『病を引き受けられない人々のケア』×鷲田清一 | くらえもんの気ままに独り言

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 こちらのエントリーでTiSAについての情報をまとめております。よろしければ、お読みいただけると幸いです。


秘密の貿易交渉 TiSAの恐怖

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12005137069.html


秘密の貿易交渉 TiSAの恐怖 Part2

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12124514892.html


tisa


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 さて、今回は約3か月ぶりになります、『病を引き受けられない人々』のシリーズをお送りいたします。


前回までの話はコチラ

第1回 ×河合隼雄

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12005136664.html

第2回 ×養老孟司

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12026447737.html

第3回 ×北山修

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12026447915.html

第4回 ×中井久夫
http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12037257465.html

第5回 ×中村桂子

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12037257655.html

第6回 ×門脇孝

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-12048361197.html


本書はコチラ

病を引き受けられない人々のケア: 「聴く力」「続ける力」「待つ力」

石井 均 著

http://www.amazon.co.jp/dp/4260020919/


 第7回目の今回は哲学者で元大阪大学総長(現京都市立芸術大学理事長・学長)の鷲田清一氏との対談をご紹介したいと思います。 鷲田氏は哲学の中でも「臨床哲学」が専門で、日々の暮らしの中にある日常的なものを扱っておられます。


「インスリンなんか打ったら、本当の糖尿病になってしまう!」


鷲田「いわゆる近代医学においては、身体を「body」として扱っています。(中略)。医師たちは「物体として取り扱う」という視点をもって、解剖したり、測定したりしてきたわけです。(P171)」


 英語の「body」は「物体」を指す言葉ですが、日本語の「身」は物体ではなく人と人とのかかわりや人の状態を表す場合があります。ということは近代医学は物体としての体を取り扱ってきたのですが、人間の体と精神は切っても切れない関係ですし、身体≠物体です。というわけで、鷲田氏はもっと根本から考える必要があると思われたそうです。


鷲田「子どもたちが、近くの川で捕ってきたカメを皆でいたずらして遊んでいたのを見たことがあります。(中略)。しかし、そういうものも含めて「人間的」であるのです。それは、原爆だって、アウシュビッツだって同じことです。(P174)


 原爆やアウシュビッツを指して世の人は「非人間的」だとか「非人道的」だと言いますが、こんなこともできてしまうのが人間なのだと。人々はこういうことをする人と同類だと思いたくないから「非」をつけたがるのだと石井氏は捕捉。ゴジラ(by佐藤健志)だろうとネオリベス(byくらえもん)だろうと自分の一部なのですから、まずはそれを認識する必要がありそうです。

 よくある大衆批判についても自らも大衆の一人であることを認識すべきところなのでしょう。


石井「「私は、医者から糖尿病にされました」という、「されました」がどうも患者さんの中にあるのではないかと思うのです。(P177)」


 糖尿病は初期はまったく自覚症状がないからですね。検査して血糖値が高くて医者から糖尿病だと言われる。こんな感じで、なかなか自分が糖尿病であることを認識するのは困難なのでしょう。 

 みなさん、自身の問題であっても、はっきりとその身に何か問題が降りかかっているのを自覚できていないから、他人事のように思えてしまう、というのは糖尿病にかかわらず色んな場面で思い当たることはあるのではないでしょうか?


石井「「させられる」でもなく、「やらされる」でもなく、「しなければならない」でもなく、「この分を引き受ける」という状態なのでしょう。(P178)」


 鷲田氏は「糖尿病であること」と「日本人であること」の類似性を指摘します。石井氏は糖尿病は治療の必要がある点で違いがあることを述べますが、「日本人であることを引き受ける」という感覚も理解できる話なので、両者はやはり似ていると思います。なんとなく中野剛志氏の忠国心の話に似ているような。


H23大晦日桜討論・中野剛志【御国に尽くすのは義務!やるしかない】

http://www.nicovideo.jp/watch/sm16592399


石井「ある患者さんでは、「インスリン治療が必要ですね」と言ったら、その方は怒りだして一言、「そんなことをしたら、本当の糖尿病になってしまう!」とおっしゃったことがありました。(P179)」


 つまり、それまでは自分は糖尿病だと思っていなかったというわけですね。あるいは糖尿病であると認めたくなかったか。

 自身の問題を自身の問題と認識してもらうのが、医療者のなすべき最初の仕事なんでしょうね。もちろん、この話も糖尿病に限った話ではありませんが。


鷲田「人間というのは、一歩先に進むために、そのつど理不尽なものを納得できるものに変え、自分を編み直していかないといけないのでしょうね。(P181)」


 この「納得」というのがなかなか難しいものです。人間、見たくないものは見たくないですし、聞きたくないものは聞きたくないですからね。

 今の安倍政権の数々の売国政策…納得できますか?難しいですorz


鷲田「「訪れを待つ」というのは、偶然に身を開いておくということである。あいだに何が起こるか分からないからそれをも含めて、長い眼で見る、そして自然に機が熟すのを待つ、要は、時が満ちるのを待つということである。(P184)」(『わかりやすいはわかりにくい?-臨床哲学講座』より)


 実は納得させようとしても納得させるのは難しいですし、本人にとっても納得しようとしても納得するのは難しかったりします。でも、何かのきっかけで不意に納得してしまったりすることもしばしばあるようで。お二方は「待つことなく待つ」「待っていないものを待つ」という風に表現されております。

 時が満ちるのを待つ…。そして、時が満ちた瞬間をすかさず捉えるのが大事なのかもしれません。


石井「医療者がそういう夢や希望をもちながら接するということが、いつか現実に変わるのだと、河合先生には教えていただきました。(P189)」


 この河合先生とは河合隼雄氏のことです。第1回でも書きましたが、「どうにかできる」という意味の夢や希望のことではありません。「どうにもできない」けど、時が満ちるのを「諦めずに待つ」という意味です。

 糖尿病診療に限らず、人と人との関係性は人間が生きていくうえで重要なものです。じっくりと腰を据えて希望がなくとも絶望せずに付き合っていきましょう。


自身の問題を自身の問題として認識してもらうには時が満ちるのを待つしかない


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