《登場人物》
ダン ー 孤児で無礼な奴と後ろ指を指されるが、自由に時調を詠める世の中に変える人物
ジン ー 国一番の時調の詠み手。秘密を隠したままコルビンダンで活動する。
ホングク ー 朝廷の権力者として王を丁重に補佐しているように見えるが、胸中には陰険な陰謀を隠している。
シプチュ ー 中人の身分と官職を投げうち、秘密時調隊「コルビンダン」を率いている頼もしい兄貴分。(チャモと一人二役)
コルビンダン 3人組 ー ホロセ、キソン、スンスの3人
《あらすじ》ー1幕ー
「時調(シジョ)」(朝鮮の定型詩)を国家理念とする想像上の「朝鮮」。生活の苦しさや逆境を時調に込めて生きていた百姓たちは、反逆事件で時調活動が禁じられ、自由も幸せも忘れて暮らしている。
往来に両班(ヤンバン)のフリをしたダンがやってくる。時調を詠もうとして役人に咎められ身分札を出せと問い詰められる。通りかかったジンが助ける。ジンは秘密のクッポンカン(民の幸福のため作られた秘密の時調場)にダンを招待する。
人々はダンに「チャモがいなくなって静かになったのに、親のいない無礼な奴め、騒ぎを起こすな」と言い渡す。チャモはダンの育ての親である。埋葬場所には瓦が積み重ねられているのみで、墓だと区別さえつきにくい。ダンは「無礼な奴」という言葉を使って時調を作り始める。
ホングクは密かに日本人武士を呼んでダンという若者とコルビンダンの調査を命じる。武士は朝鮮で堂々と暮らすための身分札を手に入れたいので、ホングクの下で影のように働いている。
統制をかいくぐり人々と時調を楽しんでいるジン。そこへダンがやって来て、時調対決をすることになる。ジンはダンが忘れていった筆を見て、自分たちの探していたチャモ先生の息子がダンであることを知る。
失くした筆を探すダンはコルビンダンの隠れ家に迷い込む。シプチュがダンを見分け再会を喜ぶ。自分を知っているあなたたちは誰なのか、と問うダン。
時調に命をかけるなんてバカバカしいと笑うダンに、シプチュは語って聞かせる。ダンの父チャモに15年前何が起きたのか。逆賊の烙印を押されたチャモは、自分の息子と分かればダンに危険が及ぶと考え、親子であることを隠してダンを育てていたのだ。
前王の面前でチャモとホングクは時調比べをしたが、勝利者となり時調大判書に命じられたのは平民のチャモだった。ホングクは陰謀を巡らしチャモに汚名を着せ、自分が時調大判書の地位に就いたのだった。
チャモは息子に対する想いを扇に書き残していた。シプチュから扇を渡されたダンは父の想いに触れ涙する。
一方、父であるホングクと向き合っているジン。ジンは母がしていたように、人々に時調を教えていた。法に背いた者は罰しなければならないと言う父ホングクに、誰のための法かと問う。
コルビンダンと共に活動することにしたダン。コルビンダンの面々は時調を恐れて耳を貸さない民に近づくために、時調ではない「ヤンバン遊び」を作り、民だけでなくヤンバン、さらには王様の耳にまで届けることを目指す。
狙い通り、人々はヤンバン遊びに興じるようになる。コルビンダンは「国」という文字が逆さまに描かれた扇を配る。
「ヤンバン遊び」の人気が上がった事を気にするホンググが民を捕まえ始めたので、人々はコルビンダンに石を投げるようになる。自分たちの苦労が報われないダンは不平を漏らす。
小さな叫びでも叫び続ければ、いつか受け入れられる時が来ると、ダンを優しく諭すジンとシプチュ。
世間の動きが王の耳にも届く。民の声を直接聞きたいと時調自慢大会の開催を再び提案する王。大臣たちがこぞって反対する中、意外にもホングクが王に賛成する。大会にコルビンダンをおびき寄せ一網打尽にするつもりなのだ。
15年ぶりに誰でも参加できる朝鮮時調自慢が開かれることになる。仮面の下に正体を隠して悪事を暴き、幸せな世の中をつくるために組織されたコルビンダンはこれをチャンスと見て、朝鮮に新たな風を吹き込もうと立ち上がる。
ジンは、父が何か企んでいることに気づく。
シプチュは必死に王に訴える。ホングクはコルビンダンの訴えに賛同する者はいるかと問うが、民は誰も名乗りをあげない。ジンだけが賛同し、詠われている内容は全て真実だと訴える。自分は大判書の娘であり、コルビンダンの一員でもあると明らかにする。
元々民衆に心を向けていた王はコルビンダンの訴えを聞き行動を取り始める。拘束はするが罪を問うのは時調自慢の結果が出てからと決定する。
ホングクは、チャモの一味としてシプチュを別に捕らえてしまう。
拘束されているコルビンダン。ジンがホングクの娘と知りダンは心穏やかでない。賛同する民がいなかったことにも傷つき、投げやりになっている。スンスが、今やコルビンダンは自分の家族だ、ジンも同じだと言う。
警備の兵は、王より上に大判書がいるので怖いものは無い、お前たちのリーダーのシプチュも痛めつけられて命は無いだろうと言い放つ。
焦るコルビンダン。そこへ日本人武士が駆けつけ解放してくれる。武士はジンに、ホングクと大臣たちが先王を殺害した証拠である密書を渡し、みんなを逃すために戦い始める。
シプチュを助けに行くメンバーに同行しないダン。自分の行動の意味が分からなくなり1人で街に戻る。
ホングクが正体を現し、民の中の危険人物狩りを始める。ダンの目の前で1人の女が兵に斬られて命を落とす。ショックを受けるダン。信念を取り戻す。
意を決し王の前に戻るダン。ホングクはすぐに捕まえようとするが、王は聞くことがあるからと、ダンに続けさせる。
結局父親と同じように犬死にするのだと吐き捨てるホングクだったが、命をかけてコルビンダンのメンバーが戻ってくる。ホングクの悪事の内容と証拠の密書をジンから受け取ったシプチュも駆けつける。王の前で全てを暴露するコルビンダン。ホングクは失脚する。
ひれ伏す民たちに語りかける王。「頭を上げよ。頭を垂れるべきは私の方だ。」そしてダンに問う。「私に望むことはあるか。」ダンの望みは自由に時調を詠める世の中だ。王は続ける。「時調が詠めるだけでなく、自由に夢を見られる国を作りたい。そのために皆にも手伝って欲しい!」 喜ぶ民たち。



