TOTOギャラリー・間で「スミルハン・ラディック展」を観た! | とんとん・にっき

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TOTOギャラリー・間で「スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集」を観てきました。スミルハン・ラディックは、チリの首都サンティアゴを拠点に独創的な活動を続ける建築家です。


BESTIARY:寓話集

よく描けた挿画には、描き手の脳裏をかすめた確信らしきものが、必ず現れているように思う。どんな方法で描かれていようと―ドローイングであれ、模型であれ、写真であれ―その絵は周囲に啓蒙的な影響を与える。描くことで人を啓蒙し、まったくの無の状態から虚構を構築する。よく描けた挿画には、必ずその対象物の記憶が充満しているものだ。

「寓話集」と題した本展は、私の作品に現れたこうした確信の瞬間の寄せ集めである。ちなみに本来のBESTIARY(中世の動物寓話集)は、空想上の獣や怪物、つまり現実世界では目にすることのできない生き物を網羅した、図鑑のようなものであった。

このたび私たちの「寓話集」に収められたのは、一群の木製模型である。過去6年間に私たちの設計したプロジェクトを、建築家アレハンドロ・リューエルが模型に仕立ててくれた。

展示模型のなかには、私の気に入りの文章の挿画から生まれたものもある。これらはあくまで解釈の一環として制作した模型なので、その背景にはこれといった根拠もなければ、用途も想定されていない。数年後に実現に至った、あるいは実現に向けて動き出したプロジェクトもあるが、それは単に巡り合わせが良かっただけのことだ。

模型は単に一つの解釈、検討中の未定の形態にすぎない。なかにはプロジェクトの出発点となった模型もあれば、施主へのプレゼンテーションに用いられた模型もある。プロジェクトを進める間は首尾一貫して、これらの木製模型並みの精度と整然さを心掛けた。つまり私たちにとってはどの模型も、まさしくその建築プロジェクトに対する確信の現れなのである。

スミルハン・ラディック


3階展示室

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中庭展示


4階展示室

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展示作品の一部

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スミルハン・ラディック Smiljan Radić
1965年、チリ、サンティアゴ生まれ。1989年チリ・カトリック大学卒業後、ヴェネチア建築大学で学ぶ。1995年にSmiljan Radić Arquitectoを開設。2009 年よりAIA名誉会員。2001年チリ建築家協会35歳以下の最優秀国内建築家賞受賞。2015年Oris ACO Award受賞。主な作品に「サーぺンタイン・ギャラリー・パヴィリオン 2014」(イギリス、ロンドン/ 2014年)、「直角の詩に捧ぐ家」(チリ、ビルチェス/ 2012年)、「NAVE—パフォーミング・アーツ・ホール」(チリ、サンティアゴ/ 2015年)など。展覧会に、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(2010年)、TOTOギャラリー・間25周年記念展「GLOBAL ENDS」(2010年)、銀座メゾンエルメス「クローゼットとマットレス」展(マルセラ・コレアと協働)(2013年)などがある。

「スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集」

TOTOギャラリー・間では、チリの首都サンティアゴを拠点に独創的な活動を続ける建築家スミルハン・ラディック氏の個展「スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集」を開催します。

ラディック氏は近年関心が高まっている南米の現代建築界にあって、独自の世界観で注目を集めています。2010年には、ヴェネチア・ビエンナーレにインスタレーション作品「魚に隠れた少年」を出品、さらにTOTOギャラリー・間の25周年を記念して開催した展覧会「GLOBAL ENDS-towards the beginning」の7組の建築家のひとりとして、「隠れ家」と題した作品を1,800mm角の展示台の上に提示しました。

ラディック氏はしばしば、自身の中にあるチリの原風景やアート作品、さらにはお気に入りの童話などにアイディアの源泉を求め、極めて詩的であると同時に、敷地形状や環境に応じ、巨石や樹脂膜など形状の定まらない素材を大胆かつ巧みに構成しています。例えばそれは氏の代表作のひとつである「サーペンタインギャラリー・パヴィリオン2014」が、オスカー・ワイルドの短編『わがままな大男』に着想を得て2010年に試作した模型作品「わがままな大男の家」が発展、作品として結実したことにも見ることができます。

「BESTIARY:寓話集」と名づけられた本展覧会では、空想上の生き物に見立てた20余りの模型を中心に、氏の考える現代の寓話集を提示します。さらにプロジェクトごとにラディック氏が描き記した70冊にものぼるスケッチブックや、書籍『The Invention of Chile[チリの発明]』に着想を得たという架空の「チリ現代建築ガイド」などを展示。時に難解とも評される氏の思考の源と、ひとつひとつの模型に宿る「確信の瞬間」を、それぞれの視座から見つけ出し、感じ取っていただければ幸いです。


「TOTOギャラリー・間」ホームページ

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