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湿疹の三角形…湿疹の見た目がどう変化するのかを知る


こんにちは。橋本です。


アトピーの湿疹は、一気に良くなったり、一気に悪化したりすることはないものの、じわじわと見た目が変化します。


このように湿疹が変化する様子を「湿疹の三角形」と表現することがあります。


湿疹の三角形というもので、ざっくりと「湿疹はどのように変化するものなのか?」を知っておくことも、より正しいアトピーのケアの助けになります。


湿疹の三角形:アトピー


 


湿疹の三角形とは


「湿疹の三角形」は、できた湿疹が、通常どのような経過をたどるのかを「三角形」として表現したものです。


チャート:湿疹の三角形


湿疹の見た目が徐々に変化していく様子を、「三角形」という形で見ると、全体が少しわかりやすくなりますよね。


ただし、湿疹の三角形は、短期的な湿疹の変化。


それに対して、アトピーは湿疹が長く繰り返し、症状が慢性化するのが特徴です。


そのため、この短期的変化の三角形に加えて、アトピーの湿疹では慢性湿疹への変化も組み込まれてきます。


こうしてみると、アトピーの経過は一定ではなく、様々なパターンをとることが分かります。


 


湿疹のバリエーション


少し細かく見ていきます。


湿疹の三角形、それから慢性化した湿疹にあらわれる湿疹には、次のようなバリエーションがあります。


 


短期的に変化した湿疹(湿疹の三角形)


紅斑(こうはん): ⇒ 赤み

皮膚表面は盛り上がらず、色だけが赤く変化した湿疹です。

断面図:紅斑症例:紅斑


丘疹(きゅうしん): ⇒ ブツブツ

直径1cm以下の、小さくドーム状に盛り上がった湿疹

断面図:丘疹症例:丘疹


小水疱(しょうすいほう): ⇒ 小さな水ぶくれ

湿疹の中に水分がたまり、水ぶくれになったもの

断面図:小水疱症例:小水疱


膿疱(のうほう): ⇒ うみをもったブツブツ

湿疹の中に黄色い膿(うみ)がたまったもの

断面図:膿疱症例:膿疱


びらん : ⇒ ジクジク

表皮が赤くただれ、体液がしみ出しジクジクした状態

断面図:びらん症例:びらん


痂皮(かひ): ⇒ かさぶた

皮膚表面に膿や体液などがくっついて固まった、かさぶたの状態

断面図:痂皮症例:痂皮


落屑(らくせつ): ⇒ ポロポロ

ダメージを受けた皮膚表面の角質が白っぽく硬くなり、はがれ落ちる状態

断面図:落屑症例:落屑


 


長期的に変化した湿疹(慢性化した結果)


苔癬化(たいせんか): ⇒ 硬く厚く荒れた皮膚

皮膚が象の肌のように厚くなり、硬くてザラザラした湿疹

断面図:苔癬化症例:苔癬化


色素沈着 : ⇒ 黒い跡

炎症が長く繰り返した跡が、皮膚表面に黒く残った状態

断面図:色素沈着症例:色素沈着


ここからみると、汗疹(かんしん:「あせも」のこと)や蕁麻疹(じんましん)であらわれるようなプクっとした発疹、いわゆる膨疹(ぼうしん)は、湿疹とはまた別物なんですね。


汗疹や膨疹は、湿疹の三角形にあらわれるような様々な変化を見せません。


 


「アトピーは変化するものだから…」のワナ


本当にアトピーの見た目、経過は、百人いれば百通りある、という感じですね。


でも、だからといって、「少し変わった湿疹が出てきたぞ」というのを、放っておいていいわけではありません。


というのも、アトピーになっていると、合併することのある病気が色々とあるからなんですね。


「アトピーは変化するものだから…」と思い込み過ぎてしまうと、そうした併発した病気を見過ごすことにもなりかねません。


たとえば、


単純ヘルペスカポジ水痘様発疹症(かぽじ・すいとうよう・ほっしんしょう)

伝染性軟属腫(でんせんせい・なんぞくしゅ:「水いぼ」のこと)

伝染性膿痂疹(でんせんせい・のうかしん:「とびひ」のこと)

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(ぶどうきゅうきんせい・ねっしょうようひふしょうこうぐん:通称、SSSS)


など、これらはアトピーがあると、おこしやすい皮膚感染症ですが、「単にアトピーがひどくなっただけかな?」と勘違いしてしまうこともあります。


勘違いによって見過ごしてしまうと、湿疹がどんどん広がってひどくなってしまい、対応が遅れれば、それだけ治療にも時間がかかってしまいます。


アトピー以外の湿疹があらわれた場合は、アトピーの治療だけではなく、それに見合った治療をする必要があります。


アトピーでこういった皮膚感染症がかかりやすくなるのは、皮膚をかくことで原因菌を広げてしまいやすいこと。


それから、湿疹によるダメージを皮膚が受け続けていることによって、皮膚のバリア機能が低下してしまっていること。


この2つの理由が挙げられます。


また、皮膚のバリア機能が低下していると、接触皮膚炎(かぶれ)をおこしやすくなることも知られています。


もし、かぶれがおきているなら、どんなにステロイドを使っても、接触皮膚炎の原因となっているものが肌につかないように対策を立てないと、湿疹は治りません。


接触皮膚炎をアトピーの悪化と思い込むことは、治療を難しくしてしまうわけです。


 


「おかしいな」と思ったら、プロに診てもらう


「アトピーでは、皮膚感染症、接触皮膚炎などが合併することもある」


そのことも頭の片隅に入れておいて、「なんかおかしな湿疹が出てきたぞ」「急に悪化してきた」という場合は、専門のお医者さんに診てもらうことが大切です。


いくらアトピーは、「湿疹の三角形」のようにその時々変化するものだといっても、おかしなときは迷わず診てもらう必要もあるんですね。


そして、そもそもこの「湿疹の三角形」の経過を何度も繰り返さないように適切な治療とていねいなケアをし、皮膚のバリア機能の低下を最低限におさえる。


そのことが、アトピー、ひいては皮膚感染症、接触皮膚炎、さらにはアレルギーが増えないようにするには、とても重要になってきます。


 


 


 


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