パラレル

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松岡美術館で開催中の「千古躍動 漢から唐までの中国陶磁」展へ行って来ました。

死後の世界のために作られた「明器」。

漢代から唐代にかけて、権力者たちの墳墓には、生前の生活を再現するかのように武人、宮女、家畜、さらには精巧な楼閣の模型までが納められました。

 

本展は、後漢から唐にかけての約700年にわたる中国陶磁を紹介するものです。

灰陶や緑釉陶から、唐三彩に至る流れをたどりながら、器物だけでなく人物・動物などの副葬品が数多く並ぶ構成になっています。

 

漢代の作品からは、素朴な力強さが、唐代からは華やかな躍動が感じられます。

漢代のどっしりとした構えの加彩陶からは、当時の人々の力強い生活感や死生観が伝わってきます。

唐代の白眉は「唐三彩」です。

馬やラクダの筋肉の動き、あるいは優雅な衣装を纏った女性たちのしなやかな立ち姿。

タイトルにある「千古躍動」の通り、千年以上前の土の塊が、今にも動き出しそうな生命力を放っている点に圧倒されます。

《灰釉 双耳壺》(中国・後漢時代 1-2世紀) 松岡美術館

《三彩 馬》(中国・唐時代 7-8世紀) 松岡美術館

 

本展の核心は、副葬品という存在そのものにあります。

これらは日用品の再現ではなく、「死後の世界を現実と同じように充実させる」ための装置でした。

つまり展示されているのは、現実の縮小模型ではなく、死後も続く生活を前提とした”もう一つのリアリティ”です。

 

家屋模型や家畜、侍女像などを見ていると、当時の社会構造や価値観がそのまま立ち上がってきます。

単なる工芸史ではなく、考古学的・文化史的な厚みを感じさせます。

《灰陶加彩 婦人》(中国・前漢時代 紀元前2-紀元前1世紀) 松岡美術館

 

展示は時代順に構成されており、技術と美意識の変化も明確に追うことができます。

特に唐三彩の多彩釉は、単なる装飾ではなく、異文化交流(シルクロード)の影響を色彩として体現している点が重要です。

 

派手な演出はありませんが、作品の質は高い展覧会です。

白金台の散策と合わせて、悠久の歴史に思いを馳せてみてはいかがですか。

 

 

 

会期:2026年2月25日(水)〜5月31日(日)

会場:松岡美術館 展示室4

   〒108-0071 東京都港区白金台5-12-6

開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)

休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)

 

 

 

 

松岡美術館で開催中の「笑い滴る 春と夏の日本画名品選」展でこれは、と思う作品、《茄子》の主観レビューをお届けします。

本作は、小林古径による《茄子》で、日本画の中でも洗練された「静物表現」の代表例のひとつです。

色は穏やかで抑制的、形は単純化されている、余白が広く静か、という結果として生まれるのが、「素朴さ=親しみやすさ」です。

そして、その素朴さが「優しさ」や「自然への親近感」に直結しています。

 

画面を見ると、枝はバラバラではなく、緩やかに近づき、空間を共有し、バランスよく配置されています。

これは、単なる写生というより、関係性を意識して再構成された配置です。

そこから、協力しながら生きる、必要な存在という読みは、構図から自然に導かれる解釈と言えます。

 

また、線が柔らかく「意思」を感じさせる、枝が互いに呼応するように伸びている、孤立ではなく「対話」的な配置されており、「生命の気配」が強調されています。

そのため、人のように寄り添っている、という印象を受けます。

 

ただし、小林古径自身は明確に「擬人化」を意図したというよりは、生命の本質や調和を静かに表そうとした結果そう見える、という可能性が高いです。

つまり、人間のように描こうとしたのではなく、生き物の調和を追求した結果、人間的に感じられるということです。

小林古径(1940)《茄子》松岡美術館

 

松岡美術館で開催中の「笑い滴る 春と夏の日本画名品選」展でこれは、と思う作品、《夏之山》の主観レビューをお届けします。

幾重にも連なる山々が連なる山々が奥へ奥へと広がる構図になっています。

手前の山から中景、遠景へと視線が導かれ、下部には細い渓流が流れ込むことで、自然のスケール感と奥行きが強調されています。

 

同じような山、筆致が続き、装飾的です。

その中で、他と異なる点は、左中景の白い箇所。

これは、霞・霧、光の差し込み、空気の層の要素が重なっていると考えられます。

ですので、夏の強い日差しが山肌や空気に反射している表現と見ることができます。

 

本作は、視覚的に均質になりやすい構造です。

そこで、白い箇所を入れることで、視線の焦点を作る、単調さを破る、空間に変化と呼吸を与える、という効果が生まれます。

つまりこの白は、「自然の描写」であると同時に「画面上のアクセント」でもあります。

 

「夏らしさ」という点でも重要です。

この箇所は、光を含んだ空気の層に見えるため、「夏の日差し」「爽やかさ」「開放感」を強める役割を果たしていると考えられます。

寺崎廣業(1916)《夏之山》松岡美術館