シリア難民の子供の遺体がトルコの海岸に漂着したニュースをきっかけにして、多くのマスコミが日本も難民を受け入れるべきだという主張を展開しています。
そして、日本は難民受け入れに消極的だということを盛んに伝えています。日本の難民受け入れの人数は、欧米に比べて少ないのは確かです。平成26年度に日本政府に難民認定申請を行ったのは5,000人で、そのうち認定されたのは11人です。人道的な理由を配慮し在留を認められた110人と合わせても、日本に滞在が許可されたのは121人です。
ここで、難民とはどういう人を指すのかを確認したいと思います。難民条約では、難民の定義は以下のようになっています。
人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まない者。
戦争や政治の混乱によって危険を感じて、国籍のある国から出た避難民も難民と見做されるようです。従って、経済的に困窮して他国に移動した者や、自然災害などで生活基盤を破壊され他国に逃れた者は、難民条約上の難民には該当しません。
シリアなどの中東やアフリカから欧州に難民と移民が大量に押し寄せていて、昨年は約22万人が流入し、今年はこれまでに約36万人が流入してきています。これらの人数は、難民と移民を合わせた人数です。
難民と移民というのは全く異なったものであり、移民の中には不法な手段で国境を超えている者もおり、その場合は不法滞在となります。マスコミでは、移民を難民と同様に扱ってしまって報道していることがあるので注意が必要となります。
難民となった人が、難民でなくなる方法は大きく分けて3つあります。
・帰還-祖国に帰ることができる状況になり、祖国に帰る
・避難先定住-非難した国に定住先を見つけて、そのまま住み続ける
・第3国定住-祖国や避難国以外の第3国に行って、その国に定住する
ここで、日本の難民のことに話を戻します。下のグラフを見て分かるように、日本では難民認定申請者が急増していますが、実は偽装難民が多くいることが影響しているようです。
資料出所:法務省「平成26年における難民認定者数等について」
法務省が難民と認めなかった例として、以下のような理由で帰国したくないというものがありました。
・本国に借金があり帰りたくない
・日本で稼いで本国の家族に送金したい
・妻が以前交際していた男性から脅迫されている
・キリスト教徒になり酒を覚えたのでイスラム教国に戻りたくない
このような理由で難民申請をして、それを認めてしまったら、どんな人でも難民になってしまいそうですね。他にも、難民条約上の難民性が認められないケースが少なくなく、実際には日本で働くことを目的として難民申請をしていることが非常に多いようです。
また、同性愛者で迫害されているという理由で難民申請していた外国人男性が、後に日本人女性と結婚していたという例もあったようです。
そして、観光や留学で入国した後に難民申請することも増えているようです。外国人技能実習制度を利用して来日し、その後に難民申請をする外国人も多くいるようです。
不法就労で摘発されて不法滞在になっても、難民申請をすると退去強制が停止されてしまいます。また、申請を認められなくても再申請は可能となっており、前回認められなかった申請理由と全く同じ理由で再申請してくる外国人もいるようです。
ここ数年、難民に該当しない外国人が就労を目的に行う偽装難民申請が増えていたのには、ある理由がありました。それは、平成22年に民主党政権下で行われた難民認定制度の見直しです。
それ以前は、難民申請を行った人への就労資格は、生活困窮者に対してだけ優先的に認めていました。それを、難民申請を行った外国人に対して、申請から半年後には就労資格を自動的に与えるように制度を変えてしまったのです。
偽装とみられる申請が増えたことにより、認定の審査手続きが長期化して、本来の難民救済に遅れが出る事態になりかねません。難民ではないことが明白な申請者の就労は認めない方針に変更することを、法務省は今年の春に決定しました。
確かに日本の難民認定者数が欧米に比べて少ないですが、単純に人数だけを比べてしまうのは少し乱暴な議論のような気がします。上述のように、日本で難民申請をしている中身をもう少し知った上で、難民について議論をするべきだと思います。
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