今度も土下座で提出!魔人の番だよ、メロキュンリレー!!

3か月振りの更新です!!。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。

蓮キョ☆メロキュン推進!『ラブコラボ研究所』リレー企画「いつも俺の腕の中に」の1~14話はこちらからお読みください。

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『いつも俺の腕の中に 15』

ドラマ『いつも俺の腕の中に』の撮影は細部にまで拘る緒方啓文が監督を務めるだけあって、近年のドラマ撮影の常識からすれば、かなりゆったり目のスケジュールがとられていた。1話放送時に2話目を撮影、場合によっては放映3日前に・・・・なんていう綱渡りもアリなドラマ作りが横行している中、2話目を撮影したあと、2週間も撮影なしの日がある上に、放送開始までまだ1か月もあった。

許可が必要な特殊な建築物や、話題にもなった主演二人や脇役俳優の豪華さからくるスケジュール調整が難しかったから、というのが理由らしいが、2週間というのは蓮には長くて辛い休みでしかなかった。

勿論、業界一の忙しさを誇る俳優にそんな長い期間の本当の休みなどある筈もなく、その他の仕事は溢れるほど抱えていたのだが。隙間なく埋められたスケジュールの中に、キョーコと会える仕事がひとつもないという素晴らしいすれ違い具合に、この先2週間のことを考えるだけで蓮のテンションは下がりまくっていった。

(はぁ~・・・今現在唯一の接点であるこのドラマの共演は、長い間待ちこがれた末に訪れた幸運だった筈なのに・・・・これから2週間も会えないなんて、酷い冗談だ。耐えられるかな、俺・・・・)

再来月にあるファッションショーの為のフィッティングの待ち時間に、控え室の椅子に座りながら拗ねまくっていた蓮だが、側に複数の人の気配を感じて顔をあげた。

「ん?君達、俺に何か用?」
「うん、ちょっと聞きたいことがあってね。今いいかな?」
「いいけど?」

「敦賀君、京子と同じ事務所だよね?」
「・・・・それが?」

「うん、俺たち、実は京子のファンなんだよね」
「そ・・・・うなんだ。有り難う」

このあとの展開には嫌な予感しかしない蓮だったが、一応事務所の先輩としての顔で御礼を言う。

「彼女、いいよね!!」
「前は少し子供っぽい感じでさぁ、可愛いけど妹系だと思ってたんだよね。でも、今なんか凄ぇじゃん?もうあの色気!!美しさ!!堪んないだよね」

「ドラマのナツもヨカッタけど、あのショーは凄かった!!もうあれで俺は完全に落ちたもん」
「「「俺も!」」」

聞きたいことがあると言いながら、蓮のことなど忘れたかの様に、椅子に座っている蓮の頭の上で京子の話に熱中するやたらと背の高い男達・・・・ショーで共演する予定の8人程のモデル(モデル兼俳優含む)。

キョーコを褒められること自体は嬉しいことだったが、彼らが清らかな心で只京子を崇拝している様には見えず・・・・蓮の機嫌は瞬く間に急降下していく。ハイテンションなオオカミ達はそれにはまったく気付かずに、どんどん話を危険な方向に進めていったのだが。(聖ガールなキョーコには聞かせられません)

「あの足最高!むしゃぶりつきたくなんねぇ?」
「なるだろ!触りたいよな・・・・ツルツルで手触り良さそうだし、もう撫でまくりたいよ、俺は!いや、舐めまくりたい?」

「お前、変態っぽいぞ!俺は背中かなーー!こう、背中から手をすべらしたい感じ?」
「どこへだよ!俺は、そうだなー!とりあえずキスしたいかな!あの目で見つめられたらさぁ・・・・我慢できる気がしないんだよな~」

「お前、イヤらしいキスしそうだよねー」
「あの京子相手に、バードキスで終わるなんて無理!」

「いやでも、先ずはこう足下に跪いてみたい気もする!」
「おまえMか!」
「「「いや、でもその気持ちはわかる!!」」」
「女神みたいだったもんなー、あのショーの京子」

「あ、こないだ出た雑誌みたか?あれも最高だったぞ!!露出はそうでもなかったけど、もう気怠げな感じでさぁ・・・・一緒に写ってた相手役の男は確実に落ちたと思うな」

「あんな、彼女ほしーーー!」
「俺と付き合ってくんないかな」
「いや、それなら俺でしょ!」

ピキッ!ぷるぷる ←

「あの見た目も最高だけどさー、性格は女王様なんかじゃないって聞くよね」
「もの凄く礼儀正しくて、中身はかなりの大和撫子らしいよな・・・・着物とかも自分で着れちゃうらしいし」

「おまけに料理はプロ顔負けだぞ!こないだバラエティ対決でプロに勝ってたし!それも、3ジャンルでだぞ!?」
「和食が得意なんだろ?」

「和食は天下の◯◯の板前に勝ったんだよ。包丁さばきと料理の両方で!で、パティシエにはケーキ対決で勝って、なんとフレンチのシェフにも創作料理で勝っちゃったんだよ!プロと一般人両方の判定でさ!」
「「「「「「「凄ぇーーー!!」」」」」」」

「彼女ってのもいいけどさ、嫁にほしいな、京子は!」
「「「「「嫁!!いいね!!」」」」」

「家に帰ったら和服の京子!毎日最高の料理!最高の女!記念日には色っぽいドレス着せてホテルでディナー!そのあとは・・・・ああ!!!」
「おまえ、結婚後の妄想はまだ早いんじゃないか?」
「早いかもだけどさ、とにかくあんな娘と付き合いたい!そんでできれば結婚したいよ、俺は!」

ピキピキッ!ぷるぷるぷるぷる ←

「毎日でもしたくなりそうだな」
「「ああ!抱きしめたい!キスしたい!!」」
「「俺だけのものにしたい!」」
「「ヤリたい!!」」

ビシビシビシっ! ←額はもう大変なことに。
ぷるぷるぷるぷるぷるぷる ←身体の押さえはもう・・・・

ブチっ! ←なんかキレた!

バキッ! ←なんか折れた!

「「「「「「「「へ?」」」」」」」」

京子話に熱中していた8名のオオカミは、飛び交うその会話の真下から大魔王が出現するなど夢にも思っていなかった。そして、それが夢でも幻でもなく現実に出現したあとには・・・・敦賀蓮と思しき男・・・・細くはないヘアブラシを素手で折った多分敦賀蓮だと思われる男に、当初しようとしていた質問を投げかけられる勇者は誰一人いなかったという。


蓮からすると、腹が立って許せないだけでなく、危機感を煽られまくりなオオカミ男共の会話だったが、この手の話を聞かされる機会はこれだけではなかった。

あのショーのあとから爆発的に増えた馬の骨だが、彼らが京子の噂話で満足していた時期はとうに過ぎ去り、今や大活動期に入っていたのだ。皆が皆、「京子に直接近づこう」という意図を持ち、只の先輩であると判断した敦賀蓮にその情報をもらおうと近づいてくる。

毎日、毎日、あらゆる男達が、「事務所の先輩である蓮」に、京子のことを聞いてきた。それは蓮の神経を逆撫でし、キョーコへの餓えを加速させた。

しかし神は彼の味方をした様だった。蓮があらゆる意味での限界を迎えようとしていたその日・・・・ドラマの撮影休みに入って1週間目のその日に入ったメールが彼の窮地を救った。

ーー今日のラストの仕事が延期になったそうなので、晩ご飯を作りにお伺いしたいと思います。敦賀さんはお忙しいと思いますので、お借りした鍵で入らせていただいて、今日の晩ご飯と冷凍ストックを準備しておきます。お帰りになられましたら、ちゃんと召し上がってくださいね?ーー

午前中に入った恋しくて堪らないキョーコからの提案。そこに書かれた内容通りでは満足できない彼は、食事だけでなく、キョーコも味わうための返事を返信し、鬼気迫る勢いで周囲を巻き込み2倍速で仕事をこなし、敏腕マネージャーにその敏腕振りを無理矢理発揮してもらい、彼としては非常に早い時間に帰路に着いた。

そして、キョーコが「蓮の部屋にいる」時間内に、なんとしてでも帰りついて見せる!という蓮の執念は、自宅マンションの入り口で叶えられた。

マンションの正面ゲートへの道を歩くキョーコを見つけた蓮は、その時点では走行中で合図を送ることはできなかったが、車を駐車場に入れたあと、正面ゲートに先回りしキョーコを捕まえた。その華奢な腕から買い物袋を奪い取り、腰に手を回して、エレベーターへと急ぐ。

(早く!早く!)

限界まで来ていた餓えは、キョーコの姿を見つけた瞬間もう持ち堪えるのは不可能な状態になっていた。部屋まで持たない・・・・ならばエレベーター内で臨時補給する他ないではないか。

ドアが開くまでの僅かな時間にも、餓えが増す。そして・・・・

「つ、敦賀さん??」

自分の腕の中から戸惑いの声をあげるキョーコ。テレビの中から聞こえているのではないその声に、餓えが少しだけマシになった。でもまだ足りない。全然足りない。更に強く、ぎゅうっと抱きしめなおしたとき、エレベーターの到着音がもっといい場所に着いたことを教えてくれた。

小さな箱の中から自宅のあるフロアの廊下に移動した蓮は、買い物袋を足下に置いて、部屋に辿りつくには足りない分を補給した。

いつもの様に、頭に、額に、頬に・・・・そして最近になって漸く許された唇にキスの雨を降らす。

「・・・・敦賀さん?」
「ん・・・・もう少しだけ、ここで」

再びぎゅうっと抱きしめたあと、キョーコを解放しようとした蓮だが、それはキョーコによって阻止された。

蓮の首に回した手で、上方にあった頭を引っぱり降ろそうとしたキョーコだったが、頭頂部までは届きそうもなく、仕方なく首筋にあった髪にキスを贈る。そのまま顔をずらし、頬とこめかみに口付けを落とす。

仕上げにキュッと抱きつくと、耳元に「おかえし・・・・」と色っぽく囁いてから唇を合わせ、身を離した。

「ならば、俺が最上さんが役を掴めるまで、時間の許す限り、練習相手になるよ。俺がこうやって君に触れたら、君も同じようにして俺に触れるんだ」

蓮の提案で始めた加絵役の練習での、キス。これまでは、蓮が出すスタートの合図で始められていたそれを、合図がないままに進める二人。練習という言い訳を双方が忘れる日は近い様に見えた。

キョーコが欲しくて堪らない蓮と、2人でいる時だけは想いを解放すると決めたキョーコ。

この夜から、一応人前ではキョーコへの想いをセーブしているつもりの蓮と、ヤンマガ兄妹を演じた経験により世間とは少しずれた感覚を身につけてしまったキョーコの「人前でみせてもオッケーな只の先輩後輩レベルのスキンシップ」の幅が大幅に伸びる事となった。

こののち、モデルとして高級ブランドのイメージモデルへの抜擢や大きなショーからのオファーを受けまくった京子は、女優としても『DARK MOON』の本郷未緒役で「日本ドラマアカデミー」の助演女優賞と新人賞をダブル受賞し、「BOX"R"」の撮影中にピンチヒッターで出た映画でも新人賞と審査員特別賞を受賞。その輝きと才能を世間に認められることとなる。

「キョ―コさんはこれから世間に認められる人だからスキャンダルは困るんですよね まして今の時点であんな男と噂になったら潰されるのはキョ―コさんの方じゃないですか!」と怒っていた天宮千織の心配が杞憂に終わりそうな程、女優としての地位を上げることとなる京子。

そして、知名度があがり、人気が上昇する度に増えていく京子目当ての馬の骨を前に、平静ではいられくなる程の不安を抱きだした蓮の行動がエスカレートしていくことになるのだが・・・・。

この夜の二人にはそれを知る由もなく。

束の間の逢瀬を楽しむ恋人の様にしか見えない只の先輩と後輩は、照れ合いながら廊下から目的地である蓮の部屋へと入っていったのだった。


続く




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