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パラレル

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松岡美術館で開催中の「笑い滴る 春と夏の日本画名品選」展でこれは、と思う作品、《春峡》の主観レビューをお届けします。

本作は、川合玉堂による《春峡》で、彼が得意とした「四季の自然」をテーマにした風景画の一つです。

険しい崖が聳え、桜や淡い紫色の山つつじが峡谷の春を彩り、山間に訪れた春を伝えています。

 

木々の傾きは同じような方向であり、その高さも似ています。

そこから、装飾的な印象を受けます。

川合玉堂は、写実だけではなく、画面のリズムや美しさを意識して構成する画家です。

ですので、単なる自然描写ではなく、「絵としての調和」を作っていると思われます。

そして、色彩の濃淡によって、遠近感を出し、視線は奥へと誘われます。

 

下段には、筏に乗った人がおり、季節の変化に関わらずいつも通りに働いています。

本作は、単なる風景画ではなく、自然と人間の関係を描いています。

これは、「季節のひととき」と「変わらない日常」の対比というより、自然の中に人が溶け込んでいると読めます。

筏の人物は小さく描かれ、自然のスケールの中に包まれています。

つまり、自然の移ろいの中に、変わらぬ人の営みが静かに溶け込む情景と言えるでしょう。

川合玉堂(1926)《春峡》松岡美術館

 

松岡美術館で開催中の「笑い滴る春と夏の日本画名品選」展でこれは、と思う作品、《梅花》の主観レビューをお届けします。

横山大観《梅花》は、昭和初期の円熟期に描かれた、日本画らしい精神性と装飾性が融合した作品です。

梅の古木を風格ある姿で描いています。

しかし、その幹は補足、桃山時代のような力の誇示というよりは、優美さを感じます。

 

また、対角線上に描かれており、動きを感じます。

枝が斜めに大きく走ることで、画面にリズムが生まれています。

静かな画面なのに”動いている感じ”がするするのはこのためです。

 

そのため、春が近く、動植物が活動し始めるという印象を受けます。

梅はまさに、冬の終わりに咲き、春の先駆けという象徴なので、春の訪れを告げているようです。

 

また、背景は静寂、枝は動き、花は生命の兆しと捉えると、「静」と「動」が同居しており、本作は、「静けさの中で、確かに始まる生命」を描いていると言えます。

横山大観(1929)《梅花》松岡美術館

 

松岡美術館で開催中の「笑い滴る 春と夏の日本画名品選」展へ行って来ました。

タイトルの「笑い滴る」は、中国・北宋の画家郭熙の言葉「春山淡冶にして笑ふがごとく、夏山蒼翠にして滴るが如し」に由来し、季節ごとに表情を変える自然の姿を擬人的に表現した概念を軸に構成されています。

本展では、同館の日本画コレクションから、日常的に自然風景を愛でた創立者・松岡清次郎が独自の審美眼を頼りに蒐集した絵画の名品を展観することができます。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

第一部 山笑う春

第二部 山滴る夏

 

本展の魅力は、江戸から昭和までの幅広い時代の日本画を通じて、日本人が感じ取ってきた「季節の気配」を視覚的に体験できる点にあります。

春の展示では、花鳥画や美人画を中心に、柔らかな色彩と静かな情緒を帯びた作品が並びます。

なかでも、横山大観《梅花》は、古木の梅が持つ生命力を雄渾な筆致で描き出し、近代日本画の力強さを感じさせる作品です。

横山大観(1929)《梅花》松岡美術館

 

一方、夏の展示では、青々とした植物や水辺の風景など、生命力に満ちたモチーフが中心となります。

朝顔や蓮、蜻蛉など、日本の夏を象徴する題材が多く取り上げられ、画面からは湿度を含んだ空気や光の強さまでも感じ取れます。

小林古径《朝顔》は、その筆致の清らかさに驚かされ、過度な装飾を削ぎ落とした古径ならではの表現が、夏の朝のひんやりとした静寂を感じさせてくれます。

小林古径(1947-48頃)《朝顔》松岡美術館

 

本展は、派手なテーマ性よりも、四季の移ろいを静かに味わう日本画の魅力を丁寧に提示する展覧会です。

日本画における自然表現の豊かさを再認識できる、落ち着いていますが、充実した企画展を言えるでしょう。

 

 

 

会期:2026年2月25日(水)〜2026年5月31日(日)

   前期:2026年2月25日(水)〜4月12日(日)

   後期:2026年4月14日(火)〜5月31日(日)

会場:松岡美術館 展示室5・6

   〒108-0071 東京都港区白金台5-12-6

開館時間:10:00〜17:00

   ※入館は16:30まで

休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)