<艶が~る、二次小説>
私なりの沖田さん花エンド後も、6話目になりました
※沖田さんを攻略されていない方や、花エンドを攻略されていない方には、ネタバレになりますので、ご注意ください!
じつは、第5話で…近藤さんのお墓が壬生寺にあると書いていましたが、胸像の間違いだったので、5話も含めて書き直しをさせて頂きました
現代版ですし、私の勝手な妄想ではありますが…よかったらまた読んでやってください
【沖田総司~花end後~】第6話
「大丈夫か?」
前を歩いていた勇人が立ち止まりこちらを振り返った。
「何が?」
「いや、さっきからぼーっとしているから、体調でも悪いのかと思ってさ」
重い足取りのまま彼の隣に追いつくと、心配そうな瞳と目が合う。
「大丈夫。少し疲れただけだ」
「無理するなよ?」
「……ああ」
本当のことをいうと、複雑な気持ちでいっぱいだった。
勇人の様にここを訪れたい気持ちはあったのだけれど、いざ足を踏み入れた瞬間、思い出されるのは辛いことばかりで。
「まずはさ、近藤勇の胸像へ行ってみないか?」
「えっ!?」
「えっ!?って、そんなに驚くようなことか?」
「あ、いや…そうだな」
眉を顰めながら僕を見つめる彼の視線に苦笑しながら、近藤先生の元へと急いだ。胸像前に辿り着くと、そこにはすでに数人の修学旅行生や一般客らが集っていて、それぞれが思い思いに語り合っていた。
「ここがそうか…」
「確か、沖田総司は知らなかったんだよね?」
勇人が呟いた次の瞬間、傍にいた違う学校の女生徒の会話に耳を澄ませる。
(…えっ……)
「近藤勇が処刑されたこと……」
(……!!)
「そうだね。詳しくは知らないけど、知らせずにいたんじゃなかったかな…」
「近藤、土方、沖田の三人は新選組結成前からの同志だって聞いたことあるけど、伝えなかったってことは、沖田総司のことを考慮してあげたからなのかなぁ…やっぱ」
「じゃない?本当かどうか分からないけど、仲が良かったって言うし」
(近藤先生が、処刑されていた?)
「あの、すみません!」
「はい?!」
呆然と聞いていた僕は、無意識に彼女達に声を掛けていた。少し驚きながらも、彼女達は僕を見上げながら小さく頷く。
「…何ですか?」
「あの……近藤勇が処刑されたって話は誠の…いや、本当の話ですか?」
「らしいですけど…それが何か?」
「いえ、その…知らなかったものですから。べ、勉強になりました」
少し不思議そうな顔で僕を見上げる彼女達に頭を下げて、再び視線を胸像へ戻した。
(まさか、そんなはず……)
そんなふうに思いながら、呆然と立ち竦む僕の顔を覗き込むようにして勇人が口を開く。
「おいおい、彼女がいるってのにナンパしてどうする」
「そんなんじゃない…」
「じゃ、何なんだ?」
「近藤せ…近藤勇が処刑されたって言っていたから吃驚して…」
彼は驚いたままの僕に、近藤先生が板橋の刑場で斬首の刑に処せられたことを語ると、知らなかったのか?とでも言いたげにまた眉を顰めた。
「確か、首は京都の三条河原に晒された後、何者かに持ち去られ…最終的にはどっかの寺に祀られたって、うちの親父から聞いたことがある」
「……そうだったんだ」
「で、首から下は…」
「龍源寺にある……」
(龍源寺に眠っているということしか知らなかった。どうして知らなかったんだ……?)
病床に伏せるようになっていた私は、戦場へ出ようとしていた土方さん達と別れ、近藤先生と共に大阪へ赴き。
二条城からの帰り道に銃弾に倒れた近藤先生は、大阪城にて療養し、完治した後。鳥羽・伏見の戦いで敗戦した土方さん達と私を率いて東帰(帰京)した。
そして、近藤先生が隊長となった甲陽鎮撫隊で微力ながら参戦していた私は、やはり病には勝てず。中途で落伍せざるおえなくなり……
(斬首されたのはその後か……きっと皆、匿われながら療養する私を気遣って…)
「おい、本当に大丈夫か?」
「…………」
勇人の言葉でハッと我に返り、それと同時に軽い眩暈に襲われながら激しくなる動悸を鎮めようと胸を押さえ込んだ。
「ああ……ちょっと、休憩してもいいかな」
「おう、あっちにベンチがあるからあそこで休んでたほうがいいな…。俺は軽く観てくるけど、大丈夫か?」
「大丈夫。ごめん…」
そう言って、一人ベンチに腰掛け両肘を腿で支えるようにして溜息をつく。
(…どうして知らなかったんだ…こんな大事なことを……)
どこかでまだ信じたくない気持ちが強いからなのか、彼らの言葉を理解しようとしても上手く消化させることが出来ずにいた。
「誠の話なのでしょうか…」
遠ざかった胸像に視線を向けながら、近藤先生に問いかける。
(それがもしも、誠の話なら……私は…)
哀しさと、情けなさと、悔しさが一気に込み上げ、どうしようもないほどの焦燥感で一杯になっていった。
今更ながら、ここに来たことを後悔すると同時に、それでも乗り越えなければいけない記憶として受け止めたい気持ちもある。
(…私は、お荷物でしたからね……)
【総司……】
【何ですか?】
【近藤さんと共に大阪へ向かってくれないか…】
【……土方さんにそんな顔で言われたら断れませんね。引き受けましょう】
土方さんの真剣な眼差しを受け、頷いてはみたものの。本当は、武士として誠の旗の下で散りたいという気持ちでいた。
甲陽鎮撫隊隊長として動くことになった近藤先生からも、
【正直、お前はお荷物だ】
【……分かっています】
【壬生の狼とまで呼ばれたお前が、刀を握ることさえも出来なくなったんだからな】
そう、厳しく悟された。
けれど、どうしても武士として生き続けたいという最後の想いを告げると、近藤先生は私の参戦を許してくれたのだ。
しかし、更に衰弱していく体を起こすことさえままならなくなり。私は、それから間もなくして彼女に看取られながら、武士としての短い生涯を終えたのだった。
・
・
・
「具合はどうだ?」
俯き加減の視界の中に、勇人の足が映りこむ。
「もう、大丈夫…」
「さっきよりは顔色も良くなったようだな」
「心配かけてごめん…」
一周して戻って来た彼をぎこちない笑顔で迎え入れ、みんなと合流して壬生寺を後にした。
(…彼女に会いたい……)
僕は、最後の目的地へと向かう途中、バスの窓から京の町を眺めながら彼女の笑顔を思い出していた。
*ヒロインSIDE*
「……今から話すこと、笑わないで真剣に聞いてくれる?」
「勿論…」
「あと、絶対に信じるって約束して…」
「神様に誓って」
彼女は手の平をこちらに向けたまま、いつにない真剣な眼差しで呟いた。私はその瞳を見つめながら静かに口を開く。
「じつは、とても不思議なことがあってね…」
「不思議なこと?」
私は、裕香たちが別の場所で買い物をしていた時に、偶然入った古道具屋で古ぼけたカメラを見つけたところから話し始め。
その後、翔太くんと共に幕末時代へタイムスリップしてしまったことや、そこで生活することになった事などを話した。
しかし、彼女の表情がみるみるげんなりとしていくのが見てとれて、
「疑ってるでしょう?」
「……だって、まるで夢みたいな話で。ちょっとね…」
「やっぱりね。すぐに信じろってほうが難しいか…」
私は深く溜息をついた。
(どうしよう……このまま話をはぐらかしたほうがいいかな…)
そんなふうに思っていた時、目を細めたまま疑いの眼差しを向けていた彼女が真剣な顔で呟く。
「でもさ、もしもそれが本当の話ならさ…」
「いや、本当のことしか話していないから!」
「分かった、分かった。悪かった!信じるって言ったのにね」
彼女は苦笑気味に、今度こそは真面目に聞くからと、私に続きを話すように促した。
「えーと、どこまで話したんだっけ…」
「翔太と幕末時代にタイムスリップして、新選組に捕まって、あんたは花魁になって…翔太は坂本龍馬と行動を共にしてたって…」
まだ少し半信半疑な彼女に、私は熱意を込めて続きを話し出す。
翔太くんと離れ離れになってしまった私は、藍屋という置屋で新造という立場として働くことになり、現代でいうところの舞妓さんのように芸事や接客に勤しんでいたこと。
そんな毎日を送る中、沖田さんに恋をしてしまったことも告げた。
「ええっ!沖田総司って、あの新選組の?」
「……うん」
「マ、マジで……?」
それから、沖田さんが新選組として最期を生きぬくまで傍にいたこと。その後、翔太くんが見つけてくれたカメラのおかげでこの現代へ戻ってこられたことも告げる。
「じゃあ、なに?あんたたち、結果的には幕末時代からまた同じカメラを使って戻って来た…って事なの??」
「そういう事になる…かな」
「ますますドラマみたい…」
「誰でもそう思うよね。私だって、沖田さんと出会うまでは記憶が無かったんだから…」
そう言うと、彼女の顔色が変わった。
「え、ちょっと待って……沖田さんと出会うまでは記憶が無かったって、どういうこと?」
「翔太くんと現代へ戻って来た時、なぜかあの場所にいたの。その後すぐ、沖田さんの生まれ変わりである沖田さんと出会って…」
「ちょ、ちょい待ちぃ!ということは、現世でまた出会えたってこと?!」
目を見開いて驚愕する彼女に小さく頷く。
「今までの話、信じてくれた?」
「……う、うん。まだ頭ん中、整理出来てないけど…」
そして、同じように翔太くんも幕末時代での記憶を取り戻し始めたことを告げると、彼女は疲れ果てたかのように深い溜息をついた。
「だからあの時、翔太が「思い出した」って言っていたんだね…」
ようやく納得してくれた様子に少し安堵の息を漏らす。
「裕香に話せて良かった…」
「……私の方こそ、話してくれてありがと」
「また、相談にのってくれる?」
「勿論、あたしで良ければ…」
少し照れながら言う彼女に、微笑んでまた改めてお礼を言った。
「お待たせしました」
「うわぁ、美味しそう!」
彼女が感嘆の声を上げると、注文していた品がそれぞれ置かれていく。
「ごゆっくりどうぞ」
二人でイケメンウエイターに軽くお辞儀をして見送ると、お互いに携帯で写真を撮り、次いで、いただきますと言ってそれぞれ口にし始めた。
ふぅふぅと冷ましながら食べる彼女の顔が可愛くて。なぜか、病床の沖田さんを思い出し、複雑な想いが心を揺さぶり始める。
(沖田さんも、私が作ったお粥をこんなふうに食べてくれてたっけ…)
沖田さんに会いたい気持ちが少しずつ大きくなり、私は彼女との時間を楽しみながらも心の中は彼のことばかりで。
すぐにでも連絡して、声が聴きたい。
そんなふうに思っていた。
~あとがき~
お粗末さまでした
8月以来になっていました…沖田さんの花エンド後の続きやっぱ、現代版はオリジナル線が強くて、本編のイメージが崩れすぎていないか心配やぁ。
とうとう、厳しい現実を目の当たりにしてしもた沖田さんちなみに、これは「十六夜の月」かっ!というくらい切ない話になっちまいました
そして、主人公ちゃんは親友に幕末時代での秘密を話してしもたわけですが、これまた後の話につながる伏線みたいなものとしてはけっこう、大事どした
ようやく、おっきたさんも帰京してきて…。二人の恋物語が始まるっ!!すみません;主人公ちゃんを自分と置き換えて書いてしまうかも
こげな感じですが、また良かったら続きも覗きに来てやって下さいませ