予告通り、めろきゅんのメインリレー17話です。

実は携帯から打つの、もう字数がいっぱいいっぱいなので、リンクは貼れません!
相変わらず不親切でごめんなさいm(._.)m

とにかく甘め・とにかくいちゃこらを目指しました←しかし当社比





゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆いつも俺の腕の中に 17話゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆




セバスチャンが『京子』の臨時マネージャーについてから、キョーコがトラブルや共演者に絡まれる機会も少なくなった。
それは社長の遣わした、有能すぎる彼による功労も勿論あるのだが…

実のところ、一番効果を発揮しているのは、蓮とキョーコのスキンシップの激しさだった。


「最上さんおはよう。今日のお弁当って何?」
「あ、おはようございます敦賀さん!今日はリクエストいただいた通り、野菜の肉巻きを入れてきましたよ。たれは甘めでよろしかったんですよね?」
「うん。以前食べさせてもらった味が忘れられなくてね…甘めなのに口に残り続ける事もなくて、すごく気に入ったんだ。」
「本当ですか!?あれは私のオリジナルレシピなんです!気に入っていただけて嬉しいです。」

ただ言葉だけ聞いていれば、何の問題もなさそうな先輩後輩のやりとりなのだが…

問題は二人の距離にあった。

挨拶の段階から、蓮はキョーコを背後から抱きしめ、キョーコはそれをさも当たり前のように受ける。
料理を褒められ喜んだキョーコが向きを蓮と対面する体勢にくるりと変えても、その距離は変わらない。
それどころか、キョーコも蓮の腕に手をそっとかけ、二人のからだの触れ合う面積はますます増えて…

まるで本当に恋人同士のようだ。


「本当だよ?最上さんの作ってくれる料理はどれも美味しいから、毎日ずっと食べていたいね。」
「それなら毎日お弁当作ってきましょうか?」
「出来れば、一生ずっと朝昼晩と、君のご飯を食べていたいくらいなんだけどなぁ…」
「ふふっ、またそんな事。お世辞でも嬉しいです…敦賀さんにそう仰っていただけると、もっともっと料理の腕を上げたくなるんです。」
「なら俺の家においでよ。俺が毎日試食しますよ?」
「ええ~?だって敦賀さん、みんな『おいしい』としか言ってくださらないんですもの…それじゃ腕が上がりません。」
「本当に美味しい物を誉めないでどうするの。最上さんが心を込めて作ってくれる料理がどれも美味しいのは本当だよ?」

『カイン』と『セツカ』の時よりも、さらに激しいスキンシップによる甘ったるい空気。
そして天然フェミニストが標準装備の蓮による口説き文句と褒め殺し術により、周りの共演者・スタッフ…社までもが砂吐き地獄を毎日体験していた。

この空間で顔色一つ変えないのは、もうセバスチャンただ一人だけだ。


「どうしてあれで付き合ってないって二人とも言うんだろう…」
「どう考えてもあれは恋人同士のスキンシップよねぇ。」
「京子ちゃん…狙ってたんだけどなぁ(泣)」

あちこちから聞こえる溜め息も、二人の耳には届かない。

二人の世界を見せつけられ、口の中がじゃりじゃりむずむずするのを我慢する人達の願いはひとつだった。

(((お願いだから、あまぁい空気は二人だけの時にやって!!!)))


勿論、誰も本人達には突っ込めないのだが。





「はぁ…いよいよ撮影も佳境に入ってくるのね。」

休憩中、無性に一人になりたくなったキョーコは、光と千織の昼食の誘いを断り、いつもの非常階段に腰掛けていた。


ドラマの撮影は、蓮もキョーコも難しい設定なのにリテイクをほとんど出すことなく、順調に撮り進めることができていた。

すでにオンエアも始まっており、鳴海と加絵の反発しあいながらも息の合ったぴったりな言葉の掛け合いが視聴者にウケている。
そして、今年も抱かれたい人気俳優NO.1の座をキープした『敦賀蓮』と、今をトキめく『京子』とのW主演と言う話題性。

昨今視聴率が取れないと悩んでいるドラマの中ではトップを走っていた。


撮影も後半に入ってきている。
そう、それは二人のキスシーンの撮影も近いという事を意味していて…

キョーコはそのシーンを意識しすぎるあまり、どんどん落ち着かなくなっていたのだ。

「はぁぁ~~!『好き』…『好きかも』…あああ!どういう風に言えばいいのかしら…!!」

実際にはキスシーンよりも前の回で、加絵の方から鳴海に対して告白もどきなセリフが入る。

お互いの認識が決して悪いものではないと確認し合うために、そのセリフが来るのだが…

「『好き』だなんて言葉、ショータローにうにゃららしてた時以降まるっときっぱりさっぱり捨ててきてたんだもの…!思い出せと言われても……」

あの頃を思い出そうとすると、ここ最近は出番のなかった怨キョがひょっこり顔を出そうとする。
勿論『加絵』と『最上キョーコ』が似てるからと言って、『加絵』に怨キョは必要ない。
慌ててうにゃららな記憶を消しにかかる。


「別にそんなもの思い出さなくていい。」
「えっ…敦賀さん?」

階段の下から急に声を掛けられ、キョーコはびくっと肩を震わせた。

階下には、キョーコの苦手とする蓮の顔の一つ…似非紳士スマイルの蓮がいる。

(何故ここで怒っているのでしょうか――――!?)

せっかくしまった筈の怨キョが、キョーコの頭上で喜び踊る。
びしっと直立不動で蓮が階段を上がってくるのを待っていると、目の高さが同じになる2段下で蓮は止まった。

「どんな役でもこなせる俳優を目指すんだろう?だったらあいつの事なんて関係なく、『好き』の一言くらい言えないと。」
「え、はい…それはそうなんですけど。」
「それとも…やっぱり経験してみないとダメって思うんだったら、俺が練習台になろうか?」
「……はい?」
「いくらでも練習に付き合うって言っただろう?俺に『好き』って言ってごらん?」

キョーコは、目の前の男が何を言っているのかを理解するのに時間がかかった。

本当に好きで、でも想いを隠そうと思ってる人に対して『好き』と言えと…!?
この人はなんて事を提案してくれるんだろうか!


心の中で軽くパニックを起こすキョーコだが、しかし蓮は引き下がらない。

「どっちにしても、本番で言う相手…『鳴海』は俺なんだよ?場所は違うけど、リハだと思って気楽に…ね?」
「え、え…はい、まぁ…そうですよね……」

首を少し傾げた蓮の、さらりと流れた黒髪が。
自分を思って言ってくれているとわかる、真摯な蓮の瞳が。

キョーコの心を次第に熱く揺さぶり、決心を固めさせる。

(そうよね…だって、二人でいる時だけはこの想いを解放しようって。私が決めた事なのよ…今なら『加絵』のせいにして逃げることもできるよね…)

「俺ってそんなに頼れない先輩かなぁ…練習相手に不足している部分があるなんて、俺もまだまだだなあ。」

思考の小部屋に籠ってしまいそうなキョーコの様子をいち早く察知した蓮が、急に声のトーンを変え、やれやれと残念そうに声を上げた。

はっとキョーコが気が付くと、最近蓮がお願い事などをする時によく繰り出すあの表情が…

(どっ、どーしてそんな捨てられた子犬みたいな目で見るんですか!やめてやめて…!!私ったら本当にこのわんこモードの敦賀さんには弱いのよ――――!)

「違いますちがいますったら!そういう事じゃないんです~!ぜひ練習にお付き合い願いたいです!不足だなんてとんでもないですぅ~~~~っ!!!」
「そう?良かった。」

必死で蓮の言葉を否定するキョーコに、にっこりとほほ笑む蓮。

ぜはーっ、と一つ大きく深呼吸をするとキョーコはふるふると頭を振り、『加絵』を憑けるフリの為に蓮に声をかけた。

「じゃあ…よろしくお願いしますね、敦賀さん。今『加絵』を憑けますから…」



蓮は「『加絵』を憑ける」と言ったキョーコの言葉に、少々がっかりしていた。
(本当は素の最上さんで練習してほしかったけど…まあ、仕方ないか。)

ショータローはキョーコから『好き』と言ってもらった事があるのに、自分にはない。
その差が負けている気がして、少し悔しかったのだ。

だから、最近キョーコが弱いと気付いた表情までして見せたのだが…
結局役に逃げられてしまった。

それは非常に残念な事なのだが、しかし現状彼女の一番側にいるのは自分である。

自分にだけ特別心を許してくれているのを実感するたびに、彼女を狙う馬の骨に乱される心の嵐が凪いでいく。
キョーコをもっと感じていたくて、スキンシップも自然と多くなっていく。


―――このままずっと彼女の隣にいられる権利が欲しい。


その為にはまず、『役の練習』と言う言い訳を撤廃するために、一歩踏み出して関係を前進させるしかない。

(ロマンティックなのが好みな最上さんに合わせて、色々と準備は必要だよな…)
「―――さん、好きです。」

キョーコの事を言えないくらい自分の思考に耽っていた蓮は、一瞬役の名前ではなく自身の名を呼ばれた気がして正気に戻った。

目の前には頬を染め、大きな琥珀の瞳を潤ませたキョーコの姿……
それは、無鉄砲で恋に奔放な『加絵』ではなく、『最上キョーコ』の素の表情だった。

「『わたし嫌いじゃないですよ、鳴海さんの事…むしろ、好きかも。』」

女の子らしいぽてっとした唇から紡がれるのは加絵の台詞なのに、 その表情は完全にキョーコ本人。

普段の撮影で『加絵』の一時の恋の相手になる男達を誘うキョーコは、どちらかと言うとナツのように強気で攻めの姿勢だ。
なのに、今の彼女は彼等にしなだれかかる姿とは似ても似つかぬ、純情を絵にしたような表情。

ぎゅっと胸の前で組んだ手が小さく震え、ますます『加絵』らしさを感じさせない。

まるで素のキョーコが自分へ告白してくれているような錯覚に、蓮は目眩を起こしそうになった。

(本当に、君って子は…!)

「『でも仕事に影響でるのはホント嫌ですから、今の言葉はわす』っん!?」

ドラマ内での本当の告白は鳴海からの設定になっている為、まだもう少し先のシーンで。
今練習している台詞だと、加絵からの告白は『忘れてください』と続いてしまう。

(最上さんからの告白…たとえ台詞とわかっていてもなかった事にはしたくない!)

気がついた時には、台詞を口にさせないようにキスで塞いでいた。

普段のスキンシップは激しいものの、キスは唇以外にずっとしていた二人。
久し振りに触れ合わせた唇は、相変わらず甘く柔らかく……
蓮は思わず啄み出していた。


「……台詞、最後まで言えませんでしたけど。」

うっかり長くなってしまった口付けの後、くたりと力の抜けたキョーコが寄りかかりながら抗議の声をたどたどしく上げる。

確かにこれでは練習にならないよな。
さて、何て言い訳しよう。

弱々しくもぷぅ、と口を尖らせるキョーコに、今回は結局蓮も役を言い訳にした。

「ごめん…あんまりにも可愛かったから、つい『鳴海』は止まらないんじゃないかな、なんて思ったんだ。」
「で、でもそれじゃ台本通りには進めないじゃないですか。」
「そうだね。少し『鳴海』の設定を間違えてたかな…ごめんね?」
「敦賀さんでもそんなことがあるんですね……もう、いいですよ。」

寄せ合う体をどちらからともなくきゅう、と抱き締めると、『好き』という気持ちが溢れ伝わりそうな気がして。
戸惑いながらも、蓮もキョーコもあと少しだけ…と離れられないでいた。



役を口実にした口付けは、二人の想いを隠しきれないほど甘く痺れる時間をもたらし。

自分達の気持ちがすでに『先輩後輩』と言い張れないくらいに溢れている事を、改めて実感させた。



二人の関係に、『恋人』と言う新しい名前が付くまで、あと少し―――



**18話へと続きます**


************

フェミニストと言うよりセクハラちっく?←