パラレル

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国立新美術館で開催中の「ピカソ meets ポール・スミス」展でこれは、と思う作品、《喫煙者Ⅱ》の主観レビューをお届けします。

喫煙者を描いた作品です。

赤・青・黄の鮮やかな三原色が用いられ、伸びやかで大らかな曲線を多用した筆致から、明るく親しみやすい人物像が感じられます。


一方で、人物は顔を正面に向け、こちらをまっすぐ見つめています。

その視線からは、強い意思を持った人物であることもうかがえます。

自由で親しみやすい造形と、正面を見据える強い視線との対比が印象的です。


パブロ・ピカソ(1964)《喫煙者Ⅱ》パリ国立ピカソ美術館


パナソニック汐留美術館で開催中の「町田市立国際版画美術館所蔵 長谷川潔展ーパリに生きた銅版画家の軌跡」へ行って来ました。

日本を代表する版画家、長谷川潔は、第一次世界大戦後に単身フランスへ渡り、その生涯を同値で全うしました。

長谷川は、当時失われつつあった銅版画の古典技法「マニエール・ノワール(メゾチント)」を独自に復興させ、版画の歴史に足跡を残しました。

また、エングレーヴィングやアクアチントといった多彩な技法を深く追求し、モノクロームによる深遠な表現世界を切り拓くなど、版画界に大きな影響を与えました。


本展は、「パリに生きた銅版画家の軌跡」との副題のもと、日本有数の長谷川潔コレクションを誇る町田市立国際版画美術館の所蔵品を中心に構成しています。

初期から晩年に至る名品とともに、長谷川に影響を与えた19世紀以前の版画や、パリで交流した同時代の作家たちの作品を一堂に展覧し、その画業の全貌をふり返ります。


展覧会の構成は以下の通りです。


序章 日本時代ー水と空のかなたから呼ぶもの

第1章 銅版画の研鑽ー古典技法の発見と刷新

第2章 パリの版画界ー画家たちとの交友

第3章 『竹取物語』ーフランスで刻まれた日本の美

第4章 自然ー白昼に神を視る

第5章 静物画ーマニエール・ノワールの宇宙


長谷川は1918年の渡仏跡、多様な銅版画技法を探求します。

第1章では、デューラーやボスなど古典巨匠の技法に学びつつ、18世紀に途絶えかけていた「メゾチント」を独自に復興・発展させていく過程が見どころです。

ビュランやスクレイパーといった実際の製作道具も展示され、その綿密な仕事ぶりをうかがい知ることができます。


第2章では、パリを拠点に同時代の芸術家たちと深く交流し、現地の版画界で確固たる地位を築いていく背景に焦点を当てています。

ラウル・デュフィ、マリー・ローランサンといった巨匠たちの版画作品とともに、長谷川自身が「独立画家=版画家協会」などの展覧会に出品し、高い評価を獲得していった軌跡をたどります。


第3章では、フランスの挿絵本出版プロジェクトとして制作された『竹取物語』(1934)の挿絵版画群を展示しています。

エングレーヴィングとドライポイントを駆使し、日本の伝統的な物語の世界観を西洋の古典的銅版画技法で翻訳・表現しています。

フランスという異郷の地で、自らのアイデンティティや和の美意識を純化させた重要な結晶といえます。


第4章は、戦前・戦中・戦後にかけて描かれた風景画や身近な静物・自然をテーマにした作品群で構成されています。

南仏の風景や教会の佇まい、あるいは道端の野草や小さな虫たちといった日常の光景の中に、静けさと神聖な気配を見出そうとする長谷川の洞察力が光ります。


第5章は、長谷川の真骨頂である、メゾチントによる静物画の到達点を示しています。

「草花との対話」や「宇宙的方程式」のような静物を通して、目に見える姿を超えた生と死、存在の神秘という精神世界を追求した作品群です。


長谷川潔の版画に描かれる静物たちは、単なるデッサンを超えて時間の流れそのものが固定化したかのような神秘性を帯びています。

緻密な銅版画の世界にじっくりと没入したい方におすすめできる展覧会です。





会期:2026年7月11日(土)〜9月23日(水・祝)

会場:パナソニック汐留美術館

       〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階

開館時間:午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)

休館日:水曜日(ただし9月23日は開館)、8月10日(月)〜14日(金)

主催:パナソニックエレクトリックサービス株式会社、パナソニック汐留美術館、東京新聞

共催:町田市立国際版画美術館

特別協力:横浜美術館

後援:港区教育委員会


国立新美術館で開催中の「ピカソ  meets ポール・スミス」展でこれは、と思う作品、《座る女》の主観レビューをお届けします。

椅子に座る女性が描かれていますが、その身体は柔らかな曲線ではなく、鋭い直線や幾何学的な面によって構成されています。

グレーを基調とした色彩も相まって、女性の身体はまるで鎧をまとった金属のように見えます。

さらに、尖った指先はナイフの刃を思わせ、人物に攻撃的な印象を与えています。


口元には歯が覗き、その周囲が黒く描かれているため、笑っているようにも、威嚇しているようにも見えます。

その笑顔には温かさがなく、むしろ冷たさや不気味さを感じます。


こうした表現から、この人物は生身の人間というよりも、武装された機械のように感じられます。

人間を描きながら、人間らしさを失わせていくことで、戦争の時代における人間の非人間化や、攻撃性そのものを表しているようにも解釈できます。


パブロ・ピカソ(1945)《座る女》パリ国立ピカソ美術館