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2015年12月18日

巡礼風味(4)~性地and聖地編~

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皆さま、どうもご無沙汰しています。
巡礼もようやく最終回です。いつまで放置すれば気が済むのだよ。。。

シルバーウィークの最終日はお彼岸、父とともに、母の墓がある生駒霊園へ出かけました。
いつもなら墓参りを終えたらそそくさと帰宅するところを、かねがね気になっていた隣の寺を見学したり、広大な霊園内を周回したりとにわか観光していましたが、いざ帰路につく段になり、わたしは突然気がついたのです。
信貴生駒スカイライン(有料道路)が、この墓地の目の前にあるということに!

P9236274. 墓地の隣にある寺の堂内で寝ている人。
 
 
このことが、何を意味するか? それは、新地マニアでなければおそらく分かりません。
しかし、わたしが密かに驚いていた矢先、父は父でこの有名なドライブコースが墓のこんなに近くにあるとは思っていなかったようで、「せっかくやから走ってみるか」と云い出し、わたしは何喰わぬ顔で、内心小躍りしながらその提案に乗りました。
スカイラインの先は二股に分かれており、一方が生駒山上遊園地、もう一方が宝山寺へと繋がっています。途中には、大阪平野を一望できる夜景スポットもあります。
宝山寺といえば、ガネーシャが日本風に変化した「聖天様」を祀っていることで有名なお寺。聖天様は、7代先までの子孫の福をかき集めて願いを叶えるという、強力なパワーをもっているそうです。またの名を「歓喜天」といい、その姿はガネーシャ由来の象頭をもつ、男女交合像。一般の参拝客の目の毒になると判断されているのか、宝山寺のみならず、長らく秘仏として祀られてきた神仏なのです。

P9236287 宝山寺の境内。立派な寺です。人がいない瞬間を狙って撮りましたが、この日は参拝客多めでした。

そんな、ちょっと曰くのあるご本尊も気になりますが、この一連の巡礼で宝山寺といったら、それは、関西新地最後の楽園・宝山寺新地に他なりません。しかもこの新地は、宝山寺の参道に存在しており、完全に普通の観光という隠れ蓑をまとって、しれっと新地巡礼を行えるという、唯一無二のエリアなのです。
昨日も実は、ここまで来たら、宝山寺まで制覇したかったな……という気持ちはありました。でも、さすがに昨日の流れで信太山からアクセスするには遠すぎるし、かと云って墓参りが終わって帰宅してまた出かけて……というのも億劫だしで、あまり現実的ではないなと諦めていたのです。いや、それでも生駒霊園というからには、きっと生駒スカイラインもそう遠くはないのだろうくらいの予測はあり、5%くらいの淡い期待もないではなかったのですが、まさか霊園のすぐ隣に入り口があるとは思ってもみず、これも新地の神様(って誰だろ?)のお導きであろうか……としみじみ物思いするのでした。

生駒ケーブルの「宝山寺駅」から寺までの、「観光生駒」(生駒観光ではないところが、なんだかざわざわする怪しさ)と名付けられた参道では、門前町らしく食堂やおみやげ屋、観光旅館が軒を連ね、古きよき観光地といった風情なのですが、この観光旅館の一部(数軒)が、件の新地なのです。
料亭・旅館風看板でそれと分かったこれまでの新地よりも、さらに水面下に潜っての営業形態。何しろ、どこからどう見ても普通の旅館です。その手の旅館かそうでないかを見分けるのは、玄関先に、小さく貼られた「18歳未満お断り」の札のみ。かなり目を凝らさないと分からないレベルです。事前に情報がなければ、おそらく見破ることはできないでしょう。
この日はお彼岸の万燈会で、参道には紙の灯籠が点々と配置され、観光客もそれなりに行き交っておりました。父親がなんの不審もなく、のんきに父散歩(ちい散歩風に、とうさんぽと読んでください)しているその隣で、わたしは観光客に擬態しながら、鋭利な刃物のような視線をぎらつかせていました。どれがそれで、それがどれなのか? まるで標的にブラックライトを当てて光を浮かび上がらせるかのように……。

P923631 関西新地中、最も高度な擬態かもしれません。

 
P9236355 どれも怪しいけれど、どれも怪しくない…。


P9236347 たいへん分かりやすい旅館の案内図。
  
 
聖地のお膝元にある性地。一連の新地巡礼のラストを飾るには、これ以上ないほどふさわしい地ではありませんか。しかも、大峰山と宝山寺は、ともに役行者ゆかりの地であるという繋がりまで!
性と聖には共通点がある。この旅路でうっすらと抱いていた仮定を、ここに来たことでわたしは確信しました。性地と聖地が、ここでは同じフィールドにある。しかも、聖地の本尊が男女交合の秘仏だというのは単なる偶然とも思えず、性と聖が混濁一体となっていることに驚くばかりです。陰陽がひとつの円であるように、正反対でありながら不可分である、性と聖。
新地巡りの動機が、下世話な好奇心であることは認めつつも、同時に、聖地と同じく、俗界とは一線を画する畏怖すべき場所という認識も強く持っているのです。
大峰山の女人禁制と、新地の女人禁制(働いている人たち以外、という意味で)が同じとは云いませんが、大峰山のお膝元である洞川には、かつては”精進落とし”と称して修験の男性たちが売春する遊郭が存在していたという話を聞くと、さもありなんと納得してしまう感じ。今の旅館群はそうではないでしょうが、あのはんなりとした、扇情的とも見える夜景は、飛田のそれにも似ていると云えば似ています。
性と聖の不可分性は、結婚における妻という存在に象徴されているとも云えないでしょうか。すなわち、娼婦と聖女、両方の役割を一人の女に、公式に担わせることでもある……。いや、そもそも女性のみならず人間自体、両方を持っている存在なのか。

聖地に魅了されるように、性地に心惹かれる。
しかし、もう少し厳密に云うならば、歌舞伎町のように臆面もない夜の街や、吉原や雄琴などのあからさまなソープ地帯よりも、これら新地を含むいわゆる「ちょんの間」の、吹けば飛ぶような儚さと、日陰の花のような秘めやかさに、より惹かれます。
売春の社会的道義、通行人のふりをして新地を訪れること、さらにはこんなレポを書くことをどう正当化しようかと考え始めると、甚だしく混乱してくるけれど、善悪の物差しとはまったく関係のないところで、ただ、心を奪われる。世界のどこかにある、まだ見ぬ秘境に憧れるのと同じように、いっそ堂々と、これはロマンなんだと云い切ってしまえたらいいのだけど……。もう少し真面目に云うなら、純粋なる民俗学的探求心なのかもしれません。
関西の新地巡りはいったんこれで終わりますが、わたしはしつこく、絶滅寸前と云われている秋田町や防府を夢見てしまいます。実際に行くかどうかは別として……。
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2015年11月01日

巡礼風味(3)~聖地to性地編

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天川と洞川、そして大峰山を満喫して帰宅した翌日、わたしは再び、天王寺駅へと降り立ち、しかし阿倍野橋駅から近鉄ではなく、JR阪和線に乗り込みました。
前回、時間的な都合で、天川からのアクセスを諦めた、2つの目的地へと向かうためでした。その地の名は、天王、そして信太山。
ただ漠然と、新地巡りの延長として考えていたその地と、図らずも足を踏み入れた大峰は、わたしの中で、「聖地から性地へ」という標語となって結びつきました。単に語呂の問題ではなく、そこにはなにか、共通点があると思えたからです。

天王寺から約1時間強、紀伊中ノ島は、和歌山駅のひとつ手前にある、とってもローカルな無人駅です。住宅地の中に駅舎型のUFOが降り立ったかのような駅で、駅前らしいにぎわいは皆無です。それでも、住宅地ですから人の気配はあり、何の変哲もなさそうな町に異邦人(ってほどでもないけど)がのこのこ歩いていると不審に思われないだろうかと、余計な心配がわいてきます。
第1の目的地・天王新地は、駅から歩いて5分少々のところにあります。なけなしのネット情報からの推測でしたが、けっこうあっさり見つかりました。駅から大通りにアクセスできた時点でもうゴールは間近。わたしは、大通り越しにその看板を発見したのですが、まったく心の準備ができておらず、しばらくはそこを遠目に見ながらぐるりと外周を歩きました。
新地は、あまりにも小規模で、隠れているのかいないのかも分からないほど密かに、当たり前のように溶け込んで存在していました。しかし、ひっそりと云っても、大通りにでかでかと料理組合のゲートがせり出しているので、何も知らなければ商店街でもあるのかと思って入ってしまうかもしれません。わたしも、"無知なる迷子”として歩くという、1回こっきりのカードを切って足を踏み入れました。車が通れないほど狭い道の両脇に、スナックのような看板を出す、数軒の店。玄関の横にせり出す小部屋にはこたつのような卓があり、決して若くはない女性が1人、退屈そうに座っていました。その距離感の近さは、かつてアムステルダムの飾り窓区域を歩いたときにも似て、ガラス越しとは云え、一気に心拍数が上がりました。
新地はU字型になっていて、Uの底の部分にある1軒では、外の洗濯機で若い女性とやや年輩の女性が洗濯していました。その、あまりにも普通の生活風景に戸惑いながら、息を殺してエリアを抜けました。ゲートからここまでの間、わずか3分程度だったと思います。

 
P9226226 けっこう目立つ入口。

P9226221  ゲートをくぐって坂を下りる途中。ごく普通の、ちょっと鄙びた下町という雰囲気。

 ゲートの隣には、インド料理屋があり、休日の昼時とあってかけっこう繁盛しています。とりあえず、ここで昼食を取ることにしました。すぐ隣に新地があるとは思えないほど、日常的なランチ風景。ここに食べに来ている人たちは、その存在に気づいているのかいないのか……。
かつては、最寄りのバス停はその名も「天王新地」だったようですが、今は変わっています。
ランチの後、反対側のゲートから、もう一度だけ、意を決して、メイン通りではない方の坂を下りました。そこもかつては、店が並んでいたようですが、いまはどこも廃業している模様。目視する限りでは、営業しているお店は4軒のようです。台風か何かで吹っ飛んだらしい、U字の左側のゲートは、修復されないままこの先も放置され続けるのでしょうか。再びここが興隆を極めることはなさそうに見えるので、すべては朽ち果てるままに任せるのかもしれません。
先ほど洗濯機を回していた旅館の前を通り過ぎると、視界の端に、中瀬ゆかりを餅のように引き伸ばした感じの年輩の女性が、小部屋の中で長い髪を乾かしている様子が映りました。そうと知らなければ近所のおばちゃんの日常の一コマのようでもありますが、しっかり塗られた化粧と黒いスリップ姿には、やはりドキッとさせられます。
町にへばりつくようにして、あまりにも密やかに営まれる新地。ネットで初めて見た時に抱いた終末感はそのままでしたが、どこか牧歌的でもありました。それにしても、ここへ流れ着いてくる客の男性、働く女性は、なぜ"ここ”なのでしょう? あえてここなのか、それともここしかないのか……疑問がひときわ涌いてくる新地ではあります。


P9226231 更地も多く、現役のお店もかなり年季が入っています。

紀伊中ノ島を後にし、次は同じく阪和線に乗って大阪方面へ引き返します。途中の信太山駅までは約50分。
紀伊中ノ島に比べたら、駅前にスーパー玉出や商店群があり、いくぶん駅前らしさはありますが、格別にぎわっている感じはしません。そこから新地までは、徒歩5分。ここに新地がある理由はきわめて単純明快、近くに自衛隊の駐屯地があるからです。
目印は、ファミリーマートと、その先の寿司屋。寿司屋の角を曲がると、いきなりあの世界が広がります。やはり住宅地の中の一角ではありますが、お店の数も多く(ネット情報によると約40軒)、天王新地にはない緊張感が張りつめています。
ここは、今里と同じく旅館形式で、女性は置屋から派遣されてくるので店頭にはいません。ただ、独自システムとして「スタンド」と称した小さなスナックが何軒かあります。ゴールデン街の飲み屋のように窮屈に並ぶスタンドのドアには、「来店お断りします」の小さな注意書き札が。ここは、お店ではなく、女性の斡旋所なのです。
細かく入り組んだ路地には、びっしりと旅館――と云っても、門構え以外はごく普通の住宅の造りですが――が密集しています。どこも、開店したてという感じで、玄関は隙がないほどきれいに整えられていました。たまに、早い時間からのお客さんもちらほら歩いており、店内の奥のおばちゃんにわたしの姿ははっきりと見えないのか、「お兄ちゃん、どんなコがええのん!?」と声がかかり、飛び上がりそうになりました。。。
途中、小さな神社があったのでお参りしようかと思いましたが、密集する旅館のあまりの圧迫感に、立ち止まることは許されないような気持ちになって、ひたすら前に進みました。まだお天道様の高い時間ではありますが、営業中ということもあり、飛田並みに写真などもってのほかな雰囲気です。


P9226244. これはかなり外郭からのショット。ごく普通の住宅地でしかない風景。
P9226252 
P9226252 写真に困ったときは、玉出さんにご登場願います(新地とは関係ないんですけど、新地の近くには必ずあるという法則はここでも発動していました)。


息を詰めるように歩いていたせいか、新地を抜ける頃には、わたしの心臓は緊張によって真っ白に燃え尽きていました。
もう少し周辺を散策してみようと、駅とは反対方向に歩いていくと、巨大な昭和の団地が建っていて、敷地内の公園では、おばあさんが1人でブランコを漕いでいて、哀愁を漂わせています。
団地からぐるっと回って、線路沿いの道路に出てみました。しばらく歩くとたこ焼きスタンドがあり、その隣にある勝手口は、たこ焼き屋のものかと思いきや、"旅館"の裏手になっていて、そこからも入店できるようになっていました。さらに、その隣のマンション(のように見える建物)には「仲居募集」の貼り紙が。普通のマンションは、仲居を募集しないはずなので、ひょっとすると、いや、ひょっとしないでもこのマンションは置屋なのでしょう。この擬態っぷりに、劣情にも似た感情を催すわたしは、心のどこかが病んでいるのでしょうか……。
その後も、あくまで安全圏からの視察を試みましたが、限界を感じて退散しました。とは云え、せっかくこんなに遠くまで来たことだし、普通に町の散策でも……と駅前の案内板を見ると、かの有名な池上曽根遺跡がすぐ近くにあって驚きました。町というものは、実にいろいろなものを共存させて成り立っているのだな……と、妙なところで感心しました。


P9226250  たこ焼き屋と旅館のミスマッチな並び。

P9226267 いちおう遺跡もちゃんと見学。手前に見えるのは、呪いの藁人形……ではなく、神様だそうです。
 

ここで、わたしの関西新地巡礼は、いったん終わるはずでした。
何故なら、翌日は墓参りに行くことになっており、その晩には夜行バスで東京に戻ることになっていたからです。
しかし……奇妙な偶然によって、もう1回、続くのでありました。

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2015年10月25日

巡礼風味(2)~聖地編

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また間が空いてしまいましたが、天川村の続きです。
朝イチのバスでここを出て、和歌山に行けば午後には着けるか……とぼんやり思いながら眠りにつきましたが、翌朝起きた時点で、その目論見はもろくも砕け散りました。
午前中に周辺の観光をして、12時ごろのバスで出たとして、和歌山に着くのは限りなく夕方に近い午後。さすがにもう1泊して帰るってのも、父親に怒られそうだし……。
わたしの計画では、JR紀勢本線で下市口から和歌山にアクセスすれば効率がいいはずでしたが、どうもNAVITIMEで調べると、ほとんどの時間帯で出てくるのは、「下市口から阿部野橋に戻って、阪和線で和歌山へ」というルート。阿部野橋まで戻るんなら、家に帰った方がよくない? いや、まあ家から阿部野橋だって40分くらいはかかるけれども、宿泊費やら荷物のことを考えたら、いったん家に帰って出直した方がいいんじゃないの?


……まあいいや、午前中は観光しよう。話はその後だ。
ここに来たのがほとんど偶然のようなものだったので意識していませんでしたが、洞川温泉は、女人禁制で有名な大峰山の麓にあり、山登りの人たちにとってはここが起点ともなる場所です。
昨夜、陀羅尼助屋の店主に、なんとなくこの辺の観光について教えてもらうと、温泉街から女人結界門の間に、徒歩で回れる見どころが、いろいろとあるらしいじゃないですか。
ここまで来て、それらをひとつも見ずに帰るなんて……と、昨日とまったく同じMOTTAINAI思考回路で判断し、大峰山の女人結界門の手前にある、母子堂(役行者の母を祀っている寺)をゴールに定めて歩くことにしました。
攻めるべきポイントは、蟷螂/蝙蝠の岩屋、蛇之倉七尾山、ごろごろ水、母子堂です。ざっと3時間あれば見て回れるはず。
最初にさしかかるのは、蛇之倉七尾山です。道路ギリギリまでせり出した御堂が朝靄の中に浮かぶさまには、ゆんゆんと霊気あるいは妖気が漂っていました。おおお、やっぱ大峰山ってなんか、異世界の雰囲気あるなあ。お堂にお参りして、すぐ側の蟷螂の岩屋へ。看板には「大峰山一之行場」と書いてあります。
入り口では、歯の抜けたおじいさんが1人で屋守をしていました。年季の入りまくった懐中電灯を2つ渡され、洞窟の前でおじいさんが般若心経か何かを唱えて祈りを捧げてから、わたし1人で入場。
役行者が山を開く際、仮住まいにしていたという洞窟は、明かりを消すと、非常に純度の高い闇の中に放り出されます。こんなところで飲まず食わずで修行したら、そりゃ超能力もつきそうです。蝙蝠の岩屋のほうは、もう少し大きく、昔行った人によると実際に蝙蝠がわんさかいたらしいですが、このときはまったく姿を見かけませんでした。

P9216054. 蛇之倉七尾山の立派な門構え。

P9216065 右手に見えますのが蟷螂の岩屋の入り口。手作り感あふれる看板に小屋。

その後、母子堂まで脇目もふらずに歩き、目的も果たしたので引き返そうとしたら、お寺の人に「ここから女人結界門まで、たった2キロだよ、行かないの?」と声をかけられ、む、たった2キロの手間を惜しんで引き返すのは旅人の名折れ……と、さらに先へ進むことに。
車道の両側はひたすら杉杉杉で、ところどころ伐採されていたりもするので、景観としてはさほどではないものの、ただ好奇心に駆られて歩いていると、心の底から満ち足りてきます。ああ、いつまでもこうして、ただの旅人として歩き続けられたらいいのに……松尾芭蕉になれたらいいのに……。
茶屋が見えると、その先が結界門です。門の周りには、さまざまな行者講が建てた供養塔が林立しており、わたしが入れるのはここまでです。女人結界門から山へと続く道は、うっそうと茂る木々の影で、あまり先の方までは見えませんでした。
男性なら誰でも登山できるので、神秘的と云っても案外間口は広い気もしますが、世界遺産登録の際、未だに女人禁制というのは女性差別だとして、問題にもなったみたいです。まあそれは正論ですけど、神聖さというのは往々にしてクローズドなところにしか保たれないという側面もあるわけで、日本に1カ所くらい、そんな場所があっても罰は当たらないんじゃないでしょうかね。山に吸い込まれるようにして歩いていく男性の旅人をただ見送っていると、羨ましい気持ちにはなりますけどね。

P9216124 この先、女人禁制。


P9216135
 茶屋にて、コーヒーとようかんのセットで朝食。壁には行者講の寄せ書きの布や紙がびっしり貼られています。


あとはもう、来た道を洞川まで下るだけです。
途中、うわさの名水・ごろごろ水を空いたペットボトルに汲みました。採水場は駐車場になっていて、各駐車スペースに1つ、採水用の蛇口があり、みんなタンク持参で車でやってきて、大量の水を汲んで帰るようです。駐車料金がそのまま水代ってことですね。駐車不要の徒歩の人間は無料で汲めます。
その前には、鍾乳洞とそこに至るトロッコがあり、無論心を惹かれたのですが、ここで行ったらもう、和歌山に行くなんてことは無理。諦めて、先に進みます。
蟷螂の岩屋の入り口横に「嫁ヶ茶屋」という店があり、朝通りかかったとき、ウインドウに飾られていた「大峰山一合目 どくだみエキス」というボトルが気になっていたので、立ち寄ってみることに。
ちゃきちゃきしたお店のおねえさんが、よかったらお茶でもどうぞと促すままに着席し、店に遊びに来ているらしい女性と3人でしばし歓談。その女性は、東京のゲストハウスで働いていて、数週間前、大峰にやって来てそのまま居着いているらしい。と云っても、もうすぐ東京には戻るみたいですが、わたしもそんなふうに、気に入ったらしばらく滞在できる暇と金がほしい……。
その人に、七尾山は登りましたか? と訊かれて、いや、朝お寺に参っただけですと答えると、女性禁制の大峰のかわりに登る女性が多いんですよ、そして「霊感とかは特にないんですが、あそこは何か居るって感じます」と云います。
わたしは、霊感があると思ったこともなく、まったくそういうスピ的なものとは縁がない俗物なので、そうなんですかー、と話半分に聞いていましたが、七尾山の開祖が、仙人さまと呼ばれている行者だと云われると、がぜん興味が沸いてきました。


P9216152 一家で採水中。


P9216153 「嫁ケ茶屋」のおねえさんが強力にプッシュする名物・カレーうどん。確かに、絶品です!


ここで七尾山に登ったら、もう和歌山どころの話じゃないけれど、シルバーウイークはまだ半ば、アクセスを考えれば、明日出直して、今日のところはとことんこのエリアを極めようではないか。こんな山奥まで来て、見るべきものも見ないで帰るのは、わたしの貧乏根性が許さない。
いいんです、旅の予定なんていうものは、こうして修整され続けていくものなのですから!
寺の脇から始まる、階段になった登山道は、両脇に行者の錫杖を象った柱がびっしりと並び、一種異様な雰囲気です。それは別に、この世のものならざる何かを察知しているわけではなく、単なるイメージなんですけどね。
整備されているけれどどことなく手作り感漂う階段を、黙々と登っていきます。寄贈されたおびただしい数の柱のなかに、『ガラスの仮面』の美内すずえ先生のお名前を発見したり、奥の院を見上げてなんとなくトラブゾンの修道院を思い出したりして、40分くらい歩いたでしょうか。
奥の院の前は小さな広場になっており、「孔雀門」と書かれた門の奥にお堂があります。その先の洞窟内にご本尊があり、案内人なしでは入れません。神様を拝みにいくには、大人一人がやっと入れるくらいの狭さの穴からつり下げられたくさり梯子を上っていきます。神のご加護か、いままで怪我した人はいないそうですが、けっこう不安定で怖いです。しかも、「六根清浄と唱えながら上ってください」と云われ(しかも、♪ドードレミーミー、ソーミレミーミーみたいな音階と節回しあり)、こういうパフォーマンスが極度に苦手なわたしは、余計な冷や汗をかきました。いかにも健やかそうな4人家族と一緒の参拝で、子ども達が素直に唱えているのが、さらにプレッシャーを与えてきました(苦笑)。
梯子の先、洞窟の2階のような場所には、岩が自然に削れて現れたという立ち仏の本尊(真宇王大権現という名前だそうです)、何かを塞いだような岩戸、蛇の神様と称された白い鍾乳石が自然のトライアングルを描いています。、目の錯覚でないくらいにはきちんと仏の姿をしていて、これが自然にできたものなら確かに神のしわざと思ってもおかしくはないかなと思いました。岩戸の奥には、神様の会議室があり、ここに入れるのは開山した仙人さまだけだそうです。物理的に見ると、人間どころか生き物も入れなそうなくらい塞がれていますが、鍾乳石も、洞川には2つ大きな鍾乳洞もあるので、珍しくもないのかなと思ったりしますが、こんなところで妙に冷静になってしまうから、“何かが居る”とか、感じられないんだろうな……。いや、それでも不思議な場所であるとは思いますけどね。そこに一筋の鍾乳石があるというのも、確かに白い蛇とか竜みたいに見えますし。
そんなわけで、スピ体験はなかったものの、お参りのあと案内人の方のお話があり、わたしは今まで修験道というものに思いを馳せたことがなかったけれど、神道でもあり仏教でもありながら、そのどれとも厳密には同じではなく、新興宗教のようでもあるけれど宗教ともちょっと違う、不思議な立ち位置に興味を惹かれました。
この山は、その山口神直さんという仙人さまが開くまでは、村では長年、大蛇が出ると恐れられていた禁域で、開山に反対する声も多かったそうです。わたしは、自分の資質的に霊の存在や神秘体験を信じきれませんが、子どものころ、図書館にあった『日本の民話』というビジュアルブックシリーズを異様に愛読していたためか(数年前、ヤフオクで全巻セットを見つけたときは狂喜乱舞しました)、土地の言い伝えや土着的信仰は単なる迷信ではなく、異次元とつながる鍵のようなものを内包しているのではないかとは思っています。修験道に感じるある種の神秘性も、そういうものに近いのかもしれません。

P9216167 奥の院からの眺望。

山から降りたところで観光にも満足し、と云いつつ麓の龍泉寺にも寄って、いっそのこと洞川温泉センターで風呂でも入ろうかしらと思ったけれどそれはさすがに諦めて、最終の1本前のバスで帰路につきました。
行きは歩きだったので、とんでもなく遠い山奥のように思えた洞川も、バスに乗れば一瞬で天川川合に着き、うとうとしているうちに下市口に到着していました。
帰りの近鉄からは、大きなオレンジ色の夕日が、とてもきれいに見えました。 
  
P9216205 アンパンマン発見。 

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2015年10月04日

巡礼風味(1)~生地to聖地編

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会社員であること。それは、世間の足並みに合わせた休みしか、基本的には与えられないということです。
分かっていながら、未だに世の大型連休に海外旅行という事業が果たせない、ダメ人間のわたくしです。いつもギリギリまで休みが脅かされてきたトラウマが色濃いこともありますが、単に「計画性が無い」、このひと言に尽きます。
豪雨被害のあった地域へボランティア、という旅も考えられなくはなかったのですが、前夜まで激しく残業が続いたため、申しわけないけれど仕事的なものからは解放されたく……。側溝の泥出しとかは、そこそこ重労働ですしね。
しかし、激戦のチケット争いをしてまで観光・行楽地に行く気力もなく、またも安易に実家に帰ったのでありました。なんだかんだで、時間さえずらせば座れる新幹線の自由席は最強です。
初日は、朝から洗濯作業に追われ、どうせ朝に出発できないんならと原宿へ買い物に行き、大阪に着くともう宵の口。この日は父と天満橋で外食をしたのみでした。

P9195837 天満橋~淀屋橋あたりの川の夜景を見ると、大阪に帰りたくなります。
 
翌日、わたしは完全なる思いつきで、「天川村」を目指すことにしました。
と云っても、ダーツで決めたわけではなく、吉野以南の、いわゆる“奥奈良”エリアに、前々からうっすらと興味があったのです。わたしの中では、日本の数少ない秘境エリアのひとつであり、「天河伝説殺人事件」がまた、そのイメージを増幅させていました。ストーリーも映像もほぼ覚えてはいないものの、金田一耕助風味の土着感漂う雰囲気が、やけに神秘的に感じられた記憶だけはあります。
いや、本当の秘境を目指すのであれば、十津川村か、三重・和歌山・奈良の県境にある飛び地・島津村あたりまで行くべきなのですが、実はもうひとつ計画がありまして、そのルートを選ぶならば天川村あたりが妥当だったのです。
ということで、天川村の中に、映画の重要なモチーフとなった天河神社があるという情報以外、何も知らないまま、大阪阿部野橋から近鉄特急に乗って下市口へ。ここが天川村への鉄道の玄関口です。
そこからさらに、バスに揺られること約1時間で天川村の観光案内所前に到着。下市口の駅前バス停には、わたしの前後にも数十名程度の観光客が、バス待ちをしていました。駅前で待っているタクシーはまる無視状態だったのが、なにやら切なかったです……。そんなわたしも、さすがにタクシーを借り切って天川村へ行く懐の余裕はないのですけど。
地図やら時刻表が充実した観光案内所で資料を一式手に入れ、まずは天河神社を目指します。ほどなく見えてくる天ノ川(てんのかわ、と読みます)は、エメラルドグリーンの川面を湛え、この先の旅路を祝福しているかのようです。
ああ、この感じ、数年前に初めて奥多摩に行ったときと似ているかも!あのときも、軍畑駅を降りてほどなく見える多摩川が、まぶしいほどキラキラしていて、めちゃくちゃテンションが上がった記憶があります。
あまり人は歩いていませんが、河原ではちらほら、釣りをしている人や、バーベキューセットを広げている家族連れも見られます。
途中、新しそうなラーメン屋の看板が出ていたので、ふらふらと吸い寄せられました。人の家みたいな不思議なつくりのラーメン屋でしたが、桜塩を使ったラーメンは美味しく、なかなか繁盛していました。




P9205862 垣間見えるエメラルドグリーン!
 
  
 P9205874 「ラーメンGOZU」のさくらラーメン。桜塩は入れ放題☆

観光案内所のある天川川合から神社までは3kmなのですが、やっぱ歩くとそこそこ時間がかかりますね。みんなきっと、車で来ているんだろうな……。
にわかにかき集めたネット情報を集約すると、”何かがいる”と感じるパワースポットのようで、”呼ばれていなければたどり着けない"なんてことも書いてあります。
しかしながら、さほど大きくはない敷地内に、それなりの観光客が押し寄せていると、スピリチュアルな何かは消え失せるのでしょうか。神殿の前に能舞台があり、「五十鈴」というこの神社独自の鈴と、芸能の神様という珍しさはあるものの、人を寄せ付けないような霊的な雰囲気は特に感じられませんでした。周りは民家ですしね。オフシーズンだったらまた印象が違うのかな?
お参りを済ませたあとは、徒歩数分のところにある日帰り温泉「天の川温泉」へ。けっこう込み合っています。入浴はそこそこで切り上げ、畳の休憩所で湯冷まし。寝転がって、テレビから流れてくる「どぶろっく」の歌を聞いていると、こういう時間こそが幸せであり平和なのだなあとしみじみ思います。

P9205907 立派な本殿。
  
P9205926 昼寝にうってつけの広間。

神社に温泉、そこまでの川べりの道も歩いたし、なんとなく天川村を制覇した気になったところで、さて、次のアクションをどうしたものか?
このあと、わたしは和歌山にアクセスしようと考えていました。目的を明かすのはしばしお待ちいただくとして、実は和歌山には親しくしている親戚もおりまして、夜はそこに泊めてもらってもいいかなという目論見もあり、少なくとも最終のバスで下市口駅まで戻るつもりでした。
しかし、天川川合に戻ったのは15時半過ぎ。最終のバスまではまだ時間があるし、もう少し散策してもいいのかも……。わたしは脇目もふらず神社を目指しましたが、この辺りの見所は神社よりもむしろ、「みたらい渓谷」というウォーキングコース、そしてここから6km先にある「洞川温泉」なのです。まあ温泉はさっき入ったばっかりだからいいとして、せめて峡谷くらいは見て帰らないと、家から3時間もかけて来た元が取れないのではないだらうか……と、いつものMOTTAINAI精神が、むくむくと頭をもたげてきました。
まだまだサマータイムとは云え、この時間から新たな目的地を目指していいのかよ!?かという不安の声を背中に聞きながら、わたしは歩き始めました。そして、いったん歩き始めたら、戻るのがMOTTAINAIので戻れない、それが貧乏性というものです。壊れた機械のように歩くことをやめられないのです。
みたらい渓谷を過ぎても、わたしの中には「戻る」というボタンが内蔵されていないため、洞川温泉へと至る山道をずんずん歩き進めていました。渓谷で記念撮影をしていた観光客たちの姿もふっつりと消え、けもの道ではないにしろ、そろそろ日の陰り始めた山の中を一人で歩いているとそれなりに不安も募ってきます。
天川村で一泊してもいいかなとはうっすら考えていたものの、洞川温泉に行くつもりはまったく無かったのですが、ここまで来たらもう、行くしかありません。まあ、この一寸先を絶えず変更・更新していくことこそ旅の醍醐味なんですよ! 誰かそうだと云って!
温泉までは山を歩くコースも続いていたのですが、これ以上暗くなると本当にケモノが現れそうなので、車道の端を歩きました。車道は特に見るべきポイントもなく、ひたすら「陀羅尼助丸」(薬)の看板が続くのみですが、それがなにやら山奥の村への妖しい誘いのようにも見えて、ちょっとわくわくします。

P9205948 みたらい渓谷に至る車道からも、こんな川の色が!


P9205969 写真では明るいですが、一人で歩いているとそこそこ暗くて不安になります。。。
 

結局、6kmですから1時間半くらいでしょうか、歩き続けて洞川温泉街に至ったときは、「村じゃあ!村が見えたぞお~!」と、『日本昔ばなし』のさまよえる旅人にでもなったような気分でした。

しかし、そこは妖しの村でもなんでもなく、わたしはついぞ知りませんでしたが人気の観光地。公共の温泉センターの駐車場にはびっしり車が並び、温泉街のメインストリートを観光
客がそぞろ歩いています。木造旅館が建ち並び、旅館の裏手には川が流れ、昔の宿場町のよう。車道の看板が物語るとおり、旅館と同じくらいかその次くらいに多く「陀羅尼助丸」を売るお店があります。旅館・陀羅尼助屋・旅館・旅館・陀羅尼助屋・旅館・喫茶店・陀羅尼助屋……こんな感じの並びです。陀羅尼助丸とは、修験道の行者が山行の際に携帯する”はらぐすり”で、仁丹くらいの大きさの黒い丸薬です。1300年くらい前からあるらしいです。

P9205999  山奥にこんな立派な温泉街があるというだけで感動します。

 

さて、街歩きをのんびり楽しんでいる場合ではありません。わたしがまずすべきことは……宿探しだ! 今がシルバーウィークだということは重々承知していますが、こんなに旅館もたくさんあることだし、1人が泊まれる部屋くらいあるんじゃないのと高をくくって、どの宿がいいかな~と完全に買い手市場目線で物色していました。

しかし、程なくして「シルバーウィークをなめんてんじゃねーぞこの腐れ旅人が!」と旅の神様から叱責を受けることになりました。5~6軒は続けて断られたでしょうか、小ぎれいな人気っぽい宿は避けたつもりでしたが、そして最初は眼中にもなかった端っこの方の宿にも当たりましたが、どこもかしこも満室! まあ、大型ホテルじゃないし、部屋が有り余っているってことはないよね……。
町外れの、食堂と旅館が一緒になっている、ここなら行けそうと思った宿もアウト。すごすごと店を退散しかけたら、食堂で夕食を食べていた夫婦が話しかけてきました。
「わたしたちが泊まっている宿は、空いてそうだったわよ。ここからも近いし、聞いてみたら?」
これぞ神の声! さっそく、フリーペーパーに載っていたその宿に電話をかけてみましたら、「え? 今晩ですか?」と一瞬ひるまれながらも、一部屋空いてますのでどうぞ、とのありがたいお答えが!!
わたしは、しみじみと思いました。自分にとって"いい宿”の条件。それは、きれいだとか、サービスがいいとか、食事がおいしいとかではなく、「泊まれる」ということである……と。そうだよ。このハイシーズンでもふらりと行って泊まれる部屋がある。これ以上のすばらしい宿があるだろうか?!

宿は、昔からある行者宿のようで、応接間には、行者講の寄せ書き布がたくさん飾ってありました。簡素な和室は、一人で泊まるには十分すぎる広さで、共同浴場も田舎のおばあちゃん家のような雰囲気ではありますが、しっかり温泉。
わたしは、すっかり勝ち誇った気分になって、さっきとは打って変わった足取りで、夜の温泉街を散策しました。
旅館や陀羅尼助屋はいずれも風情のある純和風建築で、オレンジの光がそこここから漏れ、通りに面した縁側では宿泊客が思い思いにくつろいでいます。有名な観光地ではあるんだろうけど、山奥に突如現れるレトロな温泉街は、どこかフィクションの世界のようでもあります。つい安直に「千と千尋的な」とか形容してしまう、そんな佇まい。
洞川の名水・ごろごろ水の店で水のレクチャーを受けたり、亀仙人の服を着たおじさんが焼く炉端焼きの店で子持ち鮎を食べたり、行者グッズのお店に入ったりと、ひととおり観光してから宿に帰ってもまだ9時前。はああ、いっぱい時間があるうう! 家と違って、気が散るようなものもなく、なんというか、無色透明のまっさらな自由時間が差し出されたような気分!
……だったんですけど、明日の予定をどうするか悩んで検索魔になっていたら、あっという間に深夜になっていました。そして、なんだか長くなりそうなので、次回に続きます。

P9206019 名物の子持ち鮎。食べさしですみませんが、とても美味でした!

 P9206025  温泉街のはんなり夜景。 
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2015年09月17日

Red Light Special

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はあ、また放置してしまった……しかも、不妊とか重めの話題のあとに(苦笑)。
気を取り直して、前にここで宣言しましたとおり、7月の帰省の折に新地ラリーを更新してまいりましたので、そのご報告をば。
あまり時間がなかったため1カ所のみですが、次回もう1カ所行けば、とりあえず人生の中で大阪五大新地は踏破ということになります。
訪れたのは、生野区にある今里新地。
事前にあまり情報収集もせずに、「鶴橋の隣くらいやろ」という適当さで行ったら、炎天下のなか、空腹を抱えて1時間近く歩く羽目になってしまいました……。巡礼は計画的に。
まあ、鶴橋も駅周辺の韓国料理屋くらいしか行ったことがなかったので、あの辺の雰囲気を知るという意味では、まったく無駄足というわけではありませんが、今里方面を目指すにあたっては、ディープめの韓国タウンではないエリアを歩くことになり、ひたすら住宅街が続いたのが失敗でした。
せめて、『パギやんの大阪環状線案内』くらいは東京の家から持ってくるべきでした。この本は、大阪出身の在日韓国人のシンガーが書いているのですが、わたしが知りたい大阪、つまり東京の劣化版としての大都市ではない、"土着大阪”ともいうべきエッセンスがぎゅっと詰まっています。

さて、今里新地には公式HPというものがあります。
そこに書いてある、●●×丁目付近という記述を鵜呑みにして目指してみたんですが、それってあくまでもヒントだったのよね! おかげで、×丁目を20分くらいは、おかしいな~見つかんないな~とさ迷い歩いてしまいました。本当は▲丁目なのよね。確かに、×丁目“付近”っちゅーのは間違ってない!
ネットで調べると、「今里新地」というド派手なゲートが目印になっているのですが、それはすでに撤去された模様。これも目印だと思っていたから、余計に混乱する羽目になりました。
今里新地の最大の特徴は、コリアンタウンと共存しているということです。×丁目の方はほとんど韓国系の店はなかったのですが、▲丁目に入ると途端に様相が変わって、いきなり鶴橋駅周辺のビカビカした色合いに。鶴橋とは正反対の静けさだったのは、たまたまアイドルタイムだったのか、それとも完全に夜の街で昼間は眠っているのか……。
韓国料理屋とカラオケとスナックが混在する区画の中を、件の“料亭”ストリートは主に4本、走っています。飛田のようにずらりとそれオンリーではなく、普通の料亭も隣り合わせになっていて、一見しただけでは区別がつかないことも……。まあもちろん、「18歳未満お断り」の札が小さく貼られているので、見分けはつきますが。それにしたって、なかなかの溶け込み感です。飛田や松島みたいに明らかに異質な感じではなく、“料亭”のおばさんたちが、道路に水撒きなどしているのも、それと知らなければスルーしてしまう風景でしょう。夜は、軒先に赤やピンクの明りが灯って、途端に異空間と化すのでしょうか……。
ただ、今里は飛田などと違っておねえさんたちの顔見世がないようなので、案外、夜も普通の料亭然としているのかも……いや、そんなことはないか。

わかりますでしょうか、下の3枚の写真の、どこに件の店があるのか……。

P7285033 

P7285036 

P7285037 

昼間とは云え、うっすらと妖気に当てられたようで、帰りの電車でしばらくの間、新地の光景を脳内でリフレインしておりました。
次回に備えて、地元から信太山へのアクセスでも調べるか、大阪でも南の方だから、結構遠いんだよなあ……などと心の中で呟きながらスマホにかじりついていましたら、わたしの検索はいつしか、和歌山の天王新地なる場所へとたどり着いていました。
その写真と見知らぬ人のレポートを見て、わたしの胸は異様な高まりを覚えました。
このマイナーな終末感、都築響一的世界からさらに三段階くらいディープなロードサイド感……!!
飛田や松島など、ここに比べたらずいぶんと華やかでメジャーな場所に思えてきます。今里はおろか、滝井でさえもここよりは明るさがあるのではないでしょうか?
これまで新地に感じていた淫靡さや妖しさとはまったく別種の、離島の秘密の儀式にでも迷い込んだような胸のざわつきを抑えられず、取り憑かれたようにこの手のマイナーな色街を検索しまくりました。
さらなるアンダーグラウンドへと誘われた先には、徳島の秋田町にある、何の看板も出さず料亭どころか住宅に擬態して営業している数軒のちょんの間、山口の防府にあるたった2軒のガラス張りのスナックなど、47都道府県の風俗を制覇しようという猛者でもなければ一生知ることもなさそうな場所が。
それらを知ってどうしようというのか? 女のわたしがそこで買うわけでも、まして売るわけでもない。例えばアイスランドに行きたいというのと同じノリで、好奇心だけに任せて全国を飛び回るつもりもない。
それでも、いつか行きたい秘境リストと同じく、ある種の聖域として刻まれ、恐れながらも夢見る風景として、わたしの心に留まり続ける。いや、むしろ、日本に残されている本当の秘境とは、案外こういう場所だったりするのだろうか。
絶滅してしまった色街の、名残の建物も決して悪くはありませんが、あまりにもひっそりと存在し、摘発されれば一気に絶滅が危惧される、風前の灯火のような現役の“新地”や“ちょんの間”の方に、より心を惹かれてしまいます。この思いは、好奇心であることは間違いないけれど、もっとなにか、郷愁とかブルース的なものと云った方がしっくりくるかもしれない。

そんな流れで、カストリ出版という謎のレーベルが、長年、幻の本とされていた『全国女性街ガイド』の復刻版を出していたので、それを5,400円も出して入手。ついでに、竹久夢二調のレトロな表紙がかわいい『全国遊郭案内』も購入しました。まあ、文字だけの本ですし、結局はこれらの内容も、絶滅した色街を偲ぶよすがにしかなりませんが……。
さらに、興味は海を渡って韓国へ……『[定本]韓国全土色街巡礼』という本へと至りました。わたしは、韓国を旅するイメージというのがあまり明確でなかったのですが、この国独自の赤線街の風景は美しく、大いに旅情をそそられました。
夜を妖しく照らす赤い光を見ていると、不思議と心が安らかになるのは何故なんでしょうか。本当にどうしようもない人間です。


P7285038 「青春を返して」という、ちょっとお茶目な店名のカラオケ。この改行すらキュンと来る(笑)。
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2015年05月10日

新地の思い出

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大阪にあって、東京にないものは?
というお題があったとして、わたしが真っ先に思いつくのは、「新地」と呼ばれる地域です。

日本最大の遊郭地帯・飛田新地はご存知の方も多かろうと思いますが、大阪には他にもいくつか、新地と呼ばれる色街があり、今も稼働しています。
飛田のほかには、松島、今里、信太山、滝井、そして兵庫と云いつつもほぼ大阪文化圏である尼崎のかんなみ、という新地があります(北新地ってのもありますが、ここは大阪の銀座みたいなもので、ちょっと別ジャンルですね)。
わたしが新地の存在を知ったのは、高校を卒業したばかりの頃だったでしょうか。友人(女)がどこからかそんな話を仕入れてきて、好奇心を抑えきれなくなったわれわれは、わざわざ男に変装して(と云っても、すっぴん、野球帽に眼鏡程度)、車で出かけて行きました。
車中から覗いての、時間にしたらおそらく15分くらいの探索だったので記憶の映像はかなりおぼろげですが、「松島料理組合」というアーケードの表示、古い割烹のような風情の日本家屋がずらりと並ぶレトロな景観、さらにはその玄関先がことごとく赤やピンクの照明に彩られ、その中には人形のように鎮座している女の子がいて…明らかに異界に足を踏み入れている、という印象は強烈でした。
ちょっと頑張って車の窓を開けると、家の玄関にいるおばちゃんにいきなり「にいちゃん!」と声をかけられてビビりました(苦笑)。男装はそれなりに功を奏していたようです。

その後、今に至るまで松島を再訪したことはなく、次に訪れたのは飛田でした。
最初はおそらく、通天閣周辺の観光の延長でした。あのあたりは、片方しか売っていない靴や、異様に安いドヤ(宿)に食堂、青空カラオケにスマートボール、やけに高く作られている西成警察署の門…など、外国に来たかのようなカルチャーショックを受けられるエリアで、よく"大人の社会見学”と称しては散策に出かけたものでした。その流れでしぜんに(?)飛田にも足を踏み入れたものと思われます。
飛田も松島と同様に「料理組合」の看板を掲げています。松島よりも大規模に古い日本家屋が通りを埋め尽くすさまは圧巻で、いかがわしいはずのピンクの照明も風情ありまくり。何も知らない外国人なら京都観光のノリで何枚でも写真を撮ってしまいそうです。日本人であるわれわれは、さすがに恐ろしくてカメラなど取り出すことすら憚られますが…。
何しろ、道ばたで覚醒剤が売られているという都市伝説さえある場所です。最もこれは伝説ではなかったようで、何度目かの散策で同行した友人は目撃したと云っておりました(注意力散漫なわたしはスルーしてしまいましたが…)。
そんなわけで、散策にはあくまでもただの通行人としての平静さ・無関心さが求められますが、新地の端っこには昔の遊郭の建物を改装した普通の料亭「鯛よし 百番」があって、ここで食事をするだけなら女性でも怪しまれず新地の空気をほのかに嗅ぐことができます。

この「料理組合」と「玄関先のおばちゃん」と「赤・ピンクの照明」は、新地の様式美とでもいうべき特徴です。
最も謎めいている「料理組合」については、新地は「あくまでも料理屋で、たまたま知り合った男女が恋愛の末コトに及んだだけ」という理屈で成り立っているのだそうです。ゆえに、表向きは「料理屋街」なのですね。
そう云えば、中国の阿里という街でも、似たような風俗街がありましたっけ。昼間は床屋なんですが、夜になると玄関先がピンク色に染まるという…。同じ理屈なのでしょうかね。

それからかなりの時が経って、数年前、アニマル柄の洋服を探しに千林商店街に行った際、一瞬だけ滝井新地に足を踏み入れました。
大阪の新地の中で最もマニアックと思われる滝井は、現在は数軒しかないようで、実家の周辺とさして変わらぬ住宅地のなかに紛れ込むように存在しています。ある程度、検索で当たりをつけて行ったとは思いますが、飛田や松島のように「ここなんか雰囲気違う…」的な分かりやすさは皆無で、角を曲がっていきなり出くわした!という印象でした。例の料亭様式に、玄関から覗く赤い照明。このセットで、分かる人には分かるけど…という感じ。

DSC_0081 1枚だけ写真が残っていました。

そして先日のGW、久しぶりに新地スタンプラリーを更新しました。尼崎のかんなみ新地です。
思えば、尼崎という街とは、これまでまったく無縁に生きてきました。梅田から急行で約10分という近さではありますが、わざわざ遊びに行く場所でもなく、数年前に起きた尼崎事件の際、事件マニアの友達に「尼崎ってどんな街なの?」と尋ねられて、そういえば関西育ちなのに行ったことが無いな…と、軽く驚いたのでした。
尼崎は、わたしがまだ学生の頃、まことしやかに噂されていた「関西三大危険都市」の筆頭格で、もう1つは山科、そして不名誉にも、最後の1つはわが地元だったりしたのですが(苦笑)、最近その話を地元の友人にすると「いや、どう考えても隣のK市のほうがやばい」という答えが返ってきました。噂の真偽はともかく、尼崎にはそのようなイメージがあり、事件の報道を聞いた時は「やっぱ尼崎って危ない街なんやな…」と思ったものでした。しかし、それと同時に、尼崎の街の雰囲気って、実際どんなもんなんだろう…?と、興味がむくむくと沸き起こったのも事実でして、今回の帰省にてその思いを遂げるべく、街を歩いてみることにしたのです。どちらかというと、事件の起きた杭瀬をメインに歩いたのですが、今回はその話は割愛します。
というところで、前置きが長くなりましたが、かんなみ新地は、阪神尼崎駅前から続く大きな商店街を抜けたところにあります。
普通の住宅街に忽然と現れるので、心の準備ができておらず、軽く動揺してしまいました。ちょっと滝井新地を思い出しますが、滝井がもっと、住宅街の片隅にひっそりと在るのに対して、かんなみは、ザ・生活通路といった感じの人通りの多い場所に、昔の文化住宅を思わせるような2階建ての長屋が、ある一角にひしめき合っているのです。建物の大きさに対して室外機がやたらと多いのが、異彩を放っていました。部屋の数だけ室外機があるのでしょうが、だとすると、どんだけ狭い部屋なのか…。
目と鼻の先には小学校があり、まあ吉原だってホテル街のど真ん中に公園があるくらいですから別に驚くことでもないのですが、なんというか、下町の日常に普通に存在している感じがどうにも見慣れない光景で、軽く混乱をきたします。
飛田などと比べると、建物が狭小のため、女の子がけっこう間近に見えます。横目で見るに、化粧濃いめのギャルっぽい娘が多いですが、かわいさはなかなかハイレベルです。新地名物(?)玄関先のおばちゃんもちゃんといらっしゃいます。

 P5064758 決死の覚悟で(?)撮った遠景。

わりといつも、帰省しても梅田や心斎橋で漫然と買い物していることが多いのですが、次回は、残りの新地(今里・信太山)を制覇しようかな…とまた、あまり人から共感されなさそうな野望を抱いております。
そんなに新地が気になるなら、いっぺん働いて来いや!と叱責されそうですが、別に新地に限ったことではなく、行きにくい場所、異世界ほど気になるという旅人的法則(?)が働いているまでのことです。単純に、しらない街に行ってみたい気持ちの延長であり、ただし小心者ゆえ、ちら見だけで終わりたいわけです。化け物のような野次馬根性ですみません。。。
男の人は、お金を払えば入れるからぶっちゃけちょっと羨ましいです。女の人だと、働く以外は完全に部外者ですからね…でも、働くにはなかなかハードルが高いよね…。
余談ですが、ネット検索してたどり着いたどなたかのレポートに「新地の近くには必ず「スーパー玉出」がある」と書いてあって、確かに!と思いました。松島に関しては記憶の彼方だけど、他はみんなそうだったかも?

DSC_0080 今回は写真が少ないので、玉出さんにもご登場いただきました。

わたしは、地元ということでの贔屓以外の気持ちで大阪を特別視することはあまりなく、周囲からの強固な“大阪のイメージ"に戸惑うこともしばしばです(いちばん困るのは、大阪人はみんな面白い・明るいというイメージです!)。
しかし、今回の帰省でふと思ったのは、大阪って、独特のいかがわしさがあるなあ…ということでした。新地があるから、という単純な理由だけでなく、もっと街全体が持っている何かに対してそう思う。決して、けなしているわけではありませんから!(笑)
なんとなく、闇の濃さを感じさせるっていうんでしょうか。地元の方はそうでもないのですが、大阪市内なんかは、ふらふら歩いていると、ふと異界に迷い込みそうな感覚に囚われますし、街なかの雑居ビルを見ると、妖の小宇宙が広がっているんじゃないのかと思って胸がざわざわします。
高村薫の『李歐』や東野圭吾の『白夜行』で描かれる30~40年くらい前の大阪には特に、ある種の隠微さ・或いは淫靡さが漂っていて、当時の風景が残っているような雰囲気の場所に出くわすと、萌えに近いような興奮を覚えます。その妖しさの根拠をいったいどこに求めたらいいのか分からないのですけど、昔から部落や在日の問題を抱えているという背景がそうさせるのか、外から来た人には日本というよりアジアっぽいと感じられるらしい雰囲気のせいなのか、大都市のわりに奇妙に土着臭が色濃いのか…など、推測は尽きません。
まあこれも勝手な“大阪のイメージ"ですけどね…。色気を愛するわたくしとしては、このへん、もう少し探ってみたいところです。また大阪に帰ったら、異界を求めて街をさまよい歩きたいと思います。

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2014年02月12日

ちんたび~デザート:パフォーマンス居酒屋「かがや」

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…えっ、まだ続いてたのこのコーナー?(呆)
そうなんですよ。すっかりご無沙汰していましたけどね、まだデザートを出していなかったんですよ!!
ほんと、お店だったらクレームの嵐でとっくに潰れているはずですが、本人が閉じない限り、存続できてしまうのがブログの凄いところ(なのか?)。


旅友達の中に、変わったお店を探して訪問するのが半ば趣味のような人がいまして、ちんたびの締めくくりは、その人に連れられて行ったお店の話です。
都内で「店長のテンションが異様に高い店」と云えば日暮里の「ザクロ」、新宿の「オッと屋!」(※現在は閉店)でしたが、今回訪問しました新橋の「かがや」もまた、この系譜に燦然と輝く、唯一無二の珍店だったのであります。
すでにwebのあちこちでレポートが上がっており、今さらわたしがアップしなくてもいいか…という気持ちが、更新を遅らせておりました(いや、もちろんそれだけじゃないけど…)が、行ったからには伝えねばなるまい…という妙な使命感を与えられるお店でもあります。
試しに会社の人などに聞いてみたら誰も知らなかった…。まあ、飲食店を選ぶときは「美味しい」を基準にするのであって、決して「面白い」ではないですものね~;


友人からは「とりあえず行けば分かるから」という説明しか受けずに、平日の仕事後、若干遅刻気味でお店に到着。看板には「ほのぼの料理のかがや」と書かれています。な、なんだ、ほのぼの料理って…?
地下へ続く階段を降りてドアを開けると、店内は異様などんちゃん騒ぎになっていました。何が起こっているのか判然としないまま、とりあえずコートを脱いで友人のいる席に座ります。
店内は、公民館の和室のようなインテリアに、20人も入れば満席のキャパシティ。一見したところでは、何の変哲もないお店という印象ですが、い、今のはいったい何だったの…??


われわれの席に、野ばらちゃんっぽいわりと美形の男性店長がしずしずとやって来ました。
「それでは、始めさせていただきます」
と、挨拶したかと思うと、隣の楽屋(?)にいったん引っ込みました。そして数秒後、店長とともに、4歳児くらいの大きさのアンパンマンロボットが登場。アンパンマンの頭にはおしぼり(人数分)が載っています。
物静かそうな風貌とは裏腹の甲高い子ども声で、店長は、「そーだっ、みんなの夢、まーもるたっめー!」とアンパンマンマーチを熱唱。われわれがおしぼりを受け取ると、アンパンマンはいきなり「ぷしゅー!」(※店長の声)と空のかなたに飛び去って行きました。


PC111989 後ほど、よそ様のテーブルの回で撮影。自分とこの時は、呆気に取られてカメラを向ける余裕もなかった(笑)。


今起こったことが何だったのか、脳内で解析する間もなく、メニューが運ばれて来ました。
メニューはこのように、ジャポニカ学習帳にクレヨンで書かれています。


PC111972 なついお


食べ物のメニューは、値段別で4種類のコースのみ。
そしてこの長いセリフ…ではなくメニュー名を、一字一句違えず、しかも感情を込めて読まないと店長はそっぽを向いてしまいます。代表してメニューを読んでくれた女性は、「ぜんっぜん気持ちが伝わって来ない!」と叱られ、読み直しさせられていました(2回目でOKが出たw)。


そして箸と箸置きが運ばれて来ました。
懐かしのキン肉マン消しゴムに、お弁当型消しゴムに、パンダの消しゴム…って、ぜんぶ消しゴムやんけ! いや、消しゴムじゃないのも混じっているけど、基本的にゴムだよね…?


PC111981 意外とご家庭でも使えるアイデア…?


箸は、店長が直々に、1つ1つの箸置きに置いてくれます。何故なら、箸の置き方にもちゃんとルールがあるからです。

PC111985 お弁当型の箸置きは、梅干しを外してその上に置くのが正しい使い方。


ここまででもすでに、数多くの謎が渦巻いていますが…本番はここからです。
前述のジャポニカメニュー帳を再びご覧ください。

PC111975


左下に、「持ってき方をきめてください」とあり、その囲みの中には、「アメリカ」「中国」「イギリス」などの国名が書いてありますね。
え、持ってき方って何…?などと疑問を差し挟む余地はありませんので、とにかく国をチョイスします。われわれは、「中国」を選んでみました。
再び楽屋に引っ込み、チャイナ服を着て現れた店長。突然ジャッキー・チェンが憑依したかのような激しいテンションでカンフーを繰り広げます。唖然とする客、もとい観客を完全に置いてけぼりにして、そのまま厨房に入り、何事もなかったかのように、フツーにビールを運んできました。
誘ってくれた友人は前にも来ているので、「ふむ、これが中国か…」と感慨深げにつぶやいています。

PC111978 効果音を付けたくなるような、異様な迫力。


どうやら、「持ってき方」というのは、店長の全力パフォーマンスを指すらしい。そして、それこそがこの「かがや」最大のメインイベントなのでありました。いやー、ぜんぜん気づかなかった(気づけるか!)。
残念ながら、1テーブル1回分しか「持ってき方」を選べないため、残りの国は、他のテーブルの回で見せていただくことになりました。
あまり文字で説明してもネタばれになる上、面白さを半分も伝えられない気がするので、ヒントっぽく写真を貼ってみます。ていうかもう、友人の最初の弁のとおり、「行けば分かるさ」というのが正解でして、下手に事前知識などない方がよろしい。え、書くのがめんどくさいだけでは、って??(汗)


PC112002 「フランス」。妙にアンニュイかつエロイ雰囲気…からの! 何が始まるかは行ってみてのお楽しみ。


PC112026 「アメリカ」。何故カエルで、しかも人形劇なのかは、今でもよく分かっていないわたくし。。。


PC112028 店内を隅々まで使い切る店長。


ちなみに、わたしがお店に入って来た時にちょうど行われていたのが「ブラジル」だったらしいです。
件の友人は、「日本」以外は制覇したそうで、今のところ「イギリス」がいちばん面白かったとのコメント。くうう、見たかった。。。


とにかく不可思議なお店ですが、料理は美味しいんですよ。煮物系の素朴な家庭料理で(そうか、ほのぼの料理だもんね!)。ここが案外、大事なポイントのような気がします。
店長の他に、厨房にはママ(?)もいまして、黙々と料理しています。本当に、実に黙々と。店長がどんなに激しいパフォーマンスを繰り広げても、眉ひとつ動かしません。
店長も、パフォーマンス時以外は、気難しささえ感じさせるほどの無表情を貫いており、このギャップがまたゾクゾクします(笑)。

PC111986 ほのぼの~


毒を食らわば皿まで…というわけで、謎飲み物メニュー「地底人」も頼んでみました。
このほか、「埼玉県人」「宇宙人」というのがあり、「宇宙人」は1億円です。またまたあ、1億円とか冗談でしょ?と思いましたが、店長に聞いても真顔で「1億円です」という答えしか返ってきませんので、ちょっとヒヨってしまい、時価の「地底人」にしました。
実際には何の飲み物なんだろう…チリが入ったカクテルで、飲むとやたらに唇がヒリヒリしました…。

PC112007 小便小僧サーバーで出てきましたよ。。。どこに売ってるんですか、と尋ねると「ドン・キホーテに売ってました」とフツーに教えてくれる店長(笑)。


PC112033 お会計はスーパーひとしくんが持って来てくれます♪


自分ひとりの小さな胸には収めきれないので、そのうち誰かを連れて行かないとどうにも気が済まないお店です(笑)。
次は、青梅の寺の境内にあるという、パプアニューギニア料理のお店に行ってみたいと思います。それではまた☆
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2014年01月15日

ちんたび~メイン:群馬ミステリーツアー後編

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1月15日まではお正月、ということでいいですか?
明けましておめでとうございます。
正月ボケで更新サボリすぎました…本当にだらしなくてすみません。


えーと、群馬の続きです。
2日目のお品書きは、
●高崎洞窟観音
●珍宝館
●命と性ミュージアム 女神館
●赤城神社
●白い家
となっております。


PC071790 1日目の夜に入った居酒屋のメニュー「鈴木たまよ」。


洞窟観音は、山田徳蔵さんという地元の実業家が、私財を投じて作ったという霊場です。大正8年着工、昭和39年完成という膨大な月日をかけ、すべて人力で作られたそうです。
その名のとおり、洞窟の中に39体の観音と、石仏・石塔などが安置されています。観音のメタモルフォーゼについてあまり詳しくないため、次々と現れる御影石の観音も、途中から「だいたい同じ」という雑な脳内処理になっておりました…。全観音解説カタログみたいなパンフレット付けてくれたらもうちょい盛り上がったかも(笑)。
でも、雰囲気はなかなかそそります。洞窟と宗教って相性いいですよね。カッパドキアとか、ラオスのパクウー洞窟とか。

PC081809 ちょっと牢獄っぽい通路。

PC081810 観音様の様々な姿が見られます。

PC081815 この辺がハイライト。


PC081877 洞窟のお隣にある、山田さんの庭「徳明園」。

高崎から伊香保へと移動して、三大うどんのひとつ・水沢うどんを食した後は、私的には本日の山場である秘宝館2連チャンです。
動物ならばとっくに絶滅危惧種に認定されているであろう秘宝館。3年前でしたか、北海道ドライブ旅行の折にも、定山渓で「北海道秘宝館」を発見しましたが、すでに廃墟と化しておりました。まああの時は家族旅行でしたので、仮にオープンしていても行けなかったでしょうが…。
そんな秘宝館が、何故か伊香保には2件も現存しています。しかも1件は、2000年代にオープンした(2002年)というのですから驚きです。
伊香保まで来て温泉にも入らずに秘宝館だけ訪問するというのも実にもったいないのですが、まあ今回の旅の趣旨的には仕方がない。

ということで1件目は、珍宝館。
全国にある秘宝館の名前は全部暗誦できますが、何気に人生初秘宝館だったりします。
ここが他の秘宝館と違うのは、女性の館長、いやマン長さんの館内ガイド付きという点。これこそが珍宝館最大の売りなのです。
他のメンバーたちは、「ガイド中に●ンコ触られるらしいからイヤだ」と、マン長さんに見つからないよう足早に見学しており、わたしは1人、後から来た男性10人グループにくっついて拝聴することに…。


庭園に配置されている夫婦石(アレの形)の前で、「わたくしがこの珍宝館の館長兼マン長、チン子です」から始まるガイドスピーチは、もはや名人芸の域。5秒に1回は放送禁止用語を混ぜてきます。
全貌はYoutubeで見られるのでそちらを探してみてください。ツイッターのbotもあるよ(笑)。おそらくこれが完成された芸なので、アニータやら姉歯やら、時事ネタ的にはずいぶん懐かしい名前が出てくるのはご愛嬌ですか。
全員の股間タッチもくまなく行われます。「剥けてない」「勃ちが悪い」「強度不足」などと散々な云われようの見知らぬ男性たち…しかし、女性であっても容赦はありません。わたしは、「緊急乾燥注意報ね」と云われました…ほっといてください(汗)。

PC081879 真ん中に立つ、いや勃つのがチ●子さん。旦那さんが夜なべして彫ったという夫婦石の説明中。

PC081877 絵皿に描かれた女体の数を数えるクイズもあり。当たった人には豪華北朝鮮旅行を進呈とのこと(※誰も当たりません)。

マン長さんのガイドを聞き終えると、もうここでの使命は半分以上果たしたようなものですが、館内には性器型の自然石や、自然木を使った合体アート、獣の合体剥製、春画などが展示されています。池田満寿夫画伯のえらくおしゃれな春画もありました。マン長さんのキャラに圧倒されるけど、展示はわりとアート寄りかも?


PC081895 シャレオツな春画。

PC081889 おっぱい絵画とマリリン・モンロー。

PC081908 やたらとたくさん展示されている木の合体アート。


珍宝館でもまあまあお腹いっぱいになったのですが、この後に訪れた2件目の女神館は、さらなるクレイジースポットでした。
2002年オープンのこちらは、「命と性のミュージアム」と謳っているだけあって、“命を大切にしよう”という啓蒙的要素も盛り込まれたあくまで真面目な展示内容です……が、“真面目な人ほどキレると怖い”の定説どおり(?)、真面目ゆえのぶっ飛び具合が凄まじい。珍宝館は安心のB級感ですが、女神館は、何だかちょっと心がざわつく、不条理ギャグのような雰囲気とでも云えばいいでしょうか…。

命の誕生から死まで、終始、“真面目な顔して怖いことを云う人”のていで展示は進んでいきます。
新生児抱っこ体験(3kgの赤子人形を抱くコーナー)に始まり、内診台体験に入棺体験…ってマジか! 思わず入ってしまったけど、結構怖いよこれ…。メンバーの方が「写真撮ろうか?」と云ってくれましたが、さすがに勘弁してください! 自分の死に顔とか写っていたら怖いですから!そんな、きっついブラックジョークのような展示がありつつも、基本的にはやっぱり真面目なんですよ。性はあくまでも命と愛を創り出すための明るいものというスタンスです。
パネルは懇切丁寧に書いてありますし、“命を大事に”がテーマなので、出産はもちろん、避妊や中絶、性病やセックスレス、果ては安楽死についても解説されています。実際の出産シーンをビデオで観るという、人を選びすぎる展示もありますが、こういうのも、大人の性教育には必要…かも知れないよね?(汗)


 

PC081918 展示の最初からいきなりこれ。股から赤ちゃんこんにちは☆ 現代アートとしてはアリか…?

PC081920 新生児人形(3kg)を抱いて、命の重さを物理的に実感するコーナー。

PC081927 急に梯子があると思ったら、上にはこんなヤリ部屋が…。無駄に幻想的です。

PC081935 入棺体験では、白装束もちゃんと用意されています。手前のベンチの滑り止めがいやに親切(笑)。

PC081943 オリエント工業のラブドールちゃんもいらっしゃいました。


2階は大人のコーナー。真っ黒、あるいは真っ赤な部屋に、SMの道具や解説パネルが展示されています。
どうやら2階は、実際に大人のみなさんが楽しめる仕様になっているのか、ロッカーまで用意されていました。カジュアルに「ここで記念撮影を撮っておきませんか」というパネルがあり、「男性はぜひ勃●写真を残しておきましょう」などと、どこまで真面目なのかよく分からない奨励も…。えっと、ここでいきなり脱いで、あんなことやこんなことをしても大丈夫なんでしょうか!?
ここはぜひ、恋愛に発展しそうでしない微妙な距離の男女に遊びに来てもらいたいですね☆


PC081948 大人コーナーの入口はこちら。

PC081958 黒の部屋。誰もいなければコトに及べそうなベッド。

PC081960 赤の部屋。完全にラブホの様相。。。

PC081965 ロッカー…使ってもいいですか?(震え声)


われわれと同時間にオネエの方々も来訪してまして、キャッキャ云いながら楽しんでおられました。
もう少し時間があれば、あと1周くらいしておさらいしたかったところですが、わりと時間が押しており、泣く泣く(←わたしだけ)次の場所へと移動することに。

赤城神社は、赤い傘事件(主婦失踪事件)の現場という理由で、メンバーの中の“未解決事件フリーク”の方が行程に入れたのでしたが、到着する頃にはとっぷり日が暮れてしまうであろうことが予測され、今回はパスしました。
ちなみにこの方は、未解決事件を1つだけでいいから解決したいという大望を抱いていますが、職業は警察でもジャーナリストでもありません…。まあ、こういう嗜好性は不謹慎と非難されても致し方ないとは重々承知しつつも、事件を風化させないという意味では、事件のことを語り続ける悪趣味も、少しはプラスに考えてもよいのかなと思ったり…?


いよいよ最後の場所となりました。白い家。
わたしはそれまで知りませんでしたが、群馬では超有名な心霊スポット兼廃墟とのこと。とにかく怖いらしいというので、群馬県人のメンバーは、家にあるありったけのお守りを持参していました…。
この家の前に、おばけ坂という、これまた意味深な名前の坂があるのも、怪しさを倍増しているのでしょう。と云っても、おばけ坂は、心霊スポットではなく、上っているように見える下り坂で、ボールなどを転がすと、上り方向に進んでいくそうな。反重力!?… というわけではなく、目の錯覚のようです。
白い家の正確な場所は公表されておらず、おばけ坂を上りきったところにある、という口伝があるのみです。ネット情報の断片を頼りに、近くまでアクセス…したまではよかった。


いったい、おばけ坂はどこなのか???
ネットで確認できた、唯一の絵地図を頼りに、そこに書かれた「牛舎」「牧場」「りんご園」を目印に探索するも、一向にたどり着きません。
googleマップと併用してみても、やっぱり正解が出ない。確実に、近くまでは来ているのに…。また、この辺の山道が、ことごとく狭いわ細いわややこしいわで、どれがおばけ坂でもおかしくない様相なのです。でも、ブログなんかで見るおばけ坂の写真とは様子が違うよね…と堂々巡り。そのうち、辺りは完全に闇に包まれ、ますます探索が困難になってきました。今にも武士の亡霊とか出そうな雰囲気も然ることながら、普通に車をぶつけたりこすったりしそうな不安を掻き立てます。
間違った道をぐるぐるしている最中に、急に鹿の親子が林から飛び出してきたり、スマホのgoogleマップを覗き込むメンバーの顔が白く浮かび上がって運転手を恐怖に陥れたりと、無駄にホラー映画の様相を呈してくる車内…。
しかし、ちょっと仮眠を取って最も頭が冷静だったメンバーが、再度googleマップと絵地図を真剣に照合し、やっとのことで一筋の光明が差し込んできました。つ、ついに正解か…?


窓の外は真っ暗で、風景はうっすらとしか見えませんが、ネットで確認したおばけ坂の条件には合致しているようでした。
「これだよ、多分間違いないよ!」と、にわかに浮き足立つ車内。そして…坂の先、暗闇の中、曖昧な輪郭で浮かび上がる白い建物が、目に飛び込んできました。
それはさながら、ベタなホラー映画の1コマのようでした。全員が、声にならない声で叫んだような気がしました。
ネットで見た昼間の白い家もそれなりに怖かったですが、闇に浮かぶ夜の白い家は、悪い幻の如く眼前に建っていました。昼間に着いていれば、あくまでも廃墟物件として探索することもやぶさかではなかったのに、車の外に出ることさえ憚られるような、一種異様な雰囲気が、辺り一帯に漂っていたのです。
せっかくだから行きなよ、と無責任な外野の声に押され…ということは決してなく、速攻でお断りして、車は元来た道を戻りました。「ホントに行かなくてよかったの~?」ってアナタねえ、いくら何でも霊が出るって云われている廃墟に、夜、女1人で入るとか、罰ゲームすぎるでしょ!


…いや、確かにさ、気になるんだけどもね。見るなと云われたら余計に見たくなる天邪鬼な性格だから、帰りの道中も「やっぱりわたし、チキンすぎたかしら…せめて車は降りて、前までは行くべきだったかしら…」と、後悔でチリチリと胸を焦がしたのですけどね。写真も1枚も撮っていないし…。
でも、この白い家、心霊スポットと云われているわりには、その論拠となるストーリーは、いくら検索しても全然出て来ないんですよね。
おばけ坂の先にポツンとある白い家というビジュアルは不穏な背景を容易に想像させるにもかかわらず、実際には、都市伝説的なものすらはっきりしないのです。いったいどこからそんな噂が流れたのでしょうか…。


こうして、クライマックスは最大に盛り上がりつつも、“結局、白い家とは何だったのか?”という、消化不良感を残して旅は終わりました。
群馬県人のメンバーは、「やっぱ気になるから、今度、1人で行ってみようかな…」としきりにつぶやいていましたが、その後、行ったという話は聞きません(笑)。昼間でも、さすがに1人は怖いってば!
でもまあ、わたしもチャンスがあるなら、白い家については再訪して、ついでにおばけ坂でペットボトルを転がしたいな、と思います。群馬にはまだまだこのような場所がたくさんあるようですし、そのうち、群馬ちんたびパート2をやってみたいですね。


P1152202 (おまけ)珍宝館の福袋に入っていた露出狂人形。アメリカ製だからか、音声がデカいです。。。

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2013年12月31日

ちんたび~メイン:群馬ミステリーツアー前編

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……前菜を出しっぱなしで、いったいいつメインが出てくるんだよ!
と、毎日うっすらと気にしつつ、でもほら忘年会だの何だのってあるし、実家に帰ったらやろうかな~なんて思っていても、いざ実家にいるとニートの本性がムクムクと首をもたげ、目論見はあっさり破れて今日は大晦日です。
さすがに1回くらい更新しようと、紅白歌合戦をBGMにしながらパソコンを叩いています。
本来、今日の更新ですと2013年のまとめ的な内容にすべきところですが、何食わぬ顔で、ちんたびの続きを書きます。

 

今年のゴールデンウィーク旅行時にも書いたかも知れませんが、わたしは、「新潮45」や「無限廻廊」などの事件簿を好き好んで読む人間です。
悪趣味と云われるのは承知の上で、しかし弁明をするために、故なだいなだ氏の言葉を借りますと、「残酷ということを意識せずに、残酷であることをやめることはできぬものです」。
事件簿を読むと、自分とそこは地続きだということを痛切に感じます。自分が犯罪者になる確率、被害者になる確率、自分の大切な人がそのどちらかになる確率……を考えると、フィクションのように“自分とは断絶された世界”のこととは思えません。残酷を知ることで予防する…なんて云うとさすがに詭弁に聞こえますが、わたしは事件簿への暗い興味を、抱かずにはおれないのです。
そんなわたしと嗜好を同じくする事件簿仲間(って云うのか?)がこの世には居りまして、今回のちんたびは、彼らとともに行ってまいりました。

 

舞台は群馬…と云いつつ、最初に訪れたのは埼玉のこちら。

PC071489 


アフリカケンネル(の犬舎)。
ご存知でしょうか…。埼玉愛犬家連続殺人事件の現場となったペットショップです。
この事件、阪神大震災の年に容疑者が逮捕されたことで、何となく震災の影に隠れてしまったような印象ですが、おそらく近代日本犯罪史上、ワーストクラスの衝撃と残忍さを有した事件ではないでしょうか。
映画『冷たい熱帯魚』がこの事件をベースにしていることで再び有名に(?)なりましたよね。わたしは、今やプレミア価格の絶版本となってしまった『愛犬家連続殺人』を読んだ後に映画を見ましたが、犯人役のでんでんの怪演に瞳孔が開きっぱなしでした。
知らない方のためにかいつまんで説明しますと、ペットショップオーナーの夫妻が、トラブルになった顧客や関係者を次々と毒殺し、遺体をバラバラに刻んで焼却し証拠を隠滅(本人曰く「ボディーを透明にする」)した連続殺人事件です。前述の本を書いた共犯者の描写によれば、風呂場で遺体の解体が行われたようです。


ちなみに、わたしがこれまで読んできた事件の中で、超絶に恐ろしかったのは北九州監禁殺人事件でした。何故かわたしはこの事件を書いたノンフィクションを、東日本大震災の前夜に読了し、こんなに陰惨な出来事がこの世にあるのか…と心の底から驚愕したのでしたが、翌日に起こったことはまったく別の戦慄をわたしに与え、事件への関心はしばらく記憶の層に封印されていました。
多くの事件の犯人は、貧困や愛憎、或いは極端な劣等感を背負っており、それはある程度、想像力の及ぶ範囲です。しかし、北九州事件とその主犯は、どう考えても腑に落ちない、どこにも取っかかりがない、“サイコパス”と乱暴に片づけてしまう以外方法がないような残忍さ。どんな人生を歩んで来たらそうなるのか、これまでの経験と想像をどんなに駆使しても理解できない、いや理解を反射的に拒絶してしまいます。
埼玉愛犬家殺人事件の犯人も、北九州ほどではないにしろ、数少ない資料を読む限りは、かなり理解しづらいタイプです。あまりにもドライすぎて、自分の知っている感情からは推測不可能なのです。見た目はきわめて猟奇的なのに、動機がまったくそうでなく、単純に欲から来ているようなのもまた不気味です。

 

おっと、余計な私見が長くなりました。
アフリカケンネルは、畑の中でぽつんと廃墟になっていました。建物と敷地は想像よりもはるかに小さかったです。
何も知らなければ、ごく普通の廃墟に見えますが、窓にさりげなく貼られたシベリアンハスキーのイラストが、明らかにその場所であることを示していて、一瞬、寒気がしました。

 

PC071499 


いきなり眉を顰められそうな場所からスタートしてしまいましたが、ここからはお子様が読んでも安心の内容でお送りします。
今回のちんたびの目的は、群馬のB級スポットをあちこち訪ねるというもの。群馬には、B級好きが望む観光地――すなわち、廃墟、心霊スポット、さびれ系テーマパーク、秘宝館などがたくさんあるらしく、群馬県人のメンバーにあちこちピックアップしてもらいました。
ということでお次は藪塚石切場。これはいい廃墟! いや、廃墟じゃないか。。。れっきとした観光地ですね、ハイキングコースにも含まれていますし。
歴史を紐解けば、明治時代から石の採掘が始まり、昭和30年代に閉山されたという石切場。廃墟と呼んでは失礼なほどの威厳を湛えており、まるで神殿のような佇まいです。入口のアプローチは、ヨルダンのぺトラを彷彿とさせます。


PC071556 思わず口を開けて見上げてしまう。


PC071536 もう遺跡の風格ですね。
 
 
次はジャパンスネークセンター。
入場料1000円のテーマパークにしてはエンタメ感の薄さがひどく気になりますが、研究施設だと思えばまあこんなもんなのでしょうか…。
前述の群馬県人メンバーが、かつて遠足でここを訪れた際にへびカレーを食べ、それがトラウマになる味だったと云っていたので、ぜひとも試したかったのですが、あいにくこの日は、レストランは休業していました。スネークセンター最大の見せ場である「ハブの採毒実験」も、タイミングが合わず断念。


PC071616 こんにつわー

 
…でもいいんです。ヘビを見に来たフリして、本命は恐竜テーマパーク・アドベンチャーランド…の廃墟だもの。
スネークセンターの敷地内に、いかにも意味ありげな洞窟へのアプローチがありまして、その内部が廃墟になっているのです。
人目にさえふれなければ、中に入るのは簡単。入口には手の取れた恐竜のオブジェが残っていてめちゃくちゃ期待感を抱かせますが、建物内は真っ暗なのと、水が溜まりすぎてとても奥までは進めません。嗚呼、廃墟愛好家的には美味しそうな物件だったのに、残念。。。


PC071582 冒険が始まりそうな小道。
 

PC071635 これは…よさげな物件(ゴクリ)
 

PC071649 無理やりフラッシュを焚くと内部はこんな感じ。
  

スネークセンターのお隣には、三日月村というテーマパークがあります。
こちらは廃墟ではなく、ちゃんと営業しています。人気テレビドラマ『木枯し紋次郎』の故郷を再現した…と云われても、ドラマ放映時にまだ生まれていなかったわたしにはピンときませんが、ビックリハウスあり、からくり屋敷あり、仕掛け洞窟ありと、なかなか楽しめました。
ガイドなしでは入れないからくり屋敷は、確かにこれはガイドがいないと閉じ込められる可能性大だな…というくらいよく出来ていて面白かったです。


PC071710 ビックリハウスで激しく酔いながらはしゃぐ大人。
 

PC071731 廃村かと思た。。。これもアトラクションの一部です。
   

おまけ。オレンジハット。
懐かしい自動販売機とゲーム機がずらりと並ぶ、群馬ならではの癒しスポットです。
ホットサンドを食べてみました。


PC071760 お菓子、うどんからハンバーガーまでよりどり見どり。

 
PC071768 

 
PC071772 でけた♪
  

後編は2014年!

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2013年12月12日

ちんたび~前菜:神々の競演(狂宴?)

テーマ:

ここ1ヶ月くらいの間、いわゆる珍スポット的な場所に行く機会に恵まれていますので、その成果(?)を、コース料理形式でお話ししたいと思います(って何だそりゃ)。
タイトルは、BL界きっての名作にして迷作『ちんつぶ』から。

 

ある秋晴れの日、手帳の11/23のメモ欄に、「神命大神宮パレード」とダイイングメッセージのような走り書きが残っているのに気がつきました。
確実に自分の筆跡には違いないのですが、いったいいつ記したのか、まるで記憶がありません。買い物リストや本以外のメモをあまり手帳に残さないので、よほど気になったのでしょうか…。
急いで検索してみましたところ、すぐに答えは判明しました。神命大神宮――正しくは神命愛心会という神道系の宗教団体が毎年行っている、神代行列――神様のコスプレをした人々が練り歩くパレードのことだったのです。いかにもわたしが好きそうな内容ではありませんかっ。

 

その日、別のイベントに誘われていたのをわざわざ断り、一人でパレードを参観してきました。一人焼肉と一人パレードは、どちらが寂しいのかな…?
JR蒲田駅からスタートしたパレードは、本格的なブラスバンドも従え、糀谷駅近くにある本部(大神宮)まで1時間半ほどかけて進みます。
わたしは京成蒲田駅から環八通りに出て、途中から参観です。左側一車線をまるまる使っているのですが、車線が多く他の車が横をガンガン走っているため、ここだけ妙なテンションで何とも不思議な光景です。
パレードは2部構成になっており、1部が神様大集合、2部が神話の世界です。1部では日本の神話に登場する八百万の神々…の主要人物が人力車に乗ってご登場。神様に扮するのって、どんな気分なんだろ…。あと、皇室的に神様の扮装は特に問題ないのかな、とかいろいろ気になります(笑)。
伊弉諾伊邪那美、天照大御神、月読命、須佐之男命、大国主命…とまあ、この辺は何となく分かるけど、古事記の人間関係って、今いち誰が誰なのか整理できていないので、ぼんやり見てしまいました。神様の名前、多すぎだし、系譜がぜんぜん分からん…。もし子どもがいて、日本神話を説明してよママンとせがまれたら、苦し紛れにでたらめを教えてしまいそうです。


PB231327 さあ、始まるよっ♪

PB231336 神武天皇のお出まし。
 
まあいいんです。メインは何と云っても第2部。
神話の世界を再現した、渾身の創作パレード車が次々と現れます。
天岩戸に始まり、天孫降臨、因幡の白兎、やまたのおろち、海幸山幸…など、子ども向けの昔ばなしにも出てくる主要エピソードが、ネズミの国のエレクトリカルパレードも裸足で逃げ出す迫力とクリエイティビティ(ちょっと話を盛りました;)で繰り広げられます。細部まで頑張っていて、その造形を見るだけでも楽しいです。天の羽衣では「祝・富士山世界遺産認定」という幟が立っていたり、かぐや姫や桃太郎まで登場したりと若干カオス気味になっていくのもまた、奇祭感があってよいですね(いや、別に奇祭のつもりはないのでしょうが…)。
京成蒲田から環八に出たときはそれほど見物客もいなかったのですが、糀谷方面に差し掛かると、信徒も野次馬も増えるのか、歩道には祭りらしいにぎわいが出てきました。まあ、毎年やっているということなので、地元の人たちには年中行事的な位置づけなのかもしれませんね。見物客には、お花一輪やお菓子付きの破魔矢が配られ、わたしももれなくいただいてきました。


と、つらつら書いてもあまり伝わらないと思うので、写真をご覧ください。


PB231343


PB231350
 「天岩戸開き」。♪お~ど~る~君~を見て~こ~い~が~始~ま~ってええ♪

PB231434  「天孫降臨」は特に力作! 白い部分をもふもふしたい。。。

PB231431 オーロラ色に輝くやまたのおろち。


PB231372 天女が飛んでます。後ろに見えますのは話題の世界遺産。

PB231381 キッズたちのはにかみがちなパフォーマンスがかわいい「因幡の白兎」。鮫キッズの手に注目。
 
 
PB231417 「竹取物語」もなかなかのデコっぷり。天に帰っていくかぐや姫を涙ながらに見送る、おじいさんとおばあさんの演技が光っていました。

PB231405 桃太郎軍団は徒歩。。。

ひと通り見て、写真を撮ったら適当に立ち去ろうと思っていたのですが、パレード車を夢中で追いかけているうちに、ゴールの大神宮まで来てしまいました。
せっかくなので、信徒のていで内部にもお邪魔。田舎の地主家の大広間のような神殿は、これまた田舎の法事のような雰囲気で、挨拶し合っている信徒の方々は、宗教団体というより親戚づきあいっぽく見えます。きっと内部にいれば居心地がいいんだろうなあ、と思わず微笑ましい気持ちになりました。
ただ、200円のおみくじを引いて、そこに書かれている内容の詳しい説明を聞くために5桁のお金が必要らしいことが書いてあるのを見て、やっぱり宗教に深入りしてはいけないと思い直しました。


前菜ということで、かなり軽めの内容でした。
でも、少なくとも後日、『ぼおるぺん古事記』を購読するくらいには、影響を受けてます(笑)。いやいや、楽しませていただきました。

ちなみにこの日は、何故かこの後、山野一先生のサイン会に行くという、謎の1日でした。 

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