精神疾患は寛解を期日に合わせられない話
スポーツ選手などが大怪我をした際、驚異的な早さで軽快、治癒する話はよく知られている。
例えば、少し古い話だが、競輪の中野浩一が落車による大怪我のため世界選手権個人スプリントに出場できそうにない事態になった。到底、本選に出場が難しい状況だったが、驚異的な精神力でリハビリに取り組み、出場を果たした。彼は最終的に世界選手権個人スプリント10連覇という前代未聞の大記録を樹立した。
当時、世界的にスプリントの強豪は、ソ連など東欧、いわゆるステートアマに多く、プロの世界選手権出場者は極めて少なかったらしい。実際、世界選手権でもいきなり準々決勝かそれくらいから始まったこともあったという。つまり自転車という競技はツール・ド・フランスなどのロードは高い名声、人気、報酬も得られるが、ピストはそうではなかったのである。
従って、現在のように世界選手権がプロ、アマの障壁が取り払われていたとすると、あれほどは勝ち続けられなかった可能性が高い。
それでも世界的に自転車競技にかかわる人々にとって、10連覇は凄いという評価である。今なお日本の歴代のプロスポーツ選手の中で世界的に国内以上にリスペクトされている選手の1人である。
また芸能人では、北野武が平成6年にバイクの自損事故で重症を負った。その大怪我の規模だが、右側頭部頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷、右頬骨複雑骨折というもので、早期の現場復帰は難しい状況だった。実際、本人は幽体離脱を経験したと話している。
それでも事故後2か月目に、酷い顔面神経麻痺が残ったまま退院記者会見に臨んでいる。これは「自分は復帰する」という決意をあらわすもので、その後、リハビリで驚異的回復の伏線になったような気がする。あの回復は医師でも驚くようなものである。
北野武の場合、長期の現場からの離脱が、そのまま人気凋落の原因になることがわかっていたので期日に間に合わせるように頑張れたのである。これはむしろ彼自身より、周囲の人たちのためのモチベーションの方が高かったのかもしれない。彼がいないと、彼にかかわる芸能人たちの人気や報酬などのマイナスの影響も大きいからである。(スタッフも含め)
これは上の競輪の中野浩一の話と同じだと思う。
それに比べ精神疾患の場合、そのタイプの期日の合わせ方は非常に困難である。最終的に回復し現場復帰できたとしても、それまで決められた期日に合わせるようなリハビリは難しい。
その意味でも、「精神疾患はなるようにしかならない」。
ミュージシャンの華原朋美は一時、精神疾患で現場を離れざるを得なくなった。2007年に所属事務所のプロダクションから専属契約を解除されている。これは、これ以上芸能活動を継続することは不可能と判断されたためで、実際、公式ファンクラブも解散されている。
もし、彼女が近いうちに回復し現場復帰が見込めると思われていたのなら、このような処遇になるはずはない。
ところが、その後、約5年の芸能空白期間を経て現場復帰を果たすのである。
彼女の家族は元々事業家らしく、回復の過程で、家族の経営する老人福祉施設などでリハビリ中は介護の手伝いをしていたようである。実際、彼女のリハビリ時代のテレビドキュメンタリーなどでその様子が紹介されていた。そのテレビ番組では、閉鎖病棟に入院中のまだ精神状態が良くない時期の様子も収録されており、ある意味、凄いドキュメンタリーだと思った。
また老人福祉施設で、カラオケで彼女自身の曲を歌う場面が出てくる。それが凄く上手いのである。自分の曲なので良く考えると当たり前なんだが、どうしても妙な違和感というか、微笑ましい感覚に包まれてしまった。これは自分が精神科医なのもあるんだと思う。
彼女の場合、あのような自然な流れで回復し現場復帰を果たしたわけで、特に急いだとか、期日に合わせて回復した形跡がない。これは上の中野浩一や北野武の回復もパターンとは根本的に異なる。
つまり精神力は、精神そのものが健康でないと機能しにくいんだろう。
華原朋美の回復のテレビドキュメンタリーは、精神疾患で治療中の人たちには励みになる記録だと思う。
例えば、少し古い話だが、競輪の中野浩一が落車による大怪我のため世界選手権個人スプリントに出場できそうにない事態になった。到底、本選に出場が難しい状況だったが、驚異的な精神力でリハビリに取り組み、出場を果たした。彼は最終的に世界選手権個人スプリント10連覇という前代未聞の大記録を樹立した。
当時、世界的にスプリントの強豪は、ソ連など東欧、いわゆるステートアマに多く、プロの世界選手権出場者は極めて少なかったらしい。実際、世界選手権でもいきなり準々決勝かそれくらいから始まったこともあったという。つまり自転車という競技はツール・ド・フランスなどのロードは高い名声、人気、報酬も得られるが、ピストはそうではなかったのである。
従って、現在のように世界選手権がプロ、アマの障壁が取り払われていたとすると、あれほどは勝ち続けられなかった可能性が高い。
それでも世界的に自転車競技にかかわる人々にとって、10連覇は凄いという評価である。今なお日本の歴代のプロスポーツ選手の中で世界的に国内以上にリスペクトされている選手の1人である。
また芸能人では、北野武が平成6年にバイクの自損事故で重症を負った。その大怪我の規模だが、右側頭部頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷、右頬骨複雑骨折というもので、早期の現場復帰は難しい状況だった。実際、本人は幽体離脱を経験したと話している。
それでも事故後2か月目に、酷い顔面神経麻痺が残ったまま退院記者会見に臨んでいる。これは「自分は復帰する」という決意をあらわすもので、その後、リハビリで驚異的回復の伏線になったような気がする。あの回復は医師でも驚くようなものである。
北野武の場合、長期の現場からの離脱が、そのまま人気凋落の原因になることがわかっていたので期日に間に合わせるように頑張れたのである。これはむしろ彼自身より、周囲の人たちのためのモチベーションの方が高かったのかもしれない。彼がいないと、彼にかかわる芸能人たちの人気や報酬などのマイナスの影響も大きいからである。(スタッフも含め)
これは上の競輪の中野浩一の話と同じだと思う。
それに比べ精神疾患の場合、そのタイプの期日の合わせ方は非常に困難である。最終的に回復し現場復帰できたとしても、それまで決められた期日に合わせるようなリハビリは難しい。
その意味でも、「精神疾患はなるようにしかならない」。
ミュージシャンの華原朋美は一時、精神疾患で現場を離れざるを得なくなった。2007年に所属事務所のプロダクションから専属契約を解除されている。これは、これ以上芸能活動を継続することは不可能と判断されたためで、実際、公式ファンクラブも解散されている。
もし、彼女が近いうちに回復し現場復帰が見込めると思われていたのなら、このような処遇になるはずはない。
ところが、その後、約5年の芸能空白期間を経て現場復帰を果たすのである。
彼女の家族は元々事業家らしく、回復の過程で、家族の経営する老人福祉施設などでリハビリ中は介護の手伝いをしていたようである。実際、彼女のリハビリ時代のテレビドキュメンタリーなどでその様子が紹介されていた。そのテレビ番組では、閉鎖病棟に入院中のまだ精神状態が良くない時期の様子も収録されており、ある意味、凄いドキュメンタリーだと思った。
また老人福祉施設で、カラオケで彼女自身の曲を歌う場面が出てくる。それが凄く上手いのである。自分の曲なので良く考えると当たり前なんだが、どうしても妙な違和感というか、微笑ましい感覚に包まれてしまった。これは自分が精神科医なのもあるんだと思う。
彼女の場合、あのような自然な流れで回復し現場復帰を果たしたわけで、特に急いだとか、期日に合わせて回復した形跡がない。これは上の中野浩一や北野武の回復もパターンとは根本的に異なる。
つまり精神力は、精神そのものが健康でないと機能しにくいんだろう。
華原朋美の回復のテレビドキュメンタリーは、精神疾患で治療中の人たちには励みになる記録だと思う。