皆様!!お待たせいたしました!!どうにかこうにか、メロキュン最終日までに間に合わせることが出来ました!!
そしてまず謝らせて下さい!!
このお話なのですが、出来た!!と思って投稿しようとしたら長すぎたらしく、文字数が多すぎて掲載エラーになってしまったので、最終話*前と最終話*後に区切っております。
本編だけの状態でも、文字数オーバーの表示だったので、泣く泣く途中で区切りました!!
中途半端な所で切れるようになってますので、ご了承下さいませ。
それでは、蓮キョ☆メロキュン推進!『ラブコラボ研究所』メインリレーのラストをお楽しみ下さいませ(^-^)/
今までのお話をおさらいしたい方はこちらからどうぞ♪
では最終話の前編、後編をお楽しみくださいませ☆
*****
いつも俺の腕の中で 最終話
「やっぱり…ズルいわ。」
腕の中から聞こえる可愛らしい声。
ズルいと言いつつも、困ったような嬉しいような響きが含まれているのだから、そんな言葉さえも蓮を喜ばせていることにキョーコは気付いているのだろうか?
全く、ズルいのはどっちだと思ってしまう。
磨けば磨くほど周りの期待を上回って輝きを増すキョーコ。
それを見て、どれだけ蓮が気を揉んだかということを知らないキョーコは呑気なものだ。
無自覚に魅力を振りまくものだから、蓮にとっては大変なんてレベルの騒ぎではなかった。
ショーモデルの仕事を終えてからというもの、それこそ、毎日次々と量産されてしまう馬の骨は、虎視眈々とキョーコを自分のモノにしたいと狙っていたのだ。
目を離せば食事に誘われ、腰を攫われる、そんな姿が視界を掠めるたび、蓮の中で焦りと不安が浮かんだことなどキョーコは知りもしないだろう。
蓮の目の届く範囲だけでもかなりの数の馬の骨が何かしらのアクションをキョーコに起こしていたのだ。
そしてそんな男から寄せられる好意に疎いキョーコが満面の笑みで談笑してるもんだから、タチが悪い。
だからドラマで共演出来るようになってからは、蓮はなるべくキョーコを自分の側に引き止めつつ、馬の骨がおいそれと近付けないような空気を作る必要があったのだ。
ショーモデルのレッスンをこの場所でやっている間はまだ良かった。
何だかんだでキョーコを独占出来て、自分のプレゼントした服で全身を着飾って、自分しか知らないキョーコの無防備な姿を堪能出来たからだ。
他の誰よりも自分は彼女に近い位置にいると確信出来た。
しかし、一緒にドラマで共演し始めた頃にはキョーコを取り巻く環境が余りにも変わりすぎていた。
艶やかな微笑み、流れるような仕草、万人を虜にする演技力、完璧な大和撫子を思わせる立ち居振る舞い。
モデルとして高級ブランドのイメージモデルへの抜擢や大きなショーからのオファーを受けまくり、女優としても『DARK MOON』の本郷未緒役で「日本ドラマアカデミー」の助演女優賞と新人賞をダブル受賞。
そしてなんと「BOX"R"」の撮影中にピンチヒッターで出た映画でも新人賞と審査員特別賞を受賞。
そしてその京子のイメージと、キョーコ自身のキャラクターのギャップがまた人気を加速させるのだ。
ドラマの撮影の合間に数々のオファーを鮮やかにこなして、どこにそんな元気が残っているのだろう?というくらいの弾けんばかりの笑顔を振りまくキョーコに、蓮の方が振り回されていた。
常にキョーコに張り付くことはままならない為、社長にお願いしてマネージャーをつけてもらったが、それでも蓮の心配が消えることはなかった。
ドラマの撮影もあと数日残すばかりとなったその日、事件が起こった。
蓮はドラマを見ながら付き合うきっかけにもなったその日のことを思い出して、苦笑を零すと、腕の中にいるキョーコを宝物のように優しく抱き締め、頭に一つキスを落とした。
キョーコが腕の中で甘えるように身を寄せて来て、蓮は更に抱きしめる腕に力を込める。
「このシーンを見ると、あの日のことを思い出すよ。」
キョーコの頭に顎を乗せて呟けば、キョーコがうっと、肩を窄めて可愛い唇を尖らせた。
「だって、あんなことになるとは思わなくて…」
「うん。わかってる。でもあれは…ね。」
思い出すと今でも不安になる。キョーコが蓮の元から他の男にさらわれるのではないかと思ってしまうのだ。
蓮がキョーコの手を辿り指を絡める。
キョーコはそんな蓮の指先に甘えるようにそっと絡め返すと、画面を見つめながら二人でその日の出来事を思い出した。
その日は来日したハリウッドスターのインタビュアーに京子が抜擢されたという情報を社が仕入れていた為、ちょうどタイミング良く訪れた撮影の待ち時間に、蓮は楽屋のテレビを観ていた。
にこやかに映画の質問に応じるハリウッドスターに改めて、今大注目の日本の代表タレントとしてインタビュアーの京子が紹介され現れると、その二枚目俳優の目の色が変わった。
ドラマの番宣も兼ねている為、この日のキョーコは、加絵の役のままの容姿で出ることになっていたので、肩まである栗色の髪が綺麗に巻かれ、加絵の休日スタイルなのだろう、服装もカジュアルでありつつ上品。短めのスカートで生足を晒して高めのヒールを履いていた。
歩き方も蓮直伝だけあり、世界最高のスーパーモデル並の輝きを放っていた。
京子の身体を上から下まで値踏みするように熱い視線を滑らせる。軽く口笛を吹いた後、満面の笑みで京子の握手に長めに応じたハリウッドスターを見て、蓮は持っていたペットボトルを思わず握りつぶしてしまった。
促されて座っても、そのハリウッドスターは京子に熱視線を浴びせ続け、気付けばカメラの前だというのに、なんと本気で京子を口説きにかかったのである。
対する京子はと言うと、単なる社交辞令と捉えており、ハリウッドスターの本気の口説きにも関わらず、さり気なく且つ、鮮やかに持ち前の曲解思考で躱して見せたのだ。
普通のインタビュアーや女優ならば、こんな風にハリウッドスターから熱視線を浴びせられた場合、多少なりとも満更でもない様子を見せるはずなのだが、何事もなかったかの様に普段と全く変わった素振りを見せずにこやかに会話をする京子を観て、ハリウッドスターは最後の最後には諦めたのか、おどけた素振りでお手上げポーズを取って笑いを誘ったのだった。
このキョーコの慣れたような華麗な対応には、撮影したスタッフも唖然。
番組を観ていた視聴者からも、様々な意見が寄せられた。
京子を神だと崇めたてたり、どれだけ京子は理想が高いんだとか、京子には既に恋人がいるのではないかとの問い合わせがテレビ局に殺到したという。
当然、テレビを観ていたこの男達も衝撃を受けていた。
社は顔を引き攣らせたままフリーズしている蓮に話しかけた。
『わかってはいたけど、やっぱり…手強いな…キョーコちゃんの曲解思考…。』
『そう…ですね。』
引き攣った怖い笑みを浮かべた蓮が答える。
『さすがラブミー部。抱かれたい男No.1のお前があそこまで激しいスキンシップとっても靡かないだけある。』
納得したように難しい顔で頷く社に、蓮は返せる言葉もない。
『苦労するはずだよな、蓮も。』
『まぁ、あんなナンパな男に引っかからなかったという点では良かったじゃないですか。』
面白くなくて、ムスリとした表情で答えると、社は更に言い募り始めた。
『そうだけどさぁ~。お前、ハリウッドスターのあんなにストレートな表現をキョーコちゃんはヒラリと躱すんだぞ?!それをわかって…』
ーーコンコン。
社が口うるさくなってきた所でちょうどいいタイミングで楽屋にノックの音が響いた。
『まぁまぁ、ほら社さん、来客のようですよ。』
『ったく。…はい。あ!!キョーコちゃん!!』
噂をすればなんとやら、どうやら京子が現場入りして楽屋挨拶に回っていたようだ。
『社さん、おはようございます!!敦賀さんはいらっしゃいますか?』
『おはよう。うん。いるよ!入って入って~。セバスチャンさんもどうぞ。』
『はい。失礼しますね。』
『失礼します。』
キョーコがにこやかに入室するのに続いて、現在京子のマネージャーを務めているセバスチャンも入ってきて丁寧に扉を閉めた。
蓮は立ち上がると、セバスチャンがドアを閉めるためまだ背中を向けている間に、既にキョーコを腕の中に収め、ギュッと強く抱き締めていた。
『ん。つ、敦賀さん?』
余りにも強く抱き締めてくる蓮にキョーコは苦しげに声を出すと、蓮からも声が絞り出された。
『会いたかった…。』
そのたった一言が、キョーコの心をざわめかせる。
キュウンと心臓が痛いほど声をあげた。
『私も…です。』
顔を一瞬だけ曇らせたキョーコが、そっと囁いて、蓮の脇腹をギュッと握りしめ、蓮の胸に顔を埋めた。
ーーー恋人同士でもないくせに何でこんなにベタ甘カップルみたいな空気を出すんだ!!
何とも居た堪れないのは社である。口の中にザラザラとした感触を感じながら、右へ左へどこに定めたらいいのかと視線をキョロキョロと変えている。
セバスチャンはと言うと、ドアの横に無表情で突っ立って二人を微動だにせずみつめていた。
そんなセバスチャンを尊敬の眼差しでしばし見つめてしまう社が、そっと二人に視線を戻すと、次の瞬間、二人のキスシーンが目に飛び込んできて慌てて目を逸らし動揺してしまった。
ーーーるるるるるぇぇぇぇぇん?!?!?!?!な、ななななななっ!!!!えええぇ?!これは?!一体?!どーいうことなんだよぉぉぉぉーー!!!!
動揺する社をそっちのけで、蓮はキョーコの唇の甘さに酔いしれていた。
そうすることで、先程まで感じていた不安が少しずつ薄れて行くのだ。
恋人でもないくせに、彼女の唇の甘さを知ってしまっては触れずにはいられない。
彼女の演技の練習を言い訳にしてキスをする自分をどう思っているのかなんて、この時までは考えもしていなかった。
唇をそっと開放すると、キョーコが珍しくぎゅっと抱きついて来た。
胸に顔を埋める姿が愛しくて、もしかして俺の想いを受け止めようとしてくれているのだろうかと、勝手に期待が膨らんだ。
『あと…少し、ですね。』
抱き付いたままの彼女から淋しそうな声が聞こえた。
撮影のことと思い、同意する。
『そうだね。あと、少しだ…。』
優しく抱き締めて応えると、キョーコの身体が小刻みに震え始めたのが分かった。
『??最上さん?』
『…好き…』
『…え?』
ーードクン。
心臓が煩いほど音を立て始めた。
ーードクドクドクドク。
『好き…かも…。』
ポツリと呟くように落とされた音が、蓮の中で言葉となり脳に届けれるまでに暫く時間が掛かった。
何か答えなくてはと、声を出そうとした所で、喉が緊張からカラカラになっていることに気付く。
蓮が何か答えるまえに、キョーコがそっと蓮から身を離して照れたように笑って明るい声で言った。
『なーんて。一度、加絵を憑けずに誰かに言ってみたかったんですよね。』
そして一瞬、翳りを帯びた顔になり、フッと淋しそうに微笑んだ。
『加絵が出来て…良かったです。練習…今まで付き合って下さってありがとうございました。』
困惑した顔の蓮に構わず、ぺこりと丁寧にキョーコが頭を下げると、セバスチャンがスっとキョーコの側に立ち、紙袋をキョーコに手渡した。
『ありがとうございます。敦賀さん、こちら今日のお弁当です。ちゃんと、食べてくださいね。』
セバスチャンから手渡された紙袋を差し出して、キョーコがニッコリと微笑む。
『手の掛かる後輩ですみません。でも、敦賀さんに演技指導して頂けて、とても良い勉強ができました。』
『…もがみ…さん?』
『敦賀さんの演技指導のお陰で、私はちゃんと最後まで加絵を演じられますから。もうこれ以上は大丈夫です!問題のキスシーンは今日ですし、これがクリア出来たらもう、これ以上恋人役の練習は必要ありませんから。今までありがとうございました!!』
キョーコの言葉の意味を理解することを拒否しようとする脳は上手く働かない。思考が固まるのと同じく蓮もその場に固まってしまった。
キョーコは自分の溢れそうな蓮への想いを抑えるのに必死で蓮の顔色を気にする余裕がなく、そんな風に呆然と佇む蓮を残して、足早に蓮の楽屋を後にするのだった。
蓮に別れを伝えたことで、心の中から淋しさと憂いが表面に滲み出ていたのか、この日の男性の誘いはしつこいどころの騒ぎではなかった。
撮影本番、二人の切ない想いで交わし合ったキスは、見ていた共演者やスタッフに強烈なイメージを残しており、キョーコを狙う男の目にギラギラとした獲物を狙う色が強く灯った。
『あ、京子様。電話が掛かって来たので少し離れます。ここで待機する必要もないので、楽屋に行きましょう。』
『わかりました。』
二人が連れ立って楽屋に向かうと、数人の男たちがそのスタジオから離れた。
『では、私は電話をして来ますから、キチンと鍵を掛けてて下さい。』
セバスチャンがキョーコにそう声をかけて楽屋から離れると、反対側の通りから数人の男たちが顔を出した。
ーーコンコン。
『はーい。』
『京子さん、安藤です。今、ちょっとだけいいですか?』
『あ、はい。少々お待ちくださいね。』
ーーガチャ、キィー
『お待たせしました。何か問題でも?』
セバスチャンに言い聞かせられていた為、少し警戒しながらソロソロと扉を開けたキョーコは安藤以外にも数人がいることに、ほっと胸を撫で下ろして、扉を開放した。
男性と二人っきりになることは蓮からもセバスチャンからも避けるように言われていたのだ。
『いや、ちょっとね。入ってもいいかな?』
『あ。はい。どうぞ。』
『お邪魔します。』
ゾロゾロと入ってきた5、6人の男達に、何だろう?と思いながらも、キョーコは他に人がいないことを確かめて扉を閉めた。
『それで、皆さん、お揃いでどうされたんですか?』
そう尋ねる不思議そうな顔も何とも可愛らしく男達の理性を揺さぶる。
『そろそろ、約束が欲しくてさ。』
一人がさり気なくキョーコに近付き、ドアが開かないよう手で抑えてキョーコの顔を覗き込んだ。
片手をついた口説きポーズにキョーコは気付かず、ちょっと近過ぎない?と内心で思いながらも見上げて首をかしげた。
『約束…ですか?』
『うん。京子ちゃん、いっつも誘ってもまたの機会に…って言うだろ?俺としてはその“またの機会”をちゃんと決めときたいわけ。』
さらにグッと顔を近付けられ、身を引こうとするもドアが背にあり逃げられない。
『でも、あの急にお仕事が入ることもありますし、お約束は…』
『うん。そう言うと思ったよ。京子ちゃん忙しいもんね。じゃあさ、今だけ相手してよ。』
『は?!』
キョーコが意味がわからないという顔をした時、相手の男が蓮の真似なのか何なのか、背後にキューンと鳴く仔犬を出して来た。
『今度…キスシーンの撮影があるんだ。だから、その練習にさ、付き合ってよ。』
『敦賀さんにみっちり付き合ってもらったんでしょ?』
『俺たちにも教えてよ。なんなら、その先まで…さ…』
キョーコの背中に悪寒が走った。
胸の中に湧き上がったのは嫌悪感。
『ね?だからさ、お願い…』
『いやっ!』
近付く顔に耐えきれず、突き飛ばした。
するとすかさず次の相手がキョーコに手を延ばして来た。
甘ったるい声が物凄く不快で、掴まれた部分から嫌悪感を感じてしまう。
『ねぇ、いいじゃん。怖がんなくていいからさ。俺たちだって、結構上手なんだよ?』
抵抗して暴れても、男の力はビクともしない。
『いやっ!いやっ!!助けて…助け…んぐ。』
首を降って、助けを呼ぼうと震える声を絞り出すも、その口は呆気なく背後から塞がれる。
『何で助けなんて呼ぶかな?怖いことなんて一つもないんだよ?』
『そうそう、俺たち優しくするしさ…』
ツツツ…と首筋を撫でられて、悪寒が走る。
『京子ちゃんってさ、甘そうだよね。凄く美味しそう…』
ーー嫌だ。嫌っ!!敦賀さんっ!!敦賀さん、助けてっ!!
《最終話*後編へ続く》
↑ここクリックで続きに飛べます。
そしてまず謝らせて下さい!!
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本編だけの状態でも、文字数オーバーの表示だったので、泣く泣く途中で区切りました!!
中途半端な所で切れるようになってますので、ご了承下さいませ。
それでは、蓮キョ☆メロキュン推進!『ラブコラボ研究所』メインリレーのラストをお楽しみ下さいませ(^-^)/
今までのお話をおさらいしたい方はこちらからどうぞ♪
ラブコラボ研究所のメインリレー
いつも俺の腕の中で
では最終話の前編、後編をお楽しみくださいませ☆
*****
いつも俺の腕の中で 最終話
「やっぱり…ズルいわ。」
腕の中から聞こえる可愛らしい声。
ズルいと言いつつも、困ったような嬉しいような響きが含まれているのだから、そんな言葉さえも蓮を喜ばせていることにキョーコは気付いているのだろうか?
全く、ズルいのはどっちだと思ってしまう。
磨けば磨くほど周りの期待を上回って輝きを増すキョーコ。
それを見て、どれだけ蓮が気を揉んだかということを知らないキョーコは呑気なものだ。
無自覚に魅力を振りまくものだから、蓮にとっては大変なんてレベルの騒ぎではなかった。
ショーモデルの仕事を終えてからというもの、それこそ、毎日次々と量産されてしまう馬の骨は、虎視眈々とキョーコを自分のモノにしたいと狙っていたのだ。
目を離せば食事に誘われ、腰を攫われる、そんな姿が視界を掠めるたび、蓮の中で焦りと不安が浮かんだことなどキョーコは知りもしないだろう。
蓮の目の届く範囲だけでもかなりの数の馬の骨が何かしらのアクションをキョーコに起こしていたのだ。
そしてそんな男から寄せられる好意に疎いキョーコが満面の笑みで談笑してるもんだから、タチが悪い。
だからドラマで共演出来るようになってからは、蓮はなるべくキョーコを自分の側に引き止めつつ、馬の骨がおいそれと近付けないような空気を作る必要があったのだ。
ショーモデルのレッスンをこの場所でやっている間はまだ良かった。
何だかんだでキョーコを独占出来て、自分のプレゼントした服で全身を着飾って、自分しか知らないキョーコの無防備な姿を堪能出来たからだ。
他の誰よりも自分は彼女に近い位置にいると確信出来た。
しかし、一緒にドラマで共演し始めた頃にはキョーコを取り巻く環境が余りにも変わりすぎていた。
艶やかな微笑み、流れるような仕草、万人を虜にする演技力、完璧な大和撫子を思わせる立ち居振る舞い。
モデルとして高級ブランドのイメージモデルへの抜擢や大きなショーからのオファーを受けまくり、女優としても『DARK MOON』の本郷未緒役で「日本ドラマアカデミー」の助演女優賞と新人賞をダブル受賞。
そしてなんと「BOX"R"」の撮影中にピンチヒッターで出た映画でも新人賞と審査員特別賞を受賞。
そしてその京子のイメージと、キョーコ自身のキャラクターのギャップがまた人気を加速させるのだ。
ドラマの撮影の合間に数々のオファーを鮮やかにこなして、どこにそんな元気が残っているのだろう?というくらいの弾けんばかりの笑顔を振りまくキョーコに、蓮の方が振り回されていた。
常にキョーコに張り付くことはままならない為、社長にお願いしてマネージャーをつけてもらったが、それでも蓮の心配が消えることはなかった。
ドラマの撮影もあと数日残すばかりとなったその日、事件が起こった。
蓮はドラマを見ながら付き合うきっかけにもなったその日のことを思い出して、苦笑を零すと、腕の中にいるキョーコを宝物のように優しく抱き締め、頭に一つキスを落とした。
キョーコが腕の中で甘えるように身を寄せて来て、蓮は更に抱きしめる腕に力を込める。
「このシーンを見ると、あの日のことを思い出すよ。」
キョーコの頭に顎を乗せて呟けば、キョーコがうっと、肩を窄めて可愛い唇を尖らせた。
「だって、あんなことになるとは思わなくて…」
「うん。わかってる。でもあれは…ね。」
思い出すと今でも不安になる。キョーコが蓮の元から他の男にさらわれるのではないかと思ってしまうのだ。
蓮がキョーコの手を辿り指を絡める。
キョーコはそんな蓮の指先に甘えるようにそっと絡め返すと、画面を見つめながら二人でその日の出来事を思い出した。
その日は来日したハリウッドスターのインタビュアーに京子が抜擢されたという情報を社が仕入れていた為、ちょうどタイミング良く訪れた撮影の待ち時間に、蓮は楽屋のテレビを観ていた。
にこやかに映画の質問に応じるハリウッドスターに改めて、今大注目の日本の代表タレントとしてインタビュアーの京子が紹介され現れると、その二枚目俳優の目の色が変わった。
ドラマの番宣も兼ねている為、この日のキョーコは、加絵の役のままの容姿で出ることになっていたので、肩まである栗色の髪が綺麗に巻かれ、加絵の休日スタイルなのだろう、服装もカジュアルでありつつ上品。短めのスカートで生足を晒して高めのヒールを履いていた。
歩き方も蓮直伝だけあり、世界最高のスーパーモデル並の輝きを放っていた。
京子の身体を上から下まで値踏みするように熱い視線を滑らせる。軽く口笛を吹いた後、満面の笑みで京子の握手に長めに応じたハリウッドスターを見て、蓮は持っていたペットボトルを思わず握りつぶしてしまった。
促されて座っても、そのハリウッドスターは京子に熱視線を浴びせ続け、気付けばカメラの前だというのに、なんと本気で京子を口説きにかかったのである。
対する京子はと言うと、単なる社交辞令と捉えており、ハリウッドスターの本気の口説きにも関わらず、さり気なく且つ、鮮やかに持ち前の曲解思考で躱して見せたのだ。
普通のインタビュアーや女優ならば、こんな風にハリウッドスターから熱視線を浴びせられた場合、多少なりとも満更でもない様子を見せるはずなのだが、何事もなかったかの様に普段と全く変わった素振りを見せずにこやかに会話をする京子を観て、ハリウッドスターは最後の最後には諦めたのか、おどけた素振りでお手上げポーズを取って笑いを誘ったのだった。
このキョーコの慣れたような華麗な対応には、撮影したスタッフも唖然。
番組を観ていた視聴者からも、様々な意見が寄せられた。
京子を神だと崇めたてたり、どれだけ京子は理想が高いんだとか、京子には既に恋人がいるのではないかとの問い合わせがテレビ局に殺到したという。
当然、テレビを観ていたこの男達も衝撃を受けていた。
社は顔を引き攣らせたままフリーズしている蓮に話しかけた。
『わかってはいたけど、やっぱり…手強いな…キョーコちゃんの曲解思考…。』
『そう…ですね。』
引き攣った怖い笑みを浮かべた蓮が答える。
『さすがラブミー部。抱かれたい男No.1のお前があそこまで激しいスキンシップとっても靡かないだけある。』
納得したように難しい顔で頷く社に、蓮は返せる言葉もない。
『苦労するはずだよな、蓮も。』
『まぁ、あんなナンパな男に引っかからなかったという点では良かったじゃないですか。』
面白くなくて、ムスリとした表情で答えると、社は更に言い募り始めた。
『そうだけどさぁ~。お前、ハリウッドスターのあんなにストレートな表現をキョーコちゃんはヒラリと躱すんだぞ?!それをわかって…』
ーーコンコン。
社が口うるさくなってきた所でちょうどいいタイミングで楽屋にノックの音が響いた。
『まぁまぁ、ほら社さん、来客のようですよ。』
『ったく。…はい。あ!!キョーコちゃん!!』
噂をすればなんとやら、どうやら京子が現場入りして楽屋挨拶に回っていたようだ。
『社さん、おはようございます!!敦賀さんはいらっしゃいますか?』
『おはよう。うん。いるよ!入って入って~。セバスチャンさんもどうぞ。』
『はい。失礼しますね。』
『失礼します。』
キョーコがにこやかに入室するのに続いて、現在京子のマネージャーを務めているセバスチャンも入ってきて丁寧に扉を閉めた。
蓮は立ち上がると、セバスチャンがドアを閉めるためまだ背中を向けている間に、既にキョーコを腕の中に収め、ギュッと強く抱き締めていた。
『ん。つ、敦賀さん?』
余りにも強く抱き締めてくる蓮にキョーコは苦しげに声を出すと、蓮からも声が絞り出された。
『会いたかった…。』
そのたった一言が、キョーコの心をざわめかせる。
キュウンと心臓が痛いほど声をあげた。
『私も…です。』
顔を一瞬だけ曇らせたキョーコが、そっと囁いて、蓮の脇腹をギュッと握りしめ、蓮の胸に顔を埋めた。
ーーー恋人同士でもないくせに何でこんなにベタ甘カップルみたいな空気を出すんだ!!
何とも居た堪れないのは社である。口の中にザラザラとした感触を感じながら、右へ左へどこに定めたらいいのかと視線をキョロキョロと変えている。
セバスチャンはと言うと、ドアの横に無表情で突っ立って二人を微動だにせずみつめていた。
そんなセバスチャンを尊敬の眼差しでしばし見つめてしまう社が、そっと二人に視線を戻すと、次の瞬間、二人のキスシーンが目に飛び込んできて慌てて目を逸らし動揺してしまった。
ーーーるるるるるぇぇぇぇぇん?!?!?!?!な、ななななななっ!!!!えええぇ?!これは?!一体?!どーいうことなんだよぉぉぉぉーー!!!!
動揺する社をそっちのけで、蓮はキョーコの唇の甘さに酔いしれていた。
そうすることで、先程まで感じていた不安が少しずつ薄れて行くのだ。
恋人でもないくせに、彼女の唇の甘さを知ってしまっては触れずにはいられない。
彼女の演技の練習を言い訳にしてキスをする自分をどう思っているのかなんて、この時までは考えもしていなかった。
唇をそっと開放すると、キョーコが珍しくぎゅっと抱きついて来た。
胸に顔を埋める姿が愛しくて、もしかして俺の想いを受け止めようとしてくれているのだろうかと、勝手に期待が膨らんだ。
『あと…少し、ですね。』
抱き付いたままの彼女から淋しそうな声が聞こえた。
撮影のことと思い、同意する。
『そうだね。あと、少しだ…。』
優しく抱き締めて応えると、キョーコの身体が小刻みに震え始めたのが分かった。
『??最上さん?』
『…好き…』
『…え?』
ーードクン。
心臓が煩いほど音を立て始めた。
ーードクドクドクドク。
『好き…かも…。』
ポツリと呟くように落とされた音が、蓮の中で言葉となり脳に届けれるまでに暫く時間が掛かった。
何か答えなくてはと、声を出そうとした所で、喉が緊張からカラカラになっていることに気付く。
蓮が何か答えるまえに、キョーコがそっと蓮から身を離して照れたように笑って明るい声で言った。
『なーんて。一度、加絵を憑けずに誰かに言ってみたかったんですよね。』
そして一瞬、翳りを帯びた顔になり、フッと淋しそうに微笑んだ。
『加絵が出来て…良かったです。練習…今まで付き合って下さってありがとうございました。』
困惑した顔の蓮に構わず、ぺこりと丁寧にキョーコが頭を下げると、セバスチャンがスっとキョーコの側に立ち、紙袋をキョーコに手渡した。
『ありがとうございます。敦賀さん、こちら今日のお弁当です。ちゃんと、食べてくださいね。』
セバスチャンから手渡された紙袋を差し出して、キョーコがニッコリと微笑む。
『手の掛かる後輩ですみません。でも、敦賀さんに演技指導して頂けて、とても良い勉強ができました。』
『…もがみ…さん?』
『敦賀さんの演技指導のお陰で、私はちゃんと最後まで加絵を演じられますから。もうこれ以上は大丈夫です!問題のキスシーンは今日ですし、これがクリア出来たらもう、これ以上恋人役の練習は必要ありませんから。今までありがとうございました!!』
キョーコの言葉の意味を理解することを拒否しようとする脳は上手く働かない。思考が固まるのと同じく蓮もその場に固まってしまった。
キョーコは自分の溢れそうな蓮への想いを抑えるのに必死で蓮の顔色を気にする余裕がなく、そんな風に呆然と佇む蓮を残して、足早に蓮の楽屋を後にするのだった。
蓮に別れを伝えたことで、心の中から淋しさと憂いが表面に滲み出ていたのか、この日の男性の誘いはしつこいどころの騒ぎではなかった。
撮影本番、二人の切ない想いで交わし合ったキスは、見ていた共演者やスタッフに強烈なイメージを残しており、キョーコを狙う男の目にギラギラとした獲物を狙う色が強く灯った。
『あ、京子様。電話が掛かって来たので少し離れます。ここで待機する必要もないので、楽屋に行きましょう。』
『わかりました。』
二人が連れ立って楽屋に向かうと、数人の男たちがそのスタジオから離れた。
『では、私は電話をして来ますから、キチンと鍵を掛けてて下さい。』
セバスチャンがキョーコにそう声をかけて楽屋から離れると、反対側の通りから数人の男たちが顔を出した。
ーーコンコン。
『はーい。』
『京子さん、安藤です。今、ちょっとだけいいですか?』
『あ、はい。少々お待ちくださいね。』
ーーガチャ、キィー
『お待たせしました。何か問題でも?』
セバスチャンに言い聞かせられていた為、少し警戒しながらソロソロと扉を開けたキョーコは安藤以外にも数人がいることに、ほっと胸を撫で下ろして、扉を開放した。
男性と二人っきりになることは蓮からもセバスチャンからも避けるように言われていたのだ。
『いや、ちょっとね。入ってもいいかな?』
『あ。はい。どうぞ。』
『お邪魔します。』
ゾロゾロと入ってきた5、6人の男達に、何だろう?と思いながらも、キョーコは他に人がいないことを確かめて扉を閉めた。
『それで、皆さん、お揃いでどうされたんですか?』
そう尋ねる不思議そうな顔も何とも可愛らしく男達の理性を揺さぶる。
『そろそろ、約束が欲しくてさ。』
一人がさり気なくキョーコに近付き、ドアが開かないよう手で抑えてキョーコの顔を覗き込んだ。
片手をついた口説きポーズにキョーコは気付かず、ちょっと近過ぎない?と内心で思いながらも見上げて首をかしげた。
『約束…ですか?』
『うん。京子ちゃん、いっつも誘ってもまたの機会に…って言うだろ?俺としてはその“またの機会”をちゃんと決めときたいわけ。』
さらにグッと顔を近付けられ、身を引こうとするもドアが背にあり逃げられない。
『でも、あの急にお仕事が入ることもありますし、お約束は…』
『うん。そう言うと思ったよ。京子ちゃん忙しいもんね。じゃあさ、今だけ相手してよ。』
『は?!』
キョーコが意味がわからないという顔をした時、相手の男が蓮の真似なのか何なのか、背後にキューンと鳴く仔犬を出して来た。
『今度…キスシーンの撮影があるんだ。だから、その練習にさ、付き合ってよ。』
『敦賀さんにみっちり付き合ってもらったんでしょ?』
『俺たちにも教えてよ。なんなら、その先まで…さ…』
キョーコの背中に悪寒が走った。
胸の中に湧き上がったのは嫌悪感。
『ね?だからさ、お願い…』
『いやっ!』
近付く顔に耐えきれず、突き飛ばした。
するとすかさず次の相手がキョーコに手を延ばして来た。
甘ったるい声が物凄く不快で、掴まれた部分から嫌悪感を感じてしまう。
『ねぇ、いいじゃん。怖がんなくていいからさ。俺たちだって、結構上手なんだよ?』
抵抗して暴れても、男の力はビクともしない。
『いやっ!いやっ!!助けて…助け…んぐ。』
首を降って、助けを呼ぼうと震える声を絞り出すも、その口は呆気なく背後から塞がれる。
『何で助けなんて呼ぶかな?怖いことなんて一つもないんだよ?』
『そうそう、俺たち優しくするしさ…』
ツツツ…と首筋を撫でられて、悪寒が走る。
『京子ちゃんってさ、甘そうだよね。凄く美味しそう…』
ーー嫌だ。嫌っ!!敦賀さんっ!!敦賀さん、助けてっ!!
《最終話*後編へ続く》
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