やあ、ざわえもんです。今回は運動と脳の関係性について⑥の続きです。先ずですね、人というのは誰もが注意・欠陥多動性障害の性質があるとされています。しかし、薬物以外に注意・欠陥多動性障害の問題を解決する方法があるとするならば、約12000年前以降と同じライフスタイルの様に日常的に運動をして、原始的な性質を持つ脳に適応したライフスタイルを送るのがベターという事です。つまり運動をする事で脳機能が大きく変化し、脳機能や神経回路が変化する事で認知機能や非認知機能や実行機能が高まるという事です。ちなみに2020年までのインターネットの全ての情報量というのは、地球にある全ての砂粒の数の約40倍以上に相当するとされており、人の脳というのは原始生活をしていた時と殆ど変わっていないにも関わらず、情報が津波の様に押し寄せてきてるので人々は混乱し集中力を失っています。いわゆる情報バイアスです。ちなみに集中力を改善する為に一番効果的なのは、サプリメントやアプリ等ではなく運動という事が脳科学的に証明されています。この運動はどこまですれば集中力を改善する効果が大きくなるのかと言いますと、最大心拍数である220の70~75%ほどがベストとされています。まぁ約154~164回という事です。そして運動に適している時間帯というのが朝とされており、朝に運動をすると、その後は数時間効果が持続し、ライフスタイルにもよりますが一般的に集中力を必要とする作業は昼にする事が多いので、朝に運動をすると朝と昼の作業効率を大きく上げる事が出来るとされています。そして時間は20~30分以上が目安とされていますので、皆様もなるべく運動を習慣にしていただけると1日を効率的に過ごせるのではないかと思います。つまり朝に20~30分の中強度以上の運動をするのがお勧めという事です。また、アメリカの研究チームが国内の若者3200人を25年掛けて追跡調査したという実験があり、座っている時間が長ければ長いほど集中力や記憶力等の認知機能が低下する傾向にあり、1日3時間以上座っている人は認知機能が特に低下する傾向にあるという結果になっています。つまり座るという行為はメリットが殆ど無い訳です。しかし、運動はそんな座り過ぎや横になり過ぎる事によるデメリットを改善する効果があります。また、薬物治療は眠くなる等の副作用が少なからず存在しますが、運動はそういった副作用は基本的にありませんので、運動は副作用なしの精神安定剤と言える訳です。加えてアメリカ食品医薬品局が1987年12月29日にフルオキセチンという抗鬱剤の販売を認可し、医薬品業界で広く世間に広まったというストーリーがあり、フルオキセチンはプロザックという商品名で販売され、ラッパーのジェイ・Z氏の歌詞にプロザックという名前が登場したり、ザ・ソプラノズというアメリカの人気ドラマにて主人公のトニー・ソプラノがドラマの中でプロザックを使用する等の影響もあり、プロザックは当時の世界中に社会的旋風を巻き起こしたとされています。このフルオキセチンは幸福ホルモンのセロトニンの量や濃度を高め、通常であれば受容体に取り込まれずに余ったセロトニンは脳細胞に吸収されたりするのですが、フルオキセチンはセロトニンが脳細胞等に吸収されるのを防ぎ、細胞の中にセロトニンを留める事でセロトニンの量を結果的に増やすという役割があります。このフルオキセチンは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」と呼ばれているのですが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を服用した人の約三分の一は効果が殆ど無かったというデータも存在しており、睡眠障害や喉の乾きや吐き気や性機能障害等の副作用を併発してしまうという事もこのデータにて証明されています。つまりこの精神安定剤は様々な副作用がある上に、30~40%の人達は気分が一時的に良くなるだけで精神疾患の根本的な解決にはならないという事が証明された訳です。これらの歴史的背景から、世界中の科学者達は精神疾患の薬物以外の治療法を模索する必要がありました。また、1905年の「アメリカン・ジャーナル・オブ・インサニティ」に掲載された運動と精神状態との関係性について調べられた論文もあり、運動と精神状態の関係性については昔から世界中で注目されていたのですが、ここでアメリカの臨床心理学者であるジェームズ・ブルーメンソール氏が156人の鬱病患者を集めてランダムに3つのグループに分けたという実験をご紹介させて頂きます。

3つのグループ↓
1.ゾロフトと呼ばれる精神安定剤を服用したグループ。
2.週に3回、30分ずつ運動をしたグループ。
3.運動と精神安定剤を両方取り入れたグループ。

そして4ヶ月後に156人を3つのグループに分けた被験者達を集めて精神状態を検査したとろ、被験者達の殆どが鬱病の症状が大きく改善されており、精神安定剤であるゾロフトを服用したグループと運動をしたグループは殆ど差が無かったという結果になっています。つまり運動は精神安定剤と同等の精神改善効果があるという事が証明されたという事です。更にブルーメンソール氏は半年後に同じ被験者達を再検査しており、3つのグループに気分が改善される様な精神安定剤の服用や運動や瞑想等を自由にしてもらったところ、一番精神の改善に効果があったのは運動という結果になっています。また鬱病というのは再発率が高い病気としても有名ですが、最初の実験で運動を週に3回、30分ずつを3ヶ月間したグループは半年後の鬱病の再発率が10%以下という結果になり、最初の実験でゾロフトという精神安定剤を服用したグループは半年後の鬱病の再発率が38%という結果になっています。つまり薬物よりも運動の方が精神の改善に効果がある確率が極めて高いという事です。そして近年にある研究チームが1980年代以降に行われた様々な運動と精神状態の関係性についての論文を30本に厳選したところ、その内の25本が運動を習慣にすれば鬱病を予防出来ると結論付けられています。ちなみに精神の改善に最も効果がある運動はランニングとされており、所謂ランナーズハイが気分の改善に大きな効果があると推測されています。またランニングは難しいという方に朗報なのですが、毎日20~30分のウォーキングにも鬱病の予防効果が期待出来るとされており、セロトニンやノルアドレナリンやドーパミン等の幸福ホルモンの分泌量も増えるとされています。また、運動をすると脳の大脳皮質や海馬から脳由来神経栄養因子という物質が生成され、脳由来神経栄養因子は脳細胞が傷付いたり死滅するのを保護する役割があり、脳細胞が酸素やブドウ糖等を受け取れずに損傷する前に、脳由来神経栄養因子が酸素やブドウ糖等を代わりに受け取っていれば脳細胞の損傷を防げるという事です。加えて脳は脳疾患や打撲等の物理的攻撃を受けると、脳細胞を守るために脳由来神経栄養因子を生成するとされており、白血球やナチュラルキラー細胞等と似た働きをします。また、脳由来神経栄養因子は新たに生成された細胞の成長を助けたり、ニューロンとニューロンの連携を強化して知能や記憶力や集中力等の認知機能を高める役割があります。更に脳の神経可塑性の働きを促進して細胞の老化を防いだりする役割がありますので、まさに万能細胞と言っても過言では無い訳です。ちなみに脳由来神経栄養因子は精神疾患とも関係しており、鬱病患者は脳由来神経栄養因子の分泌量が少ない傾向にあり、自殺した鬱病患者の脳を検査すると脳由来神経栄養因子の値が少なかったというデータもあります。また鬱病患者が精神安定剤を服用すると脳由来神経栄養因子の分泌量が上がる傾向にあり、脳由来神経栄養因子は気分の改善にも効果的です。ただ脳由来神経栄養因子というのは薬で服用したところで胃酸で溶けてしまいますし、もし仮に胃酸で溶けなかったとしても、血管から脳に酸素や栄養素を送り届けたり不要な物質を脳から血管に送り届ける血液脳関門という極めて狭いセキュリティを脳由来神経栄養因子が通過するのは難しいとされている為、脳由来神経栄養因子を薬物で摂取するのは基本的に困難な訳です。また、ドリルで頭蓋骨に穴を開けて直接脳由来神経栄養因子を脳に注入すれば良いという理論がありますが、只の仮説に過ぎません。ではどうすれば人体にとって万能物質と呼ばれている脳由来神経栄養因子を自然に分泌させる事が出来るのかと言うと、先程も述べた通り運動が一番効果的です。これはマウスを対象にした動物実験でも証明されており、マウスが運動をすると脳由来神経栄養因子の分泌量が増加し、運動を辞めてから数時間は分泌量が増加し続け、心拍数も一定の回数より増えると大量に脳由来神経栄養因子が分泌されるという結果になっています。ちなみに無酸素運動よりも有酸素運動の方が脳由来神経栄養因子の分泌量を増やす事が出来るとされていますので、ランニングやエアロバイク等の酸欠になる手前の運動をお勧めします。加えて、人間は鬱病になると少しずつ脳が縮んでいく傾向にあり、縮んだ脳を元のサイズに戻す治療法は現在まで発見されていません。まぁ鬱病患者でなくとも、人は25歳頃から1年で平均0.5%ずつ脳が萎縮しているとされているのですが、鬱病はその脳の萎縮スピードを加速させてしまいます。現代の脳科学では細胞は成人してからでも増加する事が証明されていますが、鬱病等を患うと細胞が新しく生成されるのをブロックしてしまいます。また、ある科学者の最新の説によれば、鬱病というのは脳の炎症によるものだったり、脳細胞が新しく生成されなくなる事によるモチベーションの低下が主な原因ではないかと推測されており、ラットを対象にした動物実験でも、精神安定剤を投与されたラットは数週間掛けて徐々に海馬の細胞数を増加させ、最終的に約50%も増加したという結果になっています。つまり、脳細胞を新しく生成すれば鬱病が治るのではないかと最新の仮説で提唱されている訳です。そして脳細胞を増やす最も効果的な手段というのが、運動です。しつけぇよと思った方w すまにょw まぁ運動が脳細胞を増やすメカニズムは下記に記載します。

有酸素運動等をする。(無酸素運動でも有酸素運動と比べて脳由来神経栄養因子の分泌量は減りますが、効果はあります。)
脳由来神経栄養因子の分泌量が増加する。
脳細胞が新しく生成される。
鬱やモチベーションの低下等を防ぎ気分が改善する。

まぁこういうプロセスがある訳です。更に運動をすると性格を少しだけですが変化させる事が出来るという事も様々な研究にて証明されており、フィンランドや日本や南アフリカで行われた実験では、定期的に運動をしている人は神経質な性格の人が少ない傾向にあるという事が証明されており、オランダで約2万組の双子を対象にした実験によれば、週に一定以上の運動を2日以上している人は、コミュニケーション能力が高く神経質な性格の人が少ない傾向にあるという結果になっています。まぁつまり神経伝達物質の量によっても性格は違ってくるという事です。例えばドーパミンの分泌量が多い人は好奇心旺盛で冒険心が高い傾向にあり、セロトニンの分泌量が多い人は柔軟な性格ですが時として神経質な一面があるとされています。加えてローマ帝国が存在していた時代は、ケシの実から採取したアヘンが含まれた液体を乾燥させて薬品として使用されており、1804年にはドイツの薬剤師であるフリードリヒ・ゼルチュルナー氏が鎮痛効果や鎮静効果等があるモルヒネをアヘンから抽出する事に成功しています。つまり古来より鎮痛薬というのは世間で流布されていたという事です。そして1976年にイギリスとアメリカの研究チームが豚と子牛の脳からエンドルフィンを発見をした事で、モルヒネの約6.5倍もの鎮痛効果のあるエンドルフィンは多幸感を産み出してくれるものという認識が世界中で徐々に浸透していきました。まぁ文字数足らんので次回に続くw ご視聴ありがとうございました。

参考文献↓

「運動脳」

著者 アンデシュ・ハンセン氏

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