トリップ逆ハー連載 14 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

※トリップモノです。

そういう非現実的な話が苦手な方はこの先へ進まれないようお気をつけください。

読んでからの苦情はご遠慮願います。


続きものとなっております。こちら↓から先にお読みください。
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恋愛ビギナー 返り咲き!?





「お母さん会計してくるから、ちょっとここで待ってて。」

「うん。わかった。」




今日は定期健診の日らしく朝から病院に連れて来られた。

私の身体はいたって健康だと神が言っていたし、検診なんてする意味もないだろうけどそんな事を言えるはずもない。


激的に回復して驚かれたらどうしようかと思ったけど、そういう事もなくスムーズに検診は終了した。

ただ、検診はスムーズに終わったけど、担当医や看護士さんに入院中の思い出話をされた時が大変だった。

長期入院していたわけだし、医者や看護士と仲良くなっていても不思議じゃない。

だけどその頃の記憶が私にはないわけで・・・・・。

愛想笑いと適当な合図ちで逃れたけど、検診の度にこんなのだと思うと気が重い。




「はぁ・・・・。」




溜息を吐き出すと一気に疲れが押し寄せてきた。

何か飲み物でも飲んで一息つきたい。


待合所の少し奥にある自動販売機へと向かい、バックから小銭を取り出そうとしたところで、聞き覚えのある声が耳に入った。


この耳に心地よい声は確か・・・・。


声のする方へ視線を向ければ、制服姿の柳君が誰かと話しているのが見えた。

やはり彼だったのか。

べつに声フェチではないけど、柳君の声にはどうにも反応してしまうようだ。


誰と話しているのだろうと、自然と視線が彼の向かいに立つ人物へと向いた。


ウェーブのかかった髪から覗く肌は透き通るほど白く、弧を描く唇の赤さが浮き立つ。

スラッとした長身で、とても綺麗な顔立ちの子だ。

パジャマを来ているところを見ると入院患者だろうか・・・・?


ここは病院で、相手はパジャマ。

普通に考えればお見舞いだろう。


「見舞い」の言葉に、先日柳君が口にした台詞が思い出された。



『もう目の前で誰かが倒れる姿は・・・・・・・・見たくないんだ』



あれはもしかして、今柳君の前に立つ子の事を言っていたんじゃないだろうか・・・?

なんの確証もないけれど、たぶん間違いないだろう。


パジャマの上に羽織ったカーディガンが肩からずれているのを、柳君が掛け直してあげている。

その表情の優しさに、彼がどれだけ相手を大切に思っているのかを感じ取れた。



ふーん。そんな表情もできるんだ。



数言の会話の後、柳君は一人こちらに向かって歩いて来た。

顔を合わせてまずいわけでもないけど、私は咄嗟に自動販売機の陰に隠れた。

柳君はそんな私に気づくことなく病院を出て行く。


ガラス張りの自動ドアの向こうへ小さくなって行く柳君の背中を見つめながら、ホッと息を吐き出した時、

「こんなところでかくれんぼ?」と、耳のすぐ側で声がした。
肩を跳ねさせながら勢いよく振り向けば、さっき柳君が話していた子がにこにこと微笑みながら立っていた。


いつの間に?

全然気づかなかったし・・・・。


驚きでバクバクと鳴る胸を抑えながら、自動販売機の陰から身体を出す。

こんな所に隠れてるなんて私かなり怪しいやつなんじゃ・・・・?

誤魔化すようにヘラリと笑うと、その子は私の数百倍は可愛い笑顔を見せた。



「こんにちは。」

「こ、こんにちは。」




想像とは違って少しハスキーな声。

間近で見るとさらに綺麗で、病人とは思えぬ力強いオーラを感じる。

吸い込まれそうなほど澄んだ瞳に、思わず見とれてしまいそうになる。




「柳の事知ってるの?」

「え?あ、うん。クラスメイトなの。」




どうやら私が柳君を目で追っていたのを見られたらしい。

怪しいやつだと誤解されるよりかはマシだけど、隠れて盗み見ている所を見られるなんて・・・・。

柳君を着けて来たとか勘違いされて、学校の女の子達みたいに私に敵意を向けてきたらどうしようかと一瞬身構える。


だけどその子は何か思い当たったように「あぁ・・・。」と、手を打った。




「もしかして君、花村さん?」

「へ?」

「柳から聞いた事があるんだ。君の事。」




まさか柳君が私の話をしているとは思わなくて少し驚く。

でもすぐに、その理由に思い当たる。


この子の病気がどれくらいのものなのかはわからないけど、同じ境遇の子が復学したとか言う話でもしたのだろう。
私にこの子の影を重ねて見たように、この子にも私の影を重ねていたとしてもおかしくは無い。

私のように必ず元気になるんだと、この子に、そして柳君自身に言い聞かせていたのかもしれないと思った。



「今日は定期健診とか?」

「うん。そう。」

「もう終わった?」

「今会計待ち。」

「なら、会計が終わるまで話しててもいいかな?」

「私はかまわないけど・・・・病室戻らなくていいの?」

「少しくらいなら平気だよ。」




にこりと浮かべた微笑に、一瞬陰りがさしたのに私は気づいてしまった。

病室に戻りたくないのかもしれない。

私は何も気づかなかった振りをして、「じゃぁとりあえずす座ろっか?」と、長椅子に腰を下ろした。



初対面とは思えぬ人懐っこさとキラキラとした笑顔に、私の緊張はすぐに解けた。

身長は私より遥かに高いし、美人過ぎるし、放つオーラもすごいのに、「可愛い」と思えてしまうのはこの人懐っこさのせいだろうか?


学校の友達・・・・・まぁ今はほとんどが敵になってしまったけど、そういう子達と違ってとてもリラックスして話せる。

こっちの世界に来てから、他人と一緒にいてリラックスできたことなんてなかった。

久々に心からの笑顔を浮かべている気がする。


そのせいか、私はもう少し話したくて、もう少し相手の事を知りたくて、思い切った質問をしてみた。




「もしかしてさ、柳君と付き合ってたりする?」

「え?」

「柳君がすごく優しい表情してたから、そうなのかな・・・って。」




いきなり不躾すぎただろうか?

笑顔を消して目を丸くする彼女に、「ごめん。変なこと聞いてっ」と、慌てる。

だけどすぐに彼女は綺麗な笑顔を浮かべ、ナイショ話でもするように口の横に手を沿えて私の方へ顔を寄せてきた。



「うん。実はそうなんだ。でもみんなには内緒にしてるから、学校では言わないようにしてもらえるかな?」

「そうなんだ。わかった。ナイショね。」




嫉妬に染まった瞳で私を睨んでいた女子達が頭に浮かぶ。

そりゃナイショにしたくなるよね、と納得するように深く頷いてしまった。




「あ、そうだ。時々でいいから、柳の事とか学校の事とか、色々聞かせてくれないかな?」

「柳君の事?」

「柳はお・・・私に気を使って、学校の話はあまりしてくれないし、自分の話なんてもっとしてくれないからね。」




学校に来れない相手に、学校の話をするのは酷だと思っての事なんだろうけど、そうやって気を使われる方が辛いものだ。


きっと彼女は、私になら気持ちがわかるだろうと思ってくれているに違いない。

実際には入院経験なんてないし、彼女の気持ちを100%理解できはしないだろうけど、同じ様な経験なら何度かした事あるし少しくらいは支えになるだろう。


騙しているわけじゃないけど、私も同じ経験者だと思っている精ちゃんに後ろめたさを感じないわけでもなく、私は「わかった」と頷いて見せた。




「じゃぁ検診以外でも会いに来るよ。」

「本当に?嬉しいな。」




本当に可愛い子だ。

私が男なら間違いなく惚れてると思う。




「あ、そうだ。名前聞いてなかったよね?」

「幸村精・・・・・・」

「精・・・・?」

「精ちゃんって呼んでよ。」

「精ちゃん?」

「うん。花村さんの下の名前は?」

「瑞希。」

「じゃぁ瑞希って呼んでいい?」

「うん。」




その会話の後すぐに、会計を終えたお母さんが戻ってきたため、私達はお互いのメアドを交換して別れた。

精ちゃんの病室では、通話はできないけどメールはOKらしい。


次はいつ病院に行けるだろう?

今度はどんな話をしよう?


家に帰るまでの車の中で、精ちゃんと指きりをした小指を見つめながら、私は小さな笑みを何度も溢した。


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これで立海全員出ました!

ユッキーは女の子と認識されてますが・・・ww

この誤解はどうやって解こうかな?