FUJITA'S BAR

酒場は、人と人の架け橋のような気がしながらカウンターに立ち続け、もう少しで

半世紀

その歳月の中で出会い、そして去っていった人々の面影も今は定かではない。

歩み続けた足跡の上に歳月が降り積み、全てが茫洋とする前に、せめて書き留

めておこう思ったのがこのブログである。

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2012-02-23 10:45:07

川崎トリスバー ②

テーマ:酒場親父の思い出話

そこに顔を出すようになったは“川崎に行くのなら寄ってみろよ。知り

合いがまだいるはずだ・・・・”と故郷の悪友バーテンダーが教えてくれ

たからだ。


川崎トリスバー』は、川崎駅東口から京急川崎駅に通じる路地裏に

あった。


勤務先の四谷小学校は、工場地帯のど真ん中だったから、下宿のあ

るバス停“大島四丁目”を乗り越して駅前まで出てこなければならない

し、バス賃さえも惜しい薄給の身に敷居は高く給料日の後しかいけな

かった。


その夜はどうしてもまっすぐ帰る気がせず、終点の川崎駅まで乗り続

け、このカウンターバーに来てしまった。


「おっ、石原先生今日は早いですね」

顔の造作を真ん中に全部寄せ集めたような顔をしたチーフバーテン

ダーの“岩さん”が、グラスを拭きながらにこやかに声をかけてきた。

岩田某というのだが“ガンさん”が通り名になっていた。

悪友の知人である。


左の小指一節が欠けている事から推察して、その前身が分かろう

というものだ。
.........................................................酒場人生覚え書き

しかし、この店の扉を押して中に入った瞬間から外界と遮断された別

の世界に、ただひたすら浸り、漂う事が出来るのもこの“ガン”さんの人

柄によるところがおおい。


他に若いバーテンダーも四人ほどいるが、礼儀正しくニコニコと明るく、

それでいて決してお客のなかに踏み込んでくるような真似をしない好

青年ばかりだった。

   
「いつものでイイですか」


若いバーテンダーの一人が、手際よくジンライムを作りあげ、コレは

おまけ、と、小声で云いながら、ロックグラスの縁までジンをつぎ足し

前に置いた。


ネズの実の香りが空きっ腹に沁み込んできた。


                                      続

2012-02-21 10:43:41

川崎トリスバー ①

テーマ:酒場親父の思い出話

何年かぶりで降り立った川崎駅の変わりように驚いてしまった。


川崎駅は小学校教員として歩み始めたとば口であり、社会という長い

旅路を踏み出した地でもある。

煤煙のなかでくすんだ街や人々であっても、ゆったりと時間の過ぎてい

く田舎暮らしに比べたら、なにもかも目を見張るほどの違いで、街は毎

日が縁日のようで、こころを浮き立たせてくれたものだ。


50年ほど前の川崎駅舎は、神奈川県ではじめての駅ビルではあった

が、工場地帯から吐き出されるばい煙を浴びてすすけていたし、うご

めく人々も全身にホコリをかぶったように薄汚れていた。


.................................................酒場人生覚え書き

それだけに親しみや温かみを漂わせていたものだが、いまは見知ら

ぬ近代都市の雑踏のなかに、いきなり放り込まれてしまったような戸

惑いを感じた。
こころのどこかに昔の川崎駅の風情や、甘酸っぱい想い出が明滅し

ていたのだろう。


その頃の川崎駅西口は朝夕こそ工業地帯に通う人達にあふれかえ

ったが、夜になると街路灯がヤケに目立つゴーストタウンのようだっ

た。

高度成長の熱気が去ったあとさまざまな工場が相継いで撤退し、駅

前とは思えない空地が広がっていたが、いまや首都圏有数の商業

施設となり昔日の面影はない。


そんななかどうしても訪ねてみたかったのが、教員時代の想い出を

預けた『川崎トリスバー』だった。


                                       続

2012-02-18 09:43:59

こころ絵 「今日という日は」  

テーマ:アート

今日という日は
残りの人生の最初の一日です


アメリカンビューティ」という映画の中に出てくる言葉です。

とても新鮮な気持ちになりませんか?

視線が前向きになりせんか?


昨日までの過去はとりあえず置いておきましょう。


...............................酒場人生覚え書き


さぁ、今日は最初の日です、残りの人生の。


何をしましょうか?

2012-02-17 10:48:19

続 鍋のウンチク話

テーマ:食い物歳時記

九絵 4


この『九絵』の体長と比肩される大型魚に『油坊主』(あぶらぼうず)がいます。


カサゴ目ギンダラ科アブラボウズ属で唯一の魚種のこの魚は水深約400~1.000m

あたりの岩礁帯域に生息していて、体長は約1m80cm、体重は約90~100㎏を超え

るといわれています。

油坊主』は千葉の銚子港に水揚されるものは“最高級魚”として高値で取引される

ばかりでなく、特に神奈川や静岡の各漁港では、この大型魚を『おしつけ』と呼び、

関東や東海地方などで珍重賞味される魚とされています。

因みに、『おしつけ』という魚名は、平安時代の女房言葉に由来し、“毒見をする”と

いう意味があり、取り立てて“有毒魚”でもないのに、何故“毒見をする”のかといえ

ば、この魚には旨味成分の脂肪がコッテリと含まれているためなのです。


.......................................................酒場人生覚え書き

その美味しさに誘惑されて多量に食べ過ぎると、摂取した脂肪分が消化しきれず

食中毒並みの下痢”に見舞われる危険性があるため、毒見を必要とするような気

分で少量を味わう魚であるという意味を持っているのだとか・・・・この魚を食べるに当

たっては“お躾け”が必要なのです。

口当たりもよく特有の旨味があり、加えて超高級魚とされる“九絵”と体形的な外観

が似ているため“クエしゃぶセット”などと身肉を偽装表示するという事件もあるらしい

ですからご注意を。


鍋の具材にもならない“政治屋”のなかにも“真と偽”が混在しているというよりは

ゲテモノ”のなんと多いことでしょう。


くれぐれも気をつけねばこちらの命取りになります。


                                               了


2012-02-15 10:46:52

続 鍋のウンチク話

テーマ:食い物歳時記

九絵 3


クエもまたアンコウのように捨てる部分がほとんどないほど、全てが美味な魚です。

先ずは鱗ごと堅い皮を薄刃の包丁で引きます。

この皮はゼラチンの宝庫。軽くお湯を通してから鱗を外し、鍋に入れます。
40kg級のクエの巨大な頭と中骨、そして、強靭なヒレの付け根は、とても包丁では

切れません。

登場するのは、冷凍マグロを解体する電動ノコです。
固い皮とウロコを包丁で引きます。この皮が美味!

骨が堅いので、冷凍マグロ用の電動ノコでヒレを落とします。


ついで三枚におろした半身をさらに五枚にしますが、さらに半分にしても迫力ある大き

な切り身です。


クエは最低でも8kgないと、その魅力がでないと言われますが、小さいクエはメスだ

からなのだと思います。

オスとメス もちろん個々人の好みでしょうが、肉を彷彿させる圧巻の身質と透き通る

脂は、成熟したクエ、すなわちオスでないと出ない魅力です。


透き通るような身と脂は包丁を跳ね返す張りがあり切り身の見た目は魚の身ですが、

加熱するとそれは肉のような性質を現します。


..................................................酒場人生覚え書き

巨大な内臓やヒレや皮がクエの魅力で濃厚な出汁を生みます。
これを食べたら他の魚はクエない』とか、『河豚よりも美味』と言われるクエですが、

身はもちろんのこと、いわゆる『あら』の部分が非常に美味です。


多少の癖はありますが、それらの部分が非常に濃厚な白濁スープを生みます。

もちろん、ゼラチンも極めて豊富な皮は欠かせない美味。

最後の雑炊を究極にするのも、これらの身以外の部位があってのことです。


                                               続

2012-02-13 10:45:27

続 鍋のウンチク話

テーマ:食い物歳時記

九絵 2


クエも10kg以上となると、専門に狙う漁師でも月に数本しか釣り上げることができない

幻の魚です。


おりしも先日一本釣りの様子を放映してましたが、クエが住みかとする岩礁の上から、

餌をつけた針を投げ込み、夜間に活発に活動して、餌を丸のみするクエが掛かるのを

待つのだそうです。


水揚げの際は口から浮き袋に棒で穴をあけ、生かしたまま生簀に入れて帰港するの

も、活であれば年末などで相場が高い時には、キロ15,000円もの価格がつくこともあ

るといいます。

30キロぐらいだと45万から50万で取引される超高級魚・・・・生かしたまま帰港するこ

とが重要なんですね。
....................................................酒場人生覚え書き


活け締めにしてから2~4日寝かせると、脂が筋肉に溶け込みうまみを増すのだとか。

長崎の五島列島や対馬海域で水揚げされたクエは、港の生簀で落ち着かせ、解体

する数日前に活け締めにして、氷詰めにして築地市場に送られます。
本マグロ同様、巨躯をしばらく寝かして身をしなやかにし、うま味を増してから切ること

が重要なのです。


クエは生まれた時は全てメス。
強靭な肉体で多くのメスを従え、ハーレムの頂点に立つオスは、元はメスで繁殖を

繰り返しながら成長し、その後、オスに性転換し、さらに何十年も成長し続け、数十

キロの巨体になります。

ちなみに、2~3kgになるまででも5年ほどの年月が必要で、40kgもの巨魚ともな

れば、30年~50年間、岩礁でエビやカニやイカを丸のみし続けてきたことになります。

                                              

                                                続

2012-02-11 09:55:52

こころ絵 『雪へ雪ふる』 山頭火

テーマ:アート

雪へ雪ふるしづけさにをる

                山頭火


「今年いちばんの冷え込みです」
そんな天気予報士の言葉をなんど聞いたことでしょう。

北海道や裏日本では記録的な大雪と厳寒にみまわれていて、地球温

暖化の危惧が信じられなくなります。


それでも子供の頃の故郷“甲州の冬”を思い出せば、雪は降り積み夜

の帳が降りるころ、机に向かっていられないほど足下から寒さが忍び

寄ってきたものです。


......................................酒場人生覚え書き .


そんなことを思いながらこの句を鑑賞すると「雪へ雪ふる」という山頭

火のレトリックが“白い雪の上へまた雪が重なり、それがいつの間にか

辺りの音まで消している・・・・”という雪の深さを見事に表現しているのを

感じます。


静けさのなかに身をすくめる、山頭火の侘びしさがひしひしと伝わって

くるようです。


われもまた旅人・・・・

2012-02-10 10:43:50

続 鍋のウンチク話

テーマ:食い物歳時記

九絵 1


前回までの『鍋ウンチク話』のなかで、代表的な美味しい鍋の具材は“西の河豚に

東の鮟鱇”と書きましたが、「寿司を食いねえ、江戸っ子だってねえ」で有名な「森

の石松三十石船道中」の石松のセリフじゃないですが、“でえじなサカナを忘れては

いませんか”といわれそうです。


それが九州地方の福岡では“アラ鍋”土佐や和歌山地方の日高などでは“クエ鍋

と呼ばれるスズキ目ハタ科の大型魚です。


天然物の“九絵”(クエ)は折り紙つきの“超高級魚”であり“幻の怪魚”ともいわれ

るゆえんはそのお値段の高さにもありますかな・・・・金に糸目を付けない相撲部屋

の“ちゃんこ鍋”の具材としても一番人気でしょう。


現地で本格的な“クエ鍋”を堪能しようとすると、大衆店でも¥8.000から¥10.000

を覚悟しなければならないようですし、旅費を惜しんで本場の業者へ天然物の“

”を注文しても、鍋の具材一式で5人家族ならざっと3~5万になるようです。


..............................................酒場人生覚え書き

これよりも安い料金ならまずは養殖物だと思って間違いありません。


夜行性の“九絵”は潮流のよい岩礁帯域に棲息し、岩場に集まってくる魚群や烏

賊・蛸・伊勢海老などの頭足類や甲殻類を襲い、強力な歯を持つ大口でガブリガ

ブリと貪り食いをするといわれています。


特に伊勢海老などの甲殻類を捕食して呑み込む時には、興奮のあまり体色の紋

様が目まぐるしく変化し、九通りの絵模様を体表に描き出すことから『九絵』とい

う呼び名になったと伝えられています。


                                            続


2012-02-08 10:42:09

鍋のウンチク話 5

テーマ:食い物歳時記

変わった鮟鱇鍋と言えば“漁師風どぶ汁”でしょうか


前述のどぶ汁とは調理法が異なり、アンコウと野菜の水分だけでスープを作る鍋です。
水を使わず野菜と味噌、アンコウだけで栄養価の高い鍋が出来ることから、漁師達に

重宝されているのですが、この調理法は手間と時間が必要で、相当手馴れた人でな

ければ作ることが難しいため、一般的に提供している店は少なく幻の鍋とされていま

す。


どの調理法でも最後に御飯と玉子、出汁を加え「おじや(雑炊)」にして食べることが

多いです。

アンコウの旬といえば「霜月あんこう絵に描いても舐めろ」とか「魚偏に安いと書

くは春のこと」と詠まれているぐらいですから11月から3月が旬です。


水温が低くなることで身が締まり、春先の産卵に向けて肝臓が肥大可することで味が

良くなるのです。


特にいま(1 ~2月)頃が最も美味しい時期と言われてます。


ぎゃくに産卵後から夏場にかけては肝も縮み、味も落ちてきますので敬遠されますね。

ふつう魚はまな板で捌きますが、このサカナのの表面はぬめりが有り、水圧に耐えら

れる柔らかい体のため、大きなものになるとまな板の上で捌くのが難しいのです。
そこで下顎を吊るし、大きな口から水や氷を入れて安定させ、回転させながら捌くこと

がありますが、これが鮟鱇の吊し切りと呼ばれる手法です。


............................................................酒場人生覚え書き

ものの本に寄りますと江戸時代の頃から始められていたと言われています。


この吊し切りは昔の横浜あたりの魚屋でも、とば口に大きなアンコウを吊し、オヤジさ

んが手際よく捌いて七つ道具を入れ雑ぜながら売ってくれたのです。
この冬の風物詩のように見かけられた「鮟鱇の吊し切り」も、いまではまったく見か

けなくなりましたが、現在でも茨城県にある大洗ホテルや、一部の食事処でも店の前

で吊るし切りを行っているところがあるようです。


スーパーなどに並んでいるパック入りのものに飽き足らない方は、すこし脚を伸ばし

てみたらいかがでしょう。


                                               続


2012-02-06 10:40:54

鍋のウンチク話 4

テーマ:食い物歳時記

鮟鱇は『西のフグ(河豚)、東のアンコウ(鮟鱇)』と並び称されている高級魚です。


日本近海の水深100 - 300mの砂泥底に生息している深海魚で、底引き網で他の魚

と一緒に水揚げされています。


漁獲高日本一は山口県下関市なのですが、茨城県を境に「北のアンコウ」「南のア

ンコウ」と分けられ、北の海で獲れるアンコウの方が高値で取引されているようです。


特に親潮と黒潮が交わる鹿島灘海域はプランクトンが豊富で質が良く、平潟漁港

久慈漁港で主に水揚げされている常磐物は築地市場でも重宝されているのです。


外見はグロテスクだが「食べられない所が無い」と言われるように、身はもちろん、

皮や内臓、エラなど、骨以外は全て食べることが出来る無駄の無い魚で、1.肝/

2.とも(胸びれ・尾びれ)/3.ぬの(卵巣)/4.だい身(身の部分)/5.胃(水袋)/

6.えら/7.皮が俗に言う「鮟鱇の7つ道具」です。


.....................................................酒場人生覚え書き

オスのアンコウは大きくなることは無く、商品価値が無いため市場に出回ることはな

く料理として使われるのはメスのアンコウだけ。


あんこう鍋」の味付けは大きく分けて4種類。


味噌味:漁師風の味として、民宿や旅館、居酒屋、割烹料理店などで多く出されて

     います。

醤油味:料亭などの高級店では上品な醤油味のあんこう鍋が好まれているようで

     すが、これを味噌味にする場合、肝と味噌を練り合わせた団子の様なもの

     を鍋に加えるのだそうです。

どぶ汁:北茨城市や大洗町の一部の店で味わえる、より濃厚なあんこう鍋。

     どぶ汁の由来は肝を鍋で炒めてから作り、肝油によりスープが濁ることから、

     どぶろくをイメージして名付けられたといいます。


                                                続
 

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