佐藤正午の「小説家の四季」を読んだ! | とんとん・にっき

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佐藤正午の「小説家の四季」(岩波書店:2016年2月23日第1刷発行)を読みました。


本書は以前にも同じ版元から出版された「ありのすさび」「象を洗う」「豚を盗む」に続く4冊目のエッセイ集である。以前といっても、3冊目の「豚を盗む」が出たのが2005年2月だったから、11年ぶりの新刊ということになる。


と、「あとがき」にあります。僕はたまたまこの3冊は読んでいました。
佐藤正午の「ありのすさび」を読む!

佐藤正午の「象を洗う」を読む!

佐藤正午の「豚を盗む」を読んだ!


「小説家の四季」は、以下のような3つのパートに分けられています。

Ⅰ小説家の四季

Ⅱ作家の口福

Ⅲ文芸的読書


「小説家の四季」は、岩波書店の月刊誌「世界」で年4回の連載したもので、2007年秋の回から最新回までの文章が収められています。それに、佐藤がこの10年ほどの間に雑誌・新聞等に寄稿した小説以外の文章がすべて収録されています。「2014年冬」は「お休み」となっています。さすがの佐藤正午も、病気には勝てません。原稿に穴が開くことに編集者も「わかりました」と、許してくれたそうです。


佐藤は「豚を盗む」以降、11年間に小説以外の文章はこれだけ、本一冊分に過ぎないこと、この間、エッセイよりも小説を書くことに専念、奮闘、悪戦苦闘していたと、振り返っています。佐藤は、「5」に「アンダーリポート」に「身の上話」に「鳩の撃退法(上・下)」、都合5冊、ほかに中編「ダンスホール」を書いています。そのうえエッセイもどしどし書いてみせる、そこまで僕は働き者の小説家ではない、と述べています。


「2015年」に、以下のように書いています。うちで小説だけ書いて、書いたら自然と本が売れて、その印税で静かに暮らしたい、暮らせたらいいな、それが僕の第一希望である、と。しかしそういう時代でないこともよくわかっています。「サイン会」の話が面白い。最初は相当アタフタしたらしい。二度、三度するうちに、それも慣れてきます。そしてゆるいやり方の「サイン会理想型」を書いています。


で、僕が考えたのは、じゃ現実には無理だとしたら、小説として書くのはどうなんだ、虚構としては?というそっちの方向である。次に書く長編小説を、いっそのこと、そのゆるいサイン会から始めるのはどうだろう。・・・6月の末、次の長編小説を書き始めた。・・・いまは、その小説のことしか頭にない。だがいずれ、ここに書いたサイン会の理想型ふたたび頭を向ける日は来るだろう。・・・それは、小説家の悲しい性というかなんというか、結局そうなるだろうな、いずれ、といまから心の準備はしている。と、「小説家の四季」は結んでいます。
 

「小説家の四季」、「中欧ツアー」へ行く時は半分ぐらい読み終わっていましたが、旅行中に読み終わる予定で持っていきました。本のカバーは旅行中のメモ書きでいっぱい、夕食時に美味しいビールを飲んでバタンキューで寝てしまい、往復の飛行機のなかでは映画ばかり観て、本を読む時間がまったく取れませんでした。で、結局、読み終わるのが今日までかかってしまいました。


佐藤正午の本、今までだいたい読んできました。この面白さを伝えるのはなかなか難しい。「ザラにない小説を読むことで人はたぶん、小説というものを見直し、もう一冊、別の小説を読みたくなります。なるはずです」、と吉田修一の「横道世之介」の項で佐藤は述べています。


佐藤正午の本、購入はしたが、まだ読んでいないのが下の2冊です。

「書くインタビュー」(小学館文庫:2015年6月10日初版)は購入時、パソコンが突然壊れて、1冊目の半分ぐらい読んだかな?その後読むのがストップ。

もうひとつは、分厚い古い本ですが、「正午派」(小学館:2009年11月30日初版)、帯には完全保存版とあります。佐藤正午の初期のエッセイ集です。


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佐藤正午:

1955年8月25日、長崎県佐世保市生まれ。

北海道大学文学部中退。1983年「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受賞。2015年「鳩の撃退法」(小学館,2014年)で第6回山田風太郎賞を受賞。ほかに「5」(角川文庫)、「身の上話」(光文社文庫)、「アンダーリポート/ブルー」(小学館文庫)、「小説の読み書き」(岩波新書)など。


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