<艶が~る、二次小説>
私なりの沖田さん花エンド後も、11話目になりました
※沖田さんを攻略されていない方や、花エンドを攻略されていない方には、ネタバレになりますので、ご注意ください!
現代版ですし、私の勝手な妄想ではありますが…よかったらまた読んでやってください
第1話
第2話
第3話
第4話
第5話
第6話
第7話
第8話
第9話
第10話
【沖田総司~花end後~】 第11話
日野宿での催し物の一つ、『月を愛でる会』が、厳かに始まろうとしていた。
土間付近にある展示物などを観て回っていた私達は、一番広い部屋へと集まり始めている人の中に身を寄せ合って腰を下ろす。
「まずは、舞踊からか」
「そうですね」
小さな声で囁き合うと、まず初めに三味線の演奏者が登場し、その後、袴姿の男性が奥からしずしずと歩みを進めながら中央へやってくると、白い扇子をゆっくりと開きその場に佇んだ。
第一部は、舞踊。清元「玉兎」。
次いで、三味線の音色と共に舞が始まった。
「素敵……」
男性の舞を見るのは初めてだったけれど、三味線の音色と共に舞うその姿は、男性ながらとても艶やかで、頭の先から指先までもがしなやかに動いていた。
その間、感じていたことは勿論、あの頃のこと。
まだあの時代にタイムスリップしたばかりの頃、現代へ帰りたいという気持ちを抱えながら、島原で花魁として生きて行くという現実を受け止められずにいた時。
そんな私の気持ちを受け止めてくれた秋斉さんや、慶喜さん。菖蒲姐さんや花里ちゃん達がいつも傍で支えてくれたから、私はあの時代でも生きて行くことが出来た。
(…また会えたらいいのに…)
私達だけじゃなく、周りの人達も、三味線の美しい音色と舞に魅了されているかの様にうっとりとした表情を浮かべている。
やっぱり、日本古来から伝えられている文化に触れることによって、心が何かを取り戻すかのように和んいくような気がして。
もっと観ていたいと思っていたその時、美しい舞が終わりを迎えた。
拍手が起こって間もなく、司会者らしき女性が笑顔で現れて、私達を見やりながら今夜の経緯を丁寧に話し始める。
そして、演目にもあるように第二部は、場所を移動しての箏(こと)演奏であるという説明を受け、私達は案内されるままに歩みを進めた。
「また、貴女の舞踊も観たいものです」
「沖田さん…」
「素敵でしたからね、貴女の踊りも…」
「いつかまた、そういう機会があったら…」
「その時が今から楽しみだ」
「私は、慶喜さんや秋斉さん。菖蒲姐さんや花里ちゃん達のことを思い出していました」
そんなふうに小声で会話する中、見えてきた立派な箏に目を奪われた。「こちらへどうぞ」と、案内された場所に腰掛けながら、私達はまた感嘆の溜息を零す。
第二部は、月を愛でながらの箏演奏。
丁度、縁側からぽっかりと浮かんだ月が顔を出しているのが見える。
「今夜の月も綺麗だ…」
「本当ですね…」
その時、艶やかな着物を纏った綺麗な女性が現れ、箏の前に正座すると指をしなやかに動かし始めた。
一つ一つの弦から聴こえるその音色がじつに素晴らしく、その優しい音色に聞き入りながら、私達は月と箏を交互に見やりながら微笑み合う。
あの時代でも、こんな素敵な夜を過ごすことは無かった。それがこの現代で、しかも大好きな沖田さんと一緒に過ごしている。
(…何だか、まだ夢の中にいるような……)
現実の中で生きているとは思えないほどの一時に、胸は高鳴ったまま。
「少し寒いですけど、縁側へ出ませんか?」
「え、あ…はい」
不意に繋がれた手に誘われるまま縁側へ出ると、私達はゆっくりその場に腰を下ろした。
「箏もいいですね。月見にぴったりだ」
「そうですね、とても癒されます…」
「あ、そうだ…」
そう呟くと、沖田さんは肩から掛けていたレッグポーチの中からベージュのマフラーを取り出し、そっと私の首に掛けてくれる。
「え、いいんですか?」
「はい、風邪とか引いたらいけませんからね」
「ありがとう。でも、沖田さんは…」
「僕は大丈夫です。ところで、三味線や箏の音色を聞いて思い出したことがあるのですが、」
沖田さんは、私に内緒話をするように小声で、「土方さんもほんの少しだけ三味線を嗜んでいたということ、ご存じでしたか?」と、呟いた。
「え、あの土方さんがですか?!」
「ええ、三味線の音色を聞いて思い出しました。あの鬼の副長が三味線をと、思われるかもしれませんが、土方さんは本来、とても心の優しい方でしたから」
「そうだったんですね…」
(いつも、憎まれ口を言い合っていた二人だけど、やっぱりお互いに信頼し合っていたからこその会話だったんだなぁ…)
「しかし、誠の旗の下。新選組となってからの私達はある意味……人の世の道から外れていたのかもしれませんね」
あの頃、新選組がどれだけの労力を費やして来たのか。京の町を守る為、あるいは忠誠を誓った徳川幕府存続を願いながら、昼夜を問わず懸命に生きてきた彼らの想い……。
「そんなことない」
「え…」
「新選組は、こうして今もなお、沢山の人達から慕われている。それは、あの時代で沖田さん達が私達の為に死を賭して戦ってくれたから…」
私は、少し驚愕の色を浮かべる沖田さんに微笑みながら、いつだったか龍馬さんから聞いた言葉を口にしていた。
『志は違えど、みな、愛する者の為に戦っちゅう』
とても切なくて哀しい事だけれど、それでも前を向いて生きて行かなければいけない。そしたら、その先には必ずそれぞれの幸せが待っているはずだと。
「確かにそうかもしれませんね…」
「その言葉を聞いた時、希望さえ持ち続ければどんな立場の人とでも、いつの日か分かり会える日が来る。そう、思ったことを思い出しました」
繋がれたままだった手を絡めながら、お互いの冷えた部分を温め合う。
「寒くないですか?」
「全然大丈夫です。このあったかい手があるから…」
そう言って、沖田さんの手を握り直すと、今度は右肩にふうわりとした温もりを感じた。優しく添えられたその手の平からも熱を感じて、例えようもないほどの幸福感が私を包み込む。
「貴女と出会えて良かった。あの頃も、今も…」
「私も同じ気持ちです」
すぐ傍にある優しい胸に甘えるように寄り添い、今までの想いを告げた。
「……大好きです。もう、絶対に私を独りにしないで下さいね」
すると、沖田さんは柔和な笑みを浮かべたまま私の髪に口付けを落とし、「もう二度と離しません」と、囁いてくれたのだった。
それから、第三部の演目である伎音戯が始まり、今度は素敵な歌声と舞に心癒された。
舞から始まって、箏、伎音戯と、盛り沢山の演目が終わり、名残惜しげに土間へと足を運ぶと、ガイドの近藤さんがまた私達に歩み寄ってくれて、
「『月を愛でる会』は、いかがでしたか?」
「はい、とっても素敵で…心が癒されました」
「また、是非いらして下さいね」
「はい!また来ます」
柔和な笑みを浮かべる近藤さんにお別れを言って、私達は名残惜しげに日野宿本陣を後にした。
「楽しい時間はあっという間に過ぎますね…」
長屋門を出た辺りで、沖田さんがぽつりと呟く。
「でも、日帰りとはいえ、こうして沖田さんと二人きりの時間を過ごすことが出来てすっごく嬉しかったです!」
「そうですね」
「また一緒に来ましょうね」
「はい」
そして、また私達は本陣を振り返りながら、ゆっくりと駅への道のりを歩き始めた。
その間も、お互いの思い出話をしながら歩いていると、これまたあっという間に駅へと辿り着き、駅のホームで次の電車が来るのを待っていた。
このまま、電車が来なければいいのになんて思いながら…。
冷たい風が頬を掠めるも、繋いだ手から温もりと熱を分け合う。
「今度は、どこへ行きましょうか?」
「そうですね…」
(もうじきこの手を離さなければいけない。)
「今度は、沖田さんの行きたいところへ行きましょう」
「……それなら、貴女と行きたい場所がある」
「それはどこですか?」
「京都です」
「京都へ?」
「はい。日野宿で昔の自分を思い返し、知らなかったことも耳にして再び行ってみたくなった」
線路を見つめたまま。何となく、その瞳が郷愁の色を浮かべているように見える。
「でも、また思い出したくない記憶を…」
「確かに。もしかしたら、貴女にも辛い思いをさせてしまうかもしれない。でも、二人一緒なら辛い思い出も受け入れられると思うんです」
「……沖田さん」
「その時は、付き合って頂けますか?」
「勿論……」
絡めていた指をそのままに、私はもう片方の手で沖田さんの逞しい腕に触れ、そっと寄り添った。
そして、とうとうやって来てしまった電車に乗り込み、空いている席に腰掛けると、私達はまた日野宿でのことや、いつ頃京都へ行こうかなどと話をしながら一駅、一駅乗り過ごしていく。
(…次の駅で沖田さんは降りてしまう…)
離れたくないと思えば思うほど、時の流れは速く感じるもので。次の駅のアナウンスが流れてすぐ、沖田さんは、「家に着いたらメール下さい」と、言った。
「沖田さんも…」
「はい」
やがて、ゆっくりと駅に停車して間もなく、ドアが開くと同時に優しい手が離れて行き。
「じゃあまた…」
そう言って、沖田さんは電車を降りて行った。
「また…」
ドアが閉まり、またゆっくりと動き始める電車の窓から、私に微笑む沖田さんに微笑み返す。
窓の外を流れるいくつもの街灯。
急激に寂しさが込み上げてくる中、さっきまであった手の温もりを手繰り寄せながら、ふと首に巻かれたままのマフラーに気付いた。
「返すの忘れちゃった…」
あの手の温もりには敵わないけれど、私を包み込む柔らかいマフラーに触れながら、沖田さんとの楽しい一時を振り返っていた。
~あとがき~
やっと、沖田さんとのお月見が最初のデートなら、こんな感じだろうか??なんて、思いながら書いていましたが…。
俊太郎さまの花エンド後でもそうですけど、「俊太郎さま」と、「俊太郎さん」といるように、こちらも、「沖田さん」と、「総司くん」がいるわけですなぁ。
「僕」の時と、「私」の時の使い分けが、ちびっと難しいそして、いつだったか、翔太くんと主人公が話していたこと、覚えてはりますか?
翔太くんが、「また、古道具屋へ行って見ないか?」と言っていたのを…。これが、キーワードになってたりします
デートも、回を重ねるごとに少しずつ大胆になっていくのだろうか<w
年末年始は、いろいろと忙しくなりますので、かなりなマッタリ更新になってしまいますが、また良かったらお暇な時にでも覗きに来てやって下さい
今日も、遊びに来て下さってありがとうございました