天気は快晴。
まさにデート日和。
空高く昇っていく太陽のように、私のテンションもぐんぐんと上がっていく。
自分でもすごくはしゃいでるのがわかるけど、これを抑える事は出来そうにない。
満面の笑みで隣の若君をみれば、呆れながらも「こけるなよ」と手を握ってくれた。
さり気なく繋がれた手に胸がキュンとなる。
恥ずかしさで真っ赤になった顔を俯かせながら、「うん」と小さく頷いた。
休日の遊園地は予想通り人で溢れていた。
チケット買うのも、入場ゲートを潜るのも、長い列に並ばされた。
その間に若君の機嫌が悪くなったらどうしようかと冷や冷やしたけど、必死に会話を繋ぐ私をおかしそうに眺めながら、どうでもいい話を頷きながら聞いてくれたり、受け答えしてくれて、そんな事をしている間に待ち時間は過ぎてしまっていた。
パークマップを広げ、2人で覗きこむ。
顔が近くてドキドキする。
若君は全然気にしてなさそうで、私1人がドキドキしてるみたいでちょっと悔しくなった。
「まずなにから乗る?」
「なにって・・・・。もちろんアレだろ?」
若君の指指した先にあるものは、私がここに来るための最終手段として使ったアレだ。
独特の雰囲気を醸し出す建物に、わざわざそんな丁寧に書かなくてもわかるっつーのと言いたくなるほどにデカデカと書かれた「お化け屋敷」の看板。
表現するのは難しい音楽というか音が流れ、晴天なのにその辺りだけ空気が冷たい。
「どうした?まさか今さら無理とか言わないだろうな?」
「も、もちろんだよ!」
女に二言はない!
ホントはすっごくいやだけど。
超怖いけど。
約束は約束だ。
気合いを入れて一歩踏み出そうとすると、くいっと腕を引かれた。
ん?と、振り返れば、意地悪そうに口端を挙げた若君と目が合う。
この顔・・・・・。
なにを考えているんだろうとぎくりとしながらも、なぜだか心臓がドキドキする。
意地悪そうな顔だな・・・・とは思うけど、嫌いじゃないんだよね。
「行かないの?」
「ふん。無理をするな。」
「む、無理なんて・・・・」
「顔面引き攣ってるぞ?」
そんなことはない!・・・・・とは言い切れないあたりが悲しい。
自分でも引き攣っているのがわかるから。
だけど、わざわざ休日に人の多い所に行くなんて嫌だと言っていた若君に、お化け屋敷に好きなだけ付き合うという条件付でOKしてもらったわけで・・・・・。
若君も嫌な事を我慢して私に付き合ってくれてるんだから、私だってこれくらいの事は我慢しなきゃ・・・・。
「大丈夫」と精一杯の笑顔を浮かべて微笑めば、ぺちんとおでこを弾かれた。
「嘘だ。お化け屋敷以外のでいい。」
「え?でも・・・・」
「泣き顔も悪くないが、今日はまゆの笑った顔だけを見ていたいからな。」
「え・・・?」
予想もしなかった優しい言葉に、一瞬ぽかんとしてしまう。
だけど若君の言葉を理解した途端に、体中の熱が顔に集まった。
いつも意地悪なのに、ふとした瞬間に優しくなる。
普段何も言ってくれないのに、こんな時だけは嬉しい言葉をくれる。
ズルイなぁ・・・・・・って思うけど、そのギャップに惹かれたんだよね。
嬉しくなって腕にギュッとしがみつきながら若君を見上げると、また私の好きな意地悪い顔で私の髪をくしゃりと撫でた。
「それに俺は好きなものは後にとっておく方だからな。今度来る時の楽しみにしておいてやる。」
「それって・・・また私とここに来てくれるってこと?」
「さぁな。」
本当にどこまでも意地悪い。
だけどそんなところがたまらなく好き。
遊園地を出るころは、今以上に若君を好きになってるんだろうなぁ。
若君も私を、もっと好きになってくれてるといいな・・・・。
「若君大好き・・・。」
「知ってる。」
「若君は言ってくれないの?」
「お化け屋敷に入るなら言ってやらなくもないけどな。」
「もう!ずるいよ!!」
周りにはたくさんのカップルがいて、みんなすごく楽しそうだけど、きっと一番幸せな気持ちなのは私だと思う。
わぁわぁと騒ぎながら、それでもしっかり手は繋いで、眩しい太陽の下をパークの中へ向かって歩きだした。
意地悪な君が好き
(意地悪なのは愛情の裏返しだよね?って聞いたら、幸せな頭だなって言われたけど、そう言った時の若君の瞳は、とてもとても優しかった)
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遊園地でキャッキャというリクでしたので、可愛い感じに仕上げてみました。
意地悪なのは好きだから。なんて、可愛いな・・・おい。←
ツンデレな年下男子っていいですよね。
苛めたくなっちゃう♪
SSなのでガッツリ遊園地デートを書く事はできませんでしたが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
リクありがとうございました!