根津美術館から刊行された『殷周の青銅器』を読んでみました。
青銅器は、中華文明を代表する工芸品です。
なかでも殷周青銅器は、高度な技術を結集して鋳造された、世界でも類を見ない逸品として、現在でも珍重されています。
その中心的存在が「彝器」あるいは「礼器」とよばれる容器類や楽器類です。
これは宗廟に備えて、祖先などを祀る祭祀や儀礼で用いる祭祀専用の器です。
この時代の祭祀儀礼は、政治体制や社会体制の維持に必要不可欠な行事で、現在では想像できないほど重要な意味を持っていました。
そこで用いられる青銅器は重要な宝器であると同時に、中国古代の精神文化を象徴するものといわれています。
本書は、青銅器にはどのような器種があり、どのように使われたか、器面を覆う饕餮文とは何を意味するものか、古代の人々はどのようにして青銅器を制作したのかなどを分かりやすく解説されています。
これによって、空想上の動物文様である饕餮や龍、鳳凰が何のために施されているのか、また実在する虎や犀、牛、羊、鹿などがどのように文様化されているのかを楽しく観ることができます。
ただ、現在、アマゾンなどでは購入出来ず、根津美術館ミュージアムショップに出向くか、根津美術館ホームページの「出版物のご購入について」にて購入しなければならないようです。
根津美術館では、殷周の青銅器を始めとして漢時代に至る青銅器が展示されています。
本書を読了し、根津美術館に実物を観に行きませんか。