東洋医学講座 No.80 東洋医学の治療法 その2 | 春月の『ちょこっと健康術』

春月の『ちょこっと健康術』

おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

おはようございます ニコニコ


先週予告のとおり、東洋医学講座の最終回です。今後は弁証 や臨床について、不定期になると思いますが、少しずつお届けしていきますね。


東洋医学の治療法 その1 では、漢方や鍼灸をはじめとする治療法の種類をご紹介しました。治療によって、滞りをなくすとか、気血を補うとか、熱を冷ますとか、温めるとかするわけですが、最終目的は「気のめぐりを正して、陰陽バランスをととのえる」こと。


そのために、鍼灸師は鍼(はり)と灸きゅう)を、使い分けたり、組み合わせたりします。鍼については、鍼灸施術の「あいうえお」 で、灸については筋緊張の痛み解除にお灸 で、一度ご紹介していますが、あらためてご紹介しますね。


鍼には、刺す鍼と刺さない鍼があります。イメージ的には、鍼は刺すものかもしれません。でも、ツボは皮膚面にありますから、刺さなくても、指圧やマッサージと同様に、効果を及ぼすことができます。だったら刺す鍼は必要ないんじゃないか…と思われるかもしれませんね。でも、刺すほうには刺す良さがあるんです。


お灸は、基本的に艾(もぐさ)に火をつけて、艾の薬効成分を浸透させたり、輻射熱によって温めたりします。ところが、最近、火をつけないお灸が登場しています。ひとつは、瞬間的な電熱を使うもの。もうひとつは、使い捨てカイロを応用したものです。


1 刺す鍼


毫鍼(ごうしん)といいます。昔は、銀製のものを煮沸消毒やオートクレーブで滅菌して、繰り返し使っていましたが、今は滅菌されて梱包された使い捨てのステンレス鍼が主流になりました。


春月の『ちょこっと健康術』-刺鍼


鍼の長さは3~6cm、太さは0.12~0.25mm。最近では、美容鍼が盛んになってきた結果、長さ1.5cm、太さ0.10mmという小さなものが出てきました。


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画像がちょっとボケてますが、右端の4本がここ2~3年で登場した美顔鍼、左端の5本が前からあったもの。真ん中の2本、左側は↓のように、頭に艾をつける灸頭鍼にも使えるもので、右側は使い捨ての銀鍼です。鍼だけでも血行がよくなって温まりますが、灸頭鍼は、輻射熱で皮膚が温められて、すご~く心地いいんですよ。


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2~3日の間、刺したままにしておく鍼もあります。大きさの比較のために、長さ1.5cm・太さ0.1mmの毫鍼を置きました。そのすぐ下にあるのが、皮内鍼です。表皮にごく浅く斜めに入れて、テープでとめます。その下にあるのがパイオネック○。写真では見えませんが、中央部にプラスチック粒でとめられた、長さ0.3~0.15mmの極小の鍼が入っています。


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2 刺さない鍼


接触鍼と総称します。↓の左は調気鍼、右はてい鍼で、いずれも皮膚を押したりこすったりします。真ん中はローラー鍼で、皮膚上を転がします。


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↓は、三角鍼・ばち鍼と呼ばれるもので、やはり皮膚を押したりこすったりします。


春月の『ちょこっと健康術』  春月の『ちょこっと健康術』


↓は、大師流小児鍼で、人差し指に添わせて、先端だけが皮膚に触れるような形で使います。

春月の『ちょこっと健康術』


3 お灸


↓のように、艾(もぐさ)を小さくひねったり、大きめにひねったりして使うのが、一般的な治療院での使い方です。


春月の『ちょこっと健康術』-施灸  春月の『ちょこっと健康術』-施灸2


でも、↓のように便利なものもあるので、それを使うこともあります。一番下は散艾(ちりもぐさ)で、これを↑のように使います。中段の左は台座灸、右は円筒灸、真ん中は筒炭灸(艾が炭になっていて、煙が少ない)。上段にあるのが、せんね○灸で出している、使い捨てカイロ型のお灸。底面の皮膚にあたる部分に、うす~く艾が敷き詰められていて、直接皮膚にはりつけます。これ、4~5時間は温かくて、なかなかすぐれものです。


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鍼灸治療に関するあるアンケート調査では、治療の結果、74%の人が痛みやしびれ、こりなどの自覚症状が改善されたとの報告があります。痛みの軽減をあげた人がもっとも多く、これが統合医療の中で、鍼灸にもっとも期待されている部分でもあります。


がん治療の分野では、放射線や薬による副作用として出る痛み、便秘、倦怠感、むくみ、冷え、吐き気などの不快症状の緩和に、鍼灸治療が使われるようになってきました。


人工透析治療では、痛みやかゆみの軽減、腎機能の改善などに、鍼灸の治療効果が期待されています。脳卒中後遺症の治療では、醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)という鍼治療が、麻痺の改善に多くの結果を出しています。


近年、医学部において、東洋医学の基礎教育が取り入れられるようにもなりました。今後、西洋医学と東洋医学との連携は、治療だけにかかわらず、予防医学の分野で大きな効果を生むに違いありません。


日常生活の中に、東洋医学の考え方を取り入れて、症状の緩和や病気の予防に役立てていただければ、このシリーズを書いた甲斐があります。一天一笑、今日もいい1日にしましょう。


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