国立西洋美術館で「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」を観た! | とんとん・にっき

国立西洋美術館で「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」を観た!




国立西洋美術館で「アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教・肖像・自然」を観てきました。 「メルボルン国立ヴィクトリア美術館所蔵作品を中心に」と副題にあります。デューラーといえば、僕のなかでは、「若いヴェネツィア婦人の肖像」(ウィーン美術史美術館)や「アダムとイヴ」(プラド美術館)です。去年、国立新美術館で開催された「THEハプスブルク」展には、「青年の肖像」や「ヨハンネス・クレーベルガーの肖像」と共に「若いヴェネツィア女性の肖像」も出ていました。そんなこともあってか、デューラーは近世の画家かと思っていたら、そうではなく15~16世紀に活躍した画家だということを、つい最近知りました。同時に、版画家だったということも、同時に最近知りました。長い間大いなる勘違いをしていたようです。


国立西洋美術館の所蔵コレクションのなかで、版画のコレクションが最も多いということも、最近知りました。開館当初の版画コレクションはたったの24点だけでしたが、その後の収集によって3700点を超えるまでになったそうです。ルネサンス期のデューラー、17世紀のレンブラント、18世紀のピラネージやゴヤ、19世紀のドーミエ、等々。去年の夏頃、西洋美術館が50周年と言うことで、比較的大規模な版画展が開催されました。「かたちは、うつる 国立西洋美術館所蔵版画展」がそれです。そこに西洋美術館が所蔵するデューラーの主要な版画作品が出ていました。「メレンコリアⅠ」、「フィリップ・メランヒトンの像」、「枢機卿アルブレヒト・フォン・ブランデンブルグ(小)」、「アダムとエヴァ」、「鞭打ち」(大受難伝)、「哀悼」「埋葬」「ユダの裏切り」(銅版画受難伝)、「魔女」、が出ていました。


今回の展覧会の構成は、以下の通りです。

セクション1―宗教

セクション2―肖像

セクション3―自然

今回の「アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教・肖像・自然」、オーストラリア・メルボルン国立ヴィクトリア美術館の所蔵品105点を中心に、国立西洋美術館の所蔵版画49点、さらにベルリン国立版画素描館からの3点を加えた157点が展示されていました。ベルリンの3点の素描は、「宗教」「肖像」「自然」の各セクションの導入部として使われていました。「受胎告知」、「ある女性の肖像(マルガレータ・デューラー?)」、「聖家族」の3点です。セクション1―宗教の章は、「大受難伝」、「小受難伝」、そして「銅版画受難伝」からなっています。ここでは「十字架を担うキリスト」を、それぞれ取りあげて比較してみました。


今回の展覧会の目玉は、挙げればきりがないのですが、強いて挙げればやはり「神聖ローマ皇帝マクシミリアンⅠ世の凱旋門」でしょう。198枚の版木により、36枚の紙に刷られたものです。幅2.94m、高さ3.41m、これはすごい、圧倒されます。皇帝マクシミリアンの生前に完成した数少ない作例、だそうです。「犀」、これも妙にリアルです。デューラーは実際に犀を見たことがなかったそうですが、写実的でないにもかかわらず、その後も多くの作家に模倣され続けたといわれています。また、デューラーの「三大銅版画」と称されている作品、「騎士と死と悪魔」、「書斎の聖ヒエロニスム」、そして「メレンコリアⅠ」は、セクション3―自然の章に出てきました。


セクション1―宗教

デューラーが活躍した時代は、キリスト教を主題にした版画が数多く登場しました。ここでは、デューラーの名を広く知らしめた連作「受難伝」を中心に展示しています。





セクション2―肖像

デューラーは、皇帝や君主から農民まで、数多くの肖像を版画で残しました。ここで展示されるマクシミリアン1世の凱旋門は、195点の版木から刷られた49枚の版画が張り合わされた西洋版画史上最大の木版画です。





セクション3―自然
デューラーは動物や植物などの自然研究にも熱心でした。ここでは、「三大銅版画」として名高い「騎士の死と悪魔」「書斎の聖ヒエロニスム」「メランコリアⅠ」を纏めてみることができます。







「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」

アルブレヒト・デューラー(1471-1528)は、画家を志す若者たちのための芸術理論書「絵画論」の草稿で、美術に最も重要なのは「宗教・肖像・自然」であると述べました。本展覧会は、これらの主題が実際の制作でどのように視覚化されたかを見ることで、デューラーの芸術哲学に迫ろうというものです。デューラーはドイツ・ルネサンスを代表する画家ではありますが、それ以上に版画家として重要な役割を果たしました。当時、印刷術とともに発展していた版画芸術で、彼は極めて先進的な作品を遺しています。本展は、オーストラリア、メルボルン国立ヴィクトリア美術館からの105点を中心に、国立西洋美術館の版画49点、さらにベルリン国立版画素描館からの3点の素描を加えた計157点からなります。今回、日本で初めて公開されるメルボルンのコレクションは、19世紀末に英国人バーロウ卿が収集した質の高いものとして知られています。この機会に、デューラーによる線描の芸術をご鑑賞ください。


「国立西洋美術館」ホームページ

とんとん・にっき-du1 「アルブレヒト・デューラー版画・素描展 宗教/肖像/自然」
図録
主催:国立西洋美術館
    メルボルン国立ヴィクトリア美術館
    朝日新聞社
監修:佐藤直樹(国立西洋美術館研究員、東京芸術大学准教授) 
編集:佐藤直樹、新藤淳(国立西洋美術館研究員) 
発行:国立西洋美術館 
    西洋美術振興財団 


とんとん・にっき-hanga 「かたちは、うつる 国立西洋美術館所蔵版画展」
図録

主催:国立西洋美術館

編集:新藤淳(国立西洋美術館)

佐藤直樹(国立西洋美術館)

発行:国立西洋美術館

    西洋美術振興財団





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