※トリップモノです。
そういう非現実的な話が苦手な方はこの先へ進まれないようお気をつけください。
読んでからの苦情はご遠慮願います。
続きものとなっております。こちら↓から先にお読みください。
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恋愛ビギナー 返り咲き!?
もう1度プリクラを撮るために、撮影ブースに移ろうとしたところで、「ああ!丸井先輩だけずっりー!!」と言う大きな声が響いた。
こちらを指差した赤也君が足早に駆け寄ってくる。
赤髪少年が「げぇ」と顔をしかめる。
その隣で私も心の中で「げっ」と顔をしかめた。
赤也君の後ろには女子の軍団がいて、鋭い瞳で私を睨みつけていたからだ。
なんてバッドタイミング・・・・。
「花村先輩!俺とも撮ってくださいよ!」
「う、うん・・・・。」
「丸井先輩とはこれで撮ったんスか?じゃぁ俺はあれがいいッス!」
私の手を取ってさっきとは違うプリクラ機に向かっていく赤也君。
「おい待てよ赤也!」と赤髪少年が叫んだけれど、周りを女子で囲まれてしまったようで、追ってはこなかった。
割り勘にしようと言う私に首を振って、赤也君はプリクラ代を全額払ってくれた。
年下に奢られるというのはなんだか心苦しい気もしたけど、ここは男を立ててあげた方がいいのだろう。
今回も明るさやフレーム選びは赤也君に任せて、どんなポーズを取ろうか考える。
さっきのようにどれも同じと言うのも能がないみたいで嫌だ。
ここは恥を捨てて見本のようなポーズをとるべきなのか・・・・?
だけど手でハートとか内緒ポーズとか・・・・やっぱ無理。
そんなことを考えていると操作を終えた赤也君が私の隣に戻ってきた。
だけど隣を通り越してそのまま私の後ろに回りこむ。
そしてふわりと覆いかぶさるように抱きついてきた。
え?っと振り向くと同時にカシャりという音が狭い空間に響く。
「あぁ、ダメじゃないッスか。ちゃんと前向かないと。」なんて、なんともないように言う赤也君は、悔しいくらい邪気のない笑みを浮かべていて、突き離す事が躊躇われた。
その一瞬の躊躇いのせいで、またあの症状が発動しだす。
音で表すなら『ぶわっ』という表現がぴったりだろう。
顔目掛けて、まさにぶわっと熱が集まってくる。
あぁ、もう!
本当に面倒なんだけどこの症状!
「あ、赤也君・・・・。」
「ほら、カウントダウン始まるッスよ。」
「うん・・・・わかってるけど・・・・」
カウントダウンよりも数倍早い鼓動音。
モニターに写る自分の顔は恥ずかしそうに瞳を潤ませ、真っ赤に染まっている。
自分自身でなんつー顔をしてるんだ!!とツッコミそうになる。
こんなプリクラくらい学生の頃いくらでも撮ったのに。
ハグどころかチュープリクラだって撮ったし、それ以上の行為に雪崩れ込みそうな時だってあった。
ただ後から抱き締められているだけなのに、なにをこんなに照れているんだか。
そんな風に冷静な思考とは裏腹に、身体は沸騰しそうなほど熱く、心臓が飛び出そうなほど鼓動が跳ねる。
モニターの中で一人テンパッている私をからかうように、赤也君がさらに抱き締める腕を強くする。
そして頬同士がくっつくくらいに顔を寄せてきた。
この子は天然子悪魔なの?それと計算?
猫が飼い主に懐いているようなものにも思えるけど、私をからかっているようにも思える。
結局、撮影が終わるまで私は赤也君の腕の中で固まったままで・・・・
赤髪少年と撮ったプリクラと同じ様に、ほとんど変化のないプリクラが出来上がった。
やたらとハートマークの多いプリクラを眺めながら、こっそりと息を吐きだす。
もうプリクラは懲り懲りだ。
なにをしたわけでもないのに私はぐったりと疲れていて、近くにあったベンチにぐにゃりと腰掛けた。
横に置いてある自動販売機に身体をもたれさせるようにして目を閉じる。
このままこっそり帰っちゃおうかな・・・・。
「大丈夫ですか?」
もう何度目かわからない溜息をついたところで、目の前に立つ人の気配を感じた。
目を開けるよりも早く声をかけられ、この声って・・・・と、声の主を頭に思い浮かべながら目を開いた。
頭に思い浮かべていた顔を同じ顔が、私を心配そうに見下ろしている。
この人には心配ばかりかけてるな・・・・と思いながら、軽く笑みを浮かべて見せた。
「うん。大丈夫。」
「疲れたのでしょう?よかったらこれ・・・・飲みませんか?」
指しだされたのはペットボトルのお茶。
受け取ると買ったばかりのような冷たさがあった。
もしかすると私のために買ってくれたのかもしれない。
「ありがとう」とお礼を言って、ペットボトルの蓋を捻る。
喉が渇いていたわけではなかったけど、喉を通る爽快さに少しだけ疲れが癒された気がした。
飲み終えたペットボトルの蓋を閉めていると、隣に座った眼鏡少年の視線を感じた。
ん?と彼の方へ向いても、表情を変える事なく私を見ている。
もしかしてお茶を飲みたいのだろうかとペットボトルを差しだしながら「飲む?」と聞けば、「いえ」と短い断りの返事が返ってきた。
じゃぁなんでこんなに見つめられているんだろう・・・?
「えっと・・・・みんなは?」
「まだプリクラを撮っているようですよ。仁王君は逃げたようですが。」
「逃げたんだ。」
銀色の尻尾を振りながら去っていく仁王の姿を想像するとなんだかおかしくてフッと吹きだしてしまう。
だけどまだ感じる隣からの視線に、浮かべた笑みを引っ込めた。
悪意や敵意を感じるわけでもないけど、好意的なものを感じるわけでもない。
見つめられているというよりかは観察されていると言った方が正しいような視線。
こんなにも見つめられてあの症状が出ないのは、彼の感情を読みとる事ができないからだろうか?
なぜだか視線を逸らす事ができず、しばらく見つめあったままでいると、表情を変える事も、視線を逸らす事もなく、突如眼鏡少年が口を開いた。
「・・・・私達も逃げましょうか?」
「え?」
想像もしなかった言葉に私は目を丸くした。
唐突になにを言い出すんだ・・・?
それに、彼の口から「逃げましょうか」なんて言葉が出てきた事が驚きだ。
話し方や風貌で、勝手に誠実で真面目そうな印象を抱いてしまっていたけど、案外そうでもないのだろうか?
「みんなとプリクラ撮らなくていいの?」
「こういう賑やかな場所は苦手なのですよ。」
確かに苦手そうだ。って言うか似合わない。
その辺は見た目とそのままなのに、「逃げよう」なんて事を言ったりもするんだ。
二面性があるタイプなのかな・・・・・?
好奇心からなのか、なんとなく彼をもっと知りたい気持ちになる。
「でもみんなになんて言うの?」
「言い訳は私がしておきますから。」
「怒られるんじゃない?」
「大丈夫ですよ。あなたが心配することはありません。」
どこからくる根拠なのかわからないけど、向けられた微笑は優しくも頼もしくて心強い。
ちょうど帰りたいと思っていたし、この場から連れだしてくれると言うなら願ったり叶ったりだ。
「じゃぁ一緒に逃亡しよっか?」
悪戯っぽく微笑めば、無表情だった彼の顔に笑みが浮かぶ。
・・・・・っ!!
不意打ちだったからなのか。
それともその笑みがあまりに綺麗だったからなのか・・・・・・
ドキドキセンサーの針が大きく振れ、私は一瞬にして茹でタコ状態になってしまった。
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深読みなさらず・・・・。
これはただの柳生です。
仁王ではありません。ww
企画の方もぼちぼち書いてますので、今しばらくお待ちください。