財務省は、日本の国の財政は歳出が税収等を上回る財政赤字の状況が続いて国の借金が増えており、財政破綻の恐れがあると主張し続けています。

 

このまま国の債務が増えていくと、国の信認を失い国債が暴落してしまうと訴えています。国債の価格が暴落すると、国債の金利が跳ね上がりますので、その金利返済も多額になると危機を煽っています。

 

そして、国の債務を増やさないために財政収支を均衡化させ、そのために消費税増税が必要だと主張しています。

 

このように、日本は財政危機の状態にあり国債が暴落して大変なことになると言っている財務省ですが、それとは全く反対のことも言っています。

 

平成14年に、ムーディーズ、スタンダード&プアーズ、フィッチ・レーティングスの格付け会社が日本国債の格付けを引き下げたことがありました。

 

それに対して財務省は、平成14430日に格付け会社3社に対して以下のような意見書要旨を出しています。ちなみにこの意見書は、現在の日銀総裁の黒田東彦氏が財務省の財務官の時に送ったものです。

 

-ここから抜粋-

 

1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。

従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。

 

(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。

 

(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。

例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。

 

・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国

・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている

・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高

 

(3)各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。

・一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。

1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。

・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。

 

2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている。

 

-抜粋終わり-

 

財務省は「日本は自国通貨建ての国債を発行しているのでデフォルトすることは考えられない」「日本の国債は低金利で安定的にほとんどが国内で消化されている」などの理由から、日本国債の格付けを下げるのはおかしいと格付け会社に対して抗議をしたのです。

 

 

格付け会社というのは、実は完全には信用できないようなところです。格付け会社は、金融商品や企業・政府などについて、信用状態に関する評価をする企業です。

 

格付けするときは、企業などの発行体からの依頼を受けて格付けを行う場合と、依頼を受けずに格付けを行う場合の両方があります。

 

依頼を受けて格付けを行う場合は、有料で格付けをします。そうなると、依頼された企業の思惑に格付けが左右されることもあるようです。

 

米国のサブプライムローンに高い格付けをしていたり、破綻寸前のエンロンやワールドコムに対して投資適格の格付けをしたりということもありました。経済学者の高橋洋一氏は「格付け会社の信頼性はその程度のもの」と指摘しています。

 

また、海外のヘッジファンドは日本の金利が上昇して国債が暴落するという見込みをして投資をし、大損をしたところが少なくありません。日本国債が暴落すれば利益を得られるような投資を目論んでいるヘッジファンドの意向を汲んで、格付け会社が日本国債の格付けを下げることも十分考えられることだと思います。

 

 

話を財務省のことに戻します。

 

財務省は普段言っていることと全く正反対のことを格付け会社に主張していました。経済論としては、格付け会社に言っていることが正しいので、やはり普段から格付け会社に主張したことを国内でも言って欲しいですね。そうしなければ、財務省は増税をするために嘘で財政危機を煽っていると言われても仕方ないと思います。


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