水野亜美+スタジオZ5「美少女戦士セーラームーンR」
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リズム感の卓越したアニメーション これは、本 blog の重要な研究テーマのひとつである。しかし、ここでいう「リズム感」とは、陽気なときのノリノリ気分(死語?)だけを指しているわけではない。「いつでも踊るぜ、イエイ! ダンスだ、グルーヴだ、開脚だ」(死語?)みたいな音楽、こっちが機嫌いいときはよいが、ブルーなときは押し付けがましくて嫌だ。アニメーションも同じ。それはリズムじゃない。音楽、アニメーションその他全ての文化、葛藤する繊細な心理の揺らぎのリズム、というものも表現できてナンボである。落ち込んだとき、悩んだときの心境にも、波長の合うリズムが必要。 さて、今日は金田伊功氏のお弟子さんたちにスポットライトを当てよう。スタジオZ5 だ。 スタジオZ5 は、金田氏が在籍したスタジオZで、金田氏の原画(ザンボット3やダイターン3)の動画で修行した亀垣一氏、平山智氏の二人が、荒木伸吾氏の下で修行した本橋秀之氏を誘って1980年代初頭結成されたアニメーター・ユニット(ここらへん25年前の記憶だけで書いているので、誤認識あらば即時修正をお願いします)。1980年代には、「宇宙戦士バルディオス」、「戦国魔神ゴーショーグン」、「六神合体ゴッドマーズ」、「キャッツアイ」などに関わり、最も重要なアニメ制作集団となった。 そのスタジオZ5、1990年代に「美少女戦士セーラームーン R」の仕事をしている。そのなかから第80話「恐怖の幻影! ひとりぼっちの亜美」(1994年1月8日放映)が今回の題材だ。作画スタッフは、 作画監督:本橋秀之 原画:スタジオZ5 長屋侑利子 渡部圭祐 大倉雅彦 亀本秀一 と記されている。最後の亀本秀一氏は 亀垣一+本橋秀之→亀本秀一 という藤子不二雄風ペンネームのようだ。長屋侑利子さんと、渡部圭祐氏は(割と)若手アニメーターのようで、最近の本橋氏作画監督作品「ふしぎ遊戯」、「疾風アイアンリーガー」、「怪傑 蒸気探偵団」、「OVA ときめきメモリアル」、「B'TX NEO」、「カウボーイ ビバップ」、「ヒカルの碁」、「妖しのセレス」、「蒼穹のファフナー」、「魔法先生ネギま!」などで、本橋氏をサポートしている。長屋さんは「天使のたまご」にも参加している。例えて失礼ですが、前回書いた松原京子さん 級の実力派。
幻覚のなか、仲間のセーラー戦士が亜美のことをメタメタに言う。亜美の心理は大いに揺れる。この葛藤をスタジオZ5は見事に表現している。 金田氏譲りの「斜め構図」(図10)の多様。ちゃんと地に立っていないような構図が、不安定な心理を象徴。また、金田氏譲り「大きな人影=シルエット」が悩む心境を描く。 亜美はギワークから「セーラー戦士を撃て」と命じられて、 必殺技シャイン・アクア・イリュージョン(当時)を放つ構えをセーラー戦士に対して取る。そこからが見せ場。 葛藤最大値状態(図1)からタメて、敵ギワークに振り返える(図2,3 )。心の揺らぎ→迷い→決意を見事に動きに作画。そしてシャイン・アクア・イリュージョン(図4。これはバンク=使いまわし)。放った水流の描写も見事(図5~図8)で、これは二点投射法、っていうのかな? 発射時点(図5)で、亜美(右)側を向いていた視点+パースが、正面を水流が通過(図7)後、ギワーク(左)側に向き直る(図8)という、魚眼カメラワークのような作画術。これも金田氏が発明したものだが、継承し適材適所の作画を行う、スタジオZ5もスゴイ。これが緊迫感を増し、戦いの終わりにカタルシスを生む。多分この部分の原画は亀垣氏のような気がする。 つまり、金田氏や、スタジオNo.1、スタジオZ5系のアニメーターは爆発だけを描くのが巧いわけじゃない。こういった微細な心象風景、葛藤、カタルシスも巧みに描く。それが、リズム感を生むのだ。僕らの心を震えさせるのだ。 作詞:芹沢類 作曲:永井誠 編曲:京田誠一 うた:石田よう子 【I】
イントロ、コード進行は Ⅳ-Ⅲm7-Ⅱ7-Ⅴ7 ♭Ⅶ-Ⅰ-Ⅳ7-♭Ⅶ Ⅴ7 この曲全体で目立つ進行が、冒頭で登場する 「Ⅳ-Ⅲm7-Ⅱ7-Ⅴ7」。 仮にこの進行を「乙女ポリシー進行」と命名する。バリエーションとして、Ⅲm7とⅡ7の間にⅥm7が挿入可能。この「短2度下降の後、完全4度上昇を繰り返す」タイプ、NEWS「TEPPEN」 、Sowel 「love for two」 などなど、このblogで特集した曲でも多数あるので、探してみて欲しい。2段目は、サブドミナント・マイナーに置き換えたもの。
Ⅰ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅴ7 Ⅳ-Ⅲm7-Ⅵ7-Ⅱm7-Ⅴ7 2段目は乙女ポリシー進行。
最後解決しているところが違う。#Ⅰdimの挿入は、【B】冒頭Ⅱm7への経過音。
Ⅱm7-Ⅴ7-Ⅳ-Ⅲ7-Ⅵm7 Ⅱm7-Ⅱ7-Ⅴ7-Ⅳ-Ⅲm7-Ⅱm7-Ⅴ7
初めのⅡ-Ⅴのツーファイブの後は、乙女ポリシー進行を2回繰り返しているだけなことが解るだろう。Ⅱm7をⅡ7とするのはドッペルドミナント。
Ⅰ-Ⅵm7-Ⅱm7-Ⅴ7 Ⅲm7-♭Ⅲdim-Ⅱm7-Ⅴ7 Ⅰ-Ⅲm7-Ⅴ7-Ⅳ Ⅲm7-♭Ⅲdim-Ⅱm7-Ⅴ7 サビ。1段目はご存知のとおり、循環コード(参照 )。その後は循環コードの構造をちょっとずつコードアレンジしたもの。2段目は、トニックⅠをトニックⅢm7で代理、Ⅵm7を♭Ⅲdimで代理(参照 )したもの。4段目も同じ。3段目はちょっと例外で、トニック→ドミナント→サブドミナントという進行を入れている。
繰り返し。7~8小節、Ⅰ→Ⅴ7となった後、♭Ⅶ、サブドミナントマイナーを2小節挿入して解決を引き延ばし、終止する。いやあ、名曲です。 清楚な声の石田よう子さんは石田燿子に改名後「藍より青し」、「ああっ女神さまっ」などアニメソングを歌うほか、童謡歌手としても活躍している。
日本アニメーション作家の系譜を音楽史に例えるならば、大塚康生氏がロバート・ジョンソンで元祖、金田伊功氏はローリング・ストーンズ、(友永和秀氏がビートルス?)、そして本橋秀之氏+亀垣一氏+平山智氏はグラム・ロックなんじゃないかな、と思う。山下将仁氏はパンクかな? このあたりのアニメーター史は深くて熱い。 スタジオZ5の3人はそれぞれに活躍を続けている。本橋氏の錚々たる活動内容については先述した。本橋氏は、アニメージュのアニメーター座談会などで、「彼だけが女の子にモテる6角形の眼をした美形を描ける」とよくうらやましがられていた。確かに荒木伸吾氏のもとで勉強したそのシャープで端正な線は、今でも輝きを失っていない。綺麗な絵が描けて、キャラは可愛くてカッコよくて、かつ、アクションも描ける。アニメーション界から格別の信頼を受ける職人に成長した。 大変頭のいい知的な亀垣一氏は演出家の道に進んだ。「ソニックX」、「Project Arms」、「怪傑ゾロリ」などの監督として活躍中。平山智氏は「ポポロクロイス」、「ガラスの仮面」などで、現在も活躍されている。 ■関連記事:サイボーグ009 ふしぎ遊戯 ふたりはプリキュア 魔法先生ねぎマ! NEWS「TEPPEN」 ■関連リンク:セーラームーンDB ■関連商品 ☆音楽解析の続編は『コチラ』 にて! |