クリップモーター〜レジェンド実験 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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クリップモーター1
 

 「いきいき物理わくわく実験1」で紹介し、瞬く間に全国に広まったクリップモーター。モーターの原理がむきだしで見えるシンプルな装置ので、小学校や中学校でもできる実験。今ではいろんな教科書にも紹介されるようになりました。(イラスト担当の人は自分で作ったことがないのか、どの本でも「いきわく1」にぼくが描いた上のイラストをまねて同じ構図で描かれています。自分で実験装置を組んで、実物を見て描いてほしいですね)

 その起源は「いきわく1」に書かれていますが、本当の開発者の名はわからないまま。すぐれた教材には、このクリップモーターのように、起源のわからないものがかなりあります。

 コイルを図のように、消しゴムに刺したクリップの支持台に乗せ、それを電池につなぐだけ。コイルの真下にはフェライト磁石を置きます。N極を上にしても、S極を上にしてもかまいません。

 使用するエナメル線(エナメル線というのは古い名称なんですが、慣例的にこの呼称をよく使いますね)は0.5mmほどのものでオッケー。図にあるように、軸の片方は皮膜を紙やすりでこすって全部むき、もう片方は半分だけむきます。

 ただし、むきかたに注意。
 

 

クリップモーター2  クリップモーター3
 


 片方だけといっても、向く方向を間違えると回りません。上図の【正】の図のように皮膜をはがしてください。

 磁石の磁場の磁力線はN極から出てS極に入るので、N極を上にして置いたフェライト磁石(*1)の上方の磁場の様子は、下図のようになります。

 

 

クリップモーター5
 

 コイルを流れる電流はフレミングの左手の法則(中指が電流、人差し指が磁力線、親指が力)の向きに電磁気力を受けますから、コイルの上部と下部では、上図のように、受ける力の向きが逆になります。

 この二つの力は、コイルを軸を中心にして図の時計方向(右回り)に回す向きに働く偶力になり、コイルは時計方向に回り始めます。

 

クリップモーター6

 

 コイルが回転して上図の位置まで来ても、まだ時計回りの偶力は残っていて、コイルは回転を続けます。

 

クリップモーター7
 

 もう少し回転すると、被膜部分がクリップの上に乗るため、電流が途切れます。が、慣性のために力を受けなくてもコイルは回り続けます。

 もし、軸の両側とも被膜がはがされていると、下図のように電流が流れて、コイルの上部と下部に逆回りの偶力が働くようになります。
 

クリップモーター8
 

 この偶力のモーメントにより、コイルの回転は減速し、止まってしまいます。回転を持続させるには、このクリップモーターのように電流を止めて慣性で回し続けるか、ホンモノのモーターのように、整流子と呼ばれる仕組みを使って、半回転ごとにコイルに流れる電流を逆向きに変える必要があります。

 

 クリップモーター4
 
 さて、上図の位置まで来ると、再び電流が流れ始めます。この図の位置では、偶力のモーメントはまだ0なので、物体を回転させることはできませんが、慣性でまわるためにコイル面はさらに傾きます。そうすると、時計回りに働く偶力のモーメントがだんだん大きくなり、コイルの回転は加速されます。

 あとは、最初の図にもどります。電流が流れている間は時計回りに加速され、電流が途切れると慣性で回り続ける。これがクリップモーターの基本的な仕組みです。

 小さいものですが、うまく作るとかなりの高速で回転します。

 今では有名なレジェンド実験ですが、案外やったことのない人も多いようです。ぜひ試してみてください。

(*1)文具で売られているメモ留め用の磁石は、一つの面にN極S極が縞模様のように並んでいるタイプのものが多いので、この実験には向きません。片面がN、もう片面がSというシンプルな磁石は、理科教材屋さんで手に入れるのが簡単ですが、アマゾンなどでも手に入ります。
(追記)100円ショップで10個100円で売られているものは、この片面N、片面Sのシンプル磁石ですので、お試し下さい。なお、強力磁石として売られているネオジム磁石も同じタイプの磁石です。こちらは大きさによりますが、4個100円とか2個100円で手に入ります。
 
 

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