水野亜美+スタジオZ5「美少女戦士セーラームーンR」 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

水野亜美+スタジオZ5「美少女戦士セーラームーンR」

図1

セーラーマーキュリー 水野亜美

図2

セーラーマーキュリー 水野亜美

図3

セーラーマーキュリー 水野亜美

図4

セーラーマーキュリー 水野亜美

図5

セーラーマーキュリー 水野亜美

図6

セーラーマーキュリー 水野亜美

図7

セーラーマーキュリー 水野亜美

図8

セーラーマーキュリー 水野亜美

図9

セーラーマーキュリー 水野亜美

図10

セーラーマーキュリー 水野亜美


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リズム感の卓越したアニメーション


 これは、本 blog の重要な研究テーマのひとつである。しかし、ここでいう「リズム感」とは、陽気なときのノリノリ気分(死語?)だけを指しているわけではない。「いつでも踊るぜ、イエイ! ダンスだ、グルーヴだ、開脚だ」(死語?)みたいな音楽、こっちが機嫌いいときはよいが、ブルーなときは押し付けがましくて嫌だ。アニメーションも同じ。それはリズムじゃない。音楽、アニメーションその他全ての文化、葛藤する繊細な心理の揺らぎのリズム、というものも表現できてナンボである。落ち込んだとき、悩んだときの心境にも、波長の合うリズムが必要。


 さて、今日は金田伊功氏のお弟子さんたちにスポットライトを当てよう。スタジオZ5 だ。


 スタジオZ5 は、金田氏が在籍したスタジオZで、金田氏の原画(ザンボット3やダイターン3)の動画で修行した亀垣一氏、平山智氏の二人が、荒木伸吾氏の下で修行した本橋秀之氏を誘って1980年代初頭結成されたアニメーター・ユニット(ここらへん25年前の記憶だけで書いているので、誤認識あらば即時修正をお願いします)。1980年代には、「宇宙戦士バルディオス」、「戦国魔神ゴーショーグン」、「六神合体ゴッドマーズ」、「キャッツアイ」などに関わり、最も重要なアニメ制作集団となった。


 そのスタジオZ5、1990年代に「美少女戦士セーラームーン R」の仕事をしている。そのなかから第80話「恐怖の幻影! ひとりぼっちの亜美」(1994年1月8日放映)が今回の題材だ。作画スタッフは、


 作画監督:本橋秀之

 原画:スタジオZ5

    長屋侑利子

    渡部圭祐

    大倉雅彦

    亀本秀一


と記されている。最後の亀本秀一氏は

 之→亀本秀一

という藤子不二雄風ペンネームのようだ。長屋侑利子さんと、渡部圭祐氏は(割と)若手アニメーターのようで、最近の本橋氏作画監督作品「ふしぎ遊戯」、「疾風アイアンリーガー」、「怪傑 蒸気探偵団」、「OVA ときめきメモリアル」、「B'TX NEO」、「カウボーイ ビバップ」、「ヒカルの碁」、「妖しのセレス」、「蒼穹のファフナー」、「魔法先生ネギま!」などで、本橋氏をサポートしている。長屋さんは「天使のたまご」にも参加している。例えて失礼ですが、前回書いた松原京子さん 級の実力派。


 ストーリー。いつもどおりテストで学年一番をとる水野亜美(声:久川綾)。「たまたま学んだところが出ただけなのよ」と謙虚だが、クラスメート海野ぐり男らから、「水野がカンニングした」というデマを流される。月野うさぎ(声:三石琴乃)ら、セーラー戦士が調査すると、デマを流している連中は皆、「英才塾」に通う面子であった。その背後には、人間に幻聴・幻覚を与え、疑心暗鬼の心理を操るドロイド、ギワークが絡んでいた。水野亜美もギワークの心理攻撃を受け、心中大いに揺れる精神的な闘いが始まる。


 幻覚のなか、仲間のセーラー戦士が亜美のことをメタメタに言う。亜美の心理は大いに揺れる。この葛藤をスタジオZ5は見事に表現している。


 金田氏譲りの「斜め構図」(図10)の多様。ちゃんと地に立っていないような構図が、不安定な心理を象徴。また、金田氏譲り「大きな人影=シルエット」が悩む心境を描く。


 亜美はギワークから「セーラー戦士を撃て」と命じられて、

必殺技シャイン・アクア・イリュージョン(当時)を放つ構えをセーラー戦士に対して取る。そこからが見せ場。

 葛藤最大値状態(図1)からタメて、敵ギワークに振り返える(図2,3 )。心の揺らぎ→迷い→決意を見事に動きに作画。そしてシャイン・アクア・イリュージョン(図4。これはバンク=使いまわし)。放った水流の描写も見事(図5~図8)で、これは二点投射法、っていうのかな? 発射時点(図5)で、亜美(右)側を向いていた視点+パースが、正面を水流が通過(図7)後、ギワーク(左)側に向き直る(図8)という、魚眼カメラワークのような作画術。これも金田氏が発明したものだが、継承し適材適所の作画を行う、スタジオZ5もスゴイ。これが緊迫感を増し、戦いの終わりにカタルシスを生む。多分この部分の原画は亀垣氏のような気がする。


 つまり、金田氏や、スタジオNo.1、スタジオZ5系のアニメーターは爆発だけを描くのが巧いわけじゃない。こういった微細な心象風景、葛藤、カタルシスも巧みに描く。それが、リズム感を生むのだ。僕らの心を震えさせるのだ。

 ドラマを見終えた後は、セーラームーンRのエンディング曲「乙女のポリシー」心洗われる曲、セーラームーンのなかで最も名曲だと思ってます。キーはEb、4/4拍子の8ビート。


 作詞:芹沢類

 作曲:永井誠

 編曲:京田誠一

 うた:石田よう子


【I】
|4/4 Ab-Gm7 |F7-Bb7 |Db-Eb |Ab7-Db|
|Bb7 |Bb7|

 イントロ、コード進行は 

 Ⅳ-Ⅲm7-Ⅱ7-Ⅴ7

 ♭Ⅶ-Ⅰ-Ⅳ7-♭Ⅶ

 Ⅴ7


この曲全体で目立つ進行が、冒頭で登場する

 「Ⅳ-Ⅲm7-Ⅱ7-Ⅴ7」。

仮にこの進行を「乙女ポリシー進行」と命名する。バリエーションとして、Ⅲm7とⅡ7の間にⅥm7が挿入可能。この「短2度下降の後、完全4度上昇を繰り返す」タイプ、NEWS「TEPPEN」Sowel 「love for two」 などなど、このblogで特集した曲でも多数あるので、探してみて欲しい。2段目は、サブドミナント・マイナーに置き換えたもの。


【A-1】

*** *** *** ***。
|Eb |Ab |Eb |Bb7|
*** *** *** ***。
|Ab |Gm7-C7 |Fm7 |Bb7|

 Ⅰ-Ⅳ-Ⅰ-Ⅴ7

 Ⅳ-Ⅲm7-Ⅵ7-Ⅱm7-Ⅴ7

2段目は乙女ポリシー進行。


【A-2】

*** *** *** ***
|Eb |Ab |Eb |Bb7|
*** *** *** ***
|Ab |Gm7-C7 |Fm7-Bb7 |Eb-Edim|

 最後解決しているところが違う。#Ⅰdimの挿入は、【B】冒頭Ⅱm7への経過音。

【B】

*** *** *** ***
|Fm7 |Bb7-Ab |G7 |Cm7|
*** *** ***。  ***
|Fm7 |F7 |Bb7-Ab |Gm7-Fm7-Bb7|

 Ⅱm7-Ⅴ7-Ⅳ-Ⅲ7-Ⅵm7

 Ⅱm7-Ⅱ7-Ⅴ7-Ⅳ-Ⅲm7-Ⅱm7-Ⅴ7

初めのⅡ-Ⅴのツーファイブの後は、乙女ポリシー進行を2回繰り返しているだけなことが解るだろう。Ⅱm7をⅡ7とするのはドッペルドミナント。


【C-1】

*** *** *** ***
|Eb-Cm7 |Fm7-Bb7 |Gm7-F#dim |Fm7-Bb7|
*** *** *** ***)
|Eb-Gm7 |Bb7-Ab |Gm7-F#dim |Fm7-Bb7|

 Ⅰ-Ⅵm7-Ⅱm7-Ⅴ7

 Ⅲm7-♭Ⅲdim-Ⅱm7-Ⅴ7

 Ⅰ-Ⅲm7-Ⅴ7-Ⅳ

 Ⅲm7-♭Ⅲdim-Ⅱm7-Ⅴ7

サビ。1段目はご存知のとおり、循環コード(参照 )。その後は循環コードの構造をちょっとずつコードアレンジしたもの。2段目は、トニックⅠをトニックⅢm7で代理、Ⅵm7を♭Ⅲdimで代理(参照 )したもの。4段目も同じ。3段目はちょっと例外で、トニック→ドミナント→サブドミナントという進行を入れている。



【C-2】

*** *** *** ***
|Eb-Cm7 |Fm7-Bb7 |Gm7-F#dim |Fm7-Bb7|
*** ***。 *** ***
|Eb-Gm7 |Bb7-Ab |Eb |Bb7|
***    
|Db7 |Db7 |Eb|

繰り返し。7~8小節、Ⅰ→Ⅴ7となった後、♭Ⅶ、サブドミナントマイナーを2小節挿入して解決を引き延ばし、終止する。いやあ、名曲です。


 清楚な声の石田よう子さんは石田燿子に改名後「藍より青し」、「ああっ女神さまっ」などアニメソングを歌うほか、童謡歌手としても活躍している。


 日本アニメーション作家の系譜を音楽史に例えるならば、大塚康生氏がロバート・ジョンソンで元祖、金田伊功氏はローリング・ストーンズ、(友永和秀氏がビートルス?)、そして本橋秀之氏+亀垣一氏+平山智氏はグラム・ロックなんじゃないかな、と思う。山下将仁氏はパンクかな? このあたりのアニメーター史は深くて熱い。


 スタジオZ5の3人はそれぞれに活躍を続けている。本橋氏の錚々たる活動内容については先述した。本橋氏は、アニメージュのアニメーター座談会などで、「彼だけが女の子にモテる6角形の眼をした美形を描ける」とよくうらやましがられていた。確かに荒木伸吾氏のもとで勉強したそのシャープで端正な線は、今でも輝きを失っていない。綺麗な絵が描けて、キャラは可愛くてカッコよくて、かつ、アクションも描ける。アニメーション界から格別の信頼を受ける職人に成長した。


 大変頭のいい知的な亀垣一氏は演出家の道に進んだ。「ソニックX」、「Project Arms」、「怪傑ゾロリ」などの監督として活躍中。平山智氏は「ポポロクロイス」、「ガラスの仮面」などで、現在も活躍されている。


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