茉莉は妊娠中の検査で精密検査が必要と診断され、
結果胃がんであることがわかる。すぐ摘出手術を受
け、出産に備えると決めた茉莉だが、奈津美にその
ことを告げながら、自分のことより奈津美の受ける
ショックを心配していた。一方の奈津美は冷静に勤
めながら必死で茉莉の世話を焼く。コンクールのた
めのレッスンも中断し、不安な鈴奈の様子にも気づ
かない。そんな奈津美に、一登は本当に力になりた
いなら、自分の生活をしっかりとやらないといけない
と話す。楽団を退団した茉莉を待っていたのは、16
年ぶりにバイオリンを手にした奈津美だった。茉莉
の身に起きた今度の事で気づいたと奈津美は話す。
私たちは、これから何かを失っていく年頃になった
んだと。そんな時、私たちにはやはりこれがあると、
バイオリンを奏でる。チャイコフスキー「ヴァイオリ
ン協奏曲」。それを聞く茉莉の胸に去来する奈津美
と二人で歩んできた日々。ずっと一緒に練習しよう
と約束した。途中でつかえた奈津美は、「これから
は鈴奈のレッスンも二人でみよう」と微笑みかける。
「ママになって、とんでもない演奏家になって帰っ
てくる」と誓い、茉莉は手術室に消えていった。
結果胃がんであることがわかる。すぐ摘出手術を受
け、出産に備えると決めた茉莉だが、奈津美にその
ことを告げながら、自分のことより奈津美の受ける
ショックを心配していた。一方の奈津美は冷静に勤
めながら必死で茉莉の世話を焼く。コンクールのた
めのレッスンも中断し、不安な鈴奈の様子にも気づ
かない。そんな奈津美に、一登は本当に力になりた
いなら、自分の生活をしっかりとやらないといけない
と話す。楽団を退団した茉莉を待っていたのは、16
年ぶりにバイオリンを手にした奈津美だった。茉莉
の身に起きた今度の事で気づいたと奈津美は話す。
私たちは、これから何かを失っていく年頃になった
んだと。そんな時、私たちにはやはりこれがあると、
バイオリンを奏でる。チャイコフスキー「ヴァイオリ
ン協奏曲」。それを聞く茉莉の胸に去来する奈津美
と二人で歩んできた日々。ずっと一緒に練習しよう
と約束した。途中でつかえた奈津美は、「これから
は鈴奈のレッスンも二人でみよう」と微笑みかける。
「ママになって、とんでもない演奏家になって帰っ
てくる」と誓い、茉莉は手術室に消えていった。
**********
一登) できることは、何にもないんだ。そりゃちょっ
とした手助けや、気配りはできるよ。でも、本
人の身代わりになることはできない。24時間
付きっきりで面倒を看ることもできない。それ
を認めるのは辛いかもしれないけど、寄り添
うことしか、出来ることはないんだ。
奈津美) そうかな。もしあたしが茉莉だったら・・・
・・・そうね、そうかもね。茉莉の為っていう
より、自分の為なのかも。怖いのよ。茉莉
が、遠くに行ってしまいそうで。患者さんっ
ていう、手の届かない所に行ってしまうの
も嫌。だって、茉莉、ママになるんだよ?
もっと話したいの。もっと2人で一緒にいろ
んなことたくさん。自分のことばっかり・・・。
嫌んなる。
一登) 全部後で話せばいい。これから、お互い疲
れないように寄り添うことができたら、その後
で、あの時は大変で、苦しかったと思う。でも
そのおかげで、私はいろいろ考えることがで
きた。こんな風に自分を見つめ直すきっかけ
になったんだって。とそう言われたら、俺だっ
たら嬉しいけどな。
奈津美) 見直すって何を?
一登) それは自分で考えてもらわないとなあ。
奈津美) あなたってこんなにスパルタだったっけ?
**********
奈津美) でね、考えたの。こういうことって、続く
のかもしれないなって。こういう、病気の
こととか、両親だって、いつまでも健康っ
てわけじゃないし、子供だってさ、鈴奈だ
って、いつか親元を離れる。
安心安定なんて有り得ないんだよね。
いつか必ず・・・何か失うんだよね。
茉莉) そうね、そういう歳になってきたのかもね。
奈津美) そんな時、あたしどうしたらいいのかな
って。不安な時とか寂しい時、何したらい
いかなって。そしたら、これしか。
茉莉) これしか・・・ないね。
奈津美) うん。
それにさ、前ほら、約束したじゃない。
茉莉) ずっと一緒に練習しようって?
奈津美) うん。ずっと、おばあちゃんになっても。
茉莉) でも、どうかな? あんまり腕が落ちてたら、
一緒に練習どころじゃないけど?
**********
やっぱり、昔の恋愛云々より、友情の話のほうが
しっくりときます。茉莉が、自分よりも奈津美がシ
ョックを受けることを心配する気持ち。奈津美が、
茉莉のためになんでもしてあげたいという気持ち。
そして、一登に諭されたように、奈津美の茉莉へ
の依存、茉莉のためと言いながら、自分のため、
自分の心を救うために動いてしまっていたことに
気づかされたこと。つい、やってしまいそうだなあ
と。本人の身代わりにはなることができない以上、
出来ることは限られていて、相手の為というより、
自分の心が納得するように、相手が望むことより
自分がしたい事をやってしまうような。誰かの為
と言い訳しているときほど、大抵、本当は自分の
為にやっていることが多いんですよね、実は・・・。
そして今回、一番心に響いた、共感した言葉は、
「いつか、必ず、何か失う」ということ。不老不死じ
ゃない人間は誰でもいつか死ぬし、誰でもいつか、
老いる。病気もするし、事故にもあうし、なにか予
想のつかない出来事が、いつか誰にでも起こる。
何も失わずに済む人なんて、この世にはいない。
不安な時、寂しい時、何をしたらいいのか・・・
そんなことを考えながら・・・答えは見つからず。
「第二楽章」関連ブログ↓
第1回 「予感~フォルテ(強く)」
第2回 「後悔~メゾピアノ(やや弱く)」
第3回 「秘密~メゾフォルテ(やや強く)」
第4回 「約束~ピアニッシモ(さらに弱く)」
第5回 「記憶~クレッシェンド(だんだん強く)」
第6回 「岐路~フェローチェ(荒々しく)」
第7回 「告白~アダージョ(ゆるやかに)」
第9回 「誕生~カンタービレ(歌うように)」
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第二楽章 (リンダブックス)/泰文堂