トリップ逆ハー連載 8 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

※トリップモノです。

そういう非現実的な話が苦手な方はこの先へ進まれないようお気をつけください。

読んでからの苦情はご遠慮願います。


続きものとなっております。こちらから先におお見ください。⇒ 1234567



恋愛ビギナー 返り咲き!?




朝からなんだというのだ?


嵐のように現れて、嵐のように去っていた赤髪少年に呆気にとられていると、

足元から「うわ!取れねえし!どうすんだよこれ!?」と、べそをかいたような声が聞こえてきた。


視線を下げれば、切原君が髪の毛にべったりとついたガムを必死に取ろうとしている。


あ~ぁ。可哀想に・・・・・。




「あまり触らない方がいいよ。今取ってあげるから。」

「え?取れるんスか?」

「うん。ちょっと時間かかるけどね。」




それにしてもひどい先輩だ。

毛先ならともかく旋毛にぐりぐりと押し付けるようにつけていったようで、うねりのある髪の中でガムが埋もれてしまっている。


とりあえずここでガム取り作業をするわけにもいかないので、昨日もお世話になった保健室へと向かった。

保健医の先生に事情を話すと、「じゃぁ少し遅れるって、あなた達の担任の先生に報告してくるわね。」と言ってくれた。




「じゃぁ取っていくね。」

「なんスかそれ?」

「ヘアムース。私が使ってるやつだからちょっと女っぽい香りだけど我慢してね。」




ムースをガムのついた場所に揉み込むように馴染ませ、先生から借りた目の細い櫛でガムを毛先に向かって押し上げる。

少量づつゆっくりと押し上げると、ガムは髪の毛を滑るように抜けていく。




「痛かったら言ってね。」

「平気ッス。」




私の方が平気じゃないかも・・・・。


クリッとした大きな目で不安気に私を見上げる顔があまりに可愛すぎて、私の振動はさっきからドキドキしっぱなしだ。

平静を装っているけど、ちゃんとそう見えているかは自信がない。


そう言えば私、甘え上手で可愛い後輩キャラもけっこう好きなタイプだった。

見た目は生意気っぽいのに、先輩に弄られて半ベソかくとか・・・・母性本能擽られまくりでしょ!?


とりあえず今はこの作業に集中しよう。

そうしなきゃ鼻血がでそうだ。


私はさりげなく位置を移動して、切原君の顔の見えない後ろへと回り込んだ。



取れたガムをティッシュで拭いながら黙々と同じ作業を続けていると、ずっと黙っていた切原君が「あの・・・・・」と、口を開いた。




「なに?」

「なんでさっき・・・・丸井先輩のこと庇ったんスか?」

「え?」

「やっぱ丸井先輩の事好きだから・・・・?」




一瞬なんのことかと思ったけど、たぶんさっき私が先生に言った言葉のことだろう。

保健医の先生に事情を説明する時、『私の噛んでいたガムが彼の頭についてしまった』と説明した。

それは別に赤髪少年を庇ったわけじゃないんだけどな・・・・・




「だってそう言わないと私、帰らされていたでしょ?」

「え?」

「『後は先生がするからあなたは教室に早く行きなさい』って言ってたじゃない。」




付き添いの子を帰らせるのは当たり前の事だ。

だから私は「私がつけてしまったんで、私に取らせて欲しい」とお願いしたのだ。




「あぁ・・・・・でもそれなら先生に頼めばよかったんじゃ・・・?」

「まぁそうなんだけど・・・・・。君、泣きそうな顔してたから・・・・・放っておけなくて。」




あんな目で見られたら「じゃぁね」とは立ち去りにくい。

それにガムをつけられた原因に、私がまったく関係してないとは言いきれなかったから・・・・。


どうやらあの赤髪少年は、私が本気で自分に惚れてると勘違いしているようだ。

だから切原君が「ただの赤面症」と言った事に機嫌を損ねてしまったのだろう。


なんていうか・・・・超ガキ。

だけど中学生なんてそんなものなのかもな・・・・。




「はい。きれいに取れたよ。」

「まじっスか?うわ・・・よかった。」




鏡を覗きこんで笑顔を浮かべる切原君に、私の顔も綻ぶ。


ホント可愛いな・・・・この子。


だけどどんなに可愛くてもやっぱり男の子で、ドキドキする心臓は治まる事がない。

ときめきやすい設定になってるってわかってるけど、男の子と二人きりでこんなにもドキドキしてると

「私もしかして彼の事好きなんじゃ?」って勘違いしそうになる。


人間の脳とは恐ろしいものだ。

つり橋効果は確かに有効なようだ。



とりあえず教室に戻る為にも、心臓を落ち着かせようと彼から距離をとり、保健室の端に設置されている流しでムースのついた手を洗った。

水の冷たさに少しだけ鼓動が静まった気がする。




「えっと・・・・・花村先輩でしたっけ?」

「あ、うん。」

「ガム取ってくれてありがとうございました。」




だからこの子はなんでこんなに可愛いの~!?


手を洗う私の後ろから顔を覗きこんで、上目遣いに見てくる切原君に、

せっかく沈めた鼓動は再び早くなり、自分の顔がどんどん赤くなっていくのがわかる。



『~ッス』なんて体育会系の敬語しか使えないと思ってたのに、ちゃんと「ありがとうございました」なんて・・・・反則じゃない?


これってわざと?

それとも天然?




「・・・・やっぱ花村先輩って赤面症ッスよね?」

「え?」

「だってすぐに顔赤くなるし。」

「あ・・・・・うん。そうなんだよね・・・・。」

「じゃぁ丸井先輩が勘違いすんのも仕方ねぇかな。男ってそういう反応されるとすぐに「俺の事好きなんじゃね?」って思っちゃうんスよ。」




へらリと笑う切原君いだけど、「ま、今の俺もそんな感じッスけど。」と言った瞬間、

急に男っぽい表情になったような気がして、私は咄嗟に視線を逸らした。



なんて事をなんて顔して言うんだこの子は?

やっぱり計算?

意外と子悪魔?


うわ・・・。こんな子にドキドキさせられるだけじゃなく、翻弄されるなんて・・・・。

なんだか悔しい。



だけどどんなに悔しがっても、私のときめきゲージはぐんぐん上がっていくのだった。


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次はいよいよアイツです。

ちょっと意外な設定にしてみました(笑)