『知性の構造』・広がりゆく意味宇宙 | くらえもんの気ままに独り言

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 さて、この『知性の構造』のまとめシリーズも今回が第6回で、ようやく折り返しとなります。内容は難しいですが、噛めば噛むほど味が出る本ですね。西部先生の言いたかったことを伝えられているかどうかは謎ですが(;^_^A


 以下、前回までのまとめです。


第1回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11852064051.html

第2回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11855187261.html

第3回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11857103522.html

第4回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11858974746.html

第5回http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11868759535.html


今までのまとめ

・知識人が腐ってきている、このままではヤバイ

・人間は真理を追究するようにできており、それを紡ぎ出すのが「言葉」

・真理の追及には信仰・懐疑・感情・論理のバランスが大事

・いかなる表現も仮説である

・仮説は棄却されにくいが、真理をつかむための方策があるはず

・真理に到達するには総合知が必要

・多用な前提と経験的事実を総合知によって結び付けていく作業が「解釈」

・解釈するとはすなわち生きることと等しい


 それでは、本編いってみましょう。


第五章『広がりゆく意味宇宙』


「意味論のためのウルトラ・モデル―

それは危険だが面白い思考実験ではなかろうか。(P97)」


 言葉の意味は無際限の多様性のうちにあるというのはそうなんですが、そうすると言葉の意味を問うのは虚しい作業だというニヒリズムに陥ってしまいます。ニヒリズムに陥ると生きる意味を失ってしまうので、消滅するか腐るかしかなくなってしまうのです。


 そこで、西部先生は「言葉の意味」というものが、何かしらきちんとしたものがあるのではないと思いを巡らせることにしたわけですね。


 言葉にまつわる機能を伝達・表現・尺度・蓄積の4種に分け、この4機能をバランスのとれた形で保ち得るのが言葉であるということですが、顕在性・潜在性、差異性・同一性という4つの尺度で考えると、以下のように分かれることになります。


顕在性・差異性表現

顕在性・同一性伝達

潜在性・差異性蓄積

潜在性・同一性尺度


 言葉を主体とした場合、言葉の機能は上記の4つの尺度によって伝達・表現・尺度・蓄積に分けられるのですが、これを人間の意識を主体とした場合はそれ外面性・内面性、時間性・空間性の4つの尺度へ言い換えることができます。


参考

『知性の構造』・学際研究の可能性

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11858974746.html


 第4回で触れた内容の応用ですが、意識を主体としたときには

外面性・時間性未来という名の混沌←計画的決断による秩序化(目標達成)

外面性・空間性自然という名の混沌←技術的計算により秩序化(適応)

内面性・空間性身体という名の混沌←象徴的意味付けにより秩序化(潜在的価値の維持)

内面性・時間性過去という名の混沌←慣習的反復により秩序化(統合)

 といったことによって混沌が秩序化されていくということでございます。


 さて言葉の意味というものに対する構造化をおこなってきているわけですが、ここで「言葉の二重性」というものについて注目されます。


1.意味するものと意味されるもの

 例として「ウマ」という発音を「意味するもの」、それに対して「馬」という概念を「意味されるもの」として取り上げられています。とある「意味するもの」に対して「表現的に意味されるもの」「伝達的に意味されるもの」「蓄積的に意味されるもの」「尺度的に意味されるもの」に分かれますが、それぞれの関係は以下のようになります。


表現的に意味されるもの―伝達的に意味されるもの結合

表現的に意味されるもの―蓄積的に意味されるもの選択

尺度的に意味されるもの―伝達的に意味されるもの対比

尺度的に意味されるもの―蓄積的に意味されるもの対立


2.スピーチとランゲジ

 ランゲジは潜在的かつ制度的(言葉の使い方に対する暗黙の制度的規制)、形式的かつ体系的(一つのまとまった体系性を有している)、恣意的かつ規約的(一個の約束事)であることが特徴である。個人のスピーチに対して社会のランゲジという関係ですが、尺度的に意味されるもの側の機能ランゲジ表現的に意味される側の機能スピーチといったところでしょうか。


3.シンタックス(連辞)とパラダイム(系合)

 シンタックスとは言葉の辞項の「結合」「対比」のことで、言葉の配列、たとえば「企業は利益最大化のために最も安い費用で生産し最も高い価格で販売しようとする」といった言葉の配列に関わるのですが、それぞれの言葉の意味が関連していることが特徴(企業、利益、費用、価格、販売の各語は意味的に重なり合いが見られる)。

 一方、パラダイム「対立」「選択」のことになります。たとえば企業という言葉に対し工場という言葉を選択するか、あるいは家計という言葉を選択するかということになります。


 さて、せまりくる混沌(未来・自然・過去・身体)を秩序化していくのが言語活動であるわけですが、より深く秩序化するにはそれぞれの方向へ秩序化を進めていく必要があります。



学際研究の可能性

 こちらは第4回のハイライトの図ですが、社会科学からの見方をベースにした場合、自然・未来という混沌には心理学的な秩序化を、自然・身体という混沌には自然科学的な秩序化を、身体・過去という混沌には歴史研究的な秩序化を、未来・過去という混沌には実践知による秩序化が必要というわけです。

 ちなみに暗示的なものにはなりますが自然・過去という混沌は文芸研究的に身体・未来という混沌は社会科学的なものになると考えられます。


 上図において社会科学的アプローチにたってみると

伝達的意味に関するもの経済学(媒体は貨幣)

表現的意味に関するもの政治学(媒体は権力)

蓄積的意味に関するもの社会学(媒体は役割)

尺度的意味に関するもの文化学(媒体は価値)

 ということになります。


 さて、言葉の意味の構造についてここまで書いてきましたが、その構造は単純に伝達・表現・蓄積・尺度の図式にもとづいていると考えることができそうです。


 たとえば経済学における言語(つまり貨幣)に関して言えば、伝達的なものとして市場表現的なものとして需給蓄積的なものとして組織(企業)尺度的なものとして技術と言った具合に表すことができるようです。


 今回の話は結構、難解ではあったのですが、ここで西部先生が言いたかったことは言葉は「仕分けが可能」つまり「意味を見出すことが可能」であるということなのです。


 言葉の意味の構造が明らかとなれば、種々の概念のつながりを見出しやすくなり、いろんな言葉のつながりが見えてくることでコミュニケーションというものが可能となるのです。そうでなければ、言葉に意味を見出せなくなり、コミュニケーション不全へと陥っていくしかないのではないでしょうか。それは人間として生きていると言えるのかどうか・・・。


 それでは、今回のハイライトを図示したいと思います。


広がりゆく意味宇宙


 内面性・外面性、時間性・空間性といった4つの尺度から伝達・表現・尺度・蓄積の4つの機能に分類された言葉。そして、その4つの機能のかかわりによって言葉の意味というものは構造化され、そして自然・未来・身体・過去といった混沌を秩序化していくというわけですね。


それでは今回のまとめです。

 言葉には意味がある。

 その意味の構造は伝達・表現・尺度・蓄積といった4つの機能で表すことができる。

 この意味の構造はすべての言葉に共通しており、これを知っていれば、違う言葉同士のコミュニケーションが可能になり、解釈学的アプローチを進めることができる。


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