国立西洋美術館で「ウルビーノのヴィーナス」展を観る!
テーマ:ゲ~ジュツ見てある記東京・上野の国立西洋美術館で開催されている「ウルビーノのヴィーナス」展を観てきました。いうまでもなくルネサンス屈指の女神であるティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」が今回の目玉です。副題として(小さく書いてありますが)、「古代からルネサンス、美の女神に系譜」とあるように、古代ギリシャからルネサンス、そして16世紀のマニエリスム、初期のバロック時代に至るまで、絵画、彫刻、装飾品などを合わせて計76点もの作品を集めた展覧会です。この展覧会に合わせて芸術新潮4月号では「ヴィーナス100選」を特集しており、それについてはこのブログで取り上げました。
ヴェネツィアへ2回目に行ったときに、街中にティツィアーノ展の垂れ幕が飾ってあり、ぜひ見たいと思いましたが、見ることは叶いませんでした。次の日、トレビソへ行く車中で、若い女性が持っていたティツィアーノ展の図録を見せてもらったことを、このブログで書いたことがあります。また、フィレンツェへ最初に行ったのはいまから20年近く前、辻邦生の「春の戴冠」を読み、それに刺激を受けて行きました。ウフィッツィ美術館では、なにはともあれボッティチェッリの部屋へ飛び込み、「春」と「ヴィーナスの誕生」を観たときは本当に感動しました。フィレンツェには3度行き、ウフィッツィ美術館にも3度行ったことになります。
ウフィッツィの図録によると、「ヴィーナスの誕生」はメディチ家の所有するカステッロ別荘に、「春」と共にあったこの絵を見たことをヴァザーリが記していて、作品名については誤って解釈されて、19世紀になってから付けられたものだそうです。いずれにしても、キプロスに漂着する女神、大きな貝殻の上に立つ裸のヴィーナスが描かれているわけです。この女神のポーズは、古代彫刻のひとつの定型である慎みのヴィーナスがモデルになっているという。「『ヴィーナスの誕生』は、精神と物質の融合、あるいは理想的概念と自然の均衡のとれた共存を暗示している」と、エルネスト・ゴンブリッチは述べています。
ルーブルにある「ミロのヴィーナス」を始め、多くの古代彫刻から、ギリシャ・ローマの人々は、理想的な人体の美の基準を生み出してきました。今回の展覧会も、「メディチ家のアフロディテ(メディチ家のヴィーナス)」(前1世紀の大理石像からの石膏複製)や、ポンペイ出土の「角柱にもたれるヴィーナス」(大理石像)、そして、エルコラーノ出土の漆喰に彩色された驚くほど見事に保存されている「ヴィーナス」から始まります。もうひとつ挙げれば、うずくまり身体を洗っている「ドイダルサスのアフロディテ」、これはローマ時代の模刻された大理石の作品です。これらはすべて、髪の毛はキリリとまとめられて、顔立ちは整然として端正で、身体は理想的なプロポーションで、見事なバランスを保っています。もうこの時代に、西欧世界の女性美の理想型はできていました。
ロレンツォ・ディ・クレーディの「ヴィーナス」、あのサヴォナローラによって「裸の女性像」は無益なものとして焼却されましたが、この作品は運良く焼失を免れ、後世に残りました。しかしメディチ家の階段下の物置で偶然発見されたという、数奇な運命のこの作品、ウフィッツィで何度も見ているはずなのに、僕の記憶に残っていませんでした。しかし、顔はちょっと幼いけど、ちょっと角度を付けて立っている自然なポーズは、今回の展覧会のなかでも最も印象に残りました。
今回の展覧会の第Ⅲ室「《ウルビーノのヴィーナス》と“横たわる裸婦”の図像」では、今回の目玉、ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」の右横には、「ヴィーナスとキューピッド」、左横には「眠るヴィーナスのいる風景」と「キューピッド、犬、ウズラを伴うヴィーナス」が展示されています。もうこの部屋だけで、今回の展覧会の目的は達しています。ポルトルモの「ヴィーナスとキューピッド」は、ミケランジェロの下絵に基づくとあり、筋肉隆々たる身体は大迫力です。元をただせば、メディチ家墓廟「新聖器室」のミケランジェロの彫刻「夜」の、身体をねじった動きのあるポーズが影響を与えたと、木島俊介は述べています。
ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」は室内、寝室で、手前に犬が、向こうには大きな衣装箱があり、女中が二人。ジョルジョーネのドレスデン美術館蔵の「眠れるヴィーナス」は室外で、遠くに山々が見えます。共に横たわっていて、よく比較されます。もちろんジョルジョーネの方が早い。しかし、目をつぶっています。「ウルビーノのヴィーナス」の顔はこちらを向けて、こちらをじっと見つめています。ウフィッツィにある同じティツィアーノの作品「フローラ」と、顔はほとんど同じです。手に小さな花を持っているところも同じです。そんなことよりなにより、この作品の前に立つと、詳細に描き込まれた色とディテールに目が引かれます。ヴィーナスの透き通るような肌の色、見事に編み込まれた髪の毛、こちらを向く顔と眼差し、左上のビロード状の緑色のカーテン、ヴィーナスが横たわる白い敷き布団や枕、しわのひとつひとつ、その下の赤い花柄の布団、等々の、見事としか言いようのない素晴らしさです。
「眠るヴィーナスのいる風景」は、ジョルジョーネの作品に非常に似ています。ただし背景の自然が妙にリアルで、踊っている3組の男女がやや不自然です。そして足の組み方が逆ですね。「キューピッド、犬、ウズラを伴うヴィーナス」は、明らかに室内で、やや暗い印象を受けます。ヴィーナスの横たわる向きが逆ですね。ゴヤの「マハ」と同じ向きです。窓の向こうに自然が広がっています。キューピッドや犬、ウズラをまわりに配して、手には花を持っています。「ティツィアーノ・ヴェチェッリオと工房」となっています。
ティツィアーノの「ヴィーナスとアドニス」、引き留めようとしているヴィーナスの背中が美しい。赤い帽子を被った若者アドニスは、少女のような顔立ちです。シモーネ・ペテルザーノの「ヴィーナス、キューピッドと二人のサテュロス」は、廻りが暗く、対照的にヴィーナスの肌が白く、美しい。最後の部屋第Ⅴ室「ヴィーナス像の展開――マニエリスムから初期バロックまで」では、ヴィーナスの背中が見事な「ヴィーナスとサテュロス、小サテュロス、プットー」、そして絵のアングルが珍しい「ヴィーナスとキューピッド」が目を引きました。共にアンニバレ・カラッチの作品、ヴィーナスの裸体、特に肌が美しい。
昨年暮れに行ったプラド美術館もそうでしたが、ウフィッツィ美術館も、そしてルーブル美術館も、作品がありすぎです。プラドではティツィアーノの作品は、「ヴィーナスとアドニス」、「ダナエ」、「ヴィーナスとオルガン奏者」などがありましたが、ルーベンスの「三美神」は見逃しました。広い廊下状の所の壁に、無造作にムリリョの「無原罪のお宿り」がかけてあったりしました。どうも系統だって作品を丹念に観たい人には、日本の展示の仕方が性に合っているのかもしれません。もちろん、どちらも一長一短はあります。一点豪華主義の展覧会も困りものですし、例えば「ピカソとモディリアーニの時代展」とか、焦点の定まらない、どっちつかずの展覧会も困りものです。今回の「ウルビーノのヴィーナス 古代からルネサンス、美の女神の系譜」展、ウフィッツィ美術館で何度か観ていたこともあり、また行く前に「芸術新潮がえらぶヴィーナス100選」を読んでいたこともあり、展示の仕方もちょうどいい、僕の基準では大いに満足した展覧会でした。
古代からルネサンス、美の女神の系譜」展
図録
特別定価1980円
創刊700号記念大特集
芸術新潮がえらぶ
ヴィーナス100選
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1 ■無題
とても興味のあるブログでした♪美術に関する事興味はありますが、あたしは詳しくないです(・д・`*)お勉強させていただきました。