記憶~クレッシェンド(だんだん強く)
奈津美が家を出た。奈津美のいる場所に思い
当たった茉莉は、奈津美に会いに行く。湖畔で
二人は16年分の思いをぶちまけ始める。
**********
奈津美) あたしあの時、わかってた。
あなたが、彼のこと好きなこと。
だけどさあ、あの頃のあたしは今よりも
っとずーっといい加減で、フタしたの。
別に、はっきり言われたわけじゃないか
らって。ズルかったよね。ゴメンね。
茉莉) だったら、あたしも白状しないと。
あの頃、あなたのバイオリン、最高だった。
負けるかもって怖かったんだと思う。
だから、あんな・・・。今でも耳に残ってる。
最高の、音色だった。
奈津美) だけど今は・・・見てよ、この状況。
どうしよ。帰りたくない。
シカゴで会ってたなんて知らなかった。
あの人も、きっとあなたに、惹かれてた
のね。なんか知らない人みたい。どんな
人だっけ、あの人。なーんかもう、よくわ
かんなくなってきちゃった。
茉莉) 一緒に、思い出してあげようか。
**********
奈津美) そしたら、あいつ、何が欲しいんだ?っ
て。何でもあげる。今まで大事にしてきた、
音楽も、何にもいらない。君と、お腹の子
のためならって。・・・なーんにもいらない。
二人さえいてくれればって。
茉莉) そこから先は、知らない。
あたしの知らない、あなたたち。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20130515/22/pikataa3/30/00/j/t02200138_0480030012540171867.jpg?caw=800)
茉莉) ねえ?
奈津美) うん?
茉莉) 前にさ、言ってくれたじゃない、私に。
まわりにどう思われようと関係ない。
よくできましたって言えればいいって。
奈津美) うん。自分自身に?
茉莉) そう、最後に。
奈津美) 最後に、
この世に、はいさよならって、言う時に?
茉莉) 言おう?
今のままさ、自分たちが選んだ道信じてさ、
よくできましたって、言い合おうよ。どっちが
先に逝くかはわかんないけど。ね?
**********
一登) 何してたんだよ。わかってるのか?
帰ってきたじゃないよ。何考えてるんだよ。娘
のことはほったらかして、ろくに連絡も寄こさ
ないで。いいか、二度とこんな勝手な真似は
するな。何か思ってるなら、ちゃんと俺に言え。
じゃなきゃ、どうにも対処できない。
奈津美) 何もそんな言い方しなくったって。
一登) ビックリするんだよ。急にいなくなられると。
やってけない。お前なしじゃ。
だから、必ず話は聞く。二人でいられるよう、
全力で努力する。当然だろう、そんなこと。
なんだよ。
奈津美) ふふ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20130515/22/pikataa3/ff/93/j/t02200138_0480030012540171872.jpg?caw=800)
一登) なんだそれ。
奈津美) 二度と、よそ見はしないで。
一登) ゴメン。
**********
こだわりは人それぞれ。ずっとわだかまっていた
ことも。それは秘めた恋だったり、秘めた野心だ
ったり、ささいなことだと思える時もあれば、一生
忘れられないような気もしてしまう、そんな自分
でもどうしようもなくこだわってしまう気持ち。でも、
だからこそ、そのこだわりを認めて、あやまって
もらえたときに、ようやく、ずっと心に刺さったまま
だった氷の刺が溶けていく。喧嘩できる、そして、
仲直りできる、それこそが、友達である証として。
運命が、正しいのか間違っていたのか、それは
きっと、最後にわかること。最後の最後に、「よく
できました」と自分自身に言えればいい、ものな
のかもしれない。運命は、なるようになる。そうな
るようにできている、と、なんとなく私もそう思う。
一登と奈津美の、仲直りする夫婦の会話がよか
った。奈津美の突然のキスも、ビックリする夫も。
伝わるように会話できる夫婦でいたいものです。
「第二楽章」関連ブログ↓
第1回 「予感~フォルテ(強く)」
第2回 「後悔~メゾピアノ(やや弱く)」
第3回 「秘密~メゾフォルテ(やや強く)」
第4回 「約束~ピアニッシモ(さらに弱く)」
第5回 「記憶~クレッシェンド(だんだん強く)」
第6回 「岐路~フェローチェ(荒々しく)」
第7回 「告白~アダージョ(ゆるやかに)」
第8回 「決心~フォルテピアノ(強くすぐに弱く)」
第9回 「誕生~カンタービレ(歌うように)」
ランキングに参加しています。
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第二楽章 (リンダブックス)/泰文堂
奈津美が家を出た。奈津美のいる場所に思い
当たった茉莉は、奈津美に会いに行く。湖畔で
二人は16年分の思いをぶちまけ始める。
**********
奈津美) あたしあの時、わかってた。
あなたが、彼のこと好きなこと。
だけどさあ、あの頃のあたしは今よりも
っとずーっといい加減で、フタしたの。
別に、はっきり言われたわけじゃないか
らって。ズルかったよね。ゴメンね。
茉莉) だったら、あたしも白状しないと。
あの頃、あなたのバイオリン、最高だった。
負けるかもって怖かったんだと思う。
だから、あんな・・・。今でも耳に残ってる。
最高の、音色だった。
奈津美) だけど今は・・・見てよ、この状況。
どうしよ。帰りたくない。
シカゴで会ってたなんて知らなかった。
あの人も、きっとあなたに、惹かれてた
のね。なんか知らない人みたい。どんな
人だっけ、あの人。なーんかもう、よくわ
かんなくなってきちゃった。
茉莉) 一緒に、思い出してあげようか。
**********
奈津美) そしたら、あいつ、何が欲しいんだ?っ
て。何でもあげる。今まで大事にしてきた、
音楽も、何にもいらない。君と、お腹の子
のためならって。・・・なーんにもいらない。
二人さえいてくれればって。
茉莉) そこから先は、知らない。
あたしの知らない、あなたたち。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20130515/22/pikataa3/30/00/j/t02200138_0480030012540171867.jpg?caw=800)
茉莉) ねえ?
奈津美) うん?
茉莉) 前にさ、言ってくれたじゃない、私に。
まわりにどう思われようと関係ない。
よくできましたって言えればいいって。
奈津美) うん。自分自身に?
茉莉) そう、最後に。
奈津美) 最後に、
この世に、はいさよならって、言う時に?
茉莉) 言おう?
今のままさ、自分たちが選んだ道信じてさ、
よくできましたって、言い合おうよ。どっちが
先に逝くかはわかんないけど。ね?
**********
一登) 何してたんだよ。わかってるのか?
帰ってきたじゃないよ。何考えてるんだよ。娘
のことはほったらかして、ろくに連絡も寄こさ
ないで。いいか、二度とこんな勝手な真似は
するな。何か思ってるなら、ちゃんと俺に言え。
じゃなきゃ、どうにも対処できない。
奈津美) 何もそんな言い方しなくったって。
一登) ビックリするんだよ。急にいなくなられると。
やってけない。お前なしじゃ。
だから、必ず話は聞く。二人でいられるよう、
全力で努力する。当然だろう、そんなこと。
なんだよ。
奈津美) ふふ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20130515/22/pikataa3/ff/93/j/t02200138_0480030012540171872.jpg?caw=800)
一登) なんだそれ。
奈津美) 二度と、よそ見はしないで。
一登) ゴメン。
**********
こだわりは人それぞれ。ずっとわだかまっていた
ことも。それは秘めた恋だったり、秘めた野心だ
ったり、ささいなことだと思える時もあれば、一生
忘れられないような気もしてしまう、そんな自分
でもどうしようもなくこだわってしまう気持ち。でも、
だからこそ、そのこだわりを認めて、あやまって
もらえたときに、ようやく、ずっと心に刺さったまま
だった氷の刺が溶けていく。喧嘩できる、そして、
仲直りできる、それこそが、友達である証として。
運命が、正しいのか間違っていたのか、それは
きっと、最後にわかること。最後の最後に、「よく
できました」と自分自身に言えればいい、ものな
のかもしれない。運命は、なるようになる。そうな
るようにできている、と、なんとなく私もそう思う。
一登と奈津美の、仲直りする夫婦の会話がよか
った。奈津美の突然のキスも、ビックリする夫も。
伝わるように会話できる夫婦でいたいものです。
「第二楽章」関連ブログ↓
第1回 「予感~フォルテ(強く)」
第2回 「後悔~メゾピアノ(やや弱く)」
第3回 「秘密~メゾフォルテ(やや強く)」
第4回 「約束~ピアニッシモ(さらに弱く)」
第5回 「記憶~クレッシェンド(だんだん強く)」
第6回 「岐路~フェローチェ(荒々しく)」
第7回 「告白~アダージョ(ゆるやかに)」
第8回 「決心~フォルテピアノ(強くすぐに弱く)」
第9回 「誕生~カンタービレ(歌うように)」
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第二楽章 (リンダブックス)/泰文堂