ギャラリー間で「GLOBAL ENDS towards the beginning」展を観た! | とんとん・にっき

ギャラリー間で「GLOBAL ENDS towards the beginning」展を観た!


ギャラリー間で「GLOBAL ENDS towards the beginning」展を観てきました。「ギャラリー間」は、「TOTO」が提供する建築やデザインの展示を専門とする特異な企業美術館です。発足から25年を迎え、134回で約76万人が訪れたという。それを期に運営委員の顔ぶれも一新し、名称も「TOTOギャラリー・間」と改称しました。今回の「GLOBAL ENDS towards the beginning」は、25年節目の記念展です。ローカルな拠点に根差しつつ、より広範囲な世界で可能性を追求する個性ある5大陸、7カ国の注目すべき建築家たちが参加しています。


出展者は以下の通りです。

パウロ・ダヴィッド(ポルトガル)
ショーン・ゴッドセル(オーストラリア)
ケリー・ヒル(シンガポール)
石上純也(日本)
トム・クンディグ(アメリカ)
スミルハン・ラディック(チリ)
RCRアランダ・ピジェム・ヴィラルタ・アーキテクツ(スペイン)


パウロ・ダヴィッド(ポルトガル)の作品のタイトルは「生み出されて量塊」、ポルトガルのマディラ島はヨーロッパ大陸とアフリカ大陸のどちらから見ても「周縁」にあたる場所。壁にはマディラ島の違和ともやった海野写真が。1.8m角の台の上には「カーサ・ダス・ムーダス芸術センター」の白模型が。ショーン・ゴッドセル(オーストラリア)、壁面には彼によるスケッチのコラージュと完成写真。オーストラリアの本源的な実体を言い表すことばとして「水平線」を提示。だから「グローバル」ではなく「ローカル」な作品だと彼は言う。1.8m角の台の上にはオーストラリア・メルボルンに建設中の原寸大ファサード模型を展示。それは高性能でありながらローテク式のソーラー・スキンです。


ケリー・ヒル(シンガポール)、展示は彼らが「建築」に望む基本的な諸性質である「精度と真正さ」を示しています。写真と図面でしっかりと纏めてあります。1.8mの台の上にのる模型も、木とメタルで作られた端正なものです。石上純也(日本)は、できるだけ素朴な建築を考えたい、と。その素朴さは、建築であることと建築でないことの境界線を新しく定義するのかもしれない、と彼は言います。そして東京郊外に計画している「庭とテラスの家」を提出します。トム・クンディグ(アメリカ)、壁面の展示はスケッチと完成写真ですが、パネルが可動でメカニカルで、インタラクティブな仕掛けがしてあります。また縦長の長方体では、手回しのクランクが付いていて、扉が開くとその中に模型が出てきます。また12基のモニターには動画の航空写真が局所規模へとズームインします。


スミルハン・ラディック(チリ)、タイトルは「隠れ家」。オーク林の暗がりに吸い込まれた「隠れ家」です。この不透明性に対して、かたや「フラジール」はガラスの塔です。この「隠れ家」の木製模型は、まるで原広司の有孔体理論の「伊藤邸」を髣髴させます。RCRアランダ・ピジェム・ヴィラルタ・アーキテクツ(スペイン)、タイトルは「人間回帰」。ガラスのスクリーンに挟まれた男女の裸体。すべての空間は無である。あらゆる物事が発生し辿りつく場所である。すべてを一体化させる。空気・火・水・土は、生命(男性・女性・植物)の源であり、この世界において五感を持ってできる物質。建築を創る上で再考すべき基本要素である。虚と実は建築における根源的な対極である。彼らは「作品集」も何冊か出しており、一番実績があるように思えました。








展示解説文:GLOBAL ENDS――始まりに向けて
建築文化における21世紀の転換は、デザインの根本的な原理の再考をうながしています。9.11同時多発テロ、そしてリーマン・ショック以降、世界規模のグローバライゼーションと均質な世界の建築が有していた主導権は、世界の果て(GLOBAL ENDS)から出現しつつある潮流に、取って代わられつつあるのではないでしょうか。ワールド・ワイド・ウェブ(www)の影響もあり、これまでの世界の文化的中心地は、新たなローカル/グローバルの潮流、個人の感性、そして固有の気候と地形が活き活きと混ざりあって育まれた、新しい場所に移行したとみることができるでしょう。

TOTOギャラリー・間25周年記念展として企画された「GLOBAL ENDS――towards the beginning」には、ローカルな拠点に根差しつつ、より広範囲な世界で可能性を追求する個性ある5大陸、7カ国の注目すべき建築家たちが参加します。このグループは、東京から広がり、メルボルン(オーストラリア)からマデイラ島(ポルトガル)、サンティアゴ(チリ)からシアトル(アメリカ)、シンガポール、そしてオロット(スペイン)を結ぶ多様な軌道の一群を代表しています。ここで各建築家のデザインのローカルな標準を並置することによって、その建築家特有の豊かな特徴が浮かび上がります。彼らの実作における感触や素材感は、本展覧会のために特別に準備された大小の立体作品、図面、写真、ビデオによって表現されます。1800mm角の台に展示される大きな模型では自身の精神と現在形を表明し、300mm角の台に設置される小さなオブジェでは、「GLOBAL ENDS」から想起される自国の言葉を具現化します。さらに中庭では、この新たに姿を現しつつある建築文化の概念的理解をうながすために、近・現代の識者によって書かれ、また語られてきた言葉と文章、そしてTOTOギャラリー・間のこれまでの出展者達に投げかけた質問に対する回答が、投影されます。

近代化に対する盲目的な忠誠から抜け出して前進へと導くことを目指し、本展覧会では、7つの異なる視点による違いはありながらも、日々の生活における経験を通して批判的な目で現在の可能性を検証するために、原始からの過去と未来の両方に目を向けている建築家たちに参加を呼びかけました。本展覧会は、世界の果てへのヴァーチャルな旅を提供しながら、究極的には、豊かで、近い将来に実現可能なデザインの可能性を照らし出すことを目指しているのです。
ゲスト・キュレーター:ケン・タダシ・オオシマ (建築史家/ワシントン大学准教授)


「ギャラリー間」ホームページ


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