東京芸術大学大学美術館で「黙示録―デューラー/ルドン」展を観た! | とんとん・にっき

東京芸術大学大学美術館で「黙示録―デューラー/ルドン」展を観た!



国立西洋美術館で開催されている「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」と、奥の版画・素描展示室で開催されている「19世紀フランス版画の闇と光」展を観てきました。東京芸術大学大学美術館で開催されている「黙示録―デューラー/ルドン」展は、西洋美術館で開催されているものの関連企画で、デューラーの「黙示録」連作を中心に、西洋美術における黙示録図像の変遷を、中世末期から近代までたどるもの、とチラシにはあります。


「デューラー版画・素描展」でも取りあげられていましたが、「黙示録」―ヨハネがキリストから啓示されたという新約聖書の予言書―は、現世の週末の様子が記された異例の教典であり、西洋美術においてたびたび視覚化されてきました。その決定的な「黙示録図像」は、デューラーによる木版画集の「黙示録」連作によってだとされています。「デューラー版画・素描展」の「セクション1」では、木版やエングレーヴィングによる3種類の「受難伝」が中心でした。


今回の展覧会の構成は、以下の通りです。

プロローグ:デューラー以前の黙示録図像

参考展示:中世における黙示録写本

第1章 デューラー「黙示録」

第2章 デューラー以後の黙示録図像

第3章 近代:ルドン「ヨハネ黙示録」への道


作品は、芸大美術館や西洋美術館、町田市立国際版画美術館所蔵のもの等々、様々ですが、やはりデューラーの「黙示録」は、西洋美術館と同じメルボルン国立ヴィクトリア美術館所蔵のものが中心となっています。またデューラー以後の黙示録図像では、マティアス・ゲールングの作品、セバスティアン・マイアー「黙示録註解」木版挿絵連作が全59点、町田市立国際版画美術館所蔵のものが出されていました。デューラーらの活躍は、印刷技術の向上により、活版と木版挿絵が大量に出版されるという、当時の時代背景があると言われています。


「19世紀フランス版画の闇と光」展でも感じたことですが、ルドンの作品は一人、他の写実的・説明的な作品とは違って、群を抜いて象徴的で幻想的、感覚や情念に訴える力があるのではないかと思います。デューラーが制作した約400年後、デューラーの痕跡を見ることができるとはいうものの、やはり「近代」的な解釈とエッチングという技法の確立なのでしょう。


西洋美術館と芸大美術館、デューラーを中心に同じような展覧会を企画したという背景に、たまたまメルボルン国立ヴィクトリア美術館から作品を借りられたということ以外に、何があるのかは僕には分かりません。特に芸大美術館での「黙示録―デューラー/ルドン」展の開催の趣旨が、焦点が絞りきらずに散漫になっているように思えてなりません。僕としては、画家としてのデューラー以外の側面、つまり版画家としてのデューラーということですが、を知ったことや、ルドンとその繋がった関連の人たちを知ったことは、これは「19世紀フランス版画の闇と光」展でしたが、大いなる収穫でしたが・・・。






「黙示録―デューラー/ルドン」

«黙示録»—ヨハネがイエス•キリストから啓示されたという、新約聖書の最後を飾る預言書—は、現世の終末の様子が記された異例の教典であり、西洋美術においてたびたび視覚化されてきました。この黙示録図像は、いまから約500年前に決定的なイメージを獲得しました。それは、ドイツ最大の画家•版画家、アルブレヒト•デューラー(1471-1528)による豪華な木版画集である«黙示録»連作(1497-98/1511)によってでした。 デューラーの«黙示録»が登場する時代、ヨーロッパでは印刷技術の向上によって、活版と木版挿絵を組み合わせた木版本が大量に出版されるようになりました。デューラーの«黙示録»は、書籍というメディアの先進性に着目し、当時の版画の概念をはるかに超える豪華な版画集を刊行したのです。この«黙示録»は、単なる書籍挿絵としてではなく、絵画に引けをとらない版画芸術としての輝きを放っていたのです。 デューラーの壮大な«黙示録»のインパクトは大きいものでした。その影響は、同時代のみならず、時代が下った19世紀においても見出されます。デューラーが制作した約400年後、フランス人画家オディロン•ルドン(1840-1916)による«聖ヨハネ黙示録»(1899)には、デューラーからの影響の痕跡を見ることができるのです。 この展覧会は、デューラーの«黙示録»連作を中心に、西洋美術における黙示録図像の変遷を、中世末期から近代までたどるものです。なお、この展覧会は、同時期に国立西洋美術館で開催される⌈アルブレヒト•デューラー版画•素描展 ⌋の関連企画でもあります。この機会にぜひ⌈黙示録⌋の幻想的な世界をご堪能ください。


「東京芸術大学大学美術館」ホームページ


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