詩と小説
かつて文芸サークルにいたときの仲間にとても素敵な詩を書く人がいました。あるとき、彼女が言いました。1編の詩をつくるのに大学ノート1冊使うと。つまり、1編の詩の向こうには大学ノート1冊分の思いや言葉があるのだということです。わたしは、心底驚き、感心してしまいました。小説の場合、丹念に情景描写や心理描写が描かれそれが、作品を理解する手助けをしてくれるわけですが、詩の場合は、それが、例えて言えば行間に埋め込まれているわけです。ふと、小説は昼間の街の風景で詩は夜に輝くネオンの風景かなと思いました。昼間の街は明るくてビルの大きさや色街を行く人の姿もよく見えます。でも、夜のネオン輝く街では、その向こうにあるビルや人々は闇に紛れて、よくは確認することかできないからです。詩を味わうには、小説よりも行間に漂うものたちを自ら積極的に探しに行く必要があるのかなと思うし、そうするだけの価値もあると思います。