後に解散した被告に対し,劣後ローンとして,弁済期を定め金員を貸付けていた原告が(原告は,他方で,被告から劣後ローンとしての貸付けを受けていたが,後に更生手続においてその全額を免除された。),当該貸金を請求している事案で,被告のした相殺が有効か否か,被告の解散により弁済期が到来したといえるか,原告の請求が信義則違反ないし権利濫用にならないか,などが争われたが,請求を一部認容した事例
東京地方裁判所判決/平成15年(ワ)第7142号
平成16年2月19日
貸金請求事件
【判示事項】 後に解散した被告に対し,いわゆる劣後ローンとして,弁済期を定め金員を貸付けていた原告が(原告は,他方で,被告から劣後ローンとしての貸付けを受けていたが,後に更生手続においてその全額を免除された。),当該貸金を請求している事案で,被告のした相殺が有効か否か,被告の解散により弁済期が到来したといえるか,原告の請求が信義則違反ないし権利濫用にならないか,などが争われたが,請求を一部認容した事例
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
主 文
1 原告の第1次的請求について
(1)被告は,原告に対し,金4142万3958円を支払え。
(2)原告のその余の第1次的請求を棄却する。
2 被告は,原告に対し,
(1)金8828万9535円を支払え。
(2)平成16年から平成19年までの毎年3月と9月及び平成20年の3月と4月の各末日(ただし,末日が東京・ロンドンの一般休業日に当たる場合は,その前営業日)限り,別紙1(利息目録)記載の各金員を支払え。
(3)平成20年4月30日限り,金25億円及びこれに対する同年5月1日から支払済みまで年14パーセントの割合(年365日の日割計算)による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項(1)及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 第1次的請求
(1)被告は,原告に対し,金4142万3958円を支払え。
(2)被告は,原告に対し,金25億円及びこれに対する平成13年4月2日から支払済みまで年14パーセントの割合による金員を支払え。
2 第2次的請求(上記1(2)の請求が認められない場合)
(1)主文第2項(1)と同旨
(2)(ア又はイを選択的に請求)
ア 主文第2項(2),(3)と同旨
イ 原告が被告に対し別紙2(貸金目録)記載の貸金債権を有することを確認する。
3 第3次的請求(上記1,2の請求が認められない場合)
被告は,原告に対し,金25億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,後に解散した被告に対しいわゆる劣後ローンとして25億円を弁済期平成20年4月30日の約定で貸し付けていた原告が(原告は,他方で,被告から劣後ローンとしての貸付けを受けていたが,後に更生手続においてその全額を免除された。),当該貸金について,被告に対し次のとおり請求している事案であり,被告のした相殺が有効か否か,被告の解散等により弁済期が到来したといえるか否か,原告の請求が信義則違反ないし権利濫用に当たるか否かなどが争われている。
① 第1次的に,被告の解散等により弁済期が到来したと主張して,元金及び利息(平成12年4月1日から平成13年3月30日までの分)並びに内元金に対する被告の解散の日の翌日からの約定の割合による遅延損害金の支払を求めている。
② 第2次的に(上記の弁済期到来の主張が認められず,上記の元金及びこれに対する遅延損害金の支払請求が認められない場合),既に支払期日の到来した利息(上記①の期間分を除く平成13年3月31日から平成15年9月30日までの分)の支払を求めるとともに,今後到来する支払期日ごとに利息を支払うこと及び弁済期限り元金及びこれに対する弁済期の翌日からの約定の割合による遅延損害金を支払うことを求め,又は原告が被告に対し当該貸金債権を有することの確認を求めている。
③ 第3次的に(上記①,②の請求が認められない場合),被告に騙されて貸し付けたものであり,不法行為が成立すると主張して,貸付額相当額の損害金及びこれに対する不法行為後の日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている。
1 前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)
(1)当事者
原告(旧商号・A株式会社)は,昭和22年5月6日に設立された生命保険事業を営む株式会社であり,平成12年10月23日,更生手続開始の決定を受けて,平成13年4月2日,更生計画認可の決定を受け,同月23日,その更生手続(以下「本件更生手続」という。)が終結したものである。
被告は,昭和24年8月1日に設立された損害保険事業を営む相互会社(保険業法上の相互会社)であり,平成12年5月1日,保険業法241条に基づき,金融監督庁長官(当時)から,業務の一部停止並びに保険管理人による業務及び財産の管理を命ずる処分を受けて,平成13年4月1日,同法152条3項1号に基づき解散した。
(後略)