消費税率を10%に引き上げるかどうかは、経済状況などを勘案して判断することとなっています。消費税率が8%に引き上げられた今年4月以降、景気は大幅に失速しています。安倍首相は、今年の79月期の経済指標を見て、増税するかどうかを判断すると言っています。

 

なぜ消費税を引き上げるのかというと、財政再建のために消費税増税が必要だと財務省は以前から説明しています。消費税率を引き上げることによって税収を増やし、それによって財政赤字を縮小するというのです。また、消費税の増収分を社会保障費に充てるとも言っています。

 

消費税は所得税や法人税に比べて景気に左右されず、安定した税収が見込まれます。安定した税収を確保するために、税収全体に占める消費税の割合を高くしたいと財務省は考えているようです。

 

しかし、消費税率を引き上げても税収は増えません。消費税増税を行うと、消費税は確かに増えます。下のグラフは、昭和63年から平成25年までの、主要税目の対前年増減額と税収全体の前年比の推移です。消費税導入後や消費税率引き上げ後は、所得税と法人税の減少額が消費税の増加額を上回ってしまい、結果として税収全体が大幅に減ってしまいました。

主要税目の税収の対前年差額
資料:財務省「主要税目の税収(一般会計分)の推移」

 

税収全体を増やすためには、景気を良くしてGDPを伸ばすことです。税収増減率と名目GDP成長率の推移を表したグラフをみると、それがよく分かると思います。


税収増加率と名目GDP成長率
資料:財務省「主要税目の税収(一般会計分)の推移」

 

税収増加率と名目GDP成長率が、連動していることが分かると思います。名目GDP成長率が高くなると税収の増減率が高くなり、名目GDP成長率が低くなると税収増減率も低くなっています。


名目GDPと主要税目の税収
資料:財務省「主要税目の税収(一般会計分)の推移」

 

また、消費税増税を行うと、景気を悪化させ結果としてGDPの伸びを鈍化させてしまいます。景気が良くてGDPの伸び率が高く賃金も上がっているときであれば、消費税増税の影響を抑えることはできますが、現在はそういう状況にはありません。

 

更に、現在はデフレからも完全に脱却できていない状況です。消費税引き上げはデフレに向かわせますから 、金融緩和策の効果を打ち消してしまいます。デフレ状態に完全に逆戻りしてしまえば、名目GDP成長率は下がってしまい、余計に景気が悪くなって税収が落ち込みます。

 

 

財務省は、消費税率を将来的にはもっと上げないと、高齢人口の増加に伴う社会保障費の増大に対応できないと主張しています。消費税率は10%ではとても対応できず、20%以上にしないといけないという試算も出しています。

 

しかし、そんなことをすれば逆に税収が減り、社会保障費を増やすどころか減らさなければならなくなります。

 

GDPを伸ばして税収を増加させるためには、消費税率の引き上げはするべきではありません。むしろ消費税率を引き下げた方が景気が回復して名目GDP成長率が高くなり、税収全体が増えることになります。そうなれば、財政収支が改善されて社会保障費にまわすお金も増やすことができます。


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