不定期でお送りしておりました『病を引き受けられない人々』のシリーズですが、今回が最終回になります。
前回までの話はコチラ
第1回 ×河合隼雄
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12005136664.html
第2回 ×養老孟司
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12026447737.html
第3回 ×北山修
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12026447915.html
第4回 ×中井久夫
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12037257465.html
第5回 ×中村桂子
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12037257655.html
第6回 ×門脇孝
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12048361197.html
第7回 ×鷲田清一
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12048361508.html
第8回 ×西村周三
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12144104432.html
本書はコチラ
病を引き受けられない人々のケア: 「聴く力」「続ける力」「待つ力」
石井 均 著
http://www.amazon.co.jp/dp/4260020919/
今回の対談相手は臨床心理士で現在、京都大学教授を務めておられる皆藤章氏でございます。それでは、さっそくみてみましょう。
「先生、きょう、その薬は結構です」
皆藤「事実を伝えるとき、「何を伝えるか」と同じくらい、「いかに伝えるか」がとても大事です。(P222)」
糖尿病とは治らない病気と言われております。しかし、治らないという事実をどのように告げるかによって、今後の糖尿病とのかかわりがどのようなものになっていくのか変わるのかもしれません。ある人は、もう何をやっても無駄だから治療しないと考えるかもしれませんし、ある人は、じゃあうまくコントロールしていこうと考えるかもしれません。
癌の告知なんかはもっと顕著に表れるかもしれません。
事務的な話に終始するのではなく、人と人とのかかわりを重視した方がお互いの関係によい影響を与えるのは間違いなさそうです。
皆藤「そしてら、河合先生はすごく笑って、「あんたの持ってる本の中に、あんたの目の前にいるクライアントはおったか?」(後略)(P224)」
河合先生とは河合隼雄氏のことですが、皆藤氏が臨床心理学の本をたくさん読んでも、なかなかうまくいかなかったというエピソードを語っておりました。教科書に書いてあるのはあくまで一般的な話で、個々のクライアントあるいは患者との接し方、治療法について書いてあるわけではありません。
そのクライアント(患者)の治療法はその人とのかかわりあいの中から見出されてくるものなのかもしれません。
経済学などに関しても同様で、経済学胃の教科書には「日本経済を成長させる方法」なんてものは書いていないわけで、現実に応用できないことも結構あるものだと覚えておいた方がよさそうです。
石井「「治療を受ける側がどう考え、どう判断するか」、「その人が生きていること、あるいは生きていくことをどのように主張するのか」が、教科書には何もなかった。(P225)」
教科書に書いてあるのは「この病気にはこの薬をこれくらい使う」みたいな情報ですが、患者がその治療を受け入れるとは限らないですし、同じ症状の患者でも、適切な接し方や治療法は患者毎に違うのかもしれません。
経済などについても同じような不況でも、その国の文化や風土などで適切な経済政策というものは変わってくるかもしれませんし、目指すところもそれぞれ違ったりするのかもしれませんね。
石井「苦しさや辛さの語りを受け止めていくことも、役割の一つだろうと思います。(P228)」
血糖値を下げるだけではない。患者の人生のプロセスをサポートする、引き受ける、そのような姿勢が必要となってくるのでしょう。
経済政策についても同じことです。GDPの数字を上げるだけではない、失業率を下げるだけではない。国民がどのように生活していくのか、何に苦しんでいるのか、そういうところを見ないと「経世済民」とは程遠い政策になってしまいます。見ないから平気でTPPだとか移民だとか言えるんでしょうが…。
皆藤「糖尿病は「その人の、あるいはその人に関わる人たちの人生をときとして壊すもの」でもあるし、ときとして「人生をつくるものでもある」という表現にもつながる(P230)」
糖尿病は生活に非常に密接にかかわる病気です。糖尿病の治療とは「人生とは何か」を考えるところから始まると言っても過言ではありません。なぜなら、それによって糖尿病とのかかわり方が変わってくるからです。
糖尿病の治療というものはケガの治療などとは大きく異なり、人生そのものをいかに捉え、関わっていくのかという特殊なものになってきます。人は必ず死ぬ。それまでどのように生きたいのか、あるいはどのように死にたいのか。それを考えるきっかけになるかもしれません。
というわけで、長きにわたって続けさせていただきました、このシリーズもこれで最終回ということになります。今までお付き合いいただきありがとうございました。
ここで、紹介したのはほんの一部分なのですが、本書は糖尿病に関わる方でなくてもかなり勉強になる良書だと思います。もし、興味のある方は是非読まれることをお勧めいたします。
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