『知性の構造』・言葉という物語 | くらえもんの気ままに独り言

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 さあ、いよいよ『知性の構造』シリーズも最終回です!!

 1996年に刊行された本書ですが、今もなお色褪せない内容でした。というより、当時よりさらに状況が悪化しているのではないかと思うくらいで、西部先生の先見力は大したものです。


以下、前回までのまとめです。忘れた方はもう一度復習してみてください。
第1回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11852064051.html

第2回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11855187261.html

第3回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11857103522.html

第4回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11858974746.html

第5回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11868759535.html

第6回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11874667479.html

第7回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11904741294.html

第8回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11908318654.html

第9回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11917076896.html

第10回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11922045485.html

第11回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11929718459.html


今までのまとめ

・知識人が腐ってきている、このままではヤバイ

・人間は真理を追究するようにできており、それを紡ぎ出すのが「言葉」

・真理の追及には信仰・懐疑・感情・論理のバランスが大事

・いかなる表現も仮説である

・仮説は棄却されにくいが、真理をつかむための方策があるはず

・真理に到達するには総合知が必要

・多様な前提と経験的事実を総合知によって結び付けていく作業が「解釈」

・解釈するとはすなわち生きることと等しい

・言葉には意味があり、その構造は伝達・表現・尺度・蓄積といった4つの機能で表すことができる

・表現には矛盾がつきもの

・葛藤は回避するのでなく平衡させねば、表現は病理化する

・平衡を維持するための知恵は伝統にある

・生命の活力の源泉は究極の目的・手段を求める営み

・活力を得るには伝統・習慣を大事に事実主義と想像主義との平衡を保つ必要がある

・日本人は葛藤が少なく平衡感覚が未熟なうえ大衆化しやすい

・平衡感覚を磨くには内部に構造化された葛藤を見出すことが重要

・適切なレトリックを追求することが生きること

・生きたコミュニケーションが表現をよりよくする


終章 『言葉という物語』


 知識人の表現活動も「表現によって他者の言動に影響を与える」という点で政治的であるのですが、知識人は自分の表現活動は政治の外にあるものと思って言いたい放題言って、そして責任はとらない。


 政治家は法的責任を負う面があるのは仕方ないとしても知識人は政治家よりも道義的責任を負うべきであると。ちなみに道義的責任とは動機責任(真善美を追求する責任)と結果責任(結果の予測に関して最大限の努力を払う責任)のことです。


 政治家が結果責任を追及されるのはよく見られますが、知識人の方こそ結果責任を追及されるべきなのです。なんせ分析が間違いだらけなんですから。


 なぜ知識人は分析を間違えるのか?真善美の追及が難しいからというのも一つの理由ですが、それを知識人が避けちゃあおしまいだってわけですね。


 そして知識人は人格の形成を放棄し、学会の狭い知識とマスコミジャーナリズム世論を合わせたトンデモ理論を次々と流布していく一方、責任は政治家に丸投げ。


 知識人の堕落が人間としての死を招くって感じですね( ̄▽ ̄)。


 続きまして輿論(よろん)についてですが、この輿論「歴史の良識」を表すのに対し、今の世論(よろん)「現在の流行」にとって変わられている始末。


 輿論を復活させるには世論を壊し、世論を生み出す知識人を葬り去らなければならないわけですが、まずそのためには歴史感覚あるいは国柄というものを思い起こさなくてはなりません。


 国柄を背負うことによって人間は人柄を持つことができます。国柄を背負わない人間は国民ではなく人民である、人柄というものを持ち合わせていないただの物体とも呼べるかもしれません。


 しかし、現代日本は「国境や国籍にこだわる時代は過ぎた」とか間の抜けたことを首相が言っている一方、世界の方は国境線をより強くしようという流れになってきているようです。日本が一番阿呆な感じがしますねorz


 ともかく人柄を破壊し単なる技術者に、国柄を破壊し単なる世界市民になることに必死になってきた日本は活きる力が衰えて泥沼の奥深くに沈み込んでいこうとしています。これを回避するには伝統なるものを探し出し、適切な言葉遣いを探る努力をしていかなければなりません。


 さて、病にむしばまれた知識人たちがやるべきこととは一体何か。


 ここ最近の知識人はパラダイムシフトを叫んだりしていましたが、パラダイムの根底を問うことなくパラダイムシフトをしたところで結局何も変わらないという結果に陥っていました。というわけで、まずはパラダイムの根底に横たわっている矛盾を暴き出すところから始めなければなりません。


 西部先生が本書で例を挙げておりますが、「あんなに優秀な科学者があんなに残酷な人殺しをするなんて信じられない」なんて言葉がマスコミでよく出てきます。でも、これっておかしいですよね。だって、優秀な科学者=善人なんて保証はないわけですから。こういった表現が用いられることに疑問をもたなければなりません。


 そして第二にやるべきことは「聴従」の姿勢であると。つまり、伝統という名の平衡術に関する知恵を伝え聞き、それに従うべきであると。要するに懐疑と信仰のバランスというわけですね。


 現在、輿論の復活を阻む最大の障害者が世論とタッグを組んだ知識人でありますが、知識人を倒すためにはその本拠地を攻め落とさなければなりません。


 知識人の根城…それはマスメディアです。マスメディアに触れた一般大衆も知識人化している昨今、マスメディアは世論を動かす最大の権力機構と言っても過言ではありません。マスメディアの手にかかればいかなるものも悪に仕立て上げることが可能ですし、彼らの破壊活動は永遠に止むことを知りません。


 マスメディアの作り出す嘘の世界を覆すには真実の世界がなんであるかを紡ぎ出さなければなりません。これはたいへんな作業ですが、国柄などに思いを馳せることによって「歴史の良識」である輿論を復活させなくてはならないのです。


 というわけで西部先生は今後の日本社会の進むべき道しるべとして本書をお書きになられたというわけです。


 以上、全12回にわたりお送りしました『知性の構造』シリーズ、いかがでしたか?分かりにくい話も多かったかもしれませんが、知性が錆び付いて腐っていく流れを食い止める一助になったのではないでしょうか。


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