

八 合併、分割又は事業の全部若しくは一部の譲渡若しくは譲受け(以下この項及び次条第五項において「合併等」という。)により特定有価証券等を承継させ、又は承継する場合であつて、当該特定有価証券等の帳簿価額の当該合併等により承継される資産の帳簿価額の合計額に占める割合が特に低い割合として内閣府令で定める割合未満であるとき。

九 合併等の契約(新設分割にあつては、新設分割計画)の内容の決定についての取締役会の決議が上場会社等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実を知る前にされた場合において、当該決議に基づいて当該合併等により当該上場会社等の特定有価証券等を承継させ、又は承継するとき。

十 新設分割(他の会社と共同してするものを除く。)により新設分割設立会社(会社法第七百六十三条第一項に規定する新設分割設立会社をいう。次条第五項第十二号において同じ。)に特定有価証券等を承継させる場合

十一 合併等、株式交換又は株式交付に際して当該合併等、株式交換又は株式交付の当事者である上場会社等が有する当該上場会社等の特定有価証券等を交付し、又は当該特定有価証券等の交付を受ける場合

十二 上場会社等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実を知る前に締結された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等に関する契約の履行又は上場会社等に係る同項に規定する業務等に関する重要事実を知る前に決定された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等の計画の実行として売買等をする場合その他これに準ずる特別の事情に基づく売買等であることが明らかな売買等をする場合(内閣府令で定める場合に限る。)

 

ポポロ事件

 

最大判昭和38年5月22日刑集17巻4号370頁 判例タイムズ145号209頁 判例時報335号5頁

暴力行為等処罰ニ関スル法律違反被告事件

【判示事項】 1 憲法第23条の趣旨

2 大学における学生の集会が、実社会の政治的社会的活動に当る行為をする場合に、大学の学問の自由と自治を享有するか

【参照条文】 憲法23

       学校教育法52 

 

憲法

第二十三条 学問の自由は、これを保障する。

 

学校教育法

第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

② 大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

 

航空機燃料輸送用パイプラインの埋設工事において使用された土壌凝固剤により付近の井戸水を汚染する蓋然性が認められないとした事例

千葉地方裁判所決定/昭和49年(ヨ)第170号、昭和49年(ヨ)第198号
昭和50年1月11日
土壌撤去等仮処分各申請事件
【判示事項】    航空機燃料輸送用パイプラインの埋設工事において使用された土壌凝固剤により付近の井戸水を汚染する蓋然性が認められないとした事例
【参照条文】    民事訴訟法760
【掲載誌】     下級裁判所民事裁判例集26巻1~4号1頁
          訟務月報21巻1号27頁
          判例タイムズ316号126頁
          判例時報769号26頁
 

第7章 法令上の制限

 

1 都市計画法

 

東京地判昭和48年3月23日判タ295号279頁

宅地建物取引業者が目的物件に都市計画法上の制限あることを調査説明しなかったため、債務不履行ありとして、その報酬請求が棄却された事例

 大橋は宅地建物取引業者(日商)に土地の買受あっせん方を依頼したところ、業者の調査不充分のため、当該土地の一部が都市計画上道路用地として買収され、交通量がある程度増加をみるべきことを知らず、その土地を買い受けた。

 大橋は買受後右土地にさような制限あることを知りこれを転売してしまった。

 大橋にしてみれば日商が調査説明をしてくれればこの制限を知りえて土地を買い受けなかったであろうとして仲立報酬の支払を拒み、かつ調査義務不履行による損害賠償として登録免許税、農地転用許可申請、国定資産税、不動産取得税相当額を請求した。

  宅地建物売買仲立業者は行政取締法上目的物件につき都市計画上の制限を書面で説明する義務を負っている(宅地建物取引業法35条、旧法では14号の3)。

この説明義務不履行により売買成立し、もし履行があれば売買不成立という事案であるから、このような場合、仲立報酬債権は成立しないと判定された。

 

東京地判昭和54年10月30日金判587号40頁

宅地建物取引業者は、委託者(買主)が買受農地を宅地化し転売する目的であることを知って売買の仲介をするにあたっては、特段の事情のないかぎり、右土地が市街化調整区域に含まれる可能性の有無を調査し、これを委託者に告知する業務上の義務があるのに、過失によってこれを怠り、そのため委託者が損害を被ったとき、その損害を賠償する義務がある。

Xは、宅地建物取引業者Yらの仲介により、Aから農地(田)を宅地化し転売する目的で、農地法5条の許可を条件として買い受けた。ところが、その後、右土地が市街化調整区域に含まれることになり、開発行為はもとより建築物の新築等についても都市計画法による制限が加えられ、Xが右土地を宅地化し転売するという買受目的を達成することは事実上不可能となった。そこで、Xは、Aとの売買契約を合意解除するとともに、Yらは、仲介当時、右土地が市街化調整区域に指定される可能性があるという重要な事項について、故意または過失により調査報告しなかったため、Xが不測の損害を被ったと主張し、Yらを相手方として、売買代金を他から借受けたため支払った利息相当額の損害賠償を求める本訴を提起した。本判決は、宅地建物取引業者であるYらは、Xの土地買受けの意図を十分承知していたのであるから、売買の仲介を行うにあたっては、その土地が市街化調整区域に含まれる可能性があるか否かを事前に調査し、その可能性があるときは委託者たるXに報告する義務があり、その調査は容易に行えたのに、Yらが過失によりこれを怠り、その可能性の事実を調査・報告しなかったためXが損害を被ったのであるから、その損害を賠償する義務がある、と判示してXの主張を肯認した。

 

東京地判平成19年11月6日LLI/DB 判例秘書登載

契約の履行が原始的に不能のため契約が無効とされる場合、当事者の一方は、契約締結上、相手方の意思決定に影響を及ぼす事項に関する情報について、契約準備段階に入った当事者間に生じる信義誠実の原則に基づく説明、報告義務違反があるときは、契約締結上の過失として、これによって相手方が契約の効力が生ずるものと信じてなした、履行準備などに要した損害を賠償すべき義務があるとした事例

 ウ(ア) 原告は、平成13年6月27日、被告会社との間で、本件各土地が宅地造成建売分譲地として開発可能であることを前提として、仲介人をG及び株式会社Lとして、次の内容の本件売買契約書(甲4)に記名・押印した。なお、同契約書には、茨城県知事作成の平成3年9月11日付け本件開発許可書の写しが添付されている。

     ③ 本件約定  (特記事項、開発行為許可 条件)

               本件開発許可は被告会社名義で取得されているが、原告がこれを継承し権利者とする。

    (エ) 本件各土地の開発許可を所轄するN事務所は、現在に至るまで、本件指定以前に本件開発許可に基づく開発行為の着手があったことの確認ができていない。

     (オ) 本件各土地は、本件開発許可に基づく開発行為を前提にしなければ市場価値は乏しく、あえて現状で価格設定すると、約926万円ないし約1234万円程度と評価され、本件売買契約の代金5000万円とはかけ離れている。

       なお、本件各土地のうち、別紙物件目録6及び14並びに23ないし25の各土地については、現在も農地法5条所定の許可は得られてはいない。

  (3) 以上の諸事情を総合すると、被告会社は、平成6年3月10日までに本件各土地の開発行為に着手していなかったため、本件指定により、本件開発許可に基づいて開発行為をすることは不可能となり、また、被告会社から第三者に対する本件開発許可の継承も不可能に至ったから、平成13年6月27日の本件売買契約締結当時、既に本件約定を履行することは不能であり、社会の取引観念上も本件各土地を宅地造成建売分譲地として開発することは客観的に不能であったので、本件売買契約は原始的不能であったというべきである。

  3 さらに、AがBに対し、平成13年5月24日、本件各土地は都市計画法に基づく開発許可を受けており宅地造成建売分譲地として開発でき、また、本件開発許可は今でも有効であると説明したことは、原告と被告会社との間では争いがない。

   (1) ところで、原告は、被告会社が、被告会社及びE名義の上記平成13年6月29日付け土地売買契約書(乙1)を作成して被告銀行に提示し、本件根抵当権設定登記の抹消登記手続をさせているので、本件売買契約の代金5000万円との差額3000万円を取得するために、本件各土地の価格が5000万円ではないことを知りながら、換言すれば、本件開発許可が失効していることを知りながら、本件売買契約を締結させたことが裏付けられる旨主張する。

    しかしながら、ア 被告銀行が本件各土地の任意売却に同意するか検討するに際して作成した平成13年6月15日付け事前協議書(乙11)には、本件各土地につき、「平成3年5月に宅地造成地として開発許可を取得しているが、開発計画が進展しない為、県より開発の取り下げを指導されている状況にある。当社の現状より開発工事を行うことは資金的にも困難であり、第三者への継承も認められないとのことから考え本件1括売却にて対応としたい。」との記載があること、イ 本件各土地の取引を原告に対し持ちかけたF及びAは、線引によって、それ以前に取得した県の開発許可が失効することはないのであるから、本件指定以前に本件開発許可に基づく開発行為に着手したか否かにかかわらず、本件開発許可が失効することはないはずであるとの理解をしていたこと、ウ 被告会社やF及びAが、本件指定による本件開発許可の失効を知っていたとすれば、本件各土地に対する本件根抵当権設定登記の抹消登記手続のための費用としてより低額にするため、本件開発許可が失効していることを被告銀行に説明した上、被告会社及びE名義の平成13年6月29日付け土地売買契約書(乙1)の代金額を更に低額に設定して提示をすることができたにもかかわらず、少なくとも被告会社やF及びAにおいては、本件各土地について開発行為を行うことが可能であるとの説明及び報告をなしていることが認められる。

     そうすると、被告会社ないしAにおいて本件開発許可が失効していることを認識していたとする原告の詐欺の主張は、その前提を欠くものであるから、上記甲16及び17の各記載部分並びに証人D及び原告代表者Bの各供述部分は、いずれも不自然であって採用することができない。他に、請求原因イ(オ)を認めるに足りる的確な証拠はない。

  

2 建築基準法

 

(1)建築基準法上の接道義務

 

東京地判昭和57年2月22日判タ482号112頁

不動産仲介業者の仲介により一旦売買契約が成立したが業者に重要事項告知義務違反がありこれに基因して売買契約が解除された場合に仲介報酬請求権を否定した事例

 本件は、不動産仲介業者であるXがY1(売主)Y2(買主)双方と報酬額の定めのある不動産仲介契約を締結し、Xの仲介によってY1Y2間に本件土地の売買契約が成立したとして仲介手数料の請求をした事案であるが、判示認定事実によれば、本件土地は道路側の擁壁に瑕疵があったり、その他手続上の問題から現状では直ちに住宅用建物を建築することは許可されず、これを整備するには莫大な費用を要するものであったところ、Y1はXに対しこれを現況のままで売却するよう依頼したのにもかかわらず、Xにおいて本件土地には建築基準法上の一般的な制限のほか特段の制限はないものと軽信し、住宅用土地としてこれをY2に紹介したうえ、本件土地には建ペい率のほか特段の制限はないから直ちにY2の望む建物の建築が可能である旨説明したため、これを信用したY2はXの仲介によりY1と売買契約を締結したが、その後、本件土地の右欠陥が判明し、所期の目的を達成することができないとして右売買契約を解除した(もつともその後のY1Y2間の交渉により合意解除としたうえ売買条件を異にして再度契約が締結された)というものである。

  本判決は、建物建築目的の宅地売買において仲介業者は、当該土地についての建築制限等の契約締結の際ネックとなる重要事項について調査し当事者に告知すべき義務があり、仲介業者に対する報酬は本来仲介業務の履行行為とその成果に対する対価であるから、右義務の不履行により売買契約に当初から内在する瑕疵を生じこれを理由に契約が解除されたような場合には右報酬請求権は発生しないと判示して、Xの請求をしりぞけた。

不動産仲介報酬請求権の発生要件は通常、(イ)業者が不動産仲介請求に基づき、(ロ)媒介行為をなし、(ハ)その媒介行為によって希望された契約が成立することといわれており(海老塚「宅地建物取引業者の不動産仲介による報酬請求権(上)」判タ272号46頁)、原則として売買等の契約成立後に売買当事者間の債務不履行あるいは手付放棄等による解除があっても仲介報酬請求権は消滅しないと解されている(最高1小判昭和45年2月26日民集24巻2号89頁、大阪高判昭和56年10月30日判タ457号99頁)。

しかしながら右(ロ)の要件は本判旨も言うように仲介契約の本旨に基づいた義務履行としての媒介行為でなければならないことは当然であり、軽微な義務違反はともかく、本件のように仲介業者の義務不履行があってはじめて売買契約が成立したと認められるような場合(義務不履行と契約成立との間に因果関係のある場合)にはそもそも右(ロ)(ハ)の要件が満たされていないと言うべきであって、本件のように右義務不履行を理由に契約が解除された場合はもちろん、さらにその後の事情変更等によりたまたま契約が維持されたような場合にもなお報酬請求権を否定すべきではなかろうか(東京地判昭和48年3月23日判タ295号279頁、東京地判昭和38年8月15日判タ154号70頁参照)。

そのように考えれば、本件でXを排除してY1Y2間のみにおいて成立した2度目の契約が仮に最初の契約と同一性あるものとしても同様の結論が導かれよう。

 

東京高判昭和57年4月28日判タ476号98頁

宅地建物取引業者の媒介にかかる土地売買取引において、目的土地が宅地達成等親制法による宅地達成工事規制区域に指定された土地であるに拘らず、宅地達成工事の完了、その検査済証の交付等がなされず、また、自的土地への進入路となっている公道が建築基準法42条1項所定の幅員基準に充たないものであり、右公道につき同条2項道路の指定がない場合、右取引業者がその従業員である取引主任者をして買主に対して、目的土地に関し、宅地達成等規制法及び建築基準法に基づく制限事項につきなんら説明させなかったときは、右業者は、過失をおかしたものであり、右過失によって買主が被った損害を賠償すべき不法行為責任を負う。

 

東京地判昭和59年12月26日判時1152号148頁

不動産仲介業者が、不動産の売買の仲介にあたり宅地造成に関する規制等についての調査義務を怠ったとしたが、依頼者たる買主が買受目的を達成できなかったのは買主の自招行為によるものとして、右仲介業者の損害賠償責任を認めなかった事例

 1 Xは、昭和54年12月、Y1会社の仲介により、訴外会社から、本件土地を建売住宅用地とする目的で買い受けたが、本件土地は建築基準法所定の接道義務を満たしておらず、また、宅地造成について町長の承認を受けることができなかったため、本件土地を造成したうえ、他に分譲、転売することができなくなった。

  そこで、Xは、不動産仲介者であるY1が善良な管理者の注意義務をもって接道義務を満たしているか否かを調査せず、かつ、宅地造成について町長の承認が必要であるなどの説明義務を尽さなかったとし、しかも代表者Y2にも代表取締役として職務を行うにつき重大な過失があったとして、Y1に対しては債務不履行に基づき、Y2に対しては商法266条の3に基づき、1400万円の損害賠償を請求したものである。

  2 これに対し、本判決は、本件土地は、接道義務の点においても、造成工事に関する行政指導の点からみても、宅地造成を完了して建売住宅用の建築確認を得ることができたかどうか疑問があったとしたうえ、Y1会社は、具体的に本件土地が行政指導の対象になるかどうかについて調査せず、かつ、本件土地が建築基準法所定の接道義務を満すものかどうかについて十分調査しなかったことを認めたが、不動産仲介業を営むX会社の代表者が町役場の職員に面接して、本件土地が行政指導の対象となること、1棟の家だけの建築であれば建築基準法の接道義務を満たすものであることの説明を受けながら、本件土地を7区画に造成したため、建築確認を得ることができなくなったのであるから、Y1会社の調査義務違反とXの被った損害との間に因果関係は認められないとし、Xの請求を棄却した。

本件では、不動産仲介業者に調査義務の懈怠があり、また、依頼者にも過失があったから、不動産仲介業者の損害賠償責任を認めたうえ、過失相殺により損害の公平な分担を図るという解決方法もとり得たようにも思われるが、本判決が不動産仲介業者の損害賠償責任を否定したのは、依頼者自身不動産仲介業を営んでいるということを重視したことによるものであろう。

 

東京地判平6年9月1日判時1533号60頁

建築基準法上の接道義務を満たさない宅地の売買につき、売主及び仲介業者の不法行為責任が認められた事例

(1) 仲介人被告杉坂建築事務所の代表取締役である被告本位田は、仲介人被告杉坂建築事務所の担当者として、原告に本件土地の説明をなすにあたり、信義誠実を旨とし、予め本件土地の範囲やその接道状況等について十分に調査し、本件土地に本件赤色部分が含まれていないこと、したがって本件土地の公道に接する幅(間口)は一・二三メートルであること、本件土地と本件赤色部分とを一体としてみても本件路地状部分の最狭部分は約一・五七メートルないし約一・六五メートルにすぎないこと、したがって、本件土地のみを申請敷地とした場合はもちろんのこと、本件土地と本件九六八番四三の土地とを申請敷地としたとしても本件土地上に適法に建物を建てることはかなり困難であること、等の真実を原告に説明すべき業務上の注意義務があったのに(けだし、仲介人が会社組織である場合には、依頼者はその担当者個人に対して信頼をおくものだからである。)、これを怠り、原告に、本件土地の範囲が本件斜線部分と本件赤色部分とであり、したがってその公道に接する幅(間口)は1・83メートルであること、本件路地状部分の最狭部分も1・8メートルであること、本件土地上に建物を適法に建てることは可能であること、等の誤った説明をして、原告をしてその旨誤信させ、その誤信に基づいて本件売買契約を締結させるに至らしめたものであるから、被告本位田には右注意義務に違反する過失行為(不法行為)があったことは明らかであり、被告本位田は、民法七〇九条により、本件売買契約の締結により原告が被った損害を賠償すべき義務がある。

  (2) また、被告杉坂建築事務所は、被告本位田の右不法行為が被告杉坂建築事務所の職務の執行につきなされたものであるから、民法四四条により、原告の被った損害を賠償すべき義務がある。

  (二) 被告臼井及び被告ケーディエスの責任

   (1) 売主被告ケーディエスの代表取締役であった被告臼井は、たとえ、被告杉坂建築事務所に本件土地の売却の仲介を依頼しており、本件土地に本件赤色部分が含まれていないことを示す地積測量図や公図の各写等を被告杉坂建築事務所に交付していたとしても、本件土地はその公道に接する部分がわずかに一・二三メートルであり、本件土地のみを申請敷地とした場合には本件土地上に適法に建物を建てることはほとんど不可能であったのであるから、しかも、原告に交付された前記重要事項説明書にはその「敷地等と道路との関係」欄になんらの記載もなく、図面の添付もなく、前記西川豊和もなんら説明をしなかったのであるから、本件売買契約に立ち合った売主の担当者として、本件売買契約の締結に先立ち、右のような土地をあえて買おうとする原告に対して、果たしてその認識に誤りがないかどうかを自ら確認すべき注意義務があったものというべきである。

 しかるに、被告臼井は、これを怠り、前記認定のとおり、被告本位田または被告杉坂建築事務所から原告に対して、本件土地に本件赤色部分が含まれていないこと、したがって本件土地の公道に接する幅(間口)が一・二三メートルであること、本件土地のみを申請敷地とすれば本件土地上に建物を適法に建築することはほとんど不可能であるが、本件土地と本件九六八番四三の土地とを一体として申請敷地とすれば本件土地上に建物を適法に建築することは可能であろうこと、等は既に説明されているものと考え、本件売買契約締結の際に原告に対してなんら説明及び確認をしなかったのであるから、被告臼井には右注意義務に違反した過失行為(不法行為)があったものといわざるを得ず、被告臼井は、民法709条により、本件売買契約の締結により原告が被った損害を賠償すべき義務があるものというべきである。

  (2) 被告ケーディエスも、被告臼井の右不法行為が被告ケーディエスの職務の執行につきなされたものであるから、民法四四条により、原告の被った損害を賠償すべき義務がある。

 

東京地判平成6年9月25日判時1533号64頁

不動産仲介業者の媒介により売買契約が成立した業者の義務不履行に基因して売買契約が解除された場合に、一般論として仲介報酬は請求しえないとしながら、義務不履行の事実がないとして請求が認容された事例

 なるほど、本件売買の対象土地は、旧6871番50の土地の一部約281平方メートルとされており、被告に所有権移転登記をするためには分筆することが必要であり、《証拠略》によれば、当初の分筆による6871番122の土地は、一見するとあたかも袋地であるかのようにみえる。しかしながら《証拠略》によれば、本件売買は、井上が現に建物を建てて居住していた土地を現地で見分し、本件道路に接する敷地部分を買ったものであり、本件道路との境には目印として私石があったこと、そして、本件土地については昭和58年12月2日付で現況測量図も作成されていること、そこで、これらを参考にして本件契約書添付の図面による本件土地を分筆すると、6871番122の土地のように分筆すべきこととなることがそれぞれ認められる。右のように分筆すると、その西辺との間に土地が余り、図面上は一見すると袋地のようにみえ、《証拠略》によれば、被告は右分筆図面を見て、これでは袋地になるとして問題にしたため、伊東は、右分筆をした立林土地家屋調査士と相談し、井上と交渉してさらに旧6871番50の土地の西辺1杯までを同番123の土地として分筆し、無償で被告に譲渡することとし、その旨8月20日に被告に報告したことが認められるが、本件土地付近はもともと公図が現況と1致していないのであり、道路自体が表示されていないのであるから、分筆図面をみただけで袋地云々をいうことはできないものであり(《証拠略》によれば、旧6871番50の土地は6803番305、同66の土地と接して表示されており、《証拠略》によれば、これらは民有地であることが認められるから、これらに接するように分筆したからといって公図上公の道路に接することとなるものではない。)、本件土地を6871番122の土地としてした分筆は誤りとはいいがたく、土地引渡の期限である8月31日までに6871番123の土地が分筆されていなかったからといって、誤った分筆しかできていなかったとは断じがたい。のみならず、仮に被告が主張するように、6871番123の土地の分筆が必要であったとしても、《証拠略》によれば、伊東は前記のように無償譲渡を受けたことを被告に対して報告して、仮に登記が8月31日までに間に合わなくても必ず分筆、移転登記する旨確約し、現に右分筆は9月3日には完了していることが認められ(なお、被告は、これら6871番123、同番123の土地の分筆は、本件土地に接する本件道路の所有者である藤沢市の立会いを経ない違法なものであると主張するが、《証拠略》によれば、これらの分筆は現に受け付けられ、その後登記所は、右分筆を前提にして公図の訂正の申立てをさせたことが認められ、登記所や藤沢市でもことさらこれを問題としようとはしていないことが窺われるから、右手続の適法性自体を本件で問題にする必要はない。)、さらに、《証拠略》によれば、伊東は、被告の要望により本件道路が藤沢市の認定道路であることの証明を8月29日及び9月6日に得ていることが認められるのである。右分筆及び認定道路の証明の日の一部は確かに支払期限である8月31日を過ぎてはいるが、《証拠略》によれば、被告は、同じく本件道路に面した谷口方で建築確認を得ることができたことを知らされていたこと、井上と被告との間で残代金の請求等のやりとりがされ、本件合意解除に至ったのは、平成3年10月以降であり、それまで被告において右分筆登記の遅れ等を問題にしたことはなかったことが認められることを総合すると、前記分筆の遅れ等が本件の合意解除につながったものとは考えがたい。

  (3) 被告は、右接道義務に関し、伊東は、本件道路の法的性格、所有関係、地番等につき説明せず、これが、接道義務の充足の有無、分筆手続の要否、官民査定の要否についての紛争を発生させた大きな要因となったもので重要事項説明義務に違反していると主張する。

 しかしながら、《証拠略》によれば、伊東は、本件売買成立前に被告を現地に案内し、現に本件土地に接している本件道路は、「市道277号線」で建築基準法42条2項道路であり、セットバックすれば建物は問題なく建てられることを説明したことが認められるし、また、《証拠略》によれば、伊東は、本件売買成立後ではあるが、残代金決済に至る間も、被告の問い合わせに対し、本件道路は公図上は現れていないので地番はないこと、本件道路は「藤沢市道277号線」で市道であること、近隣の家も公図上は接道していないが建築確認上本件道路を使用していることを説明したことが認められ、重要事項の説明義務違反があったとは認められない。

 (4) 被告は、また、伊東は官民未査定のまま代金決済をするか否か説明せず、重要事項説明義務に違反したと主張する。

 しかしながら、右事項が宅地建物取引業法35条により説明することが法律上要求される重要事項であるとは解しがたいのみならず、《証拠略》によれば、本件売買契約書では、売主は残代金支払い期日までに資格ある者の測量による図面を交付しなければならないこととされ、その図面は、「現況測量図(官民未査定)とされていること、この点も売買契約締結時に伊東から被告に対し説明し、官民査定をすることなく代金決済することを説明していることがそれぞれ認められるから、被告の主張は理由がない。

3(1) 次に、被告は、本件土地付近は公図と現況の不1致があり、土地自体瑕疵があり、さらに伊東は、本件道路が公図に載っていないことなどにつき具体的に説明をしなかった説明義務違反があると主張する。

  (2) 土地の売買その他の場面において公図ができるだけ現地に1致していることが望ましいことは確かである。しかしながら、公図と現況が1致していないことはままあることであり、それ自体土地の瑕疵であって、当該土地取引を仲介することが許されないということにならないことはむしろ当然といえよう。

  (3) また、《証拠略》によれば、伊東は、平成3年3月3日被告に対し現地で本件土地の説明をしたときや、同年4月26日被告宅に売買契約書案、重要事項説明書案、本件土地付近の公図等を持っていった際に、本件土地付近では公図と現況が異なっており、公図には本件道路は表示されていないが、売買は、実際の測量図に基づいてすることなどを説明したことが認められるから、具体的な説明をしなかったとの被告の主張は失当である。

 

東京地判平成9年12月25日判タ988号200頁

土地建物の売買契約において接面道路が私道であり、道路敷地所有者全員の承諾に基づく道路協定が成立していなかったとしても、それが隠れた瑕疵に当たらず、売主側に売買契約の付随義務としての告知義務もあるとはいえないとされた事例

 Xら2名はY1及びY2から土地と建物(但し、Xらにおいて取り壊す予定)を6480万円で買い受ける契約を締結し、手付金として600万円を支払った。

 同契約を締結するについて買主側の仲介業者としてY3、売主側の仲介業者としてY4が関与した。

 XらはYらに対する訴状により本件売買契約には隠れた瑕疵があったと主張して契約解除の意思表示をし、Y1及びY2に対して手付金返還及びこれと同額の違約金の支払を求めた。

 Xらは、隠れた瑕疵として、本件契約においては本件土地に自動車2台分の地下車庫が築造可能であり、南側に緑を1望できるとの条件が付されていたのにこの条件を満たしていないこと、本件土地には除去解体に多額の費用のかかる浄化槽が埋設されていたこと、本件建物が建築確認を得ていなかったこと、本件土地の接面道路は私道であり、道路となる敷地の所有者全員の承諾に基づく通路協定が成立していなかったことをいうものである。

 XらのY3に対する請求は、媒介契約上の債務不履行ないし不法行為に基づき、Y4に対する請求は不法行為に基づき、いずれも手数料及び手付金相当金の支払を求めたものである。

  本判決は、Xらの主張をすべて排斥し、請求をすべて棄却した。

すなわち、本件土地は区画整理地区として計画決定された区域内にあるが、本件契約において地下に車庫が建築可能であることまたは南側に緑が1望できることが契約の内容になっていたとは認められないこと、浄化槽についてXらは埋設の事実を知っており、撤去費用をY1らに負担させたこと、本件建物が違法建築であるとは断定できないのみならず、Xらにおいて解体撤去する予定であったこと、道路となる敷地の所有者全員の承諾に基づく通路協定が成立していなくても、建築基準法43条1項但書の適用を受けられること(現にXらは1戸建ての住宅を新築するための建築確認を得た)から、本件契約に隠れた瑕疵はなく、Xら主張の債務不履行ないし不法行為は成り立たないというのである。

  本件は、土地建物の売買契約に隠れた瑕疵があった否かの事実認定が争われた事案であるが、私道について通路協定がなくても建築基準法43条1項但書の適用の認められる場合として5つの条件が示されている。

 

大阪高判平成11年9月30日判タ1042号168頁

適法な建築確認を受けておらず、建築基準法上の接道義務を満たさない土地建物の売買につき、本件建物は建築基準法違反の瑕疵があり、売主及び仲介業者の不法行為等の責任が認められた事例

 

奈良地葛城支判平成14年9月20日LLI/DB 判例秘書登載

建築基準法上の接道義務を満たしていないことは、本件土地建物の隠れたる瑕疵に該当するとして、原告は、売主の瑕疵担保責任(民法570条、566条1項)に基づき、売主に対し損害賠償の請求にとどまらず、解除も許されるとし、また、仲介業者に対しては、接道義務違反についての説明義務違反が仲介契約の債務不履行に当たるとして、損害賠償請求をみとめることができるとした事例

 

(2)建築基準法のほかの規制

 

東京高判昭和52年3月31日判タ355号283頁、

宅建業者を売主とする土地の売買契約につき、売主が宅建業法35条の説明義務をつくさなかった理由として、買主に、債務不履行による契約解除を認めた事例

X(原告、控訴人)は、建売住宅販売会社であるが、昭和48年2月10日宅建業者であるY1(被告、被控訴人)から、本件土地を、代金2200万円で、そのうち手附金は150万円とし、中間金250万円は同月21日に支払い、残金を同年3月20日登記手続及び引渡と引換に支払う約で買受ける契約を締結し、即日手附金150万円を支払った。

ところで、本件売買契約は、Y1会社の代表者であるY2(被告、被控訴人)が本件土地は3筆に分れているが所有者が1人であって問題なく、今日契約しないと他に売ってしまうなどと強引に誘引するのでY2の言を信用し、事前調査することなく締結したものであるが、その後調査してみると、本件土地には川崎市の市道部分が含まれていたり、他人所有の土地が含まれ、かつ他人所有の土地に根抵当権が設定されかつ処分禁止の仮処分がなされていることが判明した。

そこで、Xは、Y2に対し市有地の問題や仮処分の件など重要な事項について説明を求めたが、納得のゆくような誠実な説明が得られず、このような状態では、中間金を支払ったとしても、売買契約の履行に関し確実な履行を得られかどうか強く不信の念を持つに至ったので、Y1に宅建業法35条に規定する重要事項説明義務違反、不信行為があったとして、中間金の支払の提供することなく本件売買契約を解除し、Y1に対し違約金等の支払い、Y2に対し有限会社法30条ノ3による損害賠償、契約の際本件土地の実際上の所有者として立会ったY3(被告、被控訴人)に対して不法行為による損害賠償を請求したが、原審で敗訴したので、これを不服として控訴したのが、本件の事案である。

 

大阪高判昭和58年7月19日判時1099号59頁

宅地建物取引業者が、その媒介に係る土地売買の買主に対し、当該土地が建築規制を受ける土地であることを取引主任者をして説明させる義務を尽さなかった違法があり不法行為責任を負うとした事例

 

横浜地判平成9年5月26日判タ958号189頁

マンションの売買契約においてその一部が木造であったことが要素の錯誤に当たらないとしつつ、仲介業者に対し告知業務違反を理由に慰藉料50万円の損害賠償を命じた事例

 Xは、平成3年11月、Y3、Y4ほか1名から3DKの本件マンション(53・47平方メートル)を代金2750万円で買い受けた。

その際、仲介業者として買主側にY1、売主側にY2が立ち会った。

 本件マンションのうち洋室5・5畳は、ルーフバルコニーを利用して木造により増築されたものであり、Xもこれを見分の上買い入れ、増築登記も存在していた。

しかし、Xは本件増築部分が違法建築であることを知らずに契約したものであるから、右契約は要素の錯誤により無効であり、Yらの詐欺による意思表示として取り消し、共同不法行為として売買代金のほか、契約諸費用等の損害賠償を求めるとの訴えを提起し、予備的請求として、本件売買契約が有効であることを前提とし、不法行為に基づき本件売買代金と違法建築部分を除却した場合の現在の価格との差額の損害賠償等を求めた。

  本判決は、要素の錯誤の有無について、違法建築部分は些少とはいえないが、Xは木造の増築部分の存在を知って契約し、しかも、間取り、面積、交通の至便さに比して本件物件の価額が安いと判断して購入したこと、本件マンションは耐久性や使用上に問題はなく、引き続き3DKの住居として使用することができること、本件程度の違法部分があるからといって転売することができないとはいえないことを理由に、本件違法建築部分についてXの認識に齟齬があったとしても、これをもって本件売買契約を錯誤無効とすることはできないとし、詐欺の主張及び契約の無効を理由とする不法行為の主張を排斥した。

しかし、予備的請求の原因であるYらの告知義務については、そのうち買主側の仲介業者Y1について、木造増築部分は、当時の宅建業法上、重要事項説明の対象として法定されていないが、列挙事項以外のものでも当該取引において重要であると認められる事項については説明が義務付けられており、違法建築であることを告知しなかった点で不法行為となるとして、慰謝料として50万円の損害賠償のみを認め、その余のYらに対する請求は全部棄却した。

 

東京高判平成12年10月26日判時1739号53頁

不動産仲介業者は、建物建築を目的とした土地の売買を仲介する場合、建築基準法、県条例及び指導方針に基づく規制があることを買主に告知する義務があり、その説明を十分せず、また、一部にがけ地があるために買主の所期する土地利用ができないのにこれができるかのような誤解を生じさせる見積書を交付するなどして、買主に損害を与えたときは、善管注意義務違反に基づいて、買主に対し、その損害を賠償する義務を負う

 すなわち、前記認定のとおり、輝明は、本件売買契約の際の重要事項の説明に当たり、控訴人に対し、盛り土をする場合、宅地造成等規制法、同法施行令及び指導方針による規制がある旨の告知はしたものの、その具体的な説明を行わなかった。また、被控訴人らは、控訴人に対し、本件土地につき建築基準法、県条例及び指導方針に基づく規制があることを告知せず、本件土地にがけ部分があることによって、本件土地の東側部分の利用が大幅に制限されるか、東側境界付近に大規模で多額の費用を要する擁壁築造工事を施工する必要がある旨、また、盛り土をする場合の擁壁築造工事の必要性について具体的な説明をしなかった。かえって、被控訴人らは、擁壁設計案としては不完全で、かつ、誤解を与えるような本件概算見積書を格別の説明を加えることもなく交付して、控訴人に対し、本件土地東側の境界近くに擁壁を築造することができ、これによって本件土地の全体的な利用が可能であるかのような誤解を生じさせたものというべきである。

 したがって、被控訴人らには、本件仲介契約に基づく善管注意義務に違反する行為があったわけであるから、債務不履行により、控訴人が被った損害を賠償すべき義務があるというべきである。

 

3 自然公園法

 

東京地判昭和53年10月16日判時937号51頁

別荘建築を目的とする土地の売買につき、売主である宅地建物取引業者が右土地は自然公園法による国立公園内の特別地域及び文化財保護法による名勝に指定され、建築について制限がある事実を知りながらこれを買主に告知しなかったのは、民法96条の「詐欺」に当たるとされた事例

 

4 文化財保護法

 

大阪地判昭和43年6月3日判タ226号172頁

1、売買物件にかくれたる瑕疵(文化財保護法第57条の2所定の周知の埋蔵文化財包蔵地)が存した場合と、宅地建物取引業者がその業務遂行上つくすべき注意義務の範囲

しかして、本件山林の昭和四〇年五月二六日当時の写真であることに争いのない検甲第一号証によれば、羽曳野市には、清寧天皇陵、応神天皇陵、日本武尊白鳥陵等、有名な大規模の古墳が散在していることは明らかであるが、一方、〈証拠〉を総合すれば、本件山林は、約三七〇〇平方米(約一一○○坪)程度の広さを持つ雑木の密生した小高い丘の如き観を呈し、その周囲の半分は小さい池(周壕)によって取り囲まれ、残りの半分は、以前は本件山林を取り巻いていた周壕の一部であったものが、かなり以前に埋め立てられて、すでに田畑と化し、本件山林の周辺はすべて田畑であって、近くに人家も点在し、附近には舗装道路も通じており、本件山林は、規模も大きく、かつ、周壕もほぼ完全な形で残存している前記各古墳に比し、規模も小さく、周壕も半分しか残っておらず、古墳であることの標識もなく、その形状は前記のとおり小高い丘の如き観を呈していて、全体としてごくありふれた自然な地形と認められるのである。右認定の事実によれば、本件山林が古墳を包蔵していることは専門家でないかぎり、本件山林を目して、古墳ではないかとの疑いを抱くことは困難な地形であると認められるから、専門家でない被告大沢が、本件山林を古墳であると見抜けず、そのため大阪府教育委員会に対して、本件山林が古墳であるか否かの確認の措置をとらなかったとしても、業務上の注意義務の範囲を超えたものとして、それはやむを得なかったといわざるを得ず、従って被告大沢には、業務上の注意義務を怠った過失があるということはできない。

 

大阪高判平成7年11月21日判タ915号118頁

宅建業者には、取引対象土地が文化財保護法57条の2所定の周知の埋蔵文化財包蔵地に該当するか否かを調査説明する義務はないとされた事例

 そのうえ、本判決は(一)周知の埋蔵文化財包蔵地は、宅地建物取引業法35条1項2号、同法施行令3条28号の文言及びこれらの列挙条項の趣旨から明らかである。

 (二)Yとしては、宅地建物取引業者としての業務上、本件土地が埋蔵文化財包蔵地であることを予見せず、これを予見することも困難であった、(三)平成元年4月当時、取引対象土地が周知の埋蔵文化財包蔵地であるというだけで、宅地建物取引業者であるYに、調査説明義務があったとみるのは相当でない、と判断し、Yの損害賠償責任を否定して本訴請求を棄却した一審判決を支持して、控訴を棄却した。

 

5 森林法

 

最判昭和55年6月5日裁判集民事130号1頁

売主の委託を受けた宅地建物取引業者が宅地造成の目的でする山林の売買を仲介する場合において、買主に対して交付すべき物件説明書に森林法その他の法令に基づく制限の記載欄があり、かつ、目的たる山林が山間地に位置していて森林法による保安林の指定が推測されるなど、原判示の事実関係のもとでは、右山林の地目が保安林でなく、また現地に保安林指定の標識がないときであっても、右業者が所轄機関に照会して保安林指定の有無を調査しなかったことは、その過失であって、買主に対する不法行為責任を免れることができない。

1、Xは、昭和47年3月6日、売主の委託を受けた宅地建物取引業者Yの仲介により、山林2筆を宅地造成のうえ分譲する目的で買受け、造成工事を行い、分筆登記を経て分譲を開始した。

ところが一部を分譲が完了したのちである昭和48年12月ころ、1筆の山林の約半分が森林法25条によって保安林に指定されていることが判明し、県当局からも同法34条違反を理由にして造成地の原状回復を指示されたことから、Xは、造成した宅地を取壊し植林するなどの原状回復工事を行うとともに、譲受人に対しても売買代金を返還せざるをえなくなり、少なからぬ損害を被った。

  なお、前記山林は、山間地に位置しているが、登記簿上に保安林の表示がなく、また、現地にも保安林の標識はなかった。

  2、本件は、右のような事実関係のもとで、宅地建物取引業者であるYには、仲介物件たる山林について保安林指定の有無を県市等の機関に照会してまで調査する義務があるか、そして、右義務を怠ったことによってXに生じた損害の賠償責任があるか、をめぐって争われたものであるが、1、2審ともこれを積極に解し、本判決もこれを支持したものである。

  2審判決がYの調査義務ないし過失を認める根拠としたのは、Yは、免許を受けた宅地建物取引業者として取引の相手であるXに対して自己の過失により不測の損害を被らせないようにすべき業務上の注意義務があるところ、(イ)YがXに交付した物件説明書には都市計画法その他法令(森林法を含む)の制限内容を記入すべき余白空欄が設けられているのに右空欄には何らの記入もされていない、(ロ)本件山林は山間地に位置していて砂防法や森林法による指定の推測される土地である、(ハ)保安林指定の有無を確認するには所轄機関に照会することが確実かつ容易な手段であって、かかることは不動産取引業者として業務上一般に認識すべき事柄である、などの事情に鑑みれば、Yには業務上要求される注意義務を怠った過失があり、登記簿や現地の調査をしただけでは足りない、というのである。

 

6 行政指導

 

大阪高判昭和58年7月19日判タ512号137頁

宅地建物取引業者が、その媒介に係る土地売買の買主に対し、当該土地が建築規制を受ける土地であることを取引主任者をして説明させる義務を尽さなかった違法があり不法行為責任を負うとした事例

 

東京地判平成3年2月28日判時1405号60頁

本件建築規制は、本件土地の内約3分の1の範囲にまで及んでいたのであるから、原告の本件土地の買受目的からすれば、その存在は、売買契約を締結するについて重大な関わりを有することがらであったというべきである。

 他方、右買受目的を承知していた被告久峰は、本件建築規制の存在と内容を具体的に知り、関係図面も入手していたのであるから、売買契約の締結までに仲介の相手方である原告に対し右情報を提供することは極めて容易であったと認められる。しかるに、同被告は、原告へ関係図面が全て渡っていて、原告は本件建築規制を承知しているものと軽信し、少なくとも売買契約締結のため一同が参集した際、取引主任者をして原告に対し、これを説明することを怠った。

 また、原告の買受目的を承知していた被告岡一商事は、本件土地に河川拡幅計画が存在することを知っていたのであるから、その内谷及び建築に与える影響を自らあるいは、業者を通じる等して調査することはさほど困難ではなかったと認められる。しかるに、同被告は、これらは建物建築にさしたる支障のないものと軽信し、その内谷等を正確に調査することを怠り、その結果、取引主任者をして原告に対し、本件建築規制を説明することを怠った。

 被告らの右懈怠の結果、原告へ実際に伝えられた情報は、重要事項説明書の「補足資料参照のこと」「1級河川改修計画有り(拡幅)」との記載のみであって、原告の買受目的からすれば、契約締結の際の重要な事項に関する情報の提供としては極めて不十分なものとなった。

 もっとも、本件では買主である原告も宅建業者であるが、このことから直ちに、仲介業者のなすべき情報提供の程度が右の程度で足りるとか、それ以上を要求することが取引上無理であるとは認めることはできない。

 してみると、被告久峰は宅建業者として仲介の相手方に対し信義則上要求される説明義務に違反し、被告岡一商事は宅建業者が仲介の依頼者に対して仲介契約上要求される調査説明義務に違反したというべきである。

 なお、本件建築規制は法令上のものではなく行政指導による事実上のものではあったが、被告らは原告の本件土地取得の目的が3階建共同住宅の建築にあることを知っていたのであるから、これが行政指導による事実上のものであるというだけで右各議務を免れるものではないというべきである。

 また、本件建築規制によっても本件土地上にラフプランと同程度の規模の建物を建築すること自体は可能ではあったが、右建築規制はそれがない場合と比較し建物の建築位置、形状、間取り等に制約を加えるものであり、原告はこれが判明していれば本件売買契約を結ばなかったと認められるから、同程度の規模の建物の建築が可能であるというだけで被告らが右各義務を免れるものではないというべきである。従って、被告らは右各義務違反により原告が受けた損害を賠償すべきである。

 

東京地判平成9年1月28日判時1619号93頁

1 建替え目的の土地建物の売買契約において、売主側の不動産仲介業者が宅地の細分化防止に関する区の指導要綱の内容を説明しなかったこと等につき、売主の買主に対する説明義務違反が肯定された事例

2 右説明義務違反を理由とする売買契約の解除による手付金の返還、違約金の損害賠償請求が認められた事例

 

関連法人に対する額面金額(発行価額)を超えた新株払込みについて,当該超過部分は,対価がなく,後に生ずる有価証券売却益に見合う株式売却損を発生させ,法人税の課税を回避することを目的としたものであり,経済取引として十分に首肯し得る合理的理由もないから,「資産又は経済的利益の無償の供与」として,法人税法37条の寄附金に当たるとされた事例

 

 

              法人税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      福井地方裁判所/平成10年(行ウ)第12号

【判決日付】      平成13年1月17日

【判示事項】      関連法人に対する額面金額(発行価額)を超えた新株払込みについて,当該超過部分は,対価がなく,後に生ずる有価証券売却益に見合う株式売却損を発生させ,法人税の課税を回避することを目的としたものであり,経済取引として十分に首肯し得る合理的理由もないから,「資産又は経済的利益の無償の供与」として,法人税法37条の寄附金に当たるとされた事例

【判決要旨】      (1) 法人税法37条に定める寄附金の損金不算入制度の趣旨は、寄附金もまた法人の純資産の減少ではあるが、法人が支出した寄附金の金額が無条件で損金となるものとすると、その寄附金に対応する分だけ当該法人の納付すべき法人税額が減少し、その寄附金は国において負担したのと同様な結果になることから、これを排除することにあると解される。

             (2) 寄附金の意義について、法人税法37条6項は、「寄附金、拠出金、見舞金その他『いずれの名義をもってするかを問わず』、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」と規定しており、また同条7項は、「『実質的に』贈与又は無償の供与」と規定していることからすると、同条6項にいう「贈与又は無償の供与」とは、民法上の贈与である必要はなく、資産又は経済的利益を対価なく他に移転する行為であれば足りるというべきであるが、右「対価」の有無は、移転された資産又は経済的利益との金額的な評価、価額のみによって決するべきものではなく、当該取引に経済取引として十分に首肯し得る合理的理由がある場合には、実質的に右「対価」はあるというべきである。

             (3)~(9) 省略

【参照条文】      法人税法22-3

             法人税法37-2

             法人税法37-6

             法人税法37-7

【掲載誌】        訟務月報48巻6号1560頁

             税務訴訟資料250号順号8815

法人税法

第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

 

第四目 寄附金

(寄附金の損金不算入)

第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。

一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額

二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額

イ 広く一般に募集されること。

ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。

4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。

5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。

6 内国法人が特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とするために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、「)の額(第六項に規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭の額を含む。)」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続に関し必要な事項は、政令で定める。

7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。

9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。

10 税務署長は、第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第四項の規定を適用することができる。

11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。

12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 

 

 

【評釈論文】      訟務月報48巻6号182頁

             税務事例33巻8号9頁

             税理45巻13号224頁

             別冊ジュリスト178号116頁

 

 

              法人税更正処分等取消請求控訴

【事件番号】      名古屋高等裁判所金沢支部/平成13年(行コ)第4号

【判決日付】      平成14年5月15日

【判示事項】      1 控訴人が,法人税の確定申告に対する法人税更正処分には判断を誤った違法があり,同更正処分を前提とする過少申告加算税賦課処分及び重加算税賦課処分も違法であるとして,各処分の取消を請求した事案であり,原審は,控訴人の請求をいずれも棄却した。

             2 本件更正処分は適法であり,同処分を前提とする本件重加算税賦課処分及び本件過少申告加算税賦課処分も適法であって,控訴人の請求はいずれも理由がないとして,本件控訴を棄却した。

【判決要旨】      (1) 省略

             (2) 法人税法37条に定める寄附金の損金不算入制度の趣旨は、寄附金もまた法人の純資産の減少ではあるが、法人が支出した寄附金の金額が無条件で損金となるものとすると、その寄附金に対応する分だけ当該法人の納付すべき法人税額が減少し、その寄附金は国において負担したのと同様な結果になることから、これを排除することにあると解される。

             (3) 寄附金の意義について、法人税法37条6項は、「寄附金、拠出金、見舞金その他『いずれの名義をもってするかを問わず』、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」と規定しており、また同条7項は、「『実質的に』贈与又は無償の供与」と規定していることからすると、同条6項にいう「贈与又は無償の供与」とは、民法上の贈与である必要はなく、資産又は経済的利益を対価なく他に移転する行為であれば足りるというべきであるが、右「対価」の有無は、移転された資産又は経済的利益との金額的な評価、価額のみによって決するべきものではなく、当該取引に経済取引として十分に首肯し得る合理的理由がある場合には、実質的に右「対価」はあるというべきである。

             (4)~(10) 省略

             (11) 寄附金の損金不算入制度の趣旨並びに法人税法37条の規定の内容からすれば、法人税法37条の「寄附金」は、民法上の贈与に限らず、経済的にみて贈与と同視し得る資産の譲渡又は利益の供与であれば足りるというべきである。そして、ここにいう「経済的にみて贈与と同視し得る資産の譲渡又は利益の供与」とは、資産又は経済的利益を対価なく他に移転する場合であって、その行為について通常の経済取引として是認できる合理的理由が存在しないものを指すと解するのが相当である。

             (12)・(13) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料252号順号9121

             LLI/DB 判例秘書登載

法学教室 2024年6月号(No.525) ◆特集2 消えた法律

 

 

有斐閣

2024年05月28日 発売

定価  1,650円(本体 1,500円)

 

早いもので,2024年も半分が過ぎました。梅雨空の中,6月号をお届けします。

 

先月号から始まった基本七法特集は2番手の刑法にバトンがまわりました。特集1は「基本概念から学ぶ刑法」です。表題ご覧いただくと,よく見聞きする単語が並んでいると思います。特集タイトルのとおり,すべて刑法の重要な基本概念です。でも,その内容について,正確に理解できていますか? 基本的な事項ほど正確に,厳密に理解し,アウトプットできる能力が必要であるのは,すべての学問に共通ではないでしょうか。ぜひ,本特集で,日々の学習の足場をいっそう強固なものにしてください。

 

特集2は「消えた法律」。法律は,様々な歴史・経緯を経て「消える」ことがあります。いまある法も永続的なものではないかもしれず,いつかの未来では「こんな法律もあったのか」と驚きをもって受け止められる可能性もあります。いまが必ず正しいわけではない――そのこともあわせて考えてみていただけると幸いです。

 

今月号には時の問題「大麻の濫用防止と法規制」も掲載。大麻の問題は,想像以上に身近に潜んでいます。正しい知識こそが,自分と社会を守ることになるはずです。

 

 

◆特集2 消えた法律

1 法律の消え方…梶山知唯……40

 

2 個人化する優生思想――優生保護法下/後の日本社会…水林 翔……45

 

3 陪審法――日本の陪審制度の成立の背景と停止に至った要因…藤田政博……49

 

4 種子法の廃止と独自条例の登場――規制改革と地域に根ざした法政策の行方…斎藤 誠……54

 

コメント

参考になりました。

 

義務教育用の教科書代金返還等請求事件

憲法第26条第2項後段の「無償」の範囲

 

最高裁判所大法廷判決/昭和38年(オ)第361号

昭和39年2月26日

義務教育費負担請求事件

【判示事項】    義務教育用の教科書代金返還等請求事件

          憲法第26条第2項後段の「無償」の範囲

【判決要旨】    義務教育なるが故にすべての費用を無償とすべきいわれはなく、また、義務教育の無償ということは、その言葉の意味からしても、制度の沿革に徴しても、授業料不徴収の意義に用いられてきたのであり、これと別異に解すべき特段の事情もないから、憲法第26条第2項後段の「義務教育は、これを無償とする」との規定は、義務教育の提供については対価としての授業料を徴収しないという意味であって、そのほかに、教科書、学用品等教育に必要な一切の費用までこれを無償とする旨を定めたものではない。

【参照条文】    憲法26

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集18巻2号343頁

 

憲法

第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。