パッヘルベルのカノン、名曲の秘密 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

パッヘルベルのカノン、名曲の秘密

◆出社途中の東京フォーラム中庭で


Daniel

鳴り響く「パッヘルベルのカノン」のギター演奏。

奏者は Daniel というミュージシャン。

東京フォーラムで、ヘブンアーティスト企画が開催中。

(追記:この日だけでした。。)

色んな若手ミュージシャンが路上演奏するらしい。


東京フォーラムのガラスの壁にアンプを通した

アコースティックギターの響きがとてもいい感じ(Ⅳ)でした。

思わず、会社(Ⅴ)に行かずそのまま家(Ⅰ)に帰りたくなったほど。



◆パッヘルベルのカノン


原曲は

3つのヴァイオリンと通奏低音のためのもの で、


ドイツ・バロックのオルガン音楽に貢献したオルガニスト

J. Pahcelbel により書かれました。


Cを基調とした場合、


| C G | Am Em | F C | F G7|


の繰り返し。

これに加えて、ベースラインが


| C B | A G | F E | F G |

と動きます。ど→し→ら→そ→ふぁ→み と下降していき

ふぁ→そ、と上昇し、また「ど」に戻るのです。


このコード進行はポピュラー音楽の歴史のなかで

何度も繰り返し使用されたパターンです。


例をあげるとキリがありませんが、たとえば、


・バッハ "G線上のアリア"

・Percy Sledge "When a Man Loves a Woman"

・ポリス "見つめていたい"

・はなわ "佐賀県"

・イルカ なごり雪

・Mott the Hoople "Saturday Gigs"

・KAN "愛は勝つ"

・Jackson5 "I'll be There"

・戸川純 " 蛹化の女"

・Matching Mole "O Caroline"

・Ralph McTell "Streeet of London"

・井上大輔 "風にひとりで"

・Wynder K Frog "Hymn to Freedom"

・the Beatles "Let It Be"

・Ann Odell "Children"

・Eric Clapton "Tears in Heaven"

・Procol Harum "青い影"

・Bob Dylan "くよくよするな"

・Minnie Riperton "Loving You"

・Staff "愛しの貴女"

・Television "Vinus"

・徳永英明 壊れかけのRadio

・BORO 大阪で生まれた女


などなど。。

(コードは部分的に違いますが、概ね、ということでご了承を)


昨日、音楽は「アーメン終止」と「おじぎ終止」に大別できる という

話をしましたが、今日は、この名曲、

「パッヘルベルのカノン」のコード進行を分析してみます。

この曲を知れば、音楽の骨格がつかめると思うのです。


◆曲の構造


ローマ数字で書いた場合


| I V |Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅰ| Ⅳ Ⅴ7|


になります。

この進行をもっとシンプルに抽象化してみましょう。


2小節目のⅥmと Ⅲm はI の代理コードとなります。

 I  = ど、み、そ

 Ⅵm = ど、み、ら

 Ⅲm =    み、そ、し

という和音ですから、2音の共通音があるからです。


これを当てはめると、


| I V | Ⅰ | Ⅳ Ⅰ| Ⅳ Ⅴ7|


という進行に抽象化できました。


次に、Ⅰ→Ⅴ→Ⅰという進行に注目しましょう。

これは Ⅰ→Ⅰというワンコード進行を仮想Ⅴ変換したものです。

よく同じコード内で、「ど、そ、ど、そ」とベースが弾いているのを

聴いたことがあるかと思いますが、それと同じ理論です。

3小節目と4小節目にかかる Ⅳ→Ⅰ→Ⅳも、

同じようにⅣ→Ⅳと抽象化可能です。


つまり、


| I  | Ⅰ | Ⅳ | Ⅳ Ⅴ7|


という型まで抽象化可能。

4小節目に食い込んでいる部分を取り除くと


| I  | Ⅰ | Ⅳ | Ⅴ7 |


となります。

コレが「音楽の骨格」になるのです。



◆トニック、ドミナント、サブドミナント

#お詳しいかたは我慢してお読みくださいね:-)


Ⅰと、ⅣとⅤ7.つまり、ど、ふぁ、そ。

すべての音楽のコード進行はこれから成り立つ、と言われます。


Ⅰ=「ど」の「トニック」は最も安定した3和音

私たちのHOME, 我が家のようなもの。

(我が家が居心地悪い方々、すみません)


Ⅳ(ふぁ、ら、ど)=「サブドミナント」の響きは、

「ど」を含むのでちょっと和らぐが「ふぁ」という

ちょっと不安な響きが混じる。学校や、会社のようなもの。


Ⅴ7(そ、し、れ、ふぁ)=「ドミナント」の響きはⅠからみると

半音違いの不協和音である「し」を含み不安定。

通勤、通学電車や、会社でのトラブルのようなもの。

落ち着きません。落ち着かないから何とか家に帰ろうとします。

家に早く帰りたい気持ちが、7th というテンションを生みます。

7thが混じる理由は、


Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ 


の進行において、

「ふぁ」がⅣ→Ⅴの共通音となって進行を滑らかにし、

「ふぁ→み」の下降ラインがⅤ→Ⅰの進行を滑らかにするため。


基本、音楽はⅠから離れ、Ⅰへ戻っていくドラマなのです。

私たちの日常と同じです。


このたとえ話、基本はは↓の受け売りです。

著者: 宮脇 俊郎
タイトル: ギターの理論に強くなる本!―全てのジャンルのギターの理論に役立つ知識

↑この本、すごく勉強になります。



◆まとめ

このような最もシンプルな音楽の構造、

和声進行の上に装飾として成り立つテンションと、

美しいベースライン。


この構造美が永遠に私たちの胸をうつのでしょう。


パッヘルベルのカノンを

ギター初心者向け(そうでもないか?)にアレンジした譜面は

↓がいいと思います。

著者: 斎藤 まもる
タイトル: ギターで弾く クラシック名曲アルバム Vol.2 全曲タブ譜―付


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補遺

1) Ⅰ→Ⅴの部分を

逆循環コード(下降4度進行)と解釈する場合もあるようです。

「落ちる気分」と評論してありましたが、書籍名は忘れました。


2) 2005/05/19 Procol Harum "青い影"追加。 モコマキ さん感謝。



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