長崎・五島・軍艦島ぶらり湯けむりサスペンス&巡礼の旅――その壱
テーマ:旅♪長崎は今日も雨だった~
って、歌っている場合ではありません!
熊本空港から移動に継ぐ移動で、長崎に着いたのは夜22:30。午後便だったとは云え、今日は旅程に含めたくないほど何もしていないではないか…。。
でもって、ようやく着いた長崎は、しとしとと雨が降っております。友人が、羽田で待ち合わせて開口一番「天気予報見たら、長崎は雨だって~(泣)」と出鼻を挫くコメントを発しており、「何だバカヤロウ! そんなこと信じないぞ!」と息巻いていたのですが、本当に降っているのを見ると、ただただ悲しみがこみ上げてきます。
朝になっても、今にも雨が降りそうな曇天、かつけっこう寒い。友人に「九州は、東北の100倍暖かい」と啖呵を切ったわたしの立場は…。
今日は、わたしにとって今回の重大なミッションである軍艦島クルーズの日です。明日からは五島に渡る予定なので、今日を逃すわけにはいきません。
クルーズが出る13時まで、雨のそぼ降る中、グラバー園や大浦天主堂を観光していましたが、天気はよくなるどころか残念なほどの土砂降り具合に発展し、気分はしぜん暗くなっていきます。
わたしは、屋久島に日食を見に行き、当日だけ見事に雨が降ったあの日のことを思い出しました。その他にも、数々のつまらぬ不運に見舞われてきた旅人です。日常生活においても、「雲行きが怪しい日の、外出5分後の降水確率=90%(自社調べ)」という数字を誇るわたくしです(傘を持って行けよという話ですが)。
ところが、友人もわたしに輪をかけてひどい不幸な雨女であることが判明しました。曰く、
「会社のオーストラリア旅行で、ガイドさんに『異常気象かもしれません』と云われるほど雨が降った」
「ネパールのトレッキングでは、雨で全く山が見えなかった」
「5月末の沖縄では、あまりにも寒くて地元の人に『今年は異常よね~』と云われた」
「バリ島では、ダンナが急に蕁麻疹を発症して看病が大変だった」
…などなど、次々と不幸エピソードが出てくるではありませんか!
さすが、わたしと伊達に15年も付き合っていません。お金はお金が好きなのと同じく、不幸も不幸が好きってわけですか(泣)。
大浦天主堂。写真で見るとけっこうな迫力があるけれど、わりとこじんまりした教会でした。天気が悪くて空が真っ白です。。。
わたしは、クルーズの欠航にビビりながら時を過ごしていましたが、友人は「大丈夫だよ。海が時化ってなければ船は出るから!これくらいの雨なら時化らないから!」と自信満々でした。あなた、漁師の娘でしたっけ…?
長崎港に着く頃には、何とか小雨になっており、無事に船も出るということが分かってホッとしました。友人、やるな…。と思ったら、いざ出航したとたん、またも土砂降りに……何 故 な ん だ !?
だがもう、賽は投げられた。雨に打たれようが、嵐に見舞われようが、軍艦島に上陸できればそれでいい! かの地を踏むということが大切なんだ!
わたしに限らず、軍艦島と聞いて何らかの興味をそそられる旅人は少なくないと思いますが、“わたしと軍艦島”ということになると、少し特別な思い入れがあります。
もう10年以上も前、NHKで放送された『深く潜れ』というドラマがありました。
当時トップアイドルだった鈴木あみが、初出演&主演したドラマ――にしては、百合、前世、セラピーなど、どう考えてもメジャーとは云いがたいモチーフが散りばめられ、NHKのぶっ飛んだ側面が遺憾なく発揮されたヘンな(褒めてます)ドラマでした。
共演者も、小西真奈美、千原兄弟、テリー伊藤という斬新すぎるキャスティング。これがまた、ドラマの持つ不安定で繊細な世界観に、とてもよく合っていたのでした。
何故、鈴木あみがこのドラマを初出演に選んだのか、今でも謎ではありますが…。当時は「タダモノじゃないかも」と彼女を見る目が少し変わったものでした。ちなみに、この十年後、わたしはまたも鈴木亜美(この頃すでに改名)主演の昼ドラ『ラブレター』にもどっぷりハマりました。演技が特に上手いわけではなさそうですが、ドラマの選択眼はすごいのかも…。
しかし、ここで特筆すべきは、軍艦島が物語の重要な舞台になっていたという点です。わたしは初めてこのドラマで軍艦島の存在を知り、かつて軍艦島の住人だったという役柄のテリー伊藤の回想が、長い間、脳裏に焼き付いていたのです(ってもまあ、うろ覚えなのですけど)。
島まるごとが廃墟。失われた風景。かつてのざわめき。どうも昔っからこういうのに弱いらしいです。要するに「夏草や つわものどもが 夢のあと」わたしの好みに通底するものはこれなんですね(多分)。
ついでながら、このドラマは主題歌も秀逸でした。「PUZZLE」という歌なんですが、tohkoという小室ファミリーの歌手が歌っています。この曲は小室さんじゃないけどね。今でもふと聴きたくなりますし、カラオケでも誰も知らないのを承知で歌います。軍艦島を思い浮かべながら(笑)。
以上、あまり共感を呼ばないであろう前置きでした。
「廃墟好きの聖地? えーなんか怖くないそれ?」と、軍艦島に1ミリも思い入れのない友人は、船の揺れに合わせて自らも舟を漕いでいましたが、わたしは、軍艦島がいよいよ視界に入る距離になると、いてもたってもいられず甲板に飛び出しました。さいわい、雨は小雨に戻っていました。
その姿が日本海軍の戦艦「土佐」に似ていることから名のついた「軍艦島」(本名は端島)。確かに、遠目から臨むと軍艦のように見え、周辺の緑に覆われた島々と比較すると、あまりにも独特のビジュアルです。
船がじわじわと軍艦島に近づいていくにつれ、背筋に感動の寒気が何度も走ります。
かの有名なドルフィン桟橋から上陸すると、観光客はあらかじめ渡された札の色で2班に分けられ、班行動(懐かしい響き…)となります。
島の東側に観測ポイントが3つあり、そこでガイドさんの解説を聞きつつ写真を撮りつつ…という流れなのですが、は、早い! 説明は聞きたいし、写真を撮るのも忙しいしで、全然たたずめない! 混んでる博物館に来たみたいだよ!
そもそも、観測ポイントのあるエリアも、島全体からするとほんの一部って感じだしなあ…。いや、観光するには危ない場所なんだってことは重々承知してますけどね。
嗚呼、メインストリートだった浜通りや、地獄段、めちゃくちゃ密集していた建物と建物の間を思う存分歩きたい! 上から多少、何かが落ちて来てもいいから!
ホントはこの辺りを見たかった! これは海からの望遠。崩れ落ちそうでありながらも堂々たる建物群。
上陸時間は、体感としては30分あったかどうか…。
しかし、かように制限された観光でも、軍艦島の景色が持つ独特の迫力は、十分に伝わってきました。
震災以降、こういった風景というのはどうしても被災地のことを思い出し、“失われた故郷”という共通性もあって複雑な感情に囚われますが、それでも、静かにたたずんでいる、目のない彫刻のように窓の開いたコンクリートビルの姿からは、悲しみの影よりも、かつてそこにあった幸福やにぎわいを感じて、不思議なノスタルジーが湧き起こってくるのです。
かつて、東京の9倍近くという、世界一の人口密度だった島。日本で最初の鉄筋コンクリート集合住宅が建設され、日本のどこよりも家電の普及率が高く、島の中ですべてが完結できる都市機能を備えていた島。狭い土地を最大限に活かすために、屋上の緑化も行われていました。
ともすれば前時代的なイメージの炭鉱と、そういった先端性とのコントラストも強烈です。日本には6852もの離島があるそうですが、軍艦島は唯一無二、世界のどこにもない島のように思います。
もはや遺跡の風格さえ漂わせているような…。上にそびえるのは社員宅跡。社員は高台、鉱員は低地に住んでいたそうです。社会の縮図…。
鉛色の空の下に広がるコンクリートジャングル。かつて“緑のない島”と云われた場所にも雑草が生い茂り、建物が呑まれていきそうにも見えます。
今でも、住居棟には昔の影が残っているのでしょうか。タイムカプセルのように…。
帰りの船内で流されたDVDには、かつての軍艦島の風景、“動いている”軍艦島が収められていました。
行商でにぎわうストリート、ドルフィン桟橋での乗り降り、飛び込みして遊ぶ子どもたち……モノクロのフィルムで映し出されるそれらの風景はあまりにもライブ感にあふれていて、わたしはまるで自分の故郷がそこにあったかのような感傷に囚われました。
廃墟が美しいのは、そこに人の気配を感じるからなのかも知れないな…(『星の王子さま』風に)。
甲板から見納める軍艦島。天気のせいか、ホンモノの軍艦に見えました。
これで、本日の仕事はほぼ終わったような気になっていましたが、友人の希望でさらに長崎原爆資料館、浦上天主堂と足を延ばしました。
友人は教育関係の仕事に就いていることもあってか、資料館では音声ガイドまで借りて熱心に展示を見ていました。その熱意の差に、己がちょっと薄情な人間のような気がしてきます…。
洋館と教会、炭鉱の島、そして原爆…こうして見ると、長崎という街は、ずいぶん多くの特異な歴史を背負っていることをひしひしと感じます。そして、歴史とは決して博物館の中に収めきれる過去ではないのだと。だけどわたしは、博物館の中にある歴史すらも大して知らないまま、のうのうと生きていることだよな…。帰ったら、永井博士の本を読もう。
朝から晩まで、食いっぱぐれながら観光しまくったので、夜は少し豪華に、海鮮居酒屋で舌鼓を打ちました。
今日1日、いろいろなものを見た割には、酒の肴は、友人の魔性の女ぶりがうかがえる恋の話、という極めて俗っぽいことになってしまいました…。
でも、俗っぽいからこそ、明日という日を何食わぬ顔で、希望を持って迎えられるのかもしれません。























