ギャラリー・間で「安藤忠雄建築展」を観た! | とんとん・にっき

ギャラリー・間で「安藤忠雄建築展」を観た!

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「安藤忠雄建築展」、副題には「挑戦―原点から―」とついています。安藤の30余年の建築活動を振り返りながら、かつ現在進行中のプロジェクトを併せて展示しています。安藤の原点とは言うまでもなく「住吉の長屋」です。狭い敷地の1/3が中庭で、雨の日には傘をさしてトイレに行くという、住まい手に不便な生活を強いる住宅です。その「住吉の長屋」が原寸大でギャラリー・間につくられました。先日このブログでPHP新書の「建築家は住宅で何を考えているのか」を取り上げたときに、次のように書きました。「最後の10住み続ける家に取り上げられた東孝光の『塔の家』、安藤忠雄の『住吉の長屋』は今さらの感がしましたが、逆に言えば、その住宅が今でも多くの問題を提起している住宅だということでしょう」と。




今回は、ギャラリー・間の3階に日本の作品6点、4階に海外の作品6点が展示されています。チラシの裏にそれらの作品の詳細が載っています。スペースが狭いこともあり、特に今回初めて展示したものはないようです。その点、「石山修武展」とは大いに異なります。ただ海外の作品はベネトン以外、あまり公開されていなかったものがほとんどで、こうしてみると「世界のイソザキ」を越えて、「世界のアンドー」の感が強く出ています。驚いたのはヴェネツィアの作品が2つ、特に「プンタ・デラ・ドガーナ再生計画」、海の税関を現代美術館に改造するもので、2009年着工予定となっているので、大いに期待が持てます。安藤は中東でも計画しているようですが、かつて丹下健三や黒川紀章もいくつも計画しては挫折を味わっているので、実現までは難しいように思います。


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「住吉の長屋」の原寸大模型、これにはちょっとがっかりしました。ペンキ塗りの予算が出なかったのか、やはりベニヤ板で作られたものは、コンクリート打ち放しの素材感がまったく出ていません。「コルビュジエ展」の「マルセイユのユニテ」の原寸大模型は素材感がよく出ていました。建築はスケールもさることながら、やはり素材感を伴ってこそ、その空間が感じられるのです。「上野毛駅」以外、在るものの模型の使い廻しか、日本のものは僕は知っているものばかりなので、まったく新鮮味がありません。今から20年ほど前に、「住吉の長屋」を半日がかりで探しましたが、とうとう見つかりませんでした。近いところまで行ったのですが・・・。


まあ、それはそれとして、何度か、大阪・神戸・京都へ行くたびに、安藤忠雄の作品を観て廻りました。ちょうど「六甲の集合住宅Ⅱ」や「コシノ邸」が出来たばかりの頃、あの頃の「アンドー」は関西から日本の建築界に新風を送り込み、作品も小さいながらも画期的なものばかりでした。「アンドー」を「日本」に売り込んだのは、大阪の坂倉事務所の西沢文隆でした。最近の「アンドー」は、仕事は多く、たしかに規模は大きくなって、話題性を提供することは上手いのですが、やや首を傾けざるを得ない作品も見受けられます。「Tadao Ando 安藤忠雄の建築」全3巻も、TOTO出版から刊行したことで、今回の「安藤忠雄建築展」は、副題に「原点から」としたのではないでようか。



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