音楽がわかる本【連載1】 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

音楽がわかる本【連載1】

JTがタバコ「Peace Lights Box」を売り出そうとしていた1991年、
坂本輝+菅原秀共著「ポピュラー&ジャズ実用用語辞典」なる豆本(A6以下)をオマケに付けていた時期があった。この本は非常に面白おかしく音楽理論を説明してくれていて、当時若かった僕にとって非常に勉強になった。ページ数は128ページに過ぎなく小さい本なので、端的に音楽理論が説明されている。こういう本が大好きだし、いまだに何度も読み返している。

無断引用を承知(坂本様申し訳ございません)で、ちょっと引用してみると、


▼ケーデンス
 cadence

 終止形。コードを機能別に分けると、トニック、ドミナント、サブドミナント、さらにジャズではサブドミナント・マイナーというのがある。この中で、トニックが一番お金持ちで生活が安定している。トニックさん以外は不安定な生活(まるでシューさんみたい※1)で、いつかは小さなマイホームを手に入れ安定した生活をしたいと望んでいる。それらの貧しい人々が一生懸命に働いて、やっとマイホームを手にした時点でトニック(安定した生活)になる。これを終止形という。

1) ドミナント(D)→トニック(T)
2) サブドミナント(S)→トニック(T)
3) サブドミナント・マイナー(Sm)→トニック(T)

 これを基本的なコード進行で表すと次のようになる。

1) Ⅴ7-Ⅰ, G7-C(この例はキー・Cの場合。以下同じ)
2) Ⅳ-Ⅰ, F-C
3) Ⅳm-Ⅰ, Fm-C

 さらに次のような場合も考えられる。

4) S→D→T, つまりⅣ-Ⅴ7-Ⅰ, F-G7-C
5) S→Sm→T、つまりⅣ-Ⅳm-Ⅰ, F-Fm-C
6) Sm→D→T、つまりⅣm-Ⅴ7-Ⅰ, Fm-G7-C
7) S→Sm→D→T、つまりⅣ-Ⅳm-Ⅴ7-Ⅰ, F-Fm-G7-C


 以上のような場合をどのように解決すればよいかというと、たとえば(4)の場合、Sという仕事をしていたがどうもうまくいかない。そこでDという仕事に変えてみた。そうしたら成功して家が建った(T)。そんなふうに考えればいいと思う。
 要するにケーデンス(終止形)とは、貧しい人々(D,S,Sm)がいろいろな苦労をして安定した生活(T)を送るまでの短くむなしい人生である。

(坂本輝+菅原秀共著「ポピュラー&ジャズ実用用語辞典」42ページ)

引用者注:※1:共著者の菅原秀さんを指していると思われる。

とまあ、こんな感じ。読みながら心のなかの突っ込みどころ満載だし、本当に楽しく読める。

坂本氏はジャズ・ピアニスト。現在もおそらく活動中だと思います。受験勉強でも同じだが、面白い先生に出会うと勉強が好きになる。その点、僕はこの本と出会えたことに心から感謝している。

この本の原版は音楽之友社より1983年に新書版(ONブックス)で刊行(\500)されていたよう。
以下書店に中古本or在庫があるみたいです。
http://books.eek.jp/m562.shtml


坂本氏の本では、「ジャズ風に弾くバイエル」↓が入手可能。これもかなり面白い。


『ジャズ風に弾く バイエル』

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