金田伊功「ふしぎ遊戯」 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

金田伊功「ふしぎ遊戯」

図1

金田伊功 ふしぎ遊戯

図2

金田伊功 ふしぎ遊戯

図3

金田伊功 ふしぎ遊戯

図4

金田伊功 ふしぎ遊戯

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金田伊功 ふしぎ遊戯

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金田伊功 ふしぎ遊戯

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金田伊功 ふしぎ遊戯

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金田伊功 ふしぎ遊戯

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金田伊功 ふしぎ遊戯

図10

金田伊功 ふしぎ遊戯

(C)渡瀬悠宇/小学館・ぴえろ 1995


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リズム感が卓越したアニメーション。

 今日は渡瀬悠宇原作、スタジオぴえろ制作の最近(でもないか)のアニメ、 「ふしぎ遊戯」のオープニングを。このオープニングは他のアニメーターとの共作であるが、一部金田伊功氏が担当している。金田氏の作画部分は、あたかも平和なお茶の間のブラウン管でいきなり放送禁止用語を一瞬連発するような、衝撃、違和感、スリルに満ちている。この曲は同主調転調(→参照 )を活用しており、その転調部と金田氏の作画術、及びオープニングの「静と動の対比」が見事にマッチしている。では、コード進行を追いながら、研究していこう。キーはFマイナーとFメジャー間(の同主調転調曲)。


「いとおしい人のために」

作詞:青木久美子 作曲:清岡千穂 編曲:矢野立美

歌: 佐藤朱実


【A】

イントロの閃光(図1)で音楽スタート。

*** *** ***
|Fm |Fm-Eb |Db |Bb7 |Bb7|

たまにエレクトリックギターが入るが、ピアノがメインの演奏。Ⅰm-♭Ⅶ-♭Ⅵ進行はマイナー版循環コード(→参照 )。そこからⅣ7へ。本当ならAbのスケールだからBbmになるはずだが、メジャーにしている(Bb)のが印象的。アニメーションはここではしっとり。金田氏の作画にはあらず。荒木伸吾先生の弟子らしい、本橋秀之氏のシャープな線によるキャラクターデザインが美しい。


【B】

*** *** ***
|Fm |Bbm |F |F|
*** *** ***
|Fm |Bbm |F |F|

Ⅰm-Ⅳm-Ⅰの繰り返し。メロディのスケール(音階)がAというFマイナースケールに対するM3rdを含む。Abメジャースケールに対してAは♭2(=♭9th)。これは、ジプシー・スケールといって、中東や、ユダヤ人クレツマー音楽などに見られる特徴的な音。ジプシー・スケールは

 ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド

じゃなくて、

 ド、♭レ、ミ、ファ、ソ、♭ラ、シ、ド

2nd が半音下がっているのが特徴。世界には違うスケールがある(→参照 )。ここでは作品の舞台が中国であるため、その演出として使用されている。Aが入るため、コード進行はFm→Fと小さな同主調転調を繰り返す。ここもアニメーションは金田氏にあらず、まだ悠然としてる。


【C】

*** *** *** ***
|F |F |Gb |Eb-Gb|
*** *** *** もうひとつ 私。***
|F |F |Gb |Cdim |F |C7|

1~7小節目はフラメンコ進行(→参照 )の延長。Gb→Cdimは減5度上昇進行(→参照 )。その後、Ⅰ-Ⅴ7となり、メロディは9小節目からはっきりとFメジャースケールへ転調、ドラムス、ベースも加わり、いよいよ金田氏の登場だ!


【D】

*** *** *** ***
|F-Bb |C7-F |Dm7-Bb |C7|
*** *** *** ***
|F-Bb |C7-F |Dm7-Bb |C7|
*** 愛は、救 い*** ***
|F-Bb |C7-F |Dm7-Bb |C7|

いきなりカッ開いた眼のアップ(図2)から、吠え(図3)、ジャンプ(図4)、金田氏特有のキメ(図5)。そして炎と化して(図6,7)消える。美朱のための焼身決起の愛を描いているのか? 次々と登場人物が現れては、閃光となり、炎となる。映画「幻魔大戦」のラストの戦いのシーンの延長だ。とにかくスゴイ。スゴイ。ここだけでイイ。リズム感抜群。コード進行はⅠ-Ⅳ-Ⅴ7-Ⅰの音楽の定番進行(→参照 )。加えて、Ⅱm7-Ⅳ-Ⅴ7。


【E】=【A】

***  *** *** *** ***
|Fm |Fm-Eb |Db |Bb |Fm|

【A】パート同様のコード進行でしっとりと終わる。誰の絵コンテ作品なのか断言できないが、(元)スタジオZ5、早稲田大学に合格したが、代々木アニメーション学院に入学、ゴッドマーズなどでもメカデザインしていた、この作品の演出家、亀垣一氏の仕事ではないかと思う。頭のよさを感ずる演出なのだ。


 お聞き苦しいだろうが、ひとつ、体験談を。

 僕は10歳代半ばまで、滅茶苦茶アニメファンだった。スタジオNo. 1と金田さんと、スタジオZ5 のミーハーだった。アニメーターになりたく彼らの作品を真似て、受験勉強そっちのけで絵を描いていたが、ありがちなもので、思春期の15歳ごろから、ギターとベースに持ち替えてしまい、ロック・ヲタになった。それから暫くアニメを見なくなった。受験勉強の所為でもあろう。絵を描くためには右手をふさがねばならず、また15時間でも描いていられる。弦楽器の練習には限度がある(指の皮が剥ける)し、勉強中、ウォークマンを聴くことなら出来る、右手は塞がれないから勉強が出来る。

 それから大学へ進み、ろくに卒業もせず僕はミュージシャンになった。その後、音楽だけで生活していくには、収入が不安定、かつ、長男が誕生した。

 僕は道に迷っていた。放映当時(1995年ごろ)、僕の長男はまだ2~3歳で、一緒にテレビ・アニメをまた見るようになった。女房がメインの生計を立てていた。ふしぎ遊戯のオープニングを見たとき、「金田氏の絵だ!」とすぐわかった。何か大切なものを思い出したような、古き熱き血が呼び覚まされるような感動を覚え、涙が流れた。金田氏の閃光は、(当時)30歳前になり、悩んでいた挫折だらけの僕にも降りそそいでくれた。自分の少年時代を思い出し、我が子の少年時代を想像した。

 その後、僕はサラリーマンになった。いまだにこの絵を見ると、血が騒ぐ。そして、幸せな気持ちになる。金田氏は人間の生き様を光と炎に出来る哲学者なのかも知れん。この炎のように、光のように、潔く生きたいものだ。


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【このコンテンツは批評目的により、「ふしぎ遊戯」音楽の引用,

天才アニメーター金田伊功氏の作画が含まれています。音楽の著作権は著作権者に帰するものです。また、個人的耳コピのため音楽的には間違った解釈である可能性もありますが、故意に著作権者の音楽の価値を低めようとするものではありません。著作権者主体者の権利、音楽の美学を侵害した場合このページに限り、いかなる修正・削除要請にも応じますので、ご教授ください】