トリップ逆ハー連載 16 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

※トリップモノです。

そういう非現実的な話が苦手な方はこの先へ進まれないようお気をつけください。

読んでからの苦情はご遠慮願います。


続きものとなっております。こちら↓から先にお読みください。
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恋愛ビギナー 返り咲き!?





駅前にあるゲームセンターのプリクラコーナーで、私は口を開けて立ち尽くした。


プリクラを最後に撮ったのはいつだっただろう?

学生の頃はよく撮ったけど、この年になるとプリクラ交換なんてしないし、

今は携帯でもデコったりできるから、わざわざプリクラを撮りに行くなんてことはなくなっていた。


久しぶりに足を踏み入れたプリクラコーナーは、入ってすぐにさまざまな服がウインドーに飾られていて、『貸し出します』のプレートがぷら下げられていた。

奥に並ぶ機械はやたらとキラキラしているし、仕切り用のカーテンには人気のモデルの顔がドンと写っていて、その下には『スマホ対応』と書かれている。


「超ハイテク・・・」と呟きそうになった言葉は寸前で飲み込んだ。


一緒に来たクラスメイトはお気に入りの機械があるらしく、各自好きな男の子の腕を引いて奥へと進んで行く。

赤髪少年が何か言いたそうに私を振り返ったので、「行ってらっしゃい」と手を振ってやった。

私と一番最初に撮ると言っていた赤也君も、引きづられる様に連れて行かれた。

彼等には悪いけど、生贄になってもらわないと私が困る。


みんなを見送り、私は一人どこかで休憩でもしていようかな?と思っていると、すぐ隣から「悪かったな。」と言う声が振ってきた。

まさか誰か残っていたなんて思っていなかった私はびっくりして隣を見上げる。

そこには申し訳なさそうに眉を下げる、スキンヘッドの男の子がいた。


赤髪少年のキャラが濃すぎてあまり印象に残りにくいけど、思い返せばいつも隣にいた様に思う。

ハーフかクォーターと言ったところだろうか?

目立つ容姿をしているにもかかわらずあまり印象に残らないって、赤髪はどんだけ強烈なんだ。


一見イカツイ印象を受けたけど、「あいつめちゃくちゃな所もあるけど悪いやつじゃないんだ。お前の事もすげぇ心配してたしよ。」なんて頭の後ろに手をやる姿は、ダメな弟を持つ兄のようで、とても優しい目をしていた。


立ち話もなんだからと近くのベンチに座り、軽く自己紹介を交わす。

「ジャッカルでいいぜ」と笑ったその笑顔はやっぱり優しくて、ふっと肩の力が抜けるようだった。




「ジャッカル君はプリクラ撮らないの?」

「ん?俺はあいつ等の監視役できたみたいなもんだからな。」

「監視役?」

「あいつ等がハメを外さないように見張ってないと、問題でも起こしたら真田に殴られるからよ。」

「真田君って厳しいんだ。」

「まあな。」




真田君は歴史上の人物で例えると新撰組の土方みたいな人だと教えてくれた。

部員にとても厳しくてかなり怖がられているけど、誰よりもテニス部と部員を思っているし、本当は優しいらしい。

その他にも、柳君や柳生君や仁王君。赤也君に赤髪少年の事など色々話してくれた。

中でも赤髪少年の事話を多く聞かせてくれて、ジャッカル君の赤髪少年への友情をすごく感じた。


そんな風にジャッカル君と2人穏やかな時間を過ごしていたのだけど、お手洗いに行って来ると席を立った次の瞬間、左手を強い力で引かれ1台のプリクラ機の中に引きづり込まれた。


驚きの声を上げようとした口を大きな手が塞ぐ。

おなかに回された腕がグッと私を引き寄せ、耳元で「しーしー!!」と潜めた声を繰り返す。

その声に私は暴れるのをやめて、ゆっくりと後ろを振り返った。


いたづらっぽい笑みを浮かべながら、ウインクをする赤髪少年に眩暈を起こしそうになる。

こいつは一体なにをしているんだ?

本物の馬鹿なのだろうか?


その時カーテンの向こうで「ブン太いた?」「いない」と言う女の子の声が聞こえた。

後で彼が身を固くしたのを感じる。

恐らく彼はこの女の子達から逃げてきたのだろう。

ここで見つかれば私もどんな目にあうかわかったもんじゃない。

じっと気配を消して息を潜めていると、彼女達が走り去っていく足音が聞こえた。


ふぅ・・・と吐きだした息が重なる。



だけどホッとしたのもつかの間。

自分が今どんな体勢なのかに気づいてしまった私の心臓は、例のごとく暴れだす。

顔が熱くなって、ついでに全身も熱くなって、ドキドキで苦しくなる。

蚊の泣くような声で「離して」と言うのがやっとで、赤髪少年の顔さえも見れない。

だけど赤髪少年はなかなか腕を離そうとはせず、それどころか腕の力を強める始末。


なにしてんの!?




「じゃぁさ、腕離す代わりに一緒のプリクラ撮るってのはどう?」

「・・・・は?」

「撮ってくれんなら開放してやらなくもないけど?」




どんな脅し文句だ。

しかもなんで上から目線?


だけど一刻も早く離して欲しい私に迷う余地なんてないわけで。

コクコクと素早く頭を上下に振った。

後ろから気配が消え、おなかに回された腕が解かれる。

素早く彼から離れ狭いプリクラ機の端に逃げると、「んな拒否んなくてもいいだろぃ。」と拗ねるように口を尖らせた。


その態度にちょっと可愛いかも・・・・と思ってしまう。


我が儘で俺様でかなりのKYで、鈍感で乙女心を理解していないし、思い込みと自惚れの激しいヤツだけど、

よく言えば積極的で押しの強い肉食系男子ということだ。

私が中学生じゃなく、こんな症状を持っていなければ、ここまで苦手意識を持っていなかったかもしれない。

顔も悪くないしね。


ちょっとだけ苦手意識を解いて彼の方へ近寄り、お財布から取り出した小銭を手渡した。




「割り勘だからね。」

「え?」

「撮るんでしょ?撮らないの?」

「と、撮る!」




慌てて小銭を取り出して投入口へ入れる後姿に、私はクスリと笑みを溢した。


よくわからないからおまかせすると言った私に、彼は手馴れた様子でパネルを押していく。

そして操作が終わったのか、私の隣に戻ってきた。


どんなポーズをすればいいのだろう?キメポーズとかあるのだろうか?先に聞いておけばよかった。


そっと隣に目をやると、バチリと視線が重なった。

だけど慌てたように視線を反らされてしまった。

その横顔が赤い。


なんで照れてんの・・・?


彼の様子を気にしつつも、カウントダウンが始まったので前を向く。

モニターに2人の女の子が肩を寄せ合いお願いポーズをしている姿が写しだされる。

なにこれ?同じ様にポーズしろって事?無理無理。こんなポーズできるはずがない。

仕方なく私は無難にピースサインをした。


ポーズを変える事なく数回のシャッター音を聞いた後、前のパネルに今撮ったばかりのプリクラが写しだされた。

どれどれと覗き込めば、どのプリクラもさほど代わり映えのないもの。

まぁポーズを変えてないんだからあたり前なんだけど・・・・。

隣に写る赤髪少年もほとんどポーズに変化がなくて、不思議に思う。

慣れてそうだし、ふざけたポーズとかも好きそうなのに。しかも表情硬いし。




「どれにする?」

「え?」

「早くしないと終わっちゃうよ?」

「あ、あぁ・・・。」




声をかけるもなんだか微妙な反応。

なんなの?あんなに撮りたがってたくせに。


いつまでたっても選ぶ様子もないので、指定された枚数を勝手に選べば、ラクガキコーナーに移動してねと指示された。

バッグを持って外の様子を伺う。女の子がいない事を確かめて、「早く!」と後に声をかけ落書きコ-ナーに駆け込んだ。

後からついてきた赤髪少年はさっき以上にさえない顔をしている。

撮れって言うから撮ったのに、こうもテンション低いと腹が立つ。




「ねぇ。なにが不満なの?」

「え?」

「だってつまらなさそうな顔してるじゃん。」




少し棘のある言葉を投げつければ、「そうじゃなくて・・・・」と口ごもってそっぽを向いてしまった。

そして一言「・・・・・・・・・お前相手だと緊張してどんな顔すればいいかわかんなかったんだよ」と呟いた。


なにそれ・・・・・。

そう言えばさっき赤い顔をして照れてたけど、それってそういうこと?

どれも同じポーズなのは緊張してたから?

顔近づけたり抱き締めたり。変なところ積極的なくせに、一緒にプリクラ撮るくらいで緊張とか、なんだかんだ言ってやっぱり中学生なんだ・・・・。



垣間見た彼の年相応の可愛い素顔に、私の中にあった苦手意識が薄れていく。

落書きが終わった後、「もう1度リベンジしてもいい?」と恥ずかしそうに聞いてきた彼に、私は笑顔で「いいよ」と頷いた。


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久々のトリップ連載。

プリクラを年末に撮りに行ったんですけど、マジでびっくりしました。

衣装貸し出しって、コスプレのような服じゃないんですよ。

同じ建物内に入ってるショップの服ですよ。
なんて贅沢。


普段押しが強いのに変なとこ純情とかキュンとします。

あれ?私だけ?ww