宅地建物取引業者の説明義務9 第8章 土壌汚染・地中埋設物・地盤 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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第8章 土壌汚染・地中埋設物・地盤

 

土壌汚染対策法と宅地建物取引業法

宅地建物取引業法35条1項2号には、土壌汚染対策法(土壌汚染対策法9条、12条1項及び3項)が含まれます。 

 環境問題が深刻となっているので、今後は、この説明義務が重要となるでしょう。

 

神戸地判昭和59年9月20日判タ541号180頁

鉄筋3階建の分譲マンションを建築する目的で買い受けた造成宅地の地中から、木片やビニール片等が大量に出てきて地耐力が弱いことが判明したため、基礎工法をベタ基礎工法から杭打工法に変更して建物を建築したという事案について、宅地といっても古いものから新しい埋立造成のものまで多種多様で、その土質・地盤の硬度も千差万別であり、その地上に建てられる建物の種類・規模・構造も種々様々であって、宅地の通常有すべき品質・性能を土質・地耐力等の観点のみから1律に画定することは困難であるから、建築基準法等によって許容される範囲の建物を通常用いられる工法により建築することが可能な土地である限り、一般の取引においては宅地としての性能に欠けるところはないと解するのが相当であるとして、瑕疵であることを否定した。

  本判決は、「その土地上に建物を建築するについて支障となる質・量の異物が地中に存在するために、その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合には、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の瑕疵になるものと解すべきである」とし、瑕疵の存在を認めた。

 右神戸地判とは結論を異にしているが、神戸地判の場合、10年近く以前に埋立により造成された宅地で、その後原告がこれを取得するまで何ら問題なく転々譲渡されてきており地上に鉄筋コンクリート造の建物も現存していたという事情から、埋立当時における造成工事の瑕疵が問題となるかは別として、少なくとも、取引上の宅地としては、瑕疵はなかったものとみるのが社会通念上公平と判断されたものであって、埋設物の種類等も違い、また杭打工法は予想できないほど異例な工法ではないとされているので、結局、本件とは事案を異にするというべきであろう。

 

横浜地判昭和60年2月27日判タ554号238頁、

建売住宅が地盤沈下により傾斜したことについて、売主および建築業者の損害賠償責任が認められた事例

 1 Xらは、昭和45年3月から8月にかけて、Y2から土地建物を買い受けたものであるが、昭和48年4月頃から右土地の地盤沈下と建物の傾斜がみられ、建物のドアの開閉ができなくなり、タイルや壁のひび割れが生じた。

そこで、Xらは、右宅地造成に不備があり、建物の基礎工事に手落ちがあったとし、これが売買契約時の瑕疵にあたるとして、売主のY2と右土地建物の造成建築業者のY1に対し損害賠償を請求したものである。

  これに対し、Yらは、建物が建築されて3年以上も経過した後に傾斜が始まっていること、右傾斜は埋立てをした隣接地の方向へ向かっていること、隣接地の埋立てを中止すると傾斜の進行も止ったことなどからすれば、建物の傾斜の原因は、隣地の埋立工事による盛土の圧力により土地の地盤の沈下をきたしたことによるものと考えるほかないとし、土地建物の瑕疵責任はないと主張した。

  2 本判決は、Xら所有の建物の傾斜の原因については、土地の地盤の軟弱性とかかる軟弱地盤上における建物建築に際してとるべき建築工法の過誤によるものと認め、右地盤沈下の原因について隣地の盛土の影響を全く否定し去ることはできないとしても、それをもって主たる原因と認めることはできないから、Xら購入の土地建物には売買契約時に隠れた瑕疵があったものと判断した。

そのうえ、本判決は、Y2に対しては売主の瑕疵担保責任として損害賠償責任を認めるとともに、建売住宅の施工・販売業者のY1についても、予め地盤の地質調査をすることなく、極めて短期間のうちに簡単な盛土工事を行い、かつ、有機質土層を破壊するような摩擦杭を打ち込んだ過失があったとして民法709条、716条但書による損害賠償責任を認めた。

  3 理論上の問題としては、建売住宅の施工・販売業者の民法709条、716条但書の不法行為責任を認めたことの当否があるが、建売住宅の瑕疵について施工業者の責任を認めた例としては珍しく、実務の参考となるものと思われる。

 

仙台地判平成4年4月8日判タ792号105頁

1 震度6の地震によって陥没するなどの被害のあった土地に「隠レタル瑕疵」がなかったとされた事例

本件宅地に耐震性の点からの瑕疵の存否は、従来発生した地震の回数、頻度、規模、程度のほか、時代ごとに法令上要求される地上地下構築物の所在場所、地質、地形、強度等の諸要素を考慮し、一般常識的見地から、少なくとも震度5程度の地震に対して安全性の有無を基準として判断するのが相当であると解する。

 しかるところ、前掲第1乃至第5及び第7に認定した事実関係によるとき、とりわけ、

  1 本件地震以前過去50年内に仙台市及びその周辺地域が影響を受けた公表震度5を記録する地震は、昭和8年3月3日の3陸沖地震、昭和11年11月3日の宮城県沖地震、昭和13年11月5日の福島県沖地震、昭和39年6月16日の新潟県沖地震の4回である。

  2 これに対し、本件地震は公表震度5であるものの、後の調査の結果、実際には、全般的に震度6とみなすのが妥当と考えられており、地震による加速度(ガル)は、仙台市の旧市街地で地盤の固い場所と考えられている所でも、地上1階地下1階において烈震の範囲を示すものとなっている。そのため、第1の2に認定したように仙台市の各所に甚大な損害が生じ、地下に施設されている水道・ガス管に破損が生じ、これの復旧に多くの日時を要したのであって、本件地震は過去50年間に起きた震度5といわれる地震と比較して、格段の差のある損害をもたらした。

  3 各原告の所有宅地は第一種住居専用地域で、地上建物は1、2階建の居宅または集合住宅であったが、原告がこれを取得後、その宅地に格別の異状がなかった(一部の原告の宅地の擁壁に崩落した個所があった等の瑕疵は認められるが、これを補修する程度で使用に支障はなかった)。また、本件地震前に発生した昭和39年6月16日の新潟県沖地震(震度5)、昭和53年2月20日の宮城県沖地震(震度4)による被害も報告されていない。

 との諸事実に鑑み、なお、本件各宅地の造成には宅造法の規制はなかったが、〈書証番号略〉に顕れた「1978宮城県沖地震調査委員会」の「緑ケ丘で発生した被害の多くは宅造法の技術基準に準拠していても防止できなかった可能性がある。」との指摘に照らしても、本件宅地に民法570条にいう隠れた瑕疵があったものと判断することはできず、このことから本件造成者が何人であったとしても、本件宅地の造成工事に違法の咎はなかったというべきである。

 

東京地判平4年10月28日判タ831号159頁

他に地中の産業廃棄物、土間コンクリートの存在が瑕疵にあたるとした上で、本判決と同様に、商法526条の適用を肯定した事案として、宅地の売買において、その地中に、大量の材木片等の産業廃棄物、コンクリートの土間や基礎が埋設されていたことが、土地の隠れた瑕疵になるとされた事例

 本件原告は、被告から、宅地4筆とその地上の建物を買い受け(ただし、右建物は税金対策のために本件取引に際して建築されたプレハブ建物にすぎず、それ自体に実質的価値があるものとして売買の対象になったものではないから、実質的には宅地のみの売買と考えてよい)、これを他に転売した。

ところが、転売先で建物を建築しようとして工事に着手したところ、本件宅地の地中に、大量の材木片等の産業廃棄物、広い範囲にわたる厚さ約15センチメートルのコンクリート土間及び最長約2メートルのコンクリート基礎10個が埋設されているのが発見された(本件土地はもと鉄工所の敷地であった)、そこで、原告は被告に対し、瑕疵担保責任に基づき、転売先から請求を受けた埋設物の撤去工事費用について損害賠償を求めた。

  本件において争われた主要な点は、コンクリート土間及び基礎が「隠レタ」ものであったかどうか(売買契約の当時、右土間の一部が露出していたか、既に土に覆われていたか等)という事実認定の問題であったようであるが、それ以前に、宅地の売買において地中に異物が埋設されていることが「瑕疵」になるのかという法解釈上の問題があった。

  売買の目的物に「瑕疵」があるとは、目的物に欠陥があり、その価値を減じたり、その物の通常の用途もしくは契約上特定した用途に適しない場合、または売主が保証した性能を具備しない場合をいうと解されるが(大判昭和8年1月14日民集12巻71頁、なお、『新版注釈民法(14)』343頁以下参照)、本判決もいうように、地中に土以外の異物が存在する場合一般が、直ちに土地の瑕疵を構成するものでないことは明らかであろう。

 

東京高判平成13年12月26日判タ1115号185頁

1 宅地建物取引業者は、信義則上、買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重要な事項につき知りえた事実については、買主に説明・告知する義務を負い、土地が軟弱地盤であることを認識しながら説明・告知しなかった場合は、これにより損害を受けた買主に損害賠償責任が生ずる

2 複数の宅地建物取引業者が土地売買契約に関与し、その土地が軟弱地盤であることを買主に説明・告知せず、地盤沈下が発生し建物に居住に困難をもたらす不具合が生じた場合は、個々の業者の軟弱地盤であることの認識の有無により、損害賠償責任の存否が定まる

1 Xらは、建売業者から土地付建売住宅を不動産業者の仲介により購入したが、いずれも土地が軟弱地盤であったために地盤沈下が発生し、建物に床の高低差の発生、外壁の亀裂の発生、ドアの開閉不能等の著しい不具合が生じた。そこで、Xらは、建売業者当と仲介した不動産業者Y2・Y3に対し、損害賠償請求訴訟を提起した。不動産業者のうち、Y2はXら全員に仲介しているが、Y3はXのうち1人に当と共同で仲介したものである。

  1審判決(東京地判平成13年6月27日判タ1095号158頁)は、(1)軟弱地盤の土地であるため地盤沈下が発生し建物に居住に困難をもたらす不具合が生じた場合において、軟弱地盤であることは隠れた瑕疵であり、土地付建売住宅の売買契約の目的を達することができないとして、建売業者に瑕疵担保責任を認め、(2)不動産仲介業者が土地が軟弱地盤であることを説明告知しなかったことにつき、説明告知義務違反による不動産責任を認め、請求を認容(一部)した。これに対し、不動産業者の2社が控訴したのが、本件訴訟である(建売業者については、1審判決確定)。

  控訴理由の要旨は、(1)本件建物には、軟弱地盤による不等沈下はない(Y2)、(2)不動産業者の担当者は、軟弱地盤であることを認識しておらず、説明告知義務はない(Y2・Y3)というものであった。

  2 本判決は、要旨次のとおり判示して、Y2の控訴を棄却し、犯の敗訴部分を取り消し(請求棄却)た。

  すなわち、本判決は、(1)軟弱地盤に起因する不等沈下が発生していることは、証拠上認められるとした上、(2)宅地建物取引業者は、信義則上、宅地建物取引業法35条に規定された事項はもちろん、買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重要な事項について知りえた事実については、買主に説明・告知する義務を負うところ、Y2の担当者はXのうち1人を除く重要事項説明書に当該地区または近隣に軟弱地盤地区がある旨の記載をしており、本件各土地につき軟弱地盤であることを十分認識していたものと認められ、本件では、Xらに対する説明・告知義務に違反したものであるとしたが、(3)Y3の担当者については、売買契約締結の日に読み上げられた重要事項説明書や当の担当者の説明の内容からは、当該土地の近隣に軟弱地盤地区があるという程度のことは認識できたとしても、それ以上に当該土地が軟弱地盤であることを明確に認識することができたか否かは疑問であり、当該土地につき軟弱地盤であることを認識することができたものと認めることはできず、説明・告知義務違反はない旨判示したのである。

  3 本判決は、第1に、宅地建物取引業者は、信義則上、買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重要な事項につき知りえた事実については、買主に説明・告知する義務を負い、土地が軟弱地盤であることを認識しながら説明・告知しなかった場合はとりわけ、水分が多く軟弱であり、沈下を起こしやすい地盤という意味での「軟弱地盤」性を認識していれば足り、地質についての専門的知識がないことは義務を免れる要素ではないとしていることは、業者の弁明を封ずるもので、実務上参考になろう。

  また、本判決は、第2に、複数の宅地建物取引業者が土地売買契約に関与し、その土地が軟弱地盤であることを買主に説明・告知せず、地盤沈下が発生し建物に居住に困難をもたらす不具合が生じた場合には、個々の業者の軟弱地盤であることの認識の有無により、損害賠償責任の存否が定まるとしている点でも、規範的意義がある。もっとも、こうした認識が必要であることは、1審判決も当然の前提としている。したがって、本判決のより大きな意義は、2業者のうち片方の業者の担当者の認識の有無を問題として、責任なしとしているという事例的意義にある(本件では、現実の損害填補については、1業者の賠償責任で賄えるから他の買主との間で差異は生じない)。もっとも、宅地建物取引業者の専門性を重視すると、本件のような「地盤の性質」という土地売買に当たって決定的な事項について知識も認識もなく仲介して憚ることがないという業者は、その存在意義が問われかねないであろう。そのようなことを考えると、本件においても、この業者は、「当該土地の近隣に軟弱地盤地区があること」は認識できたというのであるから、「当該土地はどうなのか」を調査して、それを告知・説明すベきではないかという疑問がないわけでもない。したがって、本件は限界事例であり、1審判決と本判決との間で、いずれの結論が規範的評価として相当であるかを考察する恰好の素材を提供するものといえよう。

 

東京地判平成15年5月16日判時1849号59頁

1 地中にコンクリートがら等の埋設物が存在していた土地の売買につき、売主の瑕疵担保責任及び説明義務違反による債務不履行責任が認められた事例

2 右売買契約における「買主の本物件の利用を阻害する地中障害の存在が判明した場合、これを取り除くための費用は買主の負担とする。」との特約が、売主の重過失を理由に効力が生じないとされた事例

 

東京地判平成18年9月5日判タ1248号230頁

1 土壌汚染が生じている土地の売買において、買主の錯誤無効の主張が否定された事例(民法95条)

2 商人間の土地の売買において、検査通知義務違反による免責が認められた事例(商法526条)

3 土壌汚染が生じている土地の売買において、売主の説明義務違反が肯定された事例(民法415条)

 1 本件は、建設会社であるX(脱退原告と、その権利義務を承継した原告引受承継人を総称する)が、機械販売会社であるYに対し、Yから購入した土地には土壌汚染が生じていたとして、売買契約の錯誤無効による代金の返還、予備的に瑕疵担保責任ないし債務不履行責任に基づき土壌調査及び土壌浄化費用の賠償等を求めた事案である。

  2 売主Yは、売買の際に買主Xの転売目的は表示されておらず、鉛及びふっ素の測定値が基準値を大きく超えるものではないことなどから錯誤の主張を争った。また、土壌汚染対策法の施行は売買契約の後で、検出された鉛、ふっ素の数値では健康被害が発生するとはいえないこと等から、同土地に瑕疵が存在するとはいえず、商法526条2項が規定する検査通知義務の期間も経過していると主張した。さらに、Xに対し、それまでの土地利用状況や、機械等の解体業者に賃貸していたことの説明義務は果たしている旨主張した。

  3 本判決は、Xの錯誤の主張に対して、転売目的での購入という動機がYに表示されたとは認められないことを理由とし、汚染除去費用が売買代金の約21パーセントに留まることも指摘して、要素の錯誤を否定した。

  また、Xによる瑕疵担保責任の主張について、本判決は、土壌調査の結果等から、ふっ素及び鉛による土壌汚染は、土地の経済的な価値を低下させるもので、隠れたる瑕疵にあたるとしたが、土地の売買において土壌汚染が問題になる場合にも商法526条の適用を肯定して、同条に基づく免責を認めた。不動産の売買に商法526条の適用があるかについて、Xは、これを争ったが、本判決は、これを肯定した。

 4 Xの債務不履行の主張について、本判決は、土壌汚染の生じていない土地を引き渡すベき売買契約上の本来的債務及び信義則上の土壌汚染検査義務を否定した上で、Yの説明義務違反を肯定し、同義務違反に基づく損害賠償を認容した(過失相殺あり)。本判決は、土壌汚染の有無の調査は、一般的に専門的な技術及び多額の費用を要するものであり、商人である買主が目的物の受領後その調査を行うべきかについて適切に判断をするためには、売主において土壌汚染が生じていることの認識がなくとも、土壌汚染を発生せしめる蓋然性のある方法で土地の利用をしていた場合には、土地の来歴や従前からの利用方法について買主に説明すべき信義則上の付随義務を負うとした上で、Yが認識していた事実関係や、平成11年の引渡当時の土壌汚染に関する社会情勢を検討して、本件のYにおいても説明義務を負うとしている。

  5 近年、土壌汚染の拡大とその被害の深刻さが広く認識されてきており、行政や取引などの各場面で対応策が講じられているところである。本判決中にも示されている土壌汚染対策法の施行以後、民間の売買でも売主に土壌汚染の調査義務を課したり、土壌汚染が発覚した場合の対策費用の負担、瑕疵担保責任の内容の明確化などを売買契約に盛り込む事例が増えているようである。本件は、上記のような特約がない売買契約において、代金決済後、約3年経過した後に土壌汚染が発覚したという事例であるが、本判決は、このような場合の当事者の責任について判断を示すとともに、土壌汚染が生じている土地の売買において、売主が土壌汚染自体について善意であるとしても、土地の来歴や従前の使用状況についての説明義務を負う場合があることを認めたものとして参考となる事例である。

 しかしながら、一方で、脱退原告は、前記第3、3(5)エのとおり、土木建築工事に関する調査、企画、地質調査等をも目的とする株式会社であること及び少なくとも、被告からのカドミウム汚染についての報告書の送付により、同土地には量は不詳ながら機械の解体作業時に流出した油分がしみ込んでいるとの情報提供を受けていたことからすれば、前記被告の説明義務の履行がなくとも自らの判断で土壌汚染調査を行うことが相当程度期待されていたと認めることができる。したがって、このような引渡後直ちに土壌汚染調査を行わなかった点についての脱退原告の落ち度も総合して考慮すると、公平の見地から、被告は、前記原告に生じた損害の4割である7545万4800円を賠償する義務を負うに留まるべきである。

 

東京地判平成18年9月15日LLI/DB 判例秘書登載

土地の売買契約において、擁壁の安全性について説明しなかったことが、売買契約に付随する信義則上の説明義務違反に当たるとして、違約金として売買代金の20パーセント相当額の賠償責任を負うとした事例

 本件重要事項説明書に川崎市建築基準条例5条(がけ付近の建築物)があることが記載されている。もっとも、前記認定事実によれば、被告Y1が、本件土地と隣地は、もともと1筆の土地であったものを分筆し、先に隣地を販売したものであるが、被告Y1は、当該隣地も建築確認を得る際に、擁壁の補強を高津区役所建築課から求められ、補強工事が行われたことを知っていたことが認められる。とすると、本件土地と隣地の擁壁とは連続しているのであるから、建築確認を求める際に、高津区役所建築課から同様の指摘がなされることは予想し得たはずである。しかし、本件において、被告Y1が、かかる情報を被告Y2や原告に説明したと認めうる証拠はない。