<艶が~る、二次小説>


私なりの沖田さん花エンド後も、8話目になりました(^ω^)


※沖田さんを攻略されていない方や、花エンドを攻略されていない方には、ネタバレになりますので、ご注意ください!


現代版ですし、私の勝手な妄想ではありますが…よかったらまた読んでやってくださいきらハート


第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話  




【沖田総司~花end後~】第8話



──翌朝。


夜更かしした割にはスッキリと目覚めることが出来た私は、枕元の携帯のメール受信部分を開いて昨夜のやり取りを見返した。


「…やっぱりなんか、まだ夢を見てるみたい」


あの頃と同じ気持ちのまま。


沖田さんの彼女になって、愛を囁き合って……同じ月を見上げていた。


最後の武士として生き続けた沖田総司に恋をして、その最期を看取って間もなく。現代へ戻って来た私の前に現れた彼。


彼は前世での沖田総司としての記憶を思い出し、私は幕末時代にタイムスリップして沖田さんと知り合い恋をした記憶を思い出し始めた…。


まるで、神事のような出来事を不思議がることもなく、私は現代に生きていた沖田総司くんとの逢瀬を受け入れ、数日が経とうとしている。


楽しかった記憶ばかりでは無く、辛く哀しい記憶も沢山思い出してしまうけれど…。それでも、今度こそあの頃果たせなかったことを実現させることが出来るのだ。


それは、どんな形でもいい。


沖田さんをずっと感じていたいということ…。



【貴女を私だけのものにしておけば良かったかな…】




艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~



今でも覚えている。


私を慈しむように抱きしめながら、そっと囁いてくれたあの一言を。


そしていつの日か…。



~♪


「…えっ」


思い耽っていたその時、携帯が一通のメールを受信した。


「お、沖田さんからだ…」


早速、メールを開いて内容を確認すると、そこには沖田さんらしい文面が認められていた。中でも、一番心を擽られたのは…


──早く土曜日にならないかと、そればかりを考えて昨夜は眠れませんでした。それと、やっぱり貴女に会いたくなって…。


同じ気持ちでいてくれることが嬉しくて、素直な気持ちを認めた文を返信する。


どこかでまだ、幕末時代での記憶が甦る度に違和感を感じる時もあるのだけれど、こうやって想いを伝えあえること全てにおいて感謝していた。


あの頃は、お互いの安否さえよく分からずに、ただ想いを馳せることしか出来なかったから。




それから、登校準備を終えた私は、いつもの道を歩きながら秋がその色を増し始めたことに気付かされた。


どんどん冷たくなる空気。枯葉が道路脇を埋め尽くし始め、秋の植物達が色づき始める。


(つい最近まで、半袖でも暑いくらいだったのに…)


どこか、人恋しくなるような肌寒さを感じながら学校へ辿り着くと、門前で偶然翔太くんと会った。


「翔太くん、おはよう」

「おう…」


どこかいつもよりも元気の無い曇りがちな表情に、そのままの疑問をぶつけてみる。


「…どうかした?」

「いや、どうもしないけど…なんで?」

「なんか、いつもよりも元気が無いみたいだから…」

「……………」


翔太くんとは、修学旅行最終日の晩以来話していなかったから、同じように幕末時代での記憶を思い出し始めた翔太くんのことも気にはなっていたのだけれど、この表情は何か悩んでいる時のものだ。


そう思った私は、下駄箱で同じように靴を履き替える彼に明るく声を掛けた。


「あのね、じつは…私達のことを裕香に話したの」

「えっ?まさか、あのことを?!」

「うん…」

「それで、信じて貰えたのか?」


驚愕の表情の翔太くんに苦笑しながらも、昨日の彼女とのやり取りを詳しく話すと、翔太くんは「彼女なら信頼できるから大丈夫かもしれないな」と言って、また何かを考えるように眉を顰めた。


「だけど、もう他の人には言わないほうがいいと思う…」

「うん、そうだね…」


下駄箱から教室へと向かう廊下で、逆に翔太くんの方から声を掛けられる。


「鮮明に思い出すんだよな。龍馬さん達と過ごした日々のことを…」


少し辛そうな表情で言う彼に、相槌を打ってまた話すように促した。


「楽しいことも沢山思い出す中で、その倍辛かったことも思い出してさ。そんな時は、どうしたら良いか分からなくなるくらい混乱するんだ…」

「翔太くん…」

「あの日、龍馬さんを助けることが出来なかっただろ」

「…うん」

「俺がついていながら助けることが出来なかった。それだけじゃなく……結局、誰が龍馬さんを暗殺したのか分からないままだ。だけど、こっちへ戻って来てからすぐに歴史を調べてみた結果、いろんな奴らが暗殺者として浮上していた。あの新選組もな…」

「……っ…」



艶が~る幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~



一瞬、心臓が大きく疼いて思わず立ち止まると、翔太くんは哀しげな表情を浮かべたまま私の手を取って歩き出す。


「ごめんな…」

「ううん…」


徳川幕府を敵対していた勤王志士らは、その幕府の下に就いていた新選組とも対立していた。そんな場面を嫌っていうほど見て来た翔太くんの気持ちを考えると、胸が痛くなって苦しくなる。


「翔太くん…」

「ん?」

「ううん、何でも無い…」


怖くて聞けなかった。


幕末にいた頃から、本当は沖田さんの事をどんなふうに思っていたのか。それと、沖田さんの生まれ変わりである総司くんと出会ったことも…。


あの時、修学旅行先で翔太くんは沖田さんの事をあまり快く思っていないような口ぶりだった。



“今でも正直、複雑な気持ちだ。お前が沖田のことを好きだと知った時、どうしてなんだ?って思った。俺にとっては憎むべき相手だったからさ…”


「あの人のことは気にしていない。お前らの気持ちを考えたら、俺に何かを言う権利なんて無いし……現代に生きていたあの人には何の罪も無いしな。それに、俺達と同じように辛い記憶に悩まされているだろうしさ…」


翔太くんは、そう呟いて私に優しい微笑みをくれた。


そのいつもの微笑みを目にして心がほんの少し落ち着きを取り戻し、いつの間にか離されていた自分の手を握りしめながら隣を歩く翔太くんに微笑み返す。


でも、その微笑みはぎこちなく。


以前のような素直な笑顔では無く、偽りの笑顔のような気がした。


 ・

 ・

 ・

 ・


翔太くんと共に教室に辿り着いてすぐ、既に登校していた裕香から声を掛けられた。


「二人ともおはよう」

「おはよう、裕香」

「おはよう…」


どうしても声が小さくなる中、彼女は私達を見つめながら不思議そうな顔で言う。


「修学旅行疲れ?」

「ああ、そんなところだ」


翔太くんは彼女にそう答えると、自分の机へ向かい教科書などを整理し始めた。私は、それを取り繕うようにして彼女に沖田さんとのことを話し始める。


「あ、あれからね、沖田さんにメールしたんだけどね」

「うん」

「電話してきてくれてね、いっぱい話したよ…」

「おおぅ、早速のおのろけご馳走さまぁ~」


ホームルームが始まるまで、彼女と話しながらも私は翔太くんのことが気になっていた。やっぱり、とても複雑な想いが邪魔をしているから…。


そんな風に思いながら、翔太くんと彼女とは誰にも話せない内緒の話もしつつ。沖田さんとも、毎日のメールや電話でお互いの想いを伝え合う日々を過ごしながら、金曜の夜を迎えていた。


明日は、いよいよ沖田さんと二人だけで初めてのデートが出来る日。


約束したあの日から何を着て行こうかとか、何を持って行こうか等をずっとチェックして、毎日心を弾ませていたのだった。


「もう、楽しみ過ぎてどうしよっ…」


~♪


鏡の前で明日着て行く服を再チェックし直していた時、着信音が鳴って思わずハッとして携帯を手にする。


「もしもしっ」

【こんばんは…】

「こんばんは…」

【今、電話してて大丈夫ですか?】

「はい、大丈夫です。今、明日の準備をしていました」

【同じく。今夜の月も綺麗だから、明晩の月見も期待できますね】

「今、月を見ているんですか?」

【はい。今夜も晴れているから綺麗に見えますよ】


携帯をそのままに窓辺から夜空を見上げると、また綺麗な月が星々と共にその輝きを放っていた。


「本当だ、綺麗…」

【長かったなぁ…今夜を迎えるまでが…】

「同じく…」


お互いにまたふっと微笑み合うと、私達はどちらからともなく明日のことについて話し始めた。なるべく早く会いたいからという理由で、最寄駅である日野駅にて10時に待ち合わせることになったのだった。


調べた結果、日野宿本陣へのアクセスは、【JR中央線特快】東京駅⇔日野駅 約45分。【京王線準特急】新宿駅⇔高幡不動駅 約35分の二通りがあり、日野駅から歩いて12分程度の場所に建てられているらしい。


150年前に建てられた日野宿本陣。


あの頃と同じ建物が、その姿を新たにしながらも現代まで存続され続けている。


【あの場所にも、いろんな思い出があります…】

「沢山聞かせて下さいね」

【……ええ、思いだせることは何でも…】


それからしばらくの間、話はお互いの学校のことや友人のことになり、気が付けばまた時間だけが過ぎていた。


「あ、もうこんな時間…」

【どうせ眠れないし、もっと声を聞いていたいのですけれど…】

「そうですね。もう、寝た方が良いですね…」

【じゃあ、また明日…】

「はい。おやすみなさい…」

【おやすみなさい…】


この時の私は、まだ気づけずにいた。


沖田さんにとってあの場所へ行くことは、楽しかった記憶ばかりでは無く、辛かった記憶も思い出させてしまうということに…。


(あと11時間後には、また沖田さんに会える…)


カーテンを全開にして、また月を見上げながらベッドに入ると、沖田さんのことを想いながらそっと目蓋を閉じた。


待ちきれないから…。


夢の中でも会えないかな…なんて思いながら。




【第9話へ続く】





~あとがき~


お粗末さまどした汗


翔太くんの葛藤を描かないと先に進めないので、日野デートは次回にハートそれまでに、日野宿本陣へ行って、直に幕末を感じて来たいと思ってますハート


これからも、楽しかった記憶と辛かった記憶を交互に思い出す3人。これから、3人はどうなるのか?


そして、日野デートはどないラブラブに描こうか(笑)


今日も、遊びに来て下さってありがとうございましたきらハート