『病を引き受けられない人々のケア』×門脇孝

　今回は不定期でお送りしております『病を引き受けられない人々』のシリーズをお送りいたします。

前回までの話はコチラ

第１回　×河合隼雄

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12005136664.html

第２回　×養老孟司

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12026447737.html

第３回　×北山修

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12026447915.html

第４回　×中井久夫

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12037257465.html

第５回　×中村桂子

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12037257655.html

　第６回目の今回は東京大学教授で現東京大学医学部附属病院長の門脇孝氏との対談になります。門脇氏は日本糖尿病学会の理事長も務めており、この一連の対談の中では唯一糖尿病を専門に扱っている方になります。

「退院してしまったら、本当にできるかどうかとても自信がない」

門脇「傾聴して、共感するということは、いろいろなことの前提になります。（P151）」

　良好なコミュニケーションをとる際の基本中の基本ですね。良好なコミュニケーションが構築されない場合は、まず相手を批判したり自分の責任を棚上げする前に、自分の姿勢を再確認してみた方がよいのかもしれません。

門脇「基本的にやることは同じであっても、患者さんの気持ちはまったく逆方向を向きます。（P152）」

　糖尿病を放置して状態が悪化した方に対し、しかりつけるのか、受診したことをほめるのか。前者の方が効果的な方も中にはきっといるかもしれませんが、多くの場合は後者の方が治療に対するモチベーションが上がるようです。言葉の選び方が一つ違うだけで、その後の展開が大きく変わる例だろうと思います。もちろん、これは糖尿病治療に限った話ではありません。

門脇「患者さんに対して厳しく叱ったりすれば、患者さんは離れていき、結局は治療中断になると思うんですね。（P155）」

　そして、悲劇的な結果になると(￣▽￣)

　こちらでも似たようなことを書きましたが↓

無用な争いはなるべく避けましょうm(_ _ )m

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12048363054.html

　人についてきてほしければ、あまり他人を扱き下ろすのは良くないのだろうと思います。

門脇「すべての患者さんには、エンパワーメント、すなわち、その患者さんが自分で糖尿病と向き合ってたたかう力をもっている、そのことをわれわれは認識しなくてはいけません。（P156）」

　むしろ、その力に見向きもせず、表面的に血糖値を薬でよくしたりしても、将来的にはあまり意味のないことなのかもしれません。

　そのたたかう力が引き出されるのをサポートするのが治療者側の仕事といっても過言ではないでしょう。とすれば父権的な治療行為は逆にその力を抑制することになりかねないということに注意が必要でしょうね。

　たとえば、国土強靭化なんかにしても、国土が強靭化されること自体よりも、国民一人一人が「強靭な国土を作ろう」という気持ちになることの方が長期的に見ると大切なのかもしれません。

　結びに「サイエンス」と「ヒューマニズム」の結びつきに関する話が出てきましたが、おそらくは両者の間には境界線はないのかもしれません。（むしろ、これらを分けて考えると糖尿病を含め、様々な事象の正確な姿を捉えることは難しいのではないでしょうか。）

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