金田伊功+キース・エマーソン「幻魔大戦」
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リズム感が卓越したアニメーション。
今日は先日「ふしぎ遊戯」オープニング解析 で引用した、幻魔大戦 最終バトルシーンを題材としよう。映画版「幻魔大戦 」は、平井和正氏原作、石ノ森章太郎氏萬画(笑)化、りんたろう監督で1983年3月12日、角川映画で公開された作品(当日観に行った)。この作品、スタッフの陣容が物凄い。 キャラクター・デザインを大友克洋氏が担当、作画監督を当時スタジオ No.1 の主宰であった野田卓雄氏(「ゲッターロボ」作画監督、「燃えろアーサー」でキャラクターデザイン)が担当、かつ元スタジオZ主宰の富沢和雄(「ガンダム」作画監督)氏が副作画監督であったため、、スタジオ No.1のメンバーであった金田伊功氏、鍋島修氏、松原京子氏、長崎重信氏、クレジットはないが山下将仁氏らほぼ全員が参加している。当時スタジオNo.1 の面子が総出で共演することは皆無であったため、公開を心待ちに待っていたのを覚えている。 金田氏担当の最終バトルシーン。BGMにキース・エマーソン(Keith Emerson)のシンセサイザー・ソロ曲が流れる。キーはFメジャー、2/4 拍子のジーグ曲(※)だ。コレを簡易ギター・ソロ曲にアレンジしてみよう。 ※ジーグ: バッハのバロック時代の舞曲の1ジャンルを指す。ジーグはイギリス・ケルト風舞曲で、軽快なテンポでリズミカルな楽曲。他に、南米起源で荘重な3拍子「サラバンド」、ドイツ生まれで4/4拍子遅めの「アルマンド」などがある。 【A】 C Dm C7 F Gm7 + + + + + + + + e:---------|---------|---------|---------| B:---------|---------|---1-----|---------| G:-----0---|-2-----02|-3---2---|-0---0---| D:---------|---0-----|-------3-|-030-----| A:-3-------|---------|-1---0---|---------| E:---------|---------|---------|-----3---| C Dm C7 F Gm7 + + + + + + + + e:---------|---------|---------|---------| B:---------|---------|---1-----|---------| G:-----0---|-2-----02|-3---2---|-0---0---| D:---------|---0-----|-------3-|-030-----| A:-3-------|---------|-1---0---|---------| E:---------|---------|---------|-----3---| 【B】 + + + + e:---------|--------1| B:---1-3---|-1-------| G:-3-----02|--30-----| D:---------|-----3---| A:---------|---------| E:---------|-----1---| 【C】 F Bb F C7 + + + + + + + + e:-------1-|--01-----|---------|---------| B:---------|-3---1-1-|---1-----|---------| G:-2--0----|---------|-23--0---|-0-------| D:-----3---|---------|-------3-|---------| A:---------|-1---1---|---------|-3---3---| E:-1---1---|---------|-1---1---|---------| F Bb F C7 F + + + + + + + + e:-------1-|--01-----|---------|---------| B:---------|-3---1-1-|-------1-|---------| G:-2--0----|---------|-2---0---|---------| D:-----3---|---------|---3-----|-3-------| A:---------|-1---1---|-----3---|---------| E:-1---1---|---------|-1-------|-1---1---|
しかし、そのミスマッチを金田アニメーションは逆手に取って活かしているとも言える。炎の竜(幻魔)の曲線、地球のサイコ戦士達の攻撃と、回避の動き。竜とサイコ戦士達が放つ光線。これら3者の動きが、踊るようにリズミカルに、まるで一種のフォーク・ダンスのように描かれている。偶然の産物かもしれないが、面白い。
他のスタジオNo.1 のメンバーだが、鍋島修氏は冒頭のルナ王女のエピソード(飛行機爆発から、戦士としての目覚めまで)部分を担当。彼の画風は粗野(笑)なスタジオNo.1 にあって意外と緻密・繊細で、飛行機墜落シーン、戦士ベガの回想シーンでの爆発の描写など、鍋島氏らしい動画術を見て取れる(ここらへんの情報、22年前の記憶だけで書いているので、誤認識あれば修正お願いします)。「ラッキーマン」の頃から演出家として活躍を始め、最近は「とっとこハム太郎」などの監督として活躍。 スタジオNo.1 の紅一点であった松原京子氏(「ルパン3世 Part3」「どっきりドクター」「鎧伝サムライトルーパー」などの作画監督)は、丈の姉、東三千子(演:池田昌子)が幻魔ザメディとザンビに襲われるシーンほか、三千子の日常生活部分の作画を担当。彼女は非常に画力が高く(失礼だが)非常に絵が巧い。だからこその、リアリティあるアニメーション(三千子がお盆にコーヒーを載せて持ってくるときの仕草、湯気の描写、引きちぎられたブラウス、ブラジャーの描写)作成に成功している。スタジオ No.1 の作品というと、「動」の部分にばかり目が行きがちなため、彼女が影で「静」をしっかりと描いていることを忘れがちである。松原京子さんを、もっともっと評価しても、評価しすぎになることはないだろう。 だが、しかし…。初の大友克洋キャラクターを動かす、という重荷・ジレンマからか、殆どのアニメーターが萎縮しきってしまっていたようで、自分の味を表現しきれていない。全体のアニメーションとしては素晴らしい作品というわけではない。松原さん、鍋島さんのほか、自分の持ち味を出したのがなかむらたかしで、新宿歌舞伎町シーン、アメリカ、ソニー(演:林泰文→参照 )のシーンなどで、独自の解釈による大友克洋キャラの動画に成功しており、彼はコレを土台に「ウラシマン」で大友エピゴーネン・キャラをデザイン、大友風キャラのアニメーション・スタイルを確立し、「AKIRA」で作画監督、その後の大友アニメでも重要な役割を果たすことになる。 天才金田氏は天才だからこそ、自分の味を出せないわけがない(逆にいえば無理に合わせようとしない)。上記シーンだけでも見る価値が十分にある。また音楽には日本一のセッション・ドラマー、青山純氏が参加している。
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